仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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キンタローフラグを潰したのはこのお話のためだったりします。

フィリップ&二乃メイン回。
そして、もうひとつのビギンズナイトが明かされるお話です。

それではどうぞ!


第28話 「Nのさよなら/探偵たちの秘策」

「・・・そんなことがあったんですね」

「ああ・・・なぁ、零奈って聞いたことないか?」

「・・・ありませんね」

 

朝の一光景・・・五月がいることが当たり前になっている光景を受け入れた翔太は、昨日の上杉の話をしていた。一方、我関せずと言った形でフィリップは朝食を食べていた。五月に零奈という名の少女を知らないかと尋ねるも、五月も知らないと答えるのだった。

 

「それで・・・どうするんですか?」

「・・・まずは、二乃から説得しようと思う」

「・・・どうやってですか?」

「・・・・・その前に・・・フィリップ」

「・・・っ」

 

説得の方法を尋ねる五月に答える前に、翔太はフィリップに声を掛けた。その言葉に、フィリップの肩が跳ねた。

 

「・・・ここ最近、外出しているようだが・・・」

「ふっ。どうしたんだい、翔太。僕だって、検索目的以外に外出することもあるさ。買い物や気分転換にね」

「そうだな・・・その行き先が二乃が泊ってるホテルじゃなければな」

「・・・・・・・・・・!」

「エリザベスから、お前から二乃のホテルの場所を聞かれたって、理由を質問攻めされた時には大変だったんだからな?」

「・・・バレたか」

 

ポーカーフェイスを気取っていたフィリップだったが、証拠を突き付けられ、観念したように手を挙げた。

 

「な、なんで二乃の場所を?も、もしかして・・・!?」

「・・・安心したまえ。彼女とは会っていない・・・彼女が家出をしたと聞いて、ちょっと気になってね。ホテルには、様子を見に行っただけさ」

「・・・・・フィリップ?」

 

五月の質問に答えるフィリップ。その素顔はいつも通りのように見えたが、相棒の翔太にはいつもと違うことが分かった。

 

「・・・フィリップ。本当に大丈夫か?」

「うん・・・?大丈夫さ。どうしたんだい、翔太」

「い、いや・・・それで、さっきの話だが・・・お前にやってもらいたいことがある」

 

自分の気のせいだったかと思い、話を本題に戻す翔太。彼が考えた作戦とは・・・

 

その放課後・・・

 

「ハァ・・・ハァ・・・いた・・・」

「よう・・・呼び出して悪かったな」

 

息を切らし、ホテルのロビーで目的の人物を探す二乃。その人物・・・翔太は挨拶してから、頼んでいたコーヒーに口をつけた。

 

「このメモ・・・どういうことよ!?」

 

そう言って、机の上にメモを叩きつける二乃。先にコーヒーカップを持ち、避難させていた翔太はそのメモを見た。

 

『お前の会いたい人に会わせてやる 佐桐』

 

「どういう意味よ・・・これ」

「そのまんまの意味だ・・・お前の会いたい人物に会わせてやる。その代わり、五月に謝って家に戻れ・・・そういう取引だ」

「っ・・・あんた・・・!」

 

二乃の怒りに染まった目を向けられる翔太。だが、翔太も動じることなく飄々と答えた。

 

「さぁ、どうする?このまま、ホテルで一人ぼっちで過ごすのか?俺の交渉に乗るか?」

「・・・・・っ!?」

「どうした?いつもの強気なお前はどこにいった?それとも、五月に謝るのがそんなにプライドにさわるか?」

「っ!?だったら、連れて来てみなさいよ!その人を!!」

「(・・・かかった!)ああ、いいぜ」

 

二乃が挑発に乗ったことに内心喜びながら、翔太はそう答えたのだった。

 

 

 

「感心しないな・・・これはイカサマじゃないのかい?」

「そう言うなよ、フィリップ。俺も罪悪感で結構押しつぶされそうになってんだからな」

 

二乃に部屋と別れ、ホテルからそう離れていない公園のベンチで作戦の打ち合わせをするフィリップと翔太。フィリップにジト目で責められる翔太は苦笑いしながら答えるが、フィリップの追撃は止まらない。

 

「そもそも、あんなに挑発することもないだろう?君が嫌われるのは結構だが、この後彼女と会う僕の身になってくれるかな?」

「あ、あれは・・・怒りを上杉だけでなく、俺にも向けさせた方がいいかと思って・・・・・」

「ほう・・・その割にはかなりノリノリだったようだけど?」

「・・・・・ちょっと調子に乗り過ぎました」

 

容赦のないフィリップの言葉に攻撃に翔太が降参するも、フィリップの追撃は止まらない。

 

「大体、調子に乗るのは君の悪い癖だ。君は二乃ちゃんに何か恨みでもあるのかい?」

「い、いや・・・別にねーけど」

「それなら、どうしてあんなキツイ言葉を掛けるだい?あれでは、二乃ちゃんが怒るのも無理はない話だろう」

「フ、フィリップ・・・?」

「そもそも君は女性の扱いが全くといってなっていない。だから、中野五月も泣かせるのだろう?そして、二乃ちゃんにも一方的に嫌われて「ちょ、ちょっと待て、フィリップ!?」・・・なんだい、まだ話の途中だよ?」

 

熱弁するフィリップだったが、翔太に制止され、思わず顔を歪めた。しかし、翔太が制止したのには理由があった。

 

「ど、どうしたんだよ?いつものお前らしくない・・・」

「い、いつもの僕・・・?」

「あ、ああ・・・二乃のことを名前で呼んだり、個人のことでそんなに熱くなったり・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・気付いてなかったのか?」

 

翔太の呆然とするフィリップ。どうやら、フィリップ自身も言われて気付いたようだ。その驚きはこれまでにないもので、普段クールなフィリップの口が開きっぱなしだったからだ。そんな相棒の姿に一抹の不安を覚える翔太。

 

「なぁ、フィリップ・・・俺から言い出したことではあるが、やっぱりこの作戦は・・・」

「大丈夫だ、翔太。僕はやるよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

我に戻ったフィリップの言葉に何も返せなくなった翔太。翔太が不安を感じているのには理由があった。もちろん、二乃に自分たちの正体がバレることもあったが、一番の懸念材料はフィリップにあった。

 

この作戦を提案した時、翔太はフィリップに反対されるだろうと思っていた。只でさえ、家庭教師の助っ人にはあまり乗り気ではないフィリップがこの作戦には乗ってくれないだろうと考えていたからだ。だが、

 

「・・・いいだろう。その役目、引き受けよう」

 

反論無しの賛同に、翔太は面食らったのだった。

 

(・・・今、思えば・・・フィリップの様子がおかしくなったのは修学旅行から・・・この一件でそれが良くなるのか、悪くなるのか・・・嫌な予感がするのはそのせいか?)

 

自身の勘が告げる嫌な感じを危惧しながらも、現状他に打破する手段もないのも事実であり、フィリップに頼るこの作戦に賭けるしかない。

 

(一花たちを任せてる上杉に応えるためにも・・・フィリップに頑張ってもらうしかないか)

 

と、翔太が思うも、

 

(と言っても・・・こいつが二乃を怒らせなければいいんだが・・・)

 

対人経験が少ないフィリップが二乃を怒らせないことを祈りながら、翔太は作戦の打ち合わせを進めるのだった。

 

 

 

コンコン

「はーい!」

 

ドアを叩かれ、二乃は急ぎ足でドアに向かう・・・前に、もう一度姿見の鏡で自身の体を確認した。どこもおかしなところがないことを確認し、二乃は再びドアへと向かった。そして、ドアを開くと・・・

 

「いらっしゃい、フィリップ君!」

「・・・やぁ」

 

二乃の歓迎を受けたフィリップがいた。ちなみに翔太は先ほど打ち合わせをしていた公園で待機している。困ったことが起こった場合には、すぐさま連絡が取れるよう、待機していた。

 

「さぁ、遠慮せずに入って」

「・・・お邪魔するよ」

 

二乃に促され、部屋に入って行くフィリップ。初めて入る高級ホテルの内装に興味を惹かれながらも、本来の目的を思い出す。

 

(さて、なんとか僕に会うと約束は叶えられた訳だが・・・問題は彼女の機嫌を良くしながら、中野五月への謝罪へと繋げなければいけないのだが・・・どうしたものかな)

 

フィリップ自身も、自身の対人経験が少ないことは自覚している。それを踏まえ、自身の振る舞いに今回の作戦が掛かっていることにどうすべきか考えていた。それと同時に、この作戦に乗り気になったのは個人的に気になった理由があったからだ。

 

(あの胸の痛み・・・彼女ともう一度会えば、何か分かるかと思ったが・・・・・気のせいだったか・・・?)

 

二乃とこうして顔を合わせてみたが、フィリップ自身は特に何かを感じたわけではなかった。そんなことをしていると、

 

「・・・どうかした?」

「いや。なかなかこういった所に来たことがなかったから、ちょっと珍しくてね」

「えっ・・・?フィリップ君、ホテルとかあんまり来たことのないの?」

「・・・家にいることが多いからね」

「そうなんだ・・・(インドア派なのかしら?あまり外出しない・・・まぁ、確かにインテリっぽいしね)」

「・・・・・(上手く答えられただろうか?)」

 

お互いにそんなことを考えているとは知らず、会話を進めていく。

 

「それにしても意外だったわ。佐桐がこんなに早くあなたを連れてくるなんてね。あなたたち、知り合いだったの?」

「・・・いや、偶然、彼の知り合いが僕の知り合いだったんだ。どうやら彼はかなり知り合いが多いようだよ。連絡を受けて、僕も驚いたよ」

「そうだったのね・・・凄い偶然・・・・・まるで運命みたいね!」

「そ、そうだね」

 

二乃との会話になんとか答えていくフィリップ。慣れない会話の仕方にフィリップ自身、苦労しながらもなんとか続けていく。

 

「き、君の家はここなのかい?ホテル暮らしというのは、かなりリッチなイメージだが・・・」

「・・・違うわ。ちょっとした家出中よ」

「・・・そ、そうなんだね(・・・しまった、いきなり地雷を踏んでしまった)」

 

やってしまったという表情のフィリップを見て、気を遣わせてしまったと思ったのか、二乃がフォローの言葉を述べた。

 

「・・・気にしないで。というか、むしろ一人で清々してるわ。テレビは好きなチャンネルを見放題・・・エアコンは温度を自由にできるし、誰も部屋は散らかさない・・・・・そうよ、一人で寂しくなんて・・・」

(・・・・・気を遣わせたところか、更なる地雷を踏み抜いてしまった・・・)

 

こんな時に、コミュニケーション能力が高い翔太を羨ましがるフィリップだったが、この状況を打破できる経験が彼にはなかった。なんとか、話の流れを変えなければと思い、周囲を見渡している時だった。

 

「・・・うん?これは・・・」

「あっ、それ・・・!」

 

机の上にあった問題用紙が目に入った。普通のものであれば、ただ単にテスト勉強をしていたのだと判断したが・・・その問題用紙には真っ二つに破られ、それをセロハンテープで修理したものだったからだ。翔太から、姉妹喧嘩の経緯を聞いていたフィリップはそれが件の問題用紙だと気付いた。

 

「この問題用紙は・・・?」

「・・・うちの家庭教師が作った物よ・・・全部手作りで、私たち姉妹それぞれに合わせて作ったのよ・・・・・」

「・・・へぇ、君たち五つ子に合わせて・・・凄い家庭教師だね?」

「・・・・・本当。ここまでよくやるわって思うわ・・・・・だから、あの時もあんなことしちゃって、本当は悪いと思ったんだけど・・・・・謝れなくて」

(・・・ふむ。彼女自身も罪悪感は感じているのか・・・上杉風太郎への評価は最悪のものかと思っていたが、そうでもないようだ・・・・・これはチャンスでは?)

 

ここで、フィリップは勝負に出てみることにした。これ以上地雷を踏みまくるよりも、本題に入った方が良いと判断したのだ。

 

「家出したと言っていたけど、前みたいに誰かと喧嘩したのかい?」

「・・・妹にドメスティック・ビンタを喰らったわ・・・私もビンタをし返して・・・それで喧嘩になっちゃったの・・・・・原因は私にあるんだけどね」

「それが分かっているのなら、その妹さんに謝ってみたら

「嫌よ」

・・・どうしてだい?君が悪いのは理解しているのだろう?」

「・・・別に叩かれたことを怒っているわけじゃないの。でも、昔はそんなことをする子じゃなかったのよ・・・なんか別の子みたいになっちゃったみたいで・・・」

(・・・彼女なりに思うところがあるようだ)

 

二乃の本心を聞いたところで、フィリップは更に彼女の懐へと踏み込んだ。

 

「・・・そんなに変わることが嫌かい?」

「・・・・・そうじゃないわ。私は・・・取り残されることが嫌なのよ」

「・・・えっ?」

 

二乃の言葉に思わず言葉を失くしたフィリップ。お湯が沸いたポッドから紅茶を注ぎながら、二乃は話し始めた。

 

「私たちが同じ外見、同じ性格だった頃・・・まるで全員の思考が共有されているような気でいて、居心地が良かったわ」

「・・・・・・・・・」

「でも、5年前からそれが変わった・・・みんな少しずつ離れていった。姉が女優をしているなんて、最近まで全く知らなかったわ・・・・・まるで姉妹たちが巣立っていくようだったわ・・・私だけを残してね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「私だけが、あの頃を忘れられないまま、髪の長ささえ変えられない。だから、無理にでも巣立たなくちゃいけない・・・一人取り残される前に・・・!」

(これが・・・彼女の本心。翔太にも、上杉風太郎にも・・・誰も掬い取れなかった二乃ちゃんなりの想いか・・・)

 

それを聞いたフィリップは・・・思わず笑い出していた。

 

「・・・フフフ・・・・アハハハハハハハ!」

「な、何よ!?何がおかしいのよ!?」

「フフフフ・・・違う、違うよ、二乃ちゃん。君を馬鹿にして笑ったんじゃない・・・

君が強い女性だと思ったら、過去の自分が情けないと思ってね」

「・・・昔のフィリップ君・・・?」

 

いきなりの言葉に困惑する二乃を置いてけぼりに、フィリップは会話を進めていく。

 

「昔の僕はね・・・まず変わろうなんていうことすら考えていなかったんだ。言われたことをただ興味のままに遂行していく・・・まさしく、感情のないロボットのようにね」

「・・・・・信じられないわ」

「・・・今の僕を見たらそうかもね。けど、僕は自分で自分を変えようとはできなかった。そんな僕を変えてくれた人がいたんだ」

「・・・誰、なの?」

「・・・僕に名前をくれた人だよ」

 

そう言って、フィリップはあの時のことを思い出していた。それは10年前・・・フィリップと佐桐壮吉が出会った時のことを・・・

 

 

 

10年前 某研究所

 

「・・・・検索完了。次の検索対象は・・・」

 

個室で子供が一人、ブツブツと呟いていた。彼の手元には何もない・・・だが、彼は意識を集中し、その作業に没頭していた。

 

彼のいる部屋は・・・いうなれば、牢獄そのものだった。テーブルはなく、地下にあたるこの部屋は窓すら存在していなかった。椅子一つ、簡易型ベットが一つ・・・だが、彼にとってはそれだけで事足りていた。

 

彼がここに連れてこられて、もうかなりの時間が経っていた。その間、彼は言われるがまま、全てを検索し続けていた。それが何を目的とし、何を引き起こすのかも知らず・・・感情が抜け落ちた目は虚空を見ていた。

 

いつもと変わらない日々が続く・・・彼がそんなことを思っている時だった。

 

ガン!・・・キィィ・・・・・

 

「・・・誰だい?」

「・・・・・君が、『運命の子』・・・だな?」

 

白のハットに紳士服・・・険しい表情をした顔からは熟練された雰囲気が出ていた。翔太の父、佐桐壮吉だった。壮吉は静かに尋ねるが、少年は言葉の意味が分からず、尋ね返した。

 

「・・・何だい、それは?(・・・この研究所の警備は厳重だったはず。それを潜り抜けてきたのか・・・)」

「・・・分からないのならそれでもいい。俺は佐桐壮吉・・・君をここから連れ出しに来た」

「・・・放っておいてくれ」

 

少年は興味を失くし、再び自らの頭の中にある空間へと入った。壮吉はやれやれといった表情で帽子をかぶり直した。そして、懐からあるメモリを取り出した。

 

(まさか、あいつの予想通りとはな・・・一か八かの賭けになるが、やるしかないか)

 

そのまま、メモリを起動する。そのメモリはダブルが使うガイアメモリと同じ、メモリを構成するパーツがクリアになっている純度の高いメモリだった。だが、ダブルのメモリとは違い、形状は疑似メモリに近いものだった。

 

『Intercept』

 

起動したメモリを、壮吉は少年目掛けて突き刺した!

その瞬間、壮吉の景色は暗転し・・・

 

「・・・ここが、『地球の本棚』か」

「・・・そんな・・・どう、やって・・・?」

 

壮吉が目を開けた時、そこは殺風景な牢獄ではなく、真っ白な空間に無数の本棚が重力を無視し、並び続ける・・・異様な景色が広がっていた。

 

初めて訪れた意識内の空間を見渡しながら、感慨に深ける壮吉。一方、自分だけの空間に侵入してきた壮吉に驚きを隠せない少年。周りを確認し終えた壮吉は少年へと歩み寄った。

 

「・・・ちょっとした賭けではあったが、特殊なメモリのおかげでな。さぁ、ここから出るぞ?」

「・・・放っておいてくれ」

「・・・・・そうはいかない」

 

本棚に隠れるように姿を消す少年。だが、壮吉は回り込み、逃げ場を失くした。

 

「・・・ここからは出られない・・・出たら、あの男に・・・」

「・・・『テラー』、だな」

「・・・・・・・(コクッ)」

 

少年の言いたいことを理解した壮吉の言葉に、少年は黙って頷いた。

 

「・・・・ならば、お前はどうしたい?」

「・・僕?」

「ここを出たいか。それとも、ここで一生検索をし続け終えるのか?」

「・・・なに、を・・・?」

 

「・・・お前は、今まで一つでも自分で決めて何かをしたことがあるか?」

「・・・!(自分で・・・決める・・・?)」

 

壮吉の言葉に戸惑いながらも首を横に振り、答える少年。そのまま、壮吉は語り続けた。

 

「・・・俺には息子がいる」

「・・・・・?」

「俺に似ず、妻によく似て落ち着きがない・・・だが、真っ直ぐで折れない男だ。・・・よく俺の真似をして、失敗ばかりだが・・・けっして諦めようとはしない」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「お前さんはどうだ?ここにいるのは、お前が決めたことか?お前自身が決断したことか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

壮吉の言葉に黙ったまま、目を見開く。少年の目が変わったことに気付いた壮吉は・・・

 

「もし・・・お前さんがこの牢獄を出る決断をするのなら・・・・・ここを出て、落ち着けば、お前の罪を数えろ」

「罪・・・?」

「・・・今はまだ知らなくていい。だが、いつかはその罪と向き合わないといけない時が来る・・・それだけは覚えておけ」

 

そう言う壮吉を黙って見つめる少年。壮吉なりに、まだ知るべきことではないと判断して、言葉を濁したのだった。

 

「お前さん、名前は?」

「・・・・・分からない」

「(やはり記憶が・・・)そうか・・・

ならば、こう呼ぼう・・・・・フィリップ」

「・・・フィ、リップ・・・?」

「フィリップ・マーロウ・・・俺の大好きな男の中の男の名前さ。奴は自分の判断で全てを解決する」

「・・・・・決断」

 

壮吉の言葉に顔を上げた少年・・・フィリップの目は変わっていた。そこには、確かな光が宿っていた。

 

「人形のようだった目が・・・男の目になったようだな。さぁ、ここから出るぞ」

 

壮吉の言葉に大きく頷くフィリップ。そのまま、二人の意識は『地球の本棚』から離れていき・・・・・

 

 

 

「・・・そうして、僕は今の家にお世話になってるってわけだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(それから、意識を失った僕をあの人が佐桐家まで連れて行ってくれたんだったな・・・今、思えば、あの時からもう10年か・・・)

 

二乃に10年前の話(ガイアメモリや佐桐壮吉のことは伏せ、自身が施設で引きこもっていた話に置き換えた嘘半分ではあるが・・・)を語り終えたフィリップは当時のことを思い出し、感慨に耽っていた。紅茶を飲み、無言のままの二乃が気になり、視線を向けると、

 

ポロポロポロ・・・

「に、二乃ちゃん・・・?」

 

フィリップはその光景に困惑した・・・二乃が涙を流していたからだ。

 

「ゴ、ゴメン・・・!その・・・フィリップ君の話を聞いてたら、涙が止まらなくて・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「ゴメン・・・ちょっとだけ待ってくれる?」

「・・・ああ」

 

そう言って、必死に涙を拭う二乃。その姿に、どこか嬉しいと思う自分がいたフィリップだった。

 

 

次回 仮面ライダーW 

 

『Nのさよなら/雷閃の攻防』

これで決まりだ!

 




サブタイトルでお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、次回はようやくのライダーパートになります。

プロットから一番お話を変更したので、一番時間がかかり、一番長いお話になってます(笑)
ダブルの色々なフォームも出ますのでお楽しみに!

それでは。

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