それでは、どうぞ!
夕飯を終え、戸締りを確認した翔太はフィリップと出かける支度をしていた。今日は、壮吉も母親も帰りが遅くなると聞いていた。なので、二人が帰ってくる前に、戻ってくれば、バレることはないと翔太は考えていた。
「よし、準備は大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
翔太の確認に、フィリップは万全だと答えた。そして、二人は目的地へと出発した。
「まだかい、翔太」
「まぁ、待て。時間だと、もうすぐだな」
目的地の丘に着き、ベンチに腰掛けた花火の開始を持つ二人、すると、
『お待たせしました!これより、風都名物『風都花火 夏のフィナーレ・ウィンドウ』を開始いたします!』
そのアナウンスと共に、花火が打ちあがる音が聞こえ、二人が空を見上げると・・・
「おお!」「うわぁぁ・・・!」
大きな花火が空を埋め尽くしていた。その光景に、二人は目を奪われていた。翔太はもちろん、初めて花火を見るフィリップも感嘆の声を上げていた。時間を忘れ、二人は花火を見ていたのだった。
「フィリップ、急げ!」
「ま、待ってくれ、翔太!」
結果・・・ちょっとしか見ないはずだった花火を最後まで見続けた二人は、慌てて帰路についていた。焦る翔太に、息を切らしながら、フィリップが追いかけていた。その時だった。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
「なんだ、お前ら?」
角を曲がった先に黒づくめのスーツを着ていた男たちが立っていた。いつもなら、そんな人たちなら、気にせず駆け抜ける翔太だったが、その男たちからは嫌な気配が漂っていた。その気配を直感で感じ取った翔太はフィリップを背後に庇い、そう言い放った。
「しょ、翔太!?」
「っ!?」
フィリップの声に背後に目を向けると、後ろにも男たちが迫ってきていた。そして、先頭の男が胸ポケットからそれ・・・ガイアメモリを取り出した。
『Masukareido』
低い音のガイアウィスパーが鳴り響き、そのまま男は首にそれを突き刺した。その姿が、骨とムカデをイメージした物に変わる。そして、次々と男たちもメモリを首に刺し、変貌していく。
「ば、化け物・・・!?」
思わず、口からその言葉が漏れた翔太。だが、その光景を見たフィリップは、
『ガイアメモリ・・・ドーパント・・・』
「!?!?ああああああああああああああ!?」
「フ、フィリップ!?」
知らないはずの言葉が頭に響き、フィリップは叫び声を上げながら、その場に蹲ってしまった。尋常でない様子に翔太はフィリップの傍に跪いた。その瞬間、マスカレイド・ドーパントたちが二人に襲い掛かろうとした・・・だが、その時、前方からバイクのエンジン音が鳴り響いた。
「「「「「!?」」」」」
その方向をドーパントが向くと、黒いバイクが物凄いスピードで突っ込んできた。減速せず、ドーパントたちを跳ね飛ばしたバイクは翔太たちの目の前で止まった。
「無事か、二人とも?」
「と、父さん?」
バイクの主・・・壮吉の問いかけに翔太は驚きながらも頷いた。
「翔太、説教は後だ。フィリップを連れて、家まで走れ!」
「で、でも!?」
「・・・行け!」
「わ、分かった!」
静かに、だが、怒気を籠らせた壮吉の言葉に、翔太は素直に従った。
「立てるか、フィリップ?」
「あ、ああ」
混乱から回復したフィリップを立たせ、翔太は家の方向へと走り始めた。その後ろ姿を横目で見届けながら、壮吉は視線をマスカレイド・ドーパントに向けた。その目には静かに怒りが満ちていた。
「お前達は、俺の家族に手を向けた。手加減が効くと思わんことだな」
そう言って、懐からロストドライバーを取り出し、装着する。そして、
『Skull!』
「変身」
スカルメモリをドライバーに装填し、帽子を脱ぎながら、静かに言葉を発する。風が壮吉を纏い、その姿を超人・・・仮面ライダースカルに変えた。
「「「「「!?!?!?!」」」」」
ドーパントたちがその姿に動揺した。壮吉が変身したこともそうだが、自分たちの前に現れたのが、自分たちが所属する組織と対峙する、スカルであることにも驚いたのだ。
「さぁ、お前たちの罪を数えろ」
帽子をかぶりながら、静かにドーパントたちに右手を向け、スカルが宣言する。
動揺から回復したマスカレイドたちがスカルに一斉に攻撃を仕掛ける。それらを冷静に受け止め、見事なカウンターを決めていくスカル。マスカレイド達はスカルに決定打を入れられず、圧倒されていき、次々と地面へとその体を鎮めていく。最後の一体を蹴り飛ばし、スカルは手を払いながら、スカルマグナムを取り出す。
『Skull! Maximum Drive!』
そのまま、銃身をマスカレイドたちに向け、エネルギーが充填されたスカルマグナムの引き金を引く。スカルマグナムから複数のエネルギー弾が放たれ、全ての弾がマスカレイドたちに直撃する。
「また一つ・・・風都に、悲しい風を吹かせてしまったか」
マキシマムドライブの直撃により、マスカレイドたちの身体が爆散するのを背景に、スカルはその表情を隠すように帽子をかぶり直しながら、変身を解いた。
(どうやら、ぬくぬくとしている余裕はもうないようだな)
壮吉はもう時間がないことを内心考えながら、自宅へとバイクを走らせるのだった。
「と、父さん・・・」「・・・・・」
自宅に戻った壮吉を出迎えたのは、玄関で悲痛な表情を浮かべた翔太とフィリップだった。
「翔太、俺との約束を破ったな?」
「う、うん」
静かに、だが、確かに怒りを込めた壮吉の問いかけに翔太は素直に答えていく。
「どうしてだ?」
「・・・お、俺がフィリップを連れ出したんだ。フィリップに花火を見せ「待ってくれ!」フ、フィリップ!?」
フィリップを庇おうとした翔太を、フィリップが遮る。その言葉に、壮吉はフィリップに視線を向ける。
「僕が翔太にお願いしたんだ。花火が見たいと・・・翔太はあなたとの約束を守ろうとしたけど、僕が無理を言ったんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「悪いのは、フィリップだけじゃない。俺も、父さんたちにバレなきゃいいと思って、約束を破った。その結果、時間を忘れて・・・俺が悪いんだ。俺が、父さんとの約束を破って」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二人の言い分を静かに聞いていた壮吉はやれやれといった表情でため息を吐きながら、
「はぁ。翔太、フィリップ」
ゴン!
「「!!?!!?!!?!!?」」
そう言って、二人の頭に拳骨を落とした。その重さ・威力に二人して、頭を抱えて痛がる。
「両成敗だ。翔太は俺との約束を破ったこと、フィリップは自分の欲を制御できなかったことにだ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「お前達の罪は把握できたか?」
「う、うん」「・・・はい」
「それならいい。今後は二度としないようにな」
お説教はこれで終わりだという風に、壮吉は怒気を解いた。翔太とフィリップは反省し、もう二度と約束を違えないようしようと思ったのだった。そのまま、3人はリビングに移動し、壮吉はテーブルに座り、翔太たちにも座るように促した。
「翔太、フィリップ。今日のことは誰にも話すんじゃないぞ。これは、お前たちが知るにはまだ早い。いいな?」
「「(コクッ)」」
有無を言わさない壮吉の言葉に、素直に頷く翔太とフィリップ。そして、壮吉が言葉を続ける。
「それと、俺はしばらく家に帰って来れなくなる。俺がいない間、家のこと、母さんのことを頼んだぞ」
「!?」「・・・・・・」
その言葉に、翔太は驚愕し、フィリップは冷静のその言葉を受け止めた。
「と、父さん!どういうことだよ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「さっきのことが関係してるのかよ!なんだよ、いきなり!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
翔太の問いかけに、壮吉は何も答えない・・・いや、答えられないといった感じでもあった。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
沈黙が場を支配した。だが、それは長く続くことはなかった。先に折れたのは翔太だった。
「分かったよ。父さんがそうしないといけないことだってことだろう」
「すまんな、翔太。お前には、いつも苦労を掛けてばかりだな」
「父さんは父さんのやるべきことをやってよ。その間、母さんとフィリップのことは任せてくれ!」
息子の言葉に、壮吉は静かに頷き、笑みをこぼした。
「フィリップ」
「・・・?」
急に呼ばれ、疑問マークを浮かべながらも、フィリップは壮吉の方を向いた。
「翔太は、まだ未熟だ。考えなしに動いてしまうことも多いが、それでも、人の気持ちを、痛みを分かってやれる男だ。翔太が困った時には、お前が助けになってやってほしい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そして、翔太。フィリップはこの世界のことをほとんど知らない。だが、彼の力はいつかお前の手助けになってくれる。だから、フィリップが何かにぶつかった時は、お前が支えになってほしい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・分かった」
壮吉からの言葉に、それぞれが静かに頷いた。その言葉の本質は完全には理解できたわけではなかったが、その言葉の意味は二人には伝わったからだ。
「お前達は、まだ不完全だ。そして、それが完成するということはない。人間は誰しもが、完璧じゃない・・・完璧な人間など一人もいないからこそ、互いに支え合っていくのが、人生という名のゲームだ」
「支え合う・・・」
「人生という名のゲーム・・・」
「お前らは互いに、互いが持っていないものを持っている。仲良くするんだぞ」
そう言って、壮吉は席を立った。
「俺は残りの仕事を片付けてくる。翔太」
「なに?」
「・・・・・あとは頼んだからな」
「!!・・・分かった」
壮吉の言葉の意味を理解した、翔太は大きく頷いた。そのまま、壮吉はリビングを出て行った。外に出た壮吉はバイクにまたがり、自身がこれまで住んでいた家を見ていた。
(・・・京、翔太、フィリップ・・・・・元気でな)
内心で別れを告げ、壮吉はバイクを走らせるのであった。
そして、話は現代へと戻る。
「・・・・・・それが、父さんとの最後の会話だった」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
長い話が終わり、五月は、翔太とフィリップの出会いの話に何も言えなくなっていた。そして、翔太が自身と似た境遇であることを知った。
「それからは必死だったよ。フィリップに勉強を教わりながら、必死に成績を上げて、仕事が忙しい母さんと交代制で、家事をして・・・あっという間に高校にまで進学した頃だった。俺とフィリップの運命を変えた出来事に遭遇したのは・・・」
「その時のことを僕たちはこう呼んでる・・・始まりの日の夜・・・・・『ビギンズナイト』と」
「・・・・・ビギンズ、ナイト・・・」
そして、翔太とフィリップは語り始めた。始まりの物語を・・・・・・
一年半前・・・翔太が高校に進学し、母親は翔太の高校進学に伴い、単身赴任により地方で生活するようになったため、フィリップも洗濯や掃除といった家事を担当し始めた頃だった。
翔太が高校に行っている時、佐桐家にある一通の手紙が届いた。手渡しでのメール便だったため、フィリップが直接受け取った。宛名のない手紙に首を傾げながら、開く。そして、その手紙の中を見て、更に眉を顰めた。
(これは暗号か。かなり精巧に作られているな)
その暗号とにらめっこを始めるフィリップ。ちなみに、掃除の途中かつ、洗濯機を回している最中なのだが、完全にそのことを忘れ、暗号解読に没頭してしまっていた。帰ったら、翔太から大目玉を食らうこと間違いなしだった。そして、暗号を解き始め、2時間・・・
(この場所のことか)
フィリップは暗号を解き、家の中庭にある物置へと来ていた。暗号の答えの一部はガレージと書かれていた。それだけでは、どこのガレージのことか、分からなかったが、暗号の答えにはこの名前が記されていた・・・佐桐壮吉、と。
暗号の答えに、確信を持ったフィリップは物置を調べ始めた。すると、不自然なスイッチがあることに気が付いた。今まで、何度か物置に入ったことはあったが、こんなスイッチがあったのを見たことがなかった。
(この手紙といい、このスイッチといい・・・もしや、今のタイミングになって、出現した?・・・ということは)
そう思い、フィリップがスイッチを押した時だった。
「!」
フィリップの足元が動き始めた。慌てて、そこから飛びのくと、床が開き、地下への隠し階段が出現した。
(こうなったら、行けるところまで行ってみるか)
そう思い、階段を降り始める。階段を進んだ先には、ドアがあり、それを開いた先には、
「!これは・・・!?」
開いた先には、フィリップの想像を超えた景色が広がっていた。そこには、大型の車両にバイク、多数のホワイトボード、工房などなど、まさしく秘密基地、ガレージと言った言葉がふさわしい場所であった。
それらを物色していると、フィリップの目に一つのケースが目に止まった。それに触れた時、機械が出入りするであろう、ガレージの大きな扉をスクリーンに映像が映り始めた。その映像に、移ったのは・・・
「佐桐、壮吉・・・」
翔太の父親である佐桐壮吉が映ったことにフィリップは驚きながらも、どこか納得している自分がいたのだった。そして、映像が再生され始めた。
「ここか?ったく、フィリップめ、家事を放り出しやがって。それにしても、ここはどこなんだ?」
学校から帰り、夕飯をどうしようかと考えていた翔太は、家の状態とフィリップがいないことから、彼を探していた。そして、開きぱなっしになっていた物置きの隠し階段を見つけ、ガレージの扉の前に来ていた。そこを開き、フィリップが驚いたように、翔太も驚いた。だが、
「!!フ、フィリップ!?」
好奇心をくすぐられる光景が広がっていたが、それよりも、ガレージの地面に倒れている相棒に気付き、急いで駆け寄る。
「おい!フィリップ!フィリップ!?」
「う、ううん。しょ、うた・・・?」
「ったく、驚かせやがって。それにしても、ここはなんなんだ?」
すぐに意識を取り戻したフィリップにほっとしながら、翔太はこの場所のことについて、尋ねたのだが、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・フィリップ?」
沈黙を続けるフィリップの態度に、違和感を感じた翔太はもう一度、名前を呼んだ。
その言葉を無視し、ふらりと立ち上がったフィリップは先ほどと同様にケースへと手を振れ、映像をもう一度再生させた。
「翔太・・・これから映る映像を君にも見てもらいたい」
フィリップにそう言われ、翔太は映像に目を向ける。
「父、さん・・・?」
翔太も久しぶりに見た父親の姿に思わず、呆然としてしまった。その間にも、映像は再生を始めた。
『この映像が再生されているということは、俺がいなくなってから、おそらく数年が経過した後だと思う。そして、新たなる脅威が人々を襲っているのだろう。翔太、フィリップ。お前たちをこのことに巻き込んでしまう、俺の不甲斐なさを許してくれ』
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
その映像が語る、父の言葉を翔太は黙って聞き、フィリップももう一度確認するように聞いていた。
『あの夜、俺はフィリップの・・・いや、彼の母親から、フィリップをとある研究施設から救出する依頼を受けた。フィリップは『地球の記憶』と呼ばれるデータベースを、父親により、植え付けられてしまい、生きるデータベースとされてしまった。それを良しとしなかった母親は、旧友である俺に依頼してきた。彼は、今までの、そして、自身の記憶を全て失っていた。そんな彼に俺は、フィリップと名を授けた』
「フィリップの本名…?そのざき…?」
『彼の父親が目指した物。それは、地球の記憶と呼ばれる、ガイアメモリによる、人間の更なる進化を目指したものだ』
「・・・ガイアメモリ・・・」
壮吉の言葉に、翔太はオウム返しにキーワードを呟くことしかできなかった。
『ガイアメモリは人間を、ドーパントと呼ばれる化け物へと変えてしまう。最近、噂になっている失踪や犯罪事件にこれが関わっていることもしょっちゅうだ・・・俺はそれを止めるべく、戦い続けてきた。そして、ようやく、敵の尻尾を掴むことができた。敵の戦力は未知数だ。俺の命を懸けても、もしかすれば、足りないかもしれない』
壮吉の言葉に、その決意が伝わってきていた。壮吉は命を懸けてでも、敵を倒すつもりだった。
『本来であるならば、大人の俺が解決すべき問題であることは分かっている。だが、もし俺がいなくなり、再び町に、人々に脅威が襲った時、お前たちに全てを託したい。それが、そのトランクケースに収納されている・・・・・ダブルドライバーだ』
「ダブル、ドライバー・・・?」
『この映像が再生されるのが、5年後、10年後、もしかすれば、もっと先になるかもしれない・・・本来であれば、再生されることのない未来が待っていることを期待するが、人間は一度手に入れてしまった力を手放すことは難しい。それ自体は間違いではない。だが、その力を悪しき方向で使うことは、決して許されることではない。お前たちが、正しき方向へとこの力を使ってくれることを、俺は信じてる』
そう言って、壮吉は微笑みながら、
『最後に・・・翔太、フィリップ・・・自慢の息子たちよ。これは強制でもなければ、義務でもない。お前たちがどの道を選ぼうとも、俺はそれを推奨したい。お前たちにこんな重責を負わせてしまって済まない・・・愛しているぞ』
そこで、映像は終わりを告げた。衝撃的な事実が連続で続き、翔太は完全に混乱してしまっていた。そこに、フィリップが声を掛けた。
「翔太、混乱しているところ、すまない」
「フィリップ・・・」
「僕は全てを思い出した。僕の名前は、園崎来斗・・・父には『運命の子』と呼ばれていたんだ」
「運命の、子・・・?」
フィリップの言葉を復唱する翔太。フィリップは話を続ける。
「ああ。僕は、地球の記憶とよばれる、この世の全ての情報が揃う、『地球の本棚』と呼ばれるデータベースにアクセスできるようになってしまったんだ。父の実験に協力させられていた過程に偶然的にね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「父は、考古学者でね。偶然にも遺跡の調査の過程で、地球の記憶と呼ばれる物を発見してしまったんだ。そして、悪魔の兵器を作り出してしまった・・・それが、」
「ガイアメモリ・・・」
「ああ。そして、昔、僕と君を襲ったあの化け物共。あれがドーパントと呼ばれるものだ」
「・・・・・それじゃ、父さんはずっと・・・あんな化け物と戦っていたって、ことか?」
「・・・おそらく」
翔太の推理をフィリップはガレージを見渡しながら、答えた。ガレージは最近できたものではなく、以前、誰かが使っていた形跡があったからだ。
「そして、データベース・・・いや、生体兵器として、ガイアメモリを生み出す人形となっていた僕を、佐桐壮吉が助け出してくれたんだ。名前を失い、生きる目的を失っていた僕に、名前を、家族を・・・いていい場所をくれたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉に、翔太はようやく全ての情報を処理しきり、冷静になった。
「父さんが言ってたよな。この映像が再生される時、町に危険が迫ってる、って」
「・・・ああ。さっき検索を完了した。ガイアメモリの脅威は、まだ去っていない」
「っ!?」
「ここ最近、謎の失踪事件が増加しているだろう?これらのほとんどはガイアメモリによる、超常犯罪だ・・・まぁ、さっきはそれらの検索のし過ぎで倒れてしまったのだけどね」
フィリップの言葉に、翔太は完全に言葉を失った。そして、目の前にあるトランクケースを見た。
(ここには、そいつらと戦う力がある・・・・・・けど、それはフィリップを巻き込んでしまっていいことなのか?)
翔太は迷っていた。それは、壮吉から託された、もはや兄弟とも言える、フィリップを巻き込んでしまってもいいのかという考えからだった。どうするべきか、翔太が迷っている時だった。
「翔太、僕は戦うよ」
「っ!!フィリップ!?」
自分の考えを見透かされたようなフィリップの言葉に、翔太は目を丸くした。しかし、フィリップの目は本気であった。
「僕は、僕の罪を償わなければならない」
「罪・・・?」
「ああ。僕が開発に協力してしまったことで、ガイアメモリは量産され、この世の中に出回ってしまった。そして、僕の家族のせいで、君の父親や他の人々を傷つけてしまった。そして、それを償う機会があるのなら、僕は戦う」
「・・・・・フィリップ」
相棒の言葉に、翔太はフィリップの目を見ていた。そして、惣吉の言葉を思い出していた。
『人間は一度手に入れてしまった力を手放すことは難しい。それ自体は間違いではない。だが、その力を悪しき方向で使うことは、決して許されることではない。お前たちが、正しき方向へとこの力を使ってくれることを、俺は信じてる』
『これは強制でもなければ、義務でもない。お前たちがどの道を選ぼうとも、俺はそれを推奨したい』
その言葉が翔太の頭を巡り、ある言葉を思い出した。
「完璧な人間など一人もいないからこそ、互いに支え合っていくのが、人生という名のゲーム・・・・・か」
そう呟き、翔太はもう一度、フィリップに向き合った、その目に覚悟の炎を灯し・・・
「分かった。なら、俺は・・・父さんの信念を背負って、戦う。俺が好きで、父さんが愛したこの町を守るために、俺は戦う!」
「そう言ってくれると思ったよ!」
そう言って、フィリップはトランクケースを開いた、そこには、6本のガイアメモリとダブルドライバーが収納されていた。
「悪魔と相乗りすることになるよ?覚悟はできてるかい?」
「もちろんさ。悪魔だろうと、死神だろうと・・・地獄の底まで相乗りしてやるよ!」
フィリップの言葉に、翔太は・・・ダブルドライバーと、自然と目を引かれたジョーカーメモリを手に取った。そして、フィリップはサイクロンメモリを手に取る。
こうして、二人は真実を知り、後に仮面ライダーダブルとして呼ばれる、超人として、戦い始める日々が始まった。
「・・・そして、翔太は探偵として、僕は情報検索を担当し、これまで、ガイアメモリに関わる事件を解決してきたんだ」
「ダブルっていうのは、二人で変身することから取った名前だ。仮面ライダー、っていうのは都市伝説にちなんだ名前から頂いたものだ。仮面ライダーダブル、二人で一人の、探偵で仮面ライダー、ってわけだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
全てを話し終え、五月は呆然としていた。出された飲み物に手を付けることなど、もう既に忘れてしまっていた。音が無くなってしまったように、沈黙だけがその場に存在していた。
「・・・・・俺達の話はこれで終わりだ。なにか質問はあるか?」
「・・・・・え、ええっと・・・・い、いえ、大丈夫です。というよりも、まだ話が上手く呑み込めていないといいますか」
「無理もない。これでも、かなり話としては短縮した方だが、いきなり全てを理解しろという方が無理な話だ」
翔太の問いかけに、五月の微妙な反応をしていた、それを気遣ったフィリップがそう判断した。
「翔太、今日はもうここでお開きにしたら、どうだい?彼女も、一度整理する時間がほしいだろう?」
「分かった。それじゃ、今日はこの辺にしておくか」
フィリップの提案に従い、翔太は賛同し、立ち上がる。
「もういい時間だ。送っていくぞ、いいな?」
「あっ、は、はい!」
その提案に、五月は慌てて、頷くのだった。
「よし、到着!」
「・・・・・まさか、バイクの運転もできるなんて、まさか免許は・・・!?」
「ちゃんと取ったよ。学校には秘密にしてるから、これも内緒で頼むわ」
ハードボイルダーで喫茶店から五月を送り届けた翔太は、五月の突っ込みに苦笑いで答えた。
「今日は悪かったな。色々な話をしちまって」
「いえ・・・私が知りたいと思って、お願いしたことですから。今日は、ありがとうございました」
お礼を言う五月に、翔太はバイザーを閉じ、フィリップが待つ喫茶店に戻ろうとしようとしたが、
「あの!」
「・・・うん?」
五月に呼び止められ、翔太は振り向いた。
「あの・・・この前は、助けてくれて、ありがとうございました!」
「・・・・・?」
「そ、その・・・夏祭りの時も、この前も、ちゃんとお礼を言えてなかったと思いまして・・・だから、その!?」
「・・・・・ハハ、ハハハ!」
「な、なんで笑うんですか!?」
「いや、そのクソ真面目なところはここでも発揮されるんだなと思ってな」
「なぁ!?悪いですか!?」
翔太が笑う理由に赤くなる五月。そして、
「さぁ、早く帰らないと、二乃辺りが心配するぞ?」
「・・・分かりました」
「それじゃ、おやすみ、五月」
「おやすみなさい、佐桐君」
そう言って、二人は別れたのだった。
「悪いな、フィリップ。待たせたか?」
「いや、丁度片づけをしていたところだ」
「よし、それなら帰るか?」
そう言って、翔太は提案し、戸締りを始めたのだが、
「それにしても・・・君がなぜ彼女にそんなに肩入れするのか、会ってみて、よく分かったよ」
「・・・・・はい?」
相棒の突然の言葉に、翔太は思わず眉を顰めた。
「君が家庭教師を引き受けた理由がよく分かったってことだよ。確かに、まるで昔の君を見ているようだね、彼女は」
「・・・もしかして、馬鹿にしてんのか?」
「いやいや・・・でも、君がこの話を打ち明けるまでに、彼女を・・・中野五月のことを信頼していることは僕にも良く分かったよ」
「フィリップ、お前、一回眼科に行った方がいいぞ?」
相棒の言葉に正気を疑った翔太は半眼でそう言った。
「おや・・・気付いていないのかい?」
「何がだよ・・・!」
「君、彼女の前だと、僕が話している時の様に、素の自分が出ているんだよ?今は隠している・・・半熟者としての、君本来の性格がね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その指摘に、思わず翔太の手が一瞬止まった。
「似た者同士なのか、それとも、別の意味があるのかは知らないけどね?」
「・・・・・うるせぇよ。ほら、さっさと帰るぞ!」
そう言って、翔太は早く帰るようにフィリップを促した。それに、フィリップもやれやれといった表情をしていた。喫茶店を出た時には、もう23時を回っていた。夜の街はシーンと静まり返っていた。
「あれから、10年か」
「・・・昔話をしたせいか、懐かしく感じたかい?」
「まぁな・・・9年前に、町の編成計画に伴って、『風都』の地名が消えて、ガイアメモリの犯罪が一旦沈静化して・・・俺たちがダブルとして、戦い始めたのが1年半前・・・これまで、色々あったと思っちまってな」
「・・・・・確かにね」
翔太の感想に、フィリップが同意した。二人が出会い、もう人生の半分以上を一緒に過ごしていた。そんな二人にとって、特にこの1年半は今まで一番濃厚な人生を過ごしてきたとも言える。
「さて、そろそろ帰るか!」
「ああ」
そう言って、翔太がハードボイルダーに乗り、フィリップが後ろに乗ろうとした時だった。
『ビービービー!!!』
「「!!!」」
ドーパント出現を知らせる警報がスタッグフォンから鳴り響いた。その反応に二人は苦笑しながらも、
「行くか!」
「ああ、行こう。相棒!」
二人は現場へとバイクを走らせた。その顔は戦士の顔へと変わっていたのだった。
次回 仮面ライダーW
『Fの修学旅行/探偵としての仕事』
これで決まりだ!
これにて、ビキンズナイト編は終わりです。
そして、物語は林間学校編になります。
二乃7割、五月3割のお話になります。
また、いつも違うお話の構成にもなっています。
仮面ライダーダブル・五等分の花嫁、どちらのファンにも楽しんで頂けるお話に仕上がってると思いますので、ご期待頂ければと思います。
ちなみに、タイトルの「W」はもちろん『ダブル』を意味します。
次回更新 1月1日0時予定