全力でオリ主がフラグを叩き壊していきます(笑)
それではどうぞ!
ちなみにサブタイトルはダブル26話のオマージュになります。
「・・・送信と・・・頼んだぜ、みんな」
スタッグフォンで画像付きのメールを送り終えた翔太は再び走り始めた。
(五月、二乃・・・どこにいるんだ!?)
息を切らし走り続ける翔太・・・彼がこうして走っているわけは、昨日にまで遡る。
パチン・・・!
リビングにもう一度乾いた音が響き渡った。ビンタをされた二乃が五月にビンタをし返したのだ。その光景を翔太たちは黙って見ていることしかできなかった。
「五月・・・急に何を・・・!」
「この問題集は上杉君が私たちのために作ってくれたものです。決して、粗末に扱っていいものではありません。
・・・彼に謝罪を」
「あんた・・・いつの間にこいつの味方になったのよ・・・」
ビンタにも全く動じていない五月の目に退きながら二乃は言葉を続けた。
「まんまとこいつの口車に乗せられたってわけね。そんな紙切れに熱くなっちゃって・・・」
「ただの紙切れじゃない・・・よく見て」
「は・・・?」
我に返った三玖の言葉に疑問の声が二乃から漏れた。険悪な空気を察し、なんとか場を収めようと風太郎も口を開いた。
「待て。二乃の言う通りだ。俺が甘かった」
「あなたは黙ってください」
「・・・い、五月?」
「・・・・・悪い、上杉。今回は俺も五月に同意見だ」
「さ、佐桐!?」
五月だけでなく、まさかの制止役である翔太の言動に風太郎は驚き、言葉が止まってしまった。
「よく見ろ、二乃。この問題集を」
「な、何よ・・・」
「彼はプリンターもコピー機も持っていません。本当に呆れました」
「この問題集・・・・・全部手書きなんだよ」
「・・・!」
五月と翔太の言葉にもう一度問題集を見る・・・そこには、寝不足で倒れてしまうほどに取り組んだ、風太郎の手書きの問題集が落ちていた。それを見て、風太郎の努力を知り、その意気込みを知っていた五月が・・・翔太までもが怒りを露わにしていたのだ。
「お前が俺や上杉をいくら嫌おうが俺は構わないが・・・こいつの努力を無駄にすることだけは見過ごすわけにはいかない」
「佐桐君の言う通りです・・・私たちは真剣に取り組むべきです!上杉君に負けないように!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・私、だって・・・」
翔太と五月の言葉を受け、二乃は他の姉妹たちに視線を向ける。
「二乃・・・」
「・・・み、みんなで頑張ろうよ?」
「いい加減受け入れて」
だが、二乃に対する視線は困惑や心配、責めるような視線だけだった。姉妹たちですら味方になってくれないのだと、やけになった二乃は・・・
「分かったわ・・・あんたたちは私よりこいつを選ぶってわけね・・・いいわ。
・・・こんな家、出てってやる!」
「「「「「「!」」」」」」
まさかの家出発言にその場にいた全員が硬直した。その間に、颯爽と二乃は玄関へと向かって行った。慌てて、翔太と風太郎、五月が止めに掛かった。
「二乃、冷静になれ!」
「出ていくって、どうする気だ!?」
「そうです!そんなの誰も得しません!」
「・・・前から考えていたことよ。この家は私を腐らせる」
二乃の言葉に一花たちがショックを受ける中、五月だけはまだ引き留めようとしていたが、
「に、二乃っ!こんなのお母さんが悲しみます。やめましょう!」
「・・・未練がましく、母親の代わりを演じるのはやめなさいよ」
「・・・!?」
(・・・・母親の、代わり・・・?)
二乃の放った一言に五月の動きが止まった。その言葉に翔太も思わず動きが止まってしまった。その間にショックから脱した一花と四葉も止めに入った。
「二乃、早まらないで」
「そうそう、話し合おうよ」
「話し合いですって?先に手を出してきたのはあっちよ!」
しかし、ヒートアップした二乃に二人の制止の言葉は届かず、
「あんなドメスティックバイオレンス肉まんおばけとは一緒にいられないわ!」
「ド、ドメ・・・肉・・・・・」
(・・・新しい名言が生まれちまったな・・・)
シリアスなはずなのだが、二乃の放った一言に衝撃を受け過ぎた翔太は現実から逃避しかけていた。どこぞの正義の味方のリーダーっぽく心の中で呟いたのは偶然だろう。
「そんなにお邪魔ならようなら私が出ていきます!」
「あっそ!勝手にすれば!?」
「もー、なんでそうなるのよー!!」
「ど、どうすれば・・・!」
「・・・いや、どうしようもなくないか?」
他の姉妹を巻き込んだ喧嘩は混沌と化し、風太郎と翔太には手が終えない状態となってしまった。ともかく、二人がいてはどうしようもないとのことで、その日は帰宅したのだが・・・
「「三玖!」」
「・・・!フータロー、ショータ!日曜なのに、呼び出してごめん」
「いや、大丈夫だ」
「他の4人はどうした?あれから何があったんだ?」
三玖に呼び出しを受け、翔太と風太郎は五つ子のマンションへと急ぎ来ていた・・・なぜなら、
「二人が・・・二乃と五月が家を出てっちゃった」
「「・・・!?」」
その言葉に翔太と風太郎は驚くことしかできなかった。とりあえず、事情を聞くためにも、3人は五つ子の部屋へと場所を移した。
「あの喧嘩の後、一度は収まったんだけど・・・フータローたちが帰った後、また喧嘩しちゃって・・・」
「それで、二人とも出ていっちまったのか!?」
翔太の言葉に三玖が頷く。二人が出て行ったという事実に風太郎は天を見上げ、手で顔を覆った。
「一花と四葉が説得してくれたんだけど、お互いに意地を張って、先に帰ったら負けみたいになってる」
「・・・子供かよ」
「ああ・・・・馬鹿野郎が・・・!で、一花と四葉は?」
「外せない用事があるって・・・一花は仕事だと思う」
頭痛がしてきたのか、翔太と風太郎は思わず頭を抱えていた。
「こんな時に・・・試験勉強はどうするつもりだ」
「・・・最悪の展開だな」
「・・・うん。こんなに部屋が広く感じたのは久しぶり」
三玖の言葉に翔太は部屋を見渡していた。昨日まで一緒に勉強していた空間は、三玖の言う通り静まりかえっていた。
「・・・ともかく。二乃と五月、二人を探すぞ」
「「・・・・・(コクッ)」」
翔太の言葉に風太郎と三玖も頷き、手分けして捜索することになったのだ。
(風都イレギュラーズのみんなならすぐに情報が掴めるはず。ともかく、情報が掴め次第すぐにでも動けるようにしないとな・・・)
スタッグフォンを操作し、ガレージにあるハードボイルダーを自動操縦で呼び出していた。今は素早く移動するための足が必要だった・・・時間は限られている。翔太がそう考えていると、
『♬♪♩』
「来たか!?もしもし・・・!」
早速、風都イレギュラーズから連絡を受信したスタッグフォンを取り、翔太は移動を開始した。
「ここか・・・いた、ウォッチャマン!」
「あら~、翔ちゃん!遅い、遅いよ!」
公園の入り口近くでハードボイルダーを降りた翔太は、木の影に隠れた人物・・・風都イレギュラーズの一員、ウォッチャマンに声を掛けた。
ウォッチャマン・・・町中の美女やB級グルメをレビュー、画像と共にブログに掲載する趣味を持つブロガー。SNSから街の噂話まで、ネットに関わる情報を得意分野とする・・・一歩間違うと、美女の写真を撮りまくる怪しいオッサンとして、職質をかけられそうだというのは余談だ。最近は、一躍有名になりだした謎の美食ブロガーを追いかけているらしい。
「悪い、悪い。それで、ターゲットは?」
「あそこよ・・・それにしても、びっくりしたよ。あんなにかわいい娘のそっくりさんがあと4人もいるの!?是非一緒にお写真を・・・!」
「き、機会があったらな・・・サンキュー、助かったよ。引き続きもう一人の方を頼む」
「・・・・・約束だよ?」
ウォッチャマンのお願い事をどうするかと考えながら、翔太は・・・ベンチに座っている彼女に歩み寄った。
「・・・よう。こんなところで野宿か?・・・五月」
「・・・!さ、佐桐君・・・!?」
目当ての人物・・・ウォッチャマンが見つけたのは五月だった。翔太に気が付いた五月は、翔太の登場に驚いていた。
「ど、どうしてここが・・・?」
「探偵を舐めるなよ。俺には頼りになる仲間たちがいるんだ。ほら、帰るぞ?上杉も三玖たちも心配してるぞ?」
そう言って、翔太は五月に手を差し出したが、
「・・・帰りません」
「・・・・・いつまで変な意地張ってるつもりだ」
「・・・・・二乃が上杉君に謝罪するまでです」
「・・・(それ、半永久的にありえなくないか?)」
あのプライドの高い二乃が風太郎に謝る・・・ほぼありえないシチュエーションに苦笑いする翔太。どうやら、五月の意志は大変固いようだ。
「・・・家に帰らずどうする気だ」
「・・・・・ホテルに泊まります。幸い、お財布にカードが・・・・・あれ?」
「・・・・・おい。なんだ、その何かをやらかしたような『あれ』は?」
「・・・お財布がありません」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今日何度目になるか分からず、翔太は天を仰ぐのだった。勢いで家を飛び出したため、忘れてしまったのだ。
「そんな状態でどうするつもりだ?」
「・・・・・そうです!上杉君の家に泊めて「お前は、貧乏な上杉にこれ以上負担をかける気か!?」・・・うぅ!?」
ナイスアイデアだという風に思いついた五月の言葉を容赦なく潰した翔太。またしても、どうすべきか困惑する五月を見かねた翔太は・・・
「はぁ・・・しょうがーね。今晩は俺の家に泊めてやる」
「・・・えっ?」
「帰りたくないんだろう?・・・だったら、俺の家に泊めてやる。その代わり、三玖でも四葉でもいい。着替えと財布を持って来てもらえ。それで、明日からはホテルでもどこにでも泊まれるだろう」
「・・・いいん、ですか?」
「・・・またどこかに行かれて、居場所を探すより遥かにマシだ。こっちは二乃も探さないといけないんだからな」
「・・・・・・・すみません。お世話になります」
五月の言葉に、やれやれといった表情で翔太は手を振りながら答え、スタッグフォンを手に取った。そのまま、五月を発見したことと事情を説明するため、風太郎に電話を掛けるのだった。
風太郎と連絡を取った翔太は、二乃を見つけたこと、そして、二乃も帰る気がないことを聞き、情報を共有していた。
ともかく、二人が見つかったことだけでも一歩前進だということで、明日学校で作戦を練ろうということになったのだ。
風都イレギュラーズのメンバーにも連絡を入れ、翔太は五月をハードボイルダーの後方に乗せ、自宅へと帰って来ていた。
「ここが・・・佐桐君の家ですか?」
「ああ・・・ほら、行くぞ」
ハードボイルダーから降りた五月を促し、翔太は玄関から家の中に入った。五月も翔太に続き、家に入った。もちろん、ハードボイルダーは自動操縦でガレージに繋がる秘密の入口へと移動させていた。
「・・・2階に母さんのベッドがあるから、今日はそれを使ってくれ。俺は今から夕飯を作るが、何かリクエストはあるか?」
「・・・いえ、お世話になる身ですから、なんでも大丈夫です」
「そうか・・・それまで家の中でくつろいでいてくれ」
「・・・すみません、何から何まで」
「・・・気にすんな」
そう言って、翔太は台所へと移動した。一人になった五月はリビングをキョロキョロと見渡していた。リビングは綺麗にされており、掃除が行き届いているは明確だった。壁には、ポスターやボードが掛けられており、ボードに貼られている写真に五月の眼が止まった。
(これは・・・家族写真?小さい佐桐君に、フィリップさん・・・それじゃ、残りのお二人は佐桐君のご両親・・・・・ということは・・・)
写真に写っている男性が、以前話に聞いた翔太の父・・・佐桐壮吉なのだと判断した。その風貌は厳しく、だが、家族との写真のせいか、微笑んでいるようにも見えた。その目は探偵の顔をした時の翔太にそっくりだった。
『俺の憧れの人の言葉だ』
『・・・未練がましく、母親の代わりを演じるのはやめなさいよ』
(・・・未練がましい、のでしょうか・・・)
その時、翔太と二乃の言葉が五月の中で蘇った。自身の行為が本当にいいことなのか、彼女の中で迷いが生まれていた。そんなことを考えていると、
ビューン!
「きゃあ!・・・こ、これって・・・」
五月の目の前を何かが通り過ぎた。通り過ぎた何かを見た五月が見たのは・・・翔太が使っているスタッグフォンだった。見覚えがあったそれを五月が呆然と見ていると、スタッグフォンはどこかへと飛んで行ってしまった。気になった五月はそれを追いかけ始めた。
「・・・五月、どこだ?ゆっくりしろとは言ったが、いなくなれとは言ってないぞ」
夕飯を作り終え、五月に声を掛けようした翔太。ところが、五月の姿がどこにも見えず、ため息を吐きながら、家を探し回っていた。どこにもいない五月に悪態を吐きながら、翔太はスタッグフォンで五月に電話を掛けた。
「・・・あっ、繋がった。五月、今どこに・・・」
『た、助けてください、佐桐君!?』
「ど、どうした、五月!」
繋がった矢先に、涙声の五月の助けに翔太は何事かと構えた・・・次の瞬間、その原因が分かった。
『・・・素晴らしいだろう!そもそも、メモリガジェットというのはね、疑似メモリと呼ばれる・・・』
「・・・ああ、そういうことか・・・はぁ・・・五月。今からそっちに向かうから、ちょっと待ってろ・・・」
『は、早く来てください・・・!?』
電話越しに聞こえてくる、相棒の活き活きとした解説の声に、全て把握した翔太はため息を吐きながら、五月と・・・フィリップがいるであろうガレージへと向かうのであった。
「・・・翔太。中野五月が来ているのならもっと早く言ってくれたまえ」
「まさか、ガレージがバレるなんて思ってもなかったんだよ・・・なんでこんな時にメモリガジェットの点検なんてしてるんだよ」
「・・・ビ、ビックリしました。地下にあんな空間があったなんて」
夕飯を食べながら、苦言を呈するフィリップに反論する翔太。一方で、五月は自身が見た光景がまだ信じられず、呆然としていた。
そう・・・何があったのかというと・・・五月にダブルのアジトである『秘密のガレージ』がバレてしまったのだ。偶然、フィリップがテスト飛行していたフィリップ用のスタッグフォンを五月が追いかけて行ってしまった結果、開いていた物置の出入り口からガレージへと入ってしまったのだ。そして、
「そんなことよりも、遂に完成したんだよ。新型のメモリガジェット・・・『フロッグポッド』と『デンデンセンサー』がね!」
「・・・おお!遂にできたのか!」
「・・・なんですか、それ?」
フィリップのテンションがやけに高い理由を把握した翔太。しかし、事情が分からない五月はその会話に首を傾げていた。
「ああ。メモリガジェットっていうのは、俺たちが使ってるダブルのサポートアイテムだ。お前が見たクワガタも、俺がよく使ってる携帯電話のライブモード・・・まぁ、飛行形態と言えば分かりやすいか・・・あれもメモリガジェットの一つだ」
「・・・ああ、なるほど。どうりで変わった携帯を使っていると思っていたら、そういうことだったですね」
「(か、変わってるのか・・・)オホン・・・それで、その完成したっていうメモリガジェットはどこにあるんだ?」
「ああ、デンデンセンサーはこの双眼鏡さ。透明になっている物体や巧妙に隠れているもの、エネルギーの状態分析、赤外線切り替え機能などなど・・・あらゆる状態のものを見通すことが出来る高性能視覚センサーさ」
「へぇ~・・・それでもう一つのガジェットはどこにあるんだ?」
オレンジ色の双眼鏡らしきガジェットを手に取りながら、解説するフィリップの言葉に頷きながら、もう一つのガジェットを探す翔太。その時、フィリップが指を鳴らすと、
「やめてよ、うっとうしい」
「「に、二乃!?」」
背後から聞き覚えのある声がし、驚きながら振り返る翔太と五月。しかし、そこに二乃の姿はなかった。
『やめてよ、うっとうしい』
「・・・こ、これは・・・」
「・・・カエル?」
再び声がし、発生源を辿り、視線を降ろすと、カエルによく似たメモリガジェットがライブモードで動いていた。メモリガジェット・・・フロッグポットは二乃の声を再生しながら、フィリップの手のひらへと移動した。
「フロッグポッド・・・音声を記録し、あらゆる声で再生することができる記録兼小型スピーカー型のガジェットさ」
『やめてよ、うっとうしい』
「お、おい・・・フィリップ!?」
再生を続けるフロッグポッドをそのままに解説を続けるフィリップ。だが、、あることを危惧した翔太はフィリップを止めようと声を掛けたが、お構いなしにフィリップは解説を続けた。
「今回は僕の声で録音したものを、二乃ちゃんの声で再生したんだ。水陸両用だから、潜入しての盗聴器としても使えるんだ。あらかじめ言葉を記録しておけば、どんな音声にも変換できるから、応用性はかなり高いだろうね」
『やめてよ、うっとうしい。やめてよ、うっとうしい』
「・・・っ!?」
そして、翔太の懸念が当たった。二乃の声を再生していたフロッグポッドの音声を聞き続けた五月は席を立ち、出て行ってしまった。
「・・・どうかしたのかい、彼女?」
「あー、もう!なんで、こうタイミング悪いのか!?五月が家出した理由は二乃との喧嘩が理由なんだよ!」
「・・・!?」
「二乃も二乃で、家を出ていくって二人して家を出ちまってるんだよ!?ともかく、俺は五月を追いかけてくるから、お前はフロッグポッドを止めておけよ!」
そう言って、翔太は五月を追いかけた。玄関の音がしたことから、外に飛び出したことは明確だったため、翔太も急ぎ追いかけるのであった。
「・・・二乃ちゃんが・・・・・」
その事実に何か思うことがあったのか、フィリップはスタッグフォンで誰かへと連絡を掛け始めた。
「待てって、五月!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
五月を追いかけ、家を飛び出した翔太。そう遠くに行ってなかったこともあり、すぐに五月を見つけた翔太。一応、スパイダーショックの発信機も付けていたのだが、使わずに済んだのだった。
「・・・悪かった。フィリップも悪気があったわけじゃないんだ・・・ちょっと人の気持ちを蔑ろにしちまうとこともあるが・・・」
「・・・・・」
「五月、聞いて・・・・・っ!?」
無言で歩き続ける五月に立ち塞がった翔太はそこで気付いた。五月が涙を流していることに・・・
「い、五月・・・?」
「っ・・・すみません。ちょっと思い出してしまいまして・・・」
「・・・いや、悪いのはこっちだ・・・あー、ちょっと散歩してから戻るか?」
「・・・・・はい」
翔太の気遣いを察した五月は、黙って翔太の後を追い始めた。翔太が歩いた先は・・・子供の頃、フィリップと花火を見た丘だった。
「ここは・・・?」
「俺のお気に入りのスポットさ。ここからなら、街が一望できてさ・・・何かあったら、いつもここに足を運んじまうんだ。子供の頃は父さんによく連れてきれてもらってたんだ」
「・・・お父様に?」
手すりに手を掛け、街を見る翔太に釣られ、五月も街を見渡していた。
「・・・思い出したのは、二乃の言葉か?」
「・・・・・よく分かりましたね」
「あの時、見たことないほど動揺してたからな・・・もしかしたらと思ってな」
翔太に理由をズバリと当てられた五月はため息を吐きながら、話し始めた。
「私たち・・・実は数年前まで上杉君みたいに貧乏な生活を送っていました・・・それこそ、欲しい物なんか買えない、狭いアパートで母と私たち6人で暮らす極貧な生活でした」
「・・・意外だな。お嬢様の家系かと思ってたが・・・」
「それは今の父と再婚してからです。それに、5人の子どもを母親一人で育ててくれていましたから・・・あの頃の私たちはまさに五つ子・・・見た目も性格もほとんど同じだったんですよ?」
「それは見分けるのさらに大変そうだな」
「・・・ええ。知り合いからもよく間違えられました。けれども、女手一つで育ててくれた母は体調を崩し、入院してしまって・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから、私は母の代わりとなって、みんなを導くと決めたんです・・・決めたはずなのに・・・」
「・・・・・だから、二乃はあの時あんなことを言ったのか」
二乃の放った言葉の真意を理解した翔太は、五月の心情も把握した。五月が佐桐家を飛び出して行った理由・・・それは、自身の行動が実は姉妹を苦しめているのではないか・・・そう思ったのだ。
「・・・佐桐君は、迷ったことないですか?」
「それは・・・ダブルとしての役割を受け継いだことか?それとも、父さんのようになろうとしていることをか?」
「・・・・・・どちらもです」
「・・・・・・・・・そう、だな」
五月の言葉に、視線を空へと向け考え込む翔太。そこから紡ぎ出した言葉は、
「・・・迷ってるさ・・・いつだってな」
「・・・・・!」
翔太の弱気な言葉だった。意外な答えに五月の目が開かれる。
「俺だって自信があるわけじゃない。いつもいつも迷ってばかりだ・・・俺はフィリップや上杉みたいに頭がいいわけじゃない。父さんみたいにハードボイルドにもなりきれない・・・それこそ半人前だ。けどな・・・」
そう言って、翔太は視線を五月へと向ける。
「俺もお前もそれでいいじゃないか?」
「・・・えっ?」
「俺もお前も・・・父さんやお前の母親本人じゃない。真似できたって、その人に成り代わることなんてできない・・・けど、その人を目標にすることは絶対に間違いじゃない・・・俺はそう思うぞ?」
本人にそれを否定されたら、なんとも言えないけどな・・・そう言って、翔太は再び視線を街へと向けた。その横顔に五月は・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
思わず見とれてしまっていた。優しく、自信を持った・・・探偵の顔だった。
「それにしても、母親代わりか・・・なら、俺と上杉はまるで父親代わりだな」
「・・・えっ!?」
「・・・いや、こんな事態になってるのに、お前たちの父親は何してるんだと思ってな。俺や上杉がやってることは父親の役目だろうと思ってな」
「な、なるほど・・・!」
翔太の発した言葉の意味を理解した五月は、自身が勘違いしていたことに気付き、顔を真っ赤にさせた。その時、
「っ・・・誰だ!」
「ど、どうしました?」
「・・・今、そこに人の気配がして・・・気のせいか?」
「こ、怖いこと言わないでください!」
翔太が茂みに視線を向けるが、物音はせず、気のせいだったかと首を傾げた。怯えた五月は話を強引に変えた。
「あっ、見てください!雲が晴れましたよ」
「おっ、本当だな」
五月の言葉に、翔太も空を見上げた。そこには、月が出ていた。
「見てください・・・今日は月が綺麗に見えますね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
五月の言葉に翔太は思わず言葉を失くしてしまった・・・真っ赤になった顔を手で覆いながら、五月に問いかけた。
「お前・・・その意味、分かって言ってんのか!?」
「えっ!?ど、どういうことですか!?」
「・・・うん。お前はもっと勉強すべきだな」
「な、なんでですか!?」
五月の叫びが丘に響き渡ったのだった。
次回 仮面ライダーW
『Nのさよなら/絶望の中で・・・』
これで決まりだ!
さりげなくウォッチマン&追加メモリガジェットの登場回でした。
デンデンセンサーはこの後の話でも登場します。
ちなみに、五月にガレージが簡単にばれたのは、ダブルの二人があまり家に人を招いたことがなかったため、ガレージの秘密を隠すことに慣れていなかったためだったりします。