仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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林間学校編始動です!

なのに、まさかの1万字近くになるという予想外の事態・・・

それではどうぞ!


第19話 「Fの林間旅行/フィリップの失敗」

(ね、ねみぃぃぃ・・・・・)

 

林間学校当日・・・夜中にハウンド・ドーパントとの激闘、未だに林間学校に(無理やり)参加しようとするフィリップの説得に睡眠時間を削られた翔太は、集合場所に停まっていたバスで欠伸を噛み殺していた。

 

バスの中から外の光景を見ていると、先生や添乗員が生徒たちを誘導していくのが見えていた。その中には、五月たち五つ子たちの姿もあった。そんな光景を翔太がぼんやりと見つめている時だった。

 

「おい、佐桐・・・少しいいか?」

「えっ、はい」

 

バスの入り口で担任の教師が翔太を呼んだ。いきなりのことに顔をしかめながら、翔太は教師の元へと向かった。

 

「どうかしましたか?」

「ああ。実はお前に頼みはあってな。佐桐、肝試しの時間は手が空いていたよな?」

「ええ」

「悪いんだが、肝試しの実行委員の代役を引き受けてくれないか?」

「・・・えっ?」

 

教師の言葉に、翔太は昨日の風太郎たちとの会話を思い出していた。その事実を裏付けるように、教師が言葉を続けた。

 

「どうやら、実行委員の上杉が家庭の事情で来れなくなったらしいんだ」

 

その言葉に翔太は、驚くしかなかった。

 

 

 

(上杉・・・電話に出ないか)

 

一旦、肝試しの代役の話は保留ということになり、席に戻った翔太は風太郎の携帯に電話をかけていた・・・だが、一向に繋がる気配がなかった。翔太がなんとか連絡をつけようとメールの画面を開いた時だった。生徒の集団から、5人の女子生徒が走って行くのが見えたのだ。それは・・・

 

(五月・・・!それに、一花たちまで・・・)

 

5人が慌てた様子で走って行くのが見えた翔太は、五月へと連絡を取るために電話を掛けた。数コールの内、すぐに電話がつながった。

 

「もしもし!五月か?お前ら、一体・・・!」

『説明は省きます!私たちは、今から上杉君を迎えに行きます!』

「・・・なぁ!?」

 

いきなりの言葉に翔太は思わず言葉を失った。

 

『こちらのことは気にしないでください!移動手段はありますから、後で合流します!』

「・・・・・・・・・」

『・・・彼には、どうしてもこの林間学校で試したいことがあるんです。だから・・・』

「・・・分かった。俺も上杉が参加しないのはと思っててな・・・頼む」

 

翔太がそう言うと、電話は切れてしまった。安堵した翔太は、疲れも重なり、そのまま眠りについてしまった。そして、翔太が目を覚ました時には・・・

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

バスの窓から見える光景は、吹雪によって、白一面に染まった景色だった。その光景に思わず、寝起きの翔太は絶叫し、一瞬で目が覚めたのだった。

 

「やぁ、目が覚めたかい、佐桐君?」

「た、武田・・・なんなんだ、この白一色の景色は?」

「なんでも、例年よりも早い猛吹雪らしいよ・・・かれこれ2時間以上渋滞での足止めを喰らっていてね。今、先生と添乗員さんたちが近くの旅館に泊まれないか、確認に行っているよ」

「・・・・・俺が寝てる内にとんでもないことになってんな・・・というか、お前。いつの間に、俺の隣に座ってるんだ?」

「・・・気にしないでくれたまえ」

(いや、気にするわ!?)

 

いつの間にか、隣の席に座っていた武田から事情を聞いた翔太は現状を把握し、再び視線を窓へと向けた。

 

(あいつら・・・うまく合流できたらいいが、大丈夫か?)

 

翔太は、こちらを追いかけているであろう五つ子たちと風太郎のことを心配していた。

そう・・・

 

「なにやってんだ・・・お前」

「さ、佐桐君!?」

 

翌日の朝・・・吹雪をやり過ごすために泊った旅館で五月と遭遇するまでは・・・

朝風呂にでも入ろうと移動している時、なぜか部屋を覗きこんでいる五月に、翔太は怪訝な表情をしながら、そう尋ねていたのだった。

 

 

 

「おお!佐桐、切るの早いな!」

「よく家で料理してるからな。そういえば、飯盒の方はどんな感じだ?」

 

林間学校2日目・・・キャンプ場に着いた一同は二日目の予定である飯盒炊飯とカレー作りへと取り掛かっていた。翔太も班員メンバーと共に調理に取り掛かっていた。野菜を手早く切りながら、翔太が次の作業を確認している一方で・・・

 

「これ・・・もう使った?片付けておくね」「は、はい」

パキッ!

「いや、もう薪割らなくていいから!」「アハハ!これ楽しいですね!」

「に、煮込めるまで・・・あと3秒で15分です!」「こ、細かすぎない・・・?」

「三玖ちゃん、なに入れようとしてるの!?」「お味噌・・・隠し味」

 

五つ子たちもそれぞれ楽しんで(?)、カレー作りを進めているようだった。最も・・・

 

「おい、コラ!一・・・中野さんとは順調なんだろうな?」

「あ、ああ」

 

一花(変装した三玖)にダンスの誘いを振られた前田が風太郎に絡む一方で、

 

「じゃあ、私たちだけでやってみるから、カレーの様子見てて?」

 

男子に、笑顔・・・いや、般若のような笑顔で激怒する二乃、などなどひと悶着もあったようだが・・・そうこうしている内に、調理が一段落を終えた翔太は四葉に声を掛けられ、風太郎の元へと来ていた。

 

「上杉さん」「上杉」

「うん・・・?四葉に佐桐?珍しい組み合わせだな」

 

翔太と四葉の組み合わせに声を掛けられた風太郎は、自分が声を掛けられた意味が分からず首を傾げていた。

 

「ししし!私も肝試しのお手伝いをしようかと思いまして!肝試しの道具を運んでいいか、聞きに来たんです」

「・・・?四葉・・・お前、確かキャンプファイヤーの係だったろ?」

「はい!でも、上杉さん一人じゃ無理だと思って、クラスの友達・・・それに、佐桐さんにも声を掛けたんです!」

「まぁ、俺はなんの係でもなかったし、もともと、代役を頼まれたりしたからな。それに、脅かす方が面白そうだと思ってな」

「勉強星人の上杉さんがせっかく林間学校に来てくれたんです!私たちで全力サポートしますから!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

四葉と翔太の言葉に風太郎は腰を上げ、二人が持っていた荷物をいくつか受け取った。

 

「よし、前田。俺の班の飯の世話もしててくれ」

「あ?命令してんじゃねーよ!つーか、俺の話の続きは・・・」

「肝試しは自由参加だ。クラスの女子でも誘って来てみろ」

 

前田の言葉を遮り、風太郎は言い放った。

 

「ただし、こっちも本気でいくからビビんじゃねーぞ」

 

その表情はとてもいい笑顔であった。

 

 

 

「ハッピー、バースデェェェーーー!!!」

「「ひぃぃ!?うわぁぁぁぁぁ!?!?」」

 

そして、時刻は夜になり・・・肝試しの時間となった時、森の中で大きな悲鳴が続出していた。その元凶は・・・ピエロのマスクと金髪のカツラを被った風太郎の会心の演技によるものだった。

 

風太郎の脅し言葉(意味は彼のみぞ知るのだが・・・)に前田と女子生徒は悲鳴を上げて、逃げていった。それを確認してから、風太郎は茂みへと隠れた。

 

「くくく・・・」

「お前、意外に板についてるな」

「はい、絶好調ですね!ジャケットどうぞ!」

 

悪役らしい笑い方をする風太郎が様になっていることに驚く翔太に対し、四葉は風太郎の演技を褒めながら、ジャケットを手渡した。ちなみに、四葉はミイラ女、翔太は狼男の変装をして待機しているのだが、風太郎の怪演が凄すぎて、全然出番がない状態だったりする。

 

「私、嬉しいです!いつも死んだ眼をした上杉さんの眼に生気を感じます」

「確かにな・・・いつも死んだ魚のような目をして、勉強しか目に映ってない感じだからな」

「そうか。甦れて何よりだよ・・・あと、佐桐。流石に心にくるものがあるから、もう少しオブラートに包んでくれ」

 

四葉の感想にお礼を言いながら、翔太の言葉にちょっと精神的ダメージを喰らった風太郎であった。

 

「でも、良かったです。もしかしたら、来てくれないと思っちゃったから・・・悔いのない林間学校にしましょうね、上杉さん、佐桐さん・・・ししし!」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

四葉の言葉に、風太郎と翔太は思わず目を合わせ、肩を竦めた。風太郎にとっても、翔太にとっても、ちょっと照れてしまい、返す言葉が見つからなかったのだ。そうこうしていると、

 

「あっ、次の人、来ましたよ!」

 

四葉の言葉に、二人はジャケットを脱ぎ、その場から一斉に飛び出した。

 

「や、やってやらぁ!」「食べちゃうぞー!」「がるるるるる!!!」

 

が・・・そこにいたのは、

 

「フータロー・・・?」

「四葉・・・それにショータ君までいるじゃん」

 

一花と三玖であった。まさかの知り合いの登場に、風太郎は先ほどまで上がっていたテンションが下がり、翔太は恥ずかしさで顔を少し赤くしていた。

 

「一花に三玖!」

「なんだ、ネタがばれてる二人か。脅かして損したぜ」

「あ、ごめん・・・」

「わぁ、びっくり、予想外だ!」

「・・・一花。その気遣いの方が恥ずいから、止めてくれ」

 

一花なりの気遣いだったのだろう・・・驚いたリアクションをしたが、余計に翔太は恥ずかしくなってしまい、顔を反らしてしまった。

 

「フータロー君、その髪、染めたの?というか、ショータ君、そんな衣装どこにあったの?」

「これはカツラだ」

「俺のも学校の備品だよ。なんでも昔に買ったものらしいぞ?」

 

一花が風太郎と翔太に近づき、恰好について質問していた。その距離が近いことに、三玖は思わず直視し続けることができず、目を反らしてしまっていた。なので、

 

「三玖、聞いてるか?」

「えっ・・・なに?」

「看板が出てるから分かると思うが、この先は崖で危ない。ルート通り進めよ?」

 

上の空だった三玖に風太郎が警告を告げる。それを聞いた三玖は、

 

「分かってる・・・行こう、一花」

「え?うん・・・」

 

素っ気なく進み始め、態度が変わった三玖に一花も困惑しながら、付いていくのだった。

 

「なんだ?やけに素っ気ないな」

「そうですか?三玖はいつもあんな感じですよ?」

「いや、上杉の感じた通りかもな・・・何かあったのか?」

「いえ、夕飯まで特段何もなかったと思いますよ?」

 

風太郎と翔太の言葉に、四葉はそう答える。姉妹にそう言われれば、何も言えない二人はそれ以上詮索することを止めるのだった。

 

「それより!お二人とも、脅かし方にまだ迷いがありますよ!もっと凝った登場をしないと!」

「け、けどな・・・どうにも、踏ん切りがつかなくてな・・・」

 

四葉の指摘に、翔太は思わず躊躇ってしまっていた。自身が理想とするハードボイルド像が翔太に二の足を踏ませていた。が、

 

「駄目ですよ!こういう時こそ恥じらいを捨て、本気にならないと!男らしくないですよ!」

「っ!?」

 

四葉の言葉により、翔太のハーフボイルド精神に火が点いてしまった。

 

「そうだよな・・・そうだ、四葉、お前の言う通りだ!これじゃ、ハードボイルドなんて語れないよな!」

「えっ?はーど・・・?そ、そうです!その勢いですよ、佐桐さん!」

「さ、佐桐・・・?」

「よし、上杉!俺にいい考えがある・・・いいか?(コソコソ)・・・・・・・」

 

いきなり熱くなった翔太に驚く風太郎の肩を掴み、翔太は四葉と共に自身の考えを話し始めた。そして、各自がポジションに着き、次の獲物を待つのであった。そして、次のターゲットが通りかかった瞬間、

 

「フメツダァァァァァァァァ!!!(訳:不滅だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)」

「オデノカラダハボドボドダァ!?(訳:俺の体はボロボロだ!?)」

「「!?!?!?」」

 

木からぶら下がり落ちた風太郎と翔太の見事な怪演に、ターゲットは完全に不意を突かれた。だが、その人物は・・・

 

「わぁぁぁぁ!もう、嫌ですぅぅぅぅ!?」

「ちょ・・・!五月、待ちなさい!」

 

おばけの類が苦手な五月だった。五月にとって二人の怪演はクリティカルヒットしてしまい、悲鳴を上げながら、森へと消えていってしまった。それを慌てて、相方の二乃が追いかけていった。

 

「あちゃー、やりすぎちゃいましたね?」

「凄い悲鳴だったな・・・?」

「あ、ああ・・・もしかして、五月の奴、こういうの駄目だったのか?」

 

四葉と風太郎の言葉に、翔太も思わず、頷きながらそう同意したのだが・・・次の瞬間、我に返り、重大なことに気付いた。

 

「ちょっと待て・・・あいつら、どっちに行った・・・?」

「「えっ・・・?」」

 

翔太の言葉に、風太郎と四葉は思わず目を見合わせた。翔太の記憶が確かなら、さっき二人が消えていったのは、看板とは違う方向・・・つまり、崖がある危険なルートだった。

 

「っ・・・くそっ!」

「さ、佐桐!?」

 

非常に不味い状況になったことに気付いた翔太は一早く足に結んだ縄をほどき、地面へと降りた。

 

「二人を探してくる!上杉と四葉はここにいてくれ!1時間経って、誰も戻ってこなかったら、先生に知らせてくれ!」

「佐桐!」「佐桐さん!」

 

二人の声を無視し、翔太は二乃と五月の後を追い、走った。

 

(クソ!こうなるんだったら、ガジェットを宿舎に置いてくるんじゃなかった!?)

 

普段身に着けているメモリガジェット達を置いてきてしまったことを後悔しながらも、翔太は一刻も早く二人に追いつくために走ったのだった。

 

 

 

一方、場面は変わり・・・森の中。

 

「五月ー、どこ行ったのよー!」

 

どこかへと走って行ってしまった五月を探す二乃。見知らぬ土地で二乃自身も無自覚ながら道に迷ってしまっていた。

 

「こっちで合ってんのかしら?一旦戻ろうかな・・・」

 

このまま無策で探し続けるよりも、戻るべきかと考え始めていると、

 

「えっ?嘘っ、もう!?昨日、充電するの忘れてたかも・・・」

 

明かりとなっていたスマホの充電が切れ、二乃のテンションが更に下がる。

 

「なんなのよ・・・せっかくの林間学校なのに・・・あんな奴と同じ部屋で泊まらされるし・・・班の男子は言う事聞かないし・・・しまいには、こんな所で一人に・・・」

(この修学旅行に・・・フィリップ君がいたらな・・・)

 

叶うはずがない願望を胸に抱きながら、顔を上げた時、二乃の視界には真っ暗で、不気味な夜の森が広がっていた。その光景に恐怖を感じた時だった。

 

ザッ!

「いやっ!?」

 

草を踏む音に驚き、二乃はその場にしゃがみこんでしまった。思わず、悪態を吐いていると・・・

 

「・・・・・・最悪」

「大丈夫かい?」

 

その声に思わず二乃が振り向くと、そこにいたのは・・・

 

「えっ・・・?嘘・・・」

「き、君は・・・!」

「フ、フィリップ・・・君?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そこには、決まずい表情を浮かべたフィリップがいた。まさかの人物の登場に二乃は目を丸くしていた。

 

どうして、フィリップがここにいるのか・・・話は今朝の段階まで遡る。

 

 

 

(ふっ・・・翔太、爪が甘いよね。この僕が!君の賛同が得られなかったからと言って、諦めるかと思ったのかい!)

 

ドヤ顔で、フィリップは現在、リボルギャリーに乗り、移動していた。向かうは・・・翔太たちが向かった林間学校の場所だった。そうこの男・・・やはり『結びの伝説』を確かめるために、翔太に黙って、こっそりと後を追っていたのであった。

 

(林間学校のスケジュールは既に把握済み。さらに、今年はいつもより吹雪のシーズンが早いから、おそらく足止めを喰らうことも検索・予想済みだ・・・一日目は潰れ、二日目から林間学校が始まるとすれば、今日から僕が来るとは流石の翔太も予想はできまい!)

 

『地球の記憶』までも使って、完全にスケジュール・天気を把握したフィリップは、リボルギャリーに宿泊の道具を詰め込み、後を追っていた。更には、人目のつかない道を選んで、移動していたため、フィリップの予測通り、夕方頃には、林間学校の宿舎近くへと到着したのだった。最も、リボルギャリーが人目を引く・・・という事実を知識欲が暴走したフィリップは完全に忘れてしまっているのだが・・・

 

そして、リボルギャリーを適当なところに隠し、フィリップは『地球の本棚』で『結びの伝説』に関して、再検索をして、時間を潰している時だった。

 

「そういえば・・・今日は、肝試しが行われるんだったな」

 

スケジュールをふと思い出したフィリップは、好奇心で肝試しを覗きに行ってみようと思ったのだった。もしかしたら、翔太の怖がる姿を見られるかもしれない・・・なんていう下種な考えがあったのは、余談だ。

 

そして、こっそりと森に侵入したフィリップが当てもなく、森を彷徨っている時だった。誰かの声が聞こえ、その方向へと向かうと・・・

 

「フ、フィリップ・・・君?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

まさかの人物・・・自身の正体を知っている二乃と遭遇してしまったのだ。流石のフィリップもいきなりの出来事に動揺してしまい、呆然としてしまった。先に動いたのは、二乃だった。

 

「フィリップ君!?どうして、なんで!?あっ、もしかして、フィリップ君の学校も、修学旅行に来てるの!?嘘!?こんな奇跡ってあるの!?」

「お、落ち着きたまえ!そんな、いっぺんに話されても反応できない・・・!」

「あっ・・・ご、ごめんなさい」

 

フィリップの言葉に、我に返った二乃は落ち着きを取り戻した。そして、フィリップも冷静になり、この状況に焦っていた。

 

(マズイ・・・まさか、知り合いに出会うなんて・・・しかも、僕の正体を知っている彼女に出会うなんて)

 

予想外の出来事が重なり、流石のフィリップもこの状況をどうするべきか、考えを巡らせていた。そんなフィリップの様子がおかしいことに、二乃は話しかけていた。

 

「ねぇ、大丈夫?」

「っ・・・あ、ああ。問題ない・・・」

「そっか・・・ねぇ、フィリップ君はどうしてここにいるの?」

「あー・・・実は、僕の家族のコテージがこの近くにあってね。そこに泊りに来てたんだが、近くで叫び声が聞こえて、気になって、様子を見に来たんだ」

 

矛盾が出ないように嘘を並べるフィリップ。その言葉を二乃は・・・

 

「そうだったのね!今、私たちの学校で、肝試しをやってるから、その悲鳴が聞こえたのかもね!」

「・・・なるほど、そういうことか(これ以上、踏み込むのは危険・・・ここは、一刻も早く彼女と別れなければ・・・!)。ありがとう、僕の疑問は解決したよ。それじゃ、僕はかえ「待って!」・・・っ!?」

 

ここは早く立ち去るべきだと判断したフィリップはそう言って、その場を去ろうとしたのだが、二乃の言葉に思わず足が止まってしまった。

 

「フィリップ君、この近くにコテージがあるってことは、この辺りに詳しいのよね?」

「えっ・・・あ、ああ」

「それじゃ・・・妹を一緒に探してくれない?一緒にいたんだけど・・・逸れちゃって」

「・・・・・えっ?」

 

まさかの提案に、フィリップは自身が吐いた嘘により、窮地に陥ってしまったのだった。

 

 

 

(困ったことになったな・・・・・)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

二乃の前を歩きながら、フィリップは顔をしかめていた。こうなるくらいなら、素直に翔太の言う事を聞いていれば良かったと後悔していた・・・もう既に後の祭りなのだが・・・一方の二乃は、まさかの想い人の登場に、顔を真っ赤にしながら、その後ろを追いかけていた。無言のまま、二人は森を歩いていた。

 

先に動いたのは、フィリップだった。星空を見上げ、腕で四角形を作っていた。

 

「何してるの?」

「星から方角を割り出してるんだ。北斗七星の星間を5倍にした先が北極星・・・北の方角なんだ」

「・・・フィリップ君、物知りなのね」

「このくらいは当然さ。星に関しては、一通り検索を終えたからね」

「へぇ~・・・凄い!」

「・・・あっ・・・」

 

いつもの調子で話してしまったフィリップは、二乃の関心を強く引き付けてしまったことに気付いたが・・・またしても手遅れだった。思わず、やってしまったという表情で、フィリップは額に手を当てた。

 

「頭いい人って、憧れちゃうなー」

「・・・君の周りにはいないのかい?」

「・・・・・いるけど、嫌な奴しかいないわ。成績をこれ見よがしにひけらかしたり、考えがよく読めない奴とかね」

「・・・そうかい(・・・上杉風太郎や翔太のことか)」

 

二乃の酷評を、フィリップは冷静に受け流しながら、翔太と風太郎のことだと察したのだった。その時だった・・・

 

『あぁぁ』

「「!?」」

 

何かのうめき声が聞こえ、二人は周りの音に耳を傾けた。すると、

 

『あああぁぁぁ』

「な、何!?今の・・・!?」

「ふむ・・・幽霊?怨霊?この辺りにそんな話はなかったはずだが・・・これは興味深いね」

「なに面白がってるのよ!?(こんな状況で、そんなことを楽しむなんて・・・どんな神経してんのよ!?)」

 

怖がる二乃とは対照的に、うめき声の正体に興味津々のフィリップに、流石の二乃も引いていた。その時、二乃の視線にけもの道が目に入った。

 

「ねぇ?この道の方が楽そうよ?こっちから行かない?」

「・・・うん?」

「ほら、こっちよ!森もすぐ抜けられるわよ!」

「っ・・・待ちたまえ!そっちは!?」

 

考え事をしていて反応が遅れたフィリップの制止を無視し、二乃はその道を進み始めた。この場所の地理を正確に把握していたフィリップは慌てて二乃を追った。その先には・・・

 

「あ・・・」

 

そう・・・そこは、翔太が危険だと言っていた崖のあるエリアだった。二乃の足が地面を離れ、驚きの声が出るも・・・彼女の体は崖へ落下しようと・・・

 

「危ない!」

 

・・・しなかった。間一髪、フィリップが二乃の体を抱きしめ、遠心力を活かし、崖とは逆の方に二乃を投げた。だが、

 

「フィリップ君!?手を・・・!」

「っ・・・!?」

 

その反動で、今度はフィリップが崖から落ちようとしていた。それに気づいた二乃が手を伸ばすも、もう既に手が届かない位置だった。二乃が思わず、目を瞑った時だった。

 

(っ・・・来い!!!)

 

フィリップが頭の中で叫んだ。すると、崖を何かが高速で登り、今にも落下しようとしていたフィリップの背中を蹴り飛ばした。それにより、フィリップの体も崖とは逆の方向へと動いた。そのまま、

 

「きゃぁ!」

 

二乃を押し倒す形で、フィリップはなんとか生還した。突如起きたことだったので、フィリップは二乃の眼前に顔を近づける形で押し倒してしまっていた。その事実に気付き、フィリップは慌てて、体を離した。

 

「す、すまない!!」

「こ、こっちこそ・・・助けてくれて、ありがとう」

(・・・危なかったな。万が一に備えて、待機させておいて正解だった)

 

冷静になったフィリップは、もう姿を消してしまった彼に心の中で礼を言いながら、これからどうするべきかと考えを巡らせていた。

 

「あっ・・・フィリップ君、手・・・」

「うん・・・?」

「・・・怪我してる」

 

二乃に指摘され、フィリップが右腕を見ると、切り傷ができており、血が流れていた。先ほど、二乃を慌てて、追いかけた時に、木々に手を引っかけてしまったのだ。それを見た二乃は・・・

 

「手、出して・・・」

「このくらい、なんとも「駄目よ!」っ!」

「そういうのは、ちゃんと手当てしないといけないわ!うちにも、すぐ怪我をして、帰ってくる子がいるから、絆創膏を持ち歩いているの。ほら、早く出して」

「・・・分かった」

 

抵抗しても無駄だと悟ったフィリップは素直に手を差しだした。その手に、二乃はハートマークの柄が特徴的な絆創膏を貼った。

 

「うん!これでよし!」

「ありがとう・・・それにしても、君の妹は見つからないね?」

「そうね・・・もう宿舎に戻ったのかしら?」

 

フィリップの言葉に同意しながら、二乃は立ち上がろうとして、あることに気が付いた。

 

「うん・・・?どうかしたかい?」

「あっ、いや・・・」

 

二乃の様子が変なことに気付いたフィリップは、彼女の手が震えているのに気が付いた。

 

「ご、ごめん・・・ちょっとだけ、待ってくれる?」

 

なんとか手の震えを止めようとする二乃。だが、先程体験した出来事に、体が言う事を聞かないでいた。こんな姿を、想い人に見せたくない二乃だったが、手は震え続けていた。それを見ていたフィリップは・・・無言で手を差し出した。

 

「フ、フィリップ君・・・?」

「手を取りたまえ。怖がることは当たり前だ・・・それを恥じる必要はない。さぁ、取りたまえ」

「・・・・・・う、うん」

 

一巡した所で二乃はフィリップの手を握った。手の震えは止まったが・・・今度は、心臓がドキドキしていた。顔は真っ赤になっており、真っ直ぐフィリップの顔を見れずにいた。

 

「さぁ、行こうか?」

「・・・ええ!」

 

そう言って、二人は再び森の中へと戻っていった。

 

 

 

次回 仮面ライダーW 

 

『Fの修学旅行/五月の思惑』

 




フィリップによるフラグ粉砕回でした。

実は、今回のお話で別のフラグを立ててます。本章の最終話でそれは明らかになります。それまでお待ち頂ければと思います。

それではまた。

次回更新 21日0時予定
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