翔太のツッコミ役が板についてきたなと、このお話を書いてて思いました(笑)
ちなみに今回、次回・・・Wの出番はゼロです。
Wファンの皆さん、申し訳ありません。
伏線かつギャグ回ですが、お楽しみ頂ければと思います。
それではどうぞ!
第22話 「Zを取りし者/調査と見舞い」
「う、ううぅ・・・ここは・・・?」
「・・・よう。目、覚めたか?」
「っ・・・あ、貴方は?」
病室の一室。病室で寝ていた男子生徒・・・パペティア・ドーパントだった古田が目を覚ました時、傍にいたのは見たことのない男・・・もとい、探偵姿の翔太だった。衰弱状態の古田には普段と違う恰好の翔太が同じ学校の生徒だと分からなかったのだ。
「あんたに聞きたいことがある・・・あんたが使ったガイアメモリについてだ」
「・・・そ、それを・・・どうして・・・?」
「・・・俺はあんたが使ったガイアメモリの商人と会って、その時に販売リストを見た。あんたが使ったパペティアメモリ。あれは、あんたが購入したものじゃない。それと同時にあるメモリが同じ購入者で買われてた・・・『Q』という人物だ。あんたの知ってることを教えてほしい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
翔太の言葉をすぐには信じられない古田は、自身が知っていることを話すかどうか迷っていた。だが、
「頼む・・・あんたみたいな奴を増やしたくないんだ。純粋なあんたの想いを歪ませたガイアメモリを、それを買った奴を止めたいんだ・・・頼む!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
頭を下げながら、頼み込む翔太の態度に古田は・・・
「すみません・・・よく分からないんです」
「・・・えっ?」
古田は自身が知っていることを話し始めたのだった。
(・・・はぁ、ハズレか)
古田から話を聞き終えた翔太は病室を出て、落胆の表情を帽子で隠しながら、ため息を吐いた。翔太がここにいる理由・・・それは林間学校で起きたガイアメモリの事件の後始末のためだった。
メモリブレイクした古田は衰弱しており、翔太が教師の元に連れていった際、入院が必要だと判断され、そのまま病院へと送られたのだった。ちなみに、風邪を引いていた風太郎も病院送りになったのは余談だ。
(古田曰く・・・林間学校の数日前にガイアメモリが靴箱に置かれていた、ってことだが・・・そうなると、『Q』の正体は学校関係者・・・教師、生徒、業者・・・もしそうなら)
「・・・最悪のケースだな」
古田は自身にガイアメモリを送ってきた人物のことを全く知らなかった。ある日、手紙と一緒にガイアメモリが置かれていたらしい。そして、その力を知った古田は林間学校で凶行に走った、というわけだ。
(『Q』・・・こいつが持ってるガイアメモリはかなりヤバそうだし、早く正体を突き止めたいところだが・・・フィリップがあの調子じゃあな・・・)
そう・・・翔太がわざわざ古田に事情聴取を来たのは、もう一つ訳があった。フィリップの様子がおかしくなってしまったのだ。
『・・・心臓の病?胸の痛み?・・・これは一体・・・?分からない・・・検索範囲をもっと広げなければ・・・』
(林間学校から帰って来てからずっとあんな調子で・・・いつもの検索バカが発動したならと思ったんだが・・・そうとも違うみたいだし・・・・・何があったんだ、フィリップ?)
いつもと違うフィリップの様子に一抹の不安を感じる翔太。普段なら、喜んで検索をしているフィリップが、分からないことに困惑している様子は見ていられないものだった。
(・・・どうしたもんかね。こうも八方ふさがりだとな・・・)
情報屋・・・風都イレギュラーズを頼りたくても、分かっていないことが多すぎる現状では情報の収集精度には限界がある。どうするべきか、翔太が考えていると・・・
「・・・佐桐君?」
「えっ・・・五月?」
自分の名前を呼ばれ、そちらを向くと・・・制服姿の五月が立っていた。翔太もここに五月がいるとは思わず驚いていた。
「ど、どうしてここにいるんですか!?」
「あ~、ガイアメモリ関係でちょっと用事があってな。そういう五月はどうして?」
「・・・知らないんですか?ここ、上杉君が入院している病院ですよ?」
「・・・・・マジか。それじゃ・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
五月から告げられた事実にそんな偶然があるのかと思った翔太は思わず苦笑いしていた。そして、五月がここに来た真意を推測した翔太の言葉に、五月は目を反らした。
「・・・良い機会だ。上杉の見舞いにも行ってやるか」
そう言って、翔太は五月とは別の方向に歩き始めた。
「佐桐君、上杉君の病室はそっちじゃありませんよ!?」
「・・・この格好で上杉に会う訳にいかないだろう・・・」
「・・・あっ」
「トイレで着替えてくるから、ちょっと待ってくれ」
五月の制止に着替える必要性を説明し、翔太はひとまずトイレに向かうのだった。
「寝てるみたいだな」
「・・・そうですね」
五月の案内のもと、風太郎の病室へと来た(制服姿の)翔太。ノックをしたのだが、反応がなく、扉を開けてみると眠っている風太郎が見えた。ベッドの傍に腰かけ、風太郎が目を覚ますのを待つことにした。そうこうしていると、
「あっ・・・!」
風太郎が目を覚まし、飛び起きた。そして、五月を見て、驚きの表情を浮かべた。
「・・・おい、上杉・・・大丈夫か?」
「さ、佐桐・・・?それに・・・なんだ、五月か」
「・・・人を見て、残念そうな表情を浮かべないでください」
翔太の問いかけに、はっきりと意識が覚醒した風太郎は翔太と五月を認識し、眉を顰めた。そのリアクションに五月も思わず眉を顰めた。
「そういえば、四葉たちが探してたぞ?」
「なんだ・・・四葉たちも来てたのか?」
「アー、ソウナンデスネー」
(・・・なんじゃ、そのリアクションは)
棒読みの五月に心のツッコミを入れた翔太だった。そして、話は・・・
「ここに来たのは、あなたにお尋ねしたいことがあって来ました」
「・・・佐桐もか?」
「いや、俺は見舞いだ。五月の話とは関係ない」
「・・・それで、五月が聞きたいことはなんなんだ?」
「・・・あなたが勉強するその理由を教えて下さい」
真剣な表情で問いかける五月に風太郎は・・・
「断る」
「・・・ええぇ・・・」
まさかの即等に翔太は思わずそんな声が漏れたのだった。
「ど、どうしてですか!?」
「いや・・・お前に教える理由がないし・・・」
「むむむっ・・・!」
風太郎の容赦のない言葉に五月は頬を膨らませながら、風太郎を睨んだ。そして、睨み続けた。
「何やってんだ、五月?」
「上杉君が理由を教えてくれるまで、睨み続けてるんです!」
「お、おう・・・」
「そうか・・・なら、俺はお前が諦めるまで睨み続けようか!」
「い、いいでしょう!どちらが先に音を上げるか、勝負です!」
「・・・小学生か、お前ら!?」
いつも通りの意地の張り合いが始まった二人に翔太のツッコミスリッパが炸裂した!
「五月も・・・上杉にだって話しにくいことがあるだろう。まぁ、俺も気になるところではあるけどな・・・」
「さ、佐桐まで・・・はぁ、分かったよ。けど、全然面白くない話だからな?」
そう言って、観念したように風太郎は過去を話し始めた。
小学校の時、京都での修学旅行・・・そこで出会った少女のことを・・・そして、
将棋星人が地球に攻め込んできて、地球が爆破されたことで修学旅行が終わったのだと。
「なんじゃそりゃ!!」「なんですかそれ!!」
風太郎の言葉に翔太と五月の叫びが重なった。
「そこからが大事だろ!?その娘と会って、結局何があったんだよ!?」
「そうです!凄い雑に終わりましたよね!地球はどうなったんですか!?」
「そこじゃねーよ!!」
「・・・別に全部話すとは言ってねー・・・というか、話したくない」
「お、おいおい・・・上杉」
「・・・日頃の礼だ。佐桐にはいつも世話になってるし・・・お前には、この間の礼として話したんだ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
布団を被り、そう言う風太郎の言葉に翔太と五月は思わず驚き、一瞬言葉を失った。
「いまいち伝わりませんでしたが、昔のあなたと今のあなたが大きく違うことは分かります・・・その子との出会いがあなたを変えたんですね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私も変われるのでしょうか・・・もし・・・できるなら・・・変われる手助けをしてほしい」
(・・・・・どうやら、もう大丈夫だそうだな)
五月の様子に、この前の林間学校の一件の決着が着いたのだと、翔太は安堵するのだった。
「あなたは私たちに必要です」
『君が必要だもん』
「・・・・・!?」
五月の言葉に、京都の少女の言葉がフラッシュバックした風太郎。翔太が空気を読んで、その場を去ろうとすると、
ギュ!
「い、五月・・・?」
「・・・もちろん、貴方もですよ、佐桐君。あなたには・・・その、責任を取ってもらわないといけませんから・・・」
「・・・・・っ!?」
袖を掴まれ、顔を真っ赤にした五月の言葉に、翔太は忘れようとしていた『結びの伝説』のことを否が応でも思い出してしまった。
結局、あの時は事故ということで、話を着けた二人であったが、翔太の方はそのことを結構気にしていた。なので、
「せ、責任って・・・!?あれは事故だって・・・」
「・・・?あの、勉強のことなんですけど・・・」
「・・・え・・・?」
五月の言っている意味を理解してから、自身が自爆したことにポカンとする翔太。五月が言っていたのは、家庭教師としての責任であって、翔太が考えているようなことではなかったのだ。普段の翔太なら、話の流れでそれを察することができただろうが、動揺してしまった今では無理な話だった。
翔太がなんと言い訳をしようか、困っている時に助け舟を出したのは風太郎だった。
「俺たちに教わってどうにかなるのか?平均29.6点」
「ど、どうにかします!」
風太郎の容赦のない言葉に、五月は顔を赤くしながら、ポケットを探り始めた。
「やれることはなんでもします!見てください!」
そう言って、五月は小さな何かを取り出し、
「昔、持ってたお守りを引っ張ってきました!」
「「・・・神頼みかよ」」
まさかの五月の行動に、翔太と風太郎のツッコミが綺麗にハモッた。だが、風太郎はその光景にあることを思い出した。
(そういえば・・・あの子も似たような物を買ってたな。アホみたいにたくさん・・・五つも・・・・・!?)「それ・・・どこで買ったんだ?」
「これ、ですか?買ったのか、貰ったのか・・・よく覚えてませんが、確か・・・・・京都で五年前・・・」
「「・・・えっ・・・」」
五月の言葉に、風太郎と翔太は思わず言葉を失った。
(もしかして、風太郎とこいつらって・・・・・)
翔太が風太郎と五つ子たちの数奇な出会いの可能性に驚いていると、
「あ!五月!」
「「「!」」」
病室の入り口から四葉の声が聞こえ、驚く3人。入り口を見ると他の姉妹たちもそこにいた。
「なんだー、ここにいたんだ。あっ、佐桐さんも来てたんですか!」
「おう、四葉。他の皆も一緒みたいだな・・・というか、さっきかも聞いたが、どうして五月を探してたんだ?」
風太郎の証言から五月を探していた理由が気になった翔太は尋ねた。すると、
「えっ・・・今日、インフルエンザの予防接種に来たんです!」
「・・・えっ?」
「毎年、この時期に受けてるんだけど・・・五月ちゃんが2度も逃げ出してね」
「5人揃ったから、今度こそ行くよ?」
「ほら、五月!私は覚悟を決めたわ!あんたも道連れよ!」
「い、嫌です!?注射は・・・!?さ、佐桐君!?」
二乃に首根っこを掴まれ、連行される五月。助けを翔太に対して求めるが・・・
「・・・いや、それは受けないと駄目だろ」
「佐桐君!?い~や~で~す!!!」
「頑張れよ~・・・なるほどな、注射が嫌で逃げてたのか。かわいいところあるじゃねーか。なぁ、上杉・・・上杉?」
(5年前・・・京都・・・まさか・・・・・?)
「・・・おい、上杉?大丈夫か?」
(・・・偶然、だよな?)
翔太の声が全く届いていない風太郎はまさかの可能性を疑っていた。
次回 仮面ライダーW
『Zを取りし者/名探偵風太郎?』
これで決まりだ!
章タイトルはまだ伏せてます。まぁ、大体の方は予想されてると思いますが(笑)
次回も日常回です。
次回更新 20日0時予定