色々衝撃的な事実が発覚しますが、お楽しみ頂ければと思います。
それではどうぞ!
フィリップが二乃に昔話をしている頃・・・
公園で時間を潰す翔太はスタッグフォンを操作しながら、『Q』に関する情報を探していた。
(・・・だ~めだ!やっぱり情報が足りなさすぎる・・・というか、フィリップの奴、上手くやってるんだろうな?)
が、有力な情報はやはりヒットせず、諦めてスタッグフォンを折りたたむ。そのまま、フィリップと二乃がいるホテルを見て、相棒の心配をしていた。時間はもう20時になろうとしていた。
(あんまり遅いなら、こっちから連絡を・・・いや、余計なことをしない方がいいか。・・・っていうか、寒くなってきたな)
そんなことを思いながら、缶コーヒーでも買ってこようかと思っていた時だった。
『♩♪♬』
「おっと・・・ウォッチャマン?もしもし?」
『あっ、翔ちゃん?どうも~、元気?』
『あっ、繋がった?』『繋がってる、繋がってる!』
「クイーンたちも一緒なのか?」
電話の背景からクイーンとエリザベスの声が聞こえ、驚く翔太。この3人が一緒だということは・・・そう思い、翔太は頭を探偵モードに切り替えた。
「もしかして、『Q』の情報か・・・!」
『・・・それと関係があるかどうか、分かんないんだけど・・・翔ちゃん。『Mr.アルカナ』って知ってる?』
「・・・Mr.アルカナ?」
聞き慣れない言葉に首を傾げる翔太。ウォッチャマンが説明を続ける。
『エリちゃんたちから『Q』のことを聞いて、ハッキング関連の情報を集めてたんだけどね・・・『Q』の手紙によく似た書き込みをしていた人物がいたのよ』
「それがMr.アルカナ・・・」
『なんでも、悪徳企業を狙うホワイトハッカーだったんだって』
『でも、インターネットの中だと、不正を告発する義賊として、すっごい人気だったんだって』
クイーンとエリザベスの説明を聞きながら、翔太はメモを取っていく。
「それで・・・もしかして、そいつが『Q』なのか?」
『それはないわね』
「どうしてだ・・・?」
『・・・Mr.アルカナは9ヶ月前から活動を停止してるの。それまで定期的に更新されていた悪徳企業の告発メールがパタリと止んだのよ。ネット業界では、かなりの噂になったわ』
「・・・・・誰かに消されたってことなのか」
『・・・おそらくね。アルカナが最後に調べていたのが・・・ガイアメモリに関してよ』
「・・・何!?」
まさかの関連に翔太は思わずメモを落としそうになった。
(アルカナとガイアメモリにはつながりがあった・・・ということは、今回の一件は・・・まさか、組織の・・・!?)
「それで!今回の『Q』とアルカナは関係っていうのが・・・?!」
『エリちゃんたちが入手した手紙とアルカナの告発メールがとても似てることよ』
「・・・・・似てるって、どこが何だ?」
『今、メールを転送したから、そっちを見て頂戴!それじゃね~。あっ、エリちゃん、クイーンちゃん!ここのパフェが本当においし(ブツッ!)』
(・・・おいおい・・・!)
最後の言葉に心の中でツッコミを入れながら、翔太は転送されたメールを見た。アルカナの告発メールは・・・確かに『Q』の手紙に似ていた。
『御社の代表は愚者なり・・・始まりの一歩すら歩めない者に可能性はない』
『ネットにて、御社の粉飾決算をぶちまけた・・・魔術師たちの炎に焼かれるがよい』
『明らかなブラック労働・・・裏の太陽としてのお前たちは全ての命を奪う者である』
(・・・よ、読んでて痛い文章だな・・・俺でもここまではこじらせてねーぞ。でも、確かに『Q』の手紙によく似てるな。ともかく、フィリップが戻ってきたら・・・・・っ!?)
アルカナの手紙にドン引きしながら、とりあえずフィリップの帰りを待とうと、ホテルへと再度目を向けた時だった。
(・・・明かりが、全部消えてる!?)
ホテルの明かりが全て消えていることに気が付き、言葉を失くす翔太。部屋の電気だけでなく、屋上の証明までも消えているのは明らかな異常である。
(フィリップ・・・二乃・・・!)
すぐさま、スタッグフォンで連絡を取ろうとするが、
『お掛けになった電話は、電波が届かないところに・・・・・・・』
「っ・・・くそぉ!!」
電話がつながらないことに、非常事態であることを確信した翔太はすぐさまホテルへと走った。
「・・・もう大丈夫かい?」
「ええ・・・ゴメンナサイ」
時間は少し巻き戻る・・・泣き止んだ二乃に微笑みながら、声を掛けるフィリップ。そのまま、説得を続けようとフィリップは言葉を続けた。
「・・・家出はいつまでするつもりなんだい?」
「・・・・・特に考えてないわ。勢いで飛び出してきちゃったから・・・」
「・・・二乃ちゃん」
「・・・そうだ!ね、フィリップ君!お腹空いてない?」
「・・・えっ?少しだけ空いてるかな・・・」
「そっか・・・良かった」
気まずくなった空気を変えようと、二乃が話題を変えた。いきなりの問いかけに戸惑うフィリップ。そのまま、二乃は台所へと向かい、オーブンから何かを取り出した、
「・・・フィリップ君が来るって聞いて・・・大急ぎで作ったの。シュークリーム、一緒に食べない?」
「・・・・・シュークリーム?」
大皿にシュークリームを何個か移し、持ってきた二乃。そのシュークリームを見て、フィリップは首を傾げていた。
「あっ・・・もしかして、嫌いだった?」
「・・・いや、そうじゃないよ。ただ、僕が知っているシュークリームとはちょっと違ったものだったから驚いてね」
「ゴ、ゴメン!普通の方が良かったよね!?す、すぐに作り直す・・・・えっ?」
フィリップに引かれてしまったと思い、すぐに作り直そうとする二乃の手が止まった。フィリップがシュークリームを手に取り、かぶりついたのだ。
「・・・うむ」
「・・・・・フ、フィリップ君?」
「・・・美味しいよ、二乃ちゃん!」
「・・・良かった!いっぱい作ったから、どんどん食べて!」
そう言われ、フィリップが台所に目を向けると・・・もの凄い量のシュークリームが並んでいた。中野家には大食い(五月)がいることはフィリップもここ最近の同居生活で知ってはいたが、二乃にとってはこれくらいの量を作るのが家では当たり前になっていたため、無意識で作ってしまっていたのだ。
「(これは流石に食べきれないな・・・そうだ)こんなにたくさんの量があるのなら、君の姉妹を呼ばないか?」
「・・・・・えっ?」
「・・・仲直りとしてだよ。少しは「嫌よ」・・・えっ?」
「・・・お願い。そんなこと言わないでよ・・・せっかく二人っきりなのよ。誰にも邪魔されたくないの」
その言葉に、フィリップの中に迷いが生まれた。フィリップがここに来たのは、彼女を説得するためだ・・・だが、今の二乃の言葉に一瞬そのことを忘れそうになった。
「私は・・・・・フィリップ君さえいればいいから」
「・・・・・・・!!」
その告白に・・・フィリップの胸が再び痛んだ。思わず胸を抑えそうになったが、グッと堪え、本来の目的を思い出す。だが、二乃の表情は段々と沈んでいっていた。
「優しいわね、フィリップ君。なのに、私は誰かに迷惑かけてばっかり・・・上杉にもあんなこと言っちゃうし・・・五月にも・・・・・やっぱり私なんて・・・・・いない方が・・・」
「そんなことはない!」
「・・・っ!?」
珍しく大きな声で叫んだフィリップの声に、思わず二乃は驚いた。
「家族の誰かがいない方がいいなんて、絶対にない!君が姉妹を想うように、姉妹たちも君のことを大切に思ってるはずだ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕もよく友人と喧嘩するけど・・・それは互いのことを考えての結果だ。そのことは絶対に間違いじゃないはずだ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「君たちは・・・君たち5人は一緒にいるべきじゃないのかい?」
「・・・・・待って、今・・・」
そう二乃が言葉を掛けようとした時だった・・・
ブツン・・・
「・・・!」「きゃぁ!?」
部屋の電気が切れた・・・いきなり暗くなったことに驚きながらも冷静に状況を確認しようとするフィリップだったが・・・驚いた二乃がフィリップに抱き着いたことでその場に押し倒されてしまった。
「ゴ、ゴメン・・・すぐに退くね!」
「・・・ふむ、停電のようだね」
慌てる二乃とは対照的に冷静に状況を分析するフィリップ。すぐに非常灯が点くだろうと思い、その場からあまり動かないようにしていたが・・・いつまで経っても停電が復旧しない。耐えられなくなった二乃が動いた。
「・・・遅いわね。ちょっとフロントに文句・・・事情を聞いてみるね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
素の性格が出かかった二乃は乱暴な言葉を飲み込み、スマホのライトを頼りに内線の元へと近寄った。だが、
「あれ・・・通じない?もうどうなってるのよ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
憤る二乃を横目にフィリップはこの状況に違和感を覚え、懐からデンデンセンサーを取り出した。
「ゴメン、フィリップ君。なんか・・・・・何してるの?」
「・・・・・・・・これは・・・思った通りだ」
二乃の言葉を無視し、状況に驚くフィリップ。いきなりよく分からない機械を目に近づけ、周りをきょろきょろしているフィリップに困惑する二乃。だが、フィリップの顔は険しいものになっていた。
「・・・二乃ちゃん。いいかい、落ち着いて聞くんだ」
「な、何・・・どうしたの?」
「・・・今、このホテルで何かが起こってる。それもちょっとしたことではないようだ」
「・・・・・どういうこと?」
「このホテル全体に謎の電磁波が流れている。おそらく妨害電波に近いものだと思う。内線だけじゃなく、携帯電話も使えなくなってるはずだ」
「えっ!?うそ・・・!?」
フィリップの指摘に、持っていたスマホを慌てて見る二乃。スマホの画面には圏外のマークが表示されていた。状況が信じられない二乃がスマホで電話を掛けようと試みるも、
「・・・繋がらない・・・!」
「・・・このデンデ・・・こほん。このゴーグルの機械はありとあらゆる電波を見ることができる。この電磁波は今まで見たことがないものだ」
驚愕する二乃にデンデンセンサーで再度ホテル内部を見渡しながら説明を続けるフィリップ。彼の見る光景には、謎の電磁波がホテル全体を囲っているのが見えていた。
(これは・・・ただの電磁波じゃない。かなり特徴的な・・・ガイアメモリのエネルギーに似た波長をしている・・・ということは・・・?)
最悪の状況を把握したフィリップはデンデンセンサーをしまい、二乃の傍に歩み寄った。
「二乃ちゃん、よく聞いて」
「フィ、フィリップ君・・・?」
「僕が外に出て様子を見てくる。僕が戻ってくるまで、君にはここにいてほしいんだ」
「・・・っ!?い、嫌よ!お願い、一緒に・・・」
「・・・・・そうしてあげたいけど、もしこの状況が続いたりしたら、もっと危険な状況に陥るかもしれないんだ・・・僕を行かせてくれないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フィリップの言葉に二乃は押され戸惑った。それを振り切り、フィリップは素早くドアへと向かった。
「・・・フィリップ君!?」
「っ・・・!?」
二乃の声に一瞬迷いが生まれるフィリップ。その言葉にフィリップは振り返り、
「・・・大丈夫。すぐに戻ってくるよ」
そう言って、今度こそフィリップは部屋を後にしたのだった。
(・・・これ以上、彼女をガイアメモリの事件に巻き込ませはしない・・・まずは電磁波の発生源を調べなければ・・・)
静かに決意を固め、真っ暗なホテルの中をフィリップは駆けだした・・・その姿を闇から何者かが見ていた。
(・・・おかしい。電磁波の発生源が見つからない・・・!?)
デンデンセンサーを頼りに電磁波の発生源を探すフィリップ。だが、ホテルのどこからも発生源が見つからず、焦りを感じていた。
(一度、二乃ちゃんのところに戻るべきか・・・?)
そんなことを考えている時だった。
「(っ・・・ダブルドライバー!?)翔太・・・翔太!?」
「よし、通じた!フィリップ、無事か!?」
腰に自動的に表れたダブルドライバーに驚きながらも、相棒がこの状況に気付いてくれたのだと確信し声を掛けると、翔太の声がフィリップの頭の中に聞こえた。
「こっちは大丈夫だ・・・だが、ホテル全体で何かが起こってるみたいだ。謎の電磁波がホテル全体を覆っていて、電源は全て落ち、通信機器は全く使えない状態だ」
「・・・マジか。今、ホテルの玄関口にいるんだが・・・ホテルの出入り口は出入りができなくなって、大パニックになってる」
「・・・・・翔太。今回の事態・・・もしかしたらガイアメモリ関連かもしれない」
「何だって・・・!?」
驚く翔太にデンデンセンサーで見た謎の電磁波のことを説明するフィリップ。それを聞いた翔太は、
「・・・分かった。なら、俺はホテルに入る方法を探す。駄目そうだったら、最悪ダブルになって地下の入口かどっかから強行突破だ」
「あまり人目につくような行為は避けたいが、場合が場合だ。僕は一度、二乃ちゃんのところに戻るよ。ダブルドライバーはこのままにしておいてくれ」
「・・・分かった。できるだけ早くそっちに向かう!」
そう言って、翔太とフィリップは動き出すのだった。
「・・・遅いな、フィリップ君」
フィリップが部屋を出て、15分が経とうとしていた。一人残され、心細くなってきた二乃は思わず悪態を吐いていた。林間学校の反省から、スマホの充電を大切にするためにライトを切り、暗闇の中、フィリップの帰りを待ち続けていた。その時だった。
ガサッ・・・
「・・・っ!?」
物音が聞こえ、二乃の体がこわばった。ただでさえ暗く周りがよく見えない状況で、微かに聞こえた音は恐怖を感じさせるには十分だった。
(き、気のせいよね・・・?)
そう思い、落ち着こうとする二乃。だが、それは気のせいではなかった。
バチッ!!
「きゃぁぁ!?」
今度は備え付けのテレビが嫌な音を立て、ショートした。突然の事態に飛び上がり、壁にもたれるように逃げる二乃。だが、異常な事態は次々と続く。
今度は部屋の電源全てが点いたり、消えたりを繰り返しただしたのだ。
「・・・な、何よぉぉ・・・!?」
何が起こっているのか分からず、思わず泣き声になる二乃。その時、壁からスパークのようなものが発生した。
バチバチバチバチバチ!!!!!
そのスパークは徐々に人の形をかたどっていき・・・ついに、
『・・・・・ミツケタ・・・!』
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一つ目の顔に、まるで亡者のような姿をし、全身から電気を放ち続ける異形の者・・・ドーパントが二乃のことを一つ目で見ていた。それを見た二乃が悲鳴を上げた・・・ドーパントが二乃を捕まえようと手を伸ばそうとして、
バン!
「二乃ちゃん!」
「フィリップ君?!」『・・・!?』
「食らえ!!」
ドアを蹴破り、二乃の窮地に駆け付けたフィリップ。フィリップの登場に動揺したドーパントに近くにあった花瓶を投げつけるフィリップ。そのまま、二乃の手を掴み、走り出すフィリップ。
「フ、フィリップ君!?」
「話は後だ!今は逃げるんだ!」
『ニガサナイ・・・』
部屋を出て、非常階段の方へと向かう二人。それを黙って見つめるドーパント。すると、一瞬にして、ドーパントの姿が消えた。そして、次の瞬間・・・
バチ!
「な、何!?」「・・・そんな!?」
『・・・・・ムダダ・・・オマエハニゲラレナイ』
逃げる二人の目の前にドーパントが一瞬にして現れたのだ。突然のことに驚く二人。そのまま、二人を捕まえようとドーパントが近づく。だが、その時・・・ファングメモリがドーパント目掛けて飛び掛かった。
『アアア・・・ジャマ、ヲ・・・スルナァァ!?』
「今の内だ!行こう!」
ファングが時間を稼いでいる間に逃げる二人。
「なんで逃げるの?!この前みたいに戦えば・・・!」
「今は駄目なんだ!ともかく逃げるんだ!!」
二乃の疑問に答えながら、フィリップはその手を引っ張りながら、廊下を駆け抜けた。
『アアアアアァァァァァァァァァ!?!?』
ファングと対峙するドーパントが怨嗟のこもった叫び声を上げた。
「はぁ・・・はぁ・・・!」
「・・・なんとか、まいたようだね」
非常階段を1階まで降り、地下への入り口に通ずる通路まで来た二人。ドーパントの追撃がないことを確認し、その場に座り込んだのだった。
「・・・・・ふぅ・・・逃げられたのかしら?」
「・・・いや、一時的にしのいだだけだ。こっちを補足したら、おそらくまた襲ってくる。そもそもホテルから出らなければ、逃げることは叶わないだろう」
二乃の推測を冷静に否定するフィリップ。すると、話はなぜ逃走したのかになった。
「っていうか、なんで逃げたのよ!?さっきの恐竜みたいなのがいたら、フィリップ君戦えるんでしょ!?」
「・・・・・それだけじゃ駄目なんだよ」
「なんでよ?」
フィリップの答えに思わず首を傾げる二乃。やれやれといった表情で答え始めるフィリップ。
「僕たちが戦うには僕と相棒にそれぞれ準備が必要なんだよ。さっきは相棒の準備ができていなかったんだ」
「・・・・・面倒くさいわね」
「・・・アハハハ・・・・・」
バッサリと言い放った二乃の言葉に思わず苦笑いするフィリップ。どうして先程ファングジョーカーに変身しなかったのか・・・それは現在、フィリップの腰にダブルドライバーが装着されていないことが原因だった。
フィリップが二乃の部屋に戻る前・・・地下から人が通れそうな排気ダクトを見つけたと翔太から報告があったのだ。
だが、それはかなり狭いダクトらしく、ダブルドライバーを装着したままでは通ることができなかったのだ。そのため、ダブルドライバーを外した翔太がダクトを抜けるまではダブルへの変身はおろか、フィリップは翔太と連絡を取ることさえもできない状態になっていたのだ。
(翔太・・・まだなのか・・・!)
相棒が到着するのを今かと待ち続けるフィリップ。その一方で、フィリップは先ほどのドーパントについて考えていた。
(さっきのドーパント・・・明らかに二乃ちゃんを狙っていた。なぜドーパントが二乃ちゃんを?彼女は敵を作りやすい性格だが・・・)
林間学校での一件を思い出しながら、ドーパントの目的を考えるフィリップ。
「・・・ねぇ、あれも林間学校やあの夜の時みたいな化け物と一緒なの?」
「・・・・・ああ」
どう答えるべきかと思い、一瞬迷ったフィリップだったが、正直に答えることにした。
「・・・狙いはあたしね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・やっぱりね」
無言を肯定だと捉えた二乃は思いのほか冷静だった。体操座りのまま、視線を落とした。
「・・・また、私間違ちゃったのかな・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉にフィリップは何も返すことができなかった。二乃の辛そうな表情に何か声を掛けるべきだと頭では分かっているのだが・・・どの言葉も彼女を傷つけてしまうのではないかと思ったのだ。
「ねぇ・・・フィリップ君」
「・・・・・・・なんだい?」
「・・・・・フィリップ君は・・・あたしのこと、好き?」
「・・・!?!?」
突然の言葉に流石のフィリップも動揺した。まさかの質問にフィリップの頭の中は真っ白になった。少しして、二乃も自分が何を言ったの理解し、顔を真っ赤にして慌て出した。
「ゴゴゴ、ゴメン?!忘れて!今言ったことは忘れてぇ!?!?」
「あ、ああ・・・!」
パニックのまま慌てる二乃に思わず頷くフィリップ。だが、
ドキッ・・・
(また、胸が・・・)
胸に違和感を感じるフィリップ。だが、今までのものとは異なる胸の痛みに首を傾げる。そのことに疑問を感じていると、
『フィリップ!』
(っ・・・翔太!)
頭に聞こえてきた翔太の声に我に返ったフィリップ。気付けば、腰にダブルドライバーが現れていた。
(遅いよ、翔太・・・!)
『悪い、遅くなった!なんとかホテルの中に侵入できた!こっちは今、地下のごみ置き場だ』
(こっちはドーパントと遭遇した。奴の狙いはどうやら二乃ちゃんのようだ)
『本当か!?それでドーパントは・・・?』
(分からない。ファングが足止めしている間にこっちは逃げるので必死だったからね。今はどこにいるのやら・・・それに奴は瞬間移動らしきものを使うようだ)
『そいつはやっかいだな』
頭の中で会話し、情報を共有する二人。翔太は周囲を警戒しながら、ゴミ置き場から出て移動を始めた。
(すぐさまドーパントの正体を突き止めよう。このままホテルの停電状態が続けば、警察が来るだろうが、そうなってからはドーパントによる被害が大きくなる可能性がある)
『分かった。俺はそっちに・・・って、二乃も一緒なのか。合流は無理か』
(ああ。僕は『地球の本棚』に入るよ)
『頼む。俺はドーパントがどこにいるのか、行方を捜してみる』
そう言って、翔太は探索を、フィリップは検索を開始した。
「・・・フィリップ君?」
「・・・検索を始めよう。知りたいのは、敵ドーパントのメモリと目的」
目を瞑り、検索を始めたフィリップに思わず疑問の声が漏れる二乃。それを無視し、検索していくフィリップ。
「キーワードは、瞬間移動・・・一つ目・・・停電・・・妨害電波」
キーワードを述べていき、本棚の本が消えていく。だが、本が絞り切れない。
「困ったな。該当する本が多すぎる。確信を点くキーワードが欠けているようだ」
「・・・キーワード?もしかして、さっきの化け物のことを調べてるの?」
「・・・二乃ちゃん?ああ、そうなんだが・・・どうにも情報が絞り切れなくてね」
『・・・おいおい。二乃にまで協力させるのか?』
(彼女もドーパントと対峙している。もしかすれば、何か気付いたことがあるかもしれない)
翔太にそう言って、フィリップは二乃に何か気付いたことはないかと尋ねてみた。
「二乃ちゃん。あの化物について、何か気付いたことはないかい?」
「・・・えっ?そんな・・・急に言われても・・・・・」
そう言われ、必死に頭を働かせる二乃。そして、何かを思いついた。
「・・・・・テレビ」
「・・・えっ?」
「・・・あいつが現れる前・・・テレビが煙を上げて壊れたの。そしたら、凄い音がして、あいつが現れたの・・・まるで幽霊みたいだったわ」
「・・・・・幽霊・・・突然・・・・・・・・神出鬼没!!」
二乃言葉からヒントを得たフィリップがキーワードを追加する。
「追加キーワード・・・神出鬼没」
そのキーワードに残りの本は全て消え、一冊の本が残った。その本を手に取り、閲覧したフィリップ。
(翔太・・・ドーパントの正体と目的が分かったよ)
『本当か、フィリップ!?』
(ああ・・・・・そして、驚くべきことが分かったよ。実は・・・・・)
『・・・・・!?』
フィリップが述べた驚愕の事実に翔太は言葉を失くした・・・その事実を聞き終えた翔太は・・・悲しい色を目に映していた。
『・・・ドコ・・・?ドコニイル・・・ナカノ・・・!』
「・・・あんたが探している人物はここにはいないぜ?」
『・・・・・!?』
地下駐車場をうろつくドーパント。二乃を探すその姿はまさしく亡霊だった。その時、聞こえた言葉にドーパントは振り向いた。その声の主は翔太だった。
『・・・オマエ・・・ナニモノダ?』
「・・・俺は探偵だ。さぁ、こんなことは終わりにしようぜ・・・ハ―ミット・ドーパント・・・いや、『Q』・・・『Ms.Queen』」
『!?』
突きつけられた事実・・・その言葉にハ―ミット・ドーパントは動揺した。メモリの正体だけでなく、自身の正体までもがバレていることに驚きを隠せなかったのだ。
『・・・ナンデ・・・?』
「俺もあんたの正体が『Q』だって知った時には驚いたよ。俺の相棒は優秀だが、今度ばかりは偶然ってわけじゃなかったようだな」
驚くドーパントの疑問に翔太自身も肩をすくめながら答え続けた。
「あんたは9か月前に消息不明となったハッカー『Mr.アルカナ』の恋人・・・仮納照琉奈。あんたも優秀なホワイトハッカーだったんだろう?『Q』っていうのは、タロットカードの小アルカナの絵札のクイーンを意味するものだったんだな」
フィリップの検索結果・・・ハ―ミット・ドーパントに関する『地球の本棚』の情報には正体について書かれていた。
「あんたが送った手紙・・・いや、正確にはパペティアのメモリを使った古田だけに送った怪文章と、他の人物に送った告発状。あれのもとはMr.アルカナが作ったものを参考にしたんだろう?」
そう言って、スタッグフォンに保存されたMr.アルカナの脅迫状を見せた。
「最初はただの怪文章かと思ってたが、意味を理解すれば文章の意味も分かったよ。脅迫状の、『愚者』『始まりの一歩』『可能性はない』『魔術師たちの炎』『裏の太陽』『全ての命を奪う者である』『女帝』が意味するのはタロットカードのアルカナやその意味に則ったものだったんだな。そして、古田に送った怪文章は『塔』のアルカナに則ったんだろう?」
『・・・ソウヨ。ワタシハMr.アルカナノパートナー。ソシテ、アノヒトノイシヲツグモノ!!』
翔太の推理を肯定し、全身から雷を発生させるハ―ミット・ドーパント。その言葉からは怒りと憎悪があふれ出していた。
「っ!?ふざけんな!?あんたの恋人はガイアメモリを調査していて行方不明になったんだろう!それなのにメモリに手を出すなんて、アンタは間違ってる!」
『ウルサイ!?オマエニナニガワカル!?』
翔太の言葉に激怒したハ―ミット・ドーパントは電撃を手から放った。それを横っ飛びに躱し、柱に隠れる翔太。
『アノヒトハセイギカンニアフレテイタ!ダケド、アノヒトハガイアメモリヲシラベハジメテカラキエタ!!』
雷を放ちながら、叫ぶドーパント。その慟哭は続いた。
『ワタシハカレヲサガシツヅケタ!ケド、カレノユクエハワカラナカッタ!?ダケド、アルトキ、アノヒトガオシエテクレタ!ワタシガフクシュウスベキジンブツヲ!ソノタメノチカラモワタシニオシエテクレタノヨ!!!』
「(っ!?この人がガイアメモリを買う様に差し向けた奴がいるのか!?もしかして、そいつはガイアメモリの組織に繋がって・・・?!)復讐すべき人物だと!?一体、誰を狙ってる!?」
『・・・ナカノマルオヨ!』
「・・・っ!?」
まさかの人物の名前に翔太が・・・いや、ダブルドライバーを通して、フィリップも驚愕していた。まさかの名前に言葉が出なかったほどだ。
『ダカラワタシモヤツカラウバッテヤルノヨ!?タイセツナヒトヲネ!!』
「・・・あんたの事情はよく分かったよ。けど、やっぱりこんなことは間違ってる!例え、その人があんたの恋人を殺したとしても、こんなことをして喜ぶと思ってんのかよ!?」
『ウルサイ!?ウルサイ!?ウルサァァァァァァイ!?!?』
「うおぉ!?」
ドーパントの感情に比例するように雷が一段と激しさを増した。柱がえぐられ、たまらず翔太は別の柱に身を隠した。
(彼女の精神は完全にメモリに呑まれている。説得は不可能だ!)
「・・・ああ。だったら!俺にできることは・・・あんたの憎悪を受け止めて、こんな馬鹿げたことを止めてやることだけだ!!!」
(そこは、俺が・・・じゃなくって僕たちが、だろう?)
「そうだな。行くぜ、フィリップ!」
『Joker!』
「了解した。二乃ちゃん、後は宜しくね」
「・・・ええ」
『Cyclone!』
「「変身!」」
『Cyclone! Joker! 』
フィリップから転送されたサイクロンメモリと、自身のジョーカーメモリを差し込み、ドライバーを開いた翔太の姿がダブルへ変わる。その途端、フィリップの意識が失い、地面へと倒れ込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フィリップが意識を失ったのを確認した二乃はフィリップへと近づいた。そして・・・
一方、ダブルへと変身した翔太はハ―ミット・ドーパントと対峙していた。
『オマエハァ!?カメンライダー!!』
「いくぜ!」
戦闘を開始したダブルは先手必勝とばかりに距離を詰めながらのダッシュから得意の飛び蹴りをドーパントに喰らわせる。
『翔太。まずは目の前のこいつを倒そう。この個体だけならそう手ごわくはない!』
「ああ!お熱いの、喰らわせてやろうぜ!!」
『Heat!』
『Heat! Joker!』
パンチでの戦いを得意とするヒートジョーカーへとメモリをチェンジしたダブルが一気に距離を詰め、ドーパントに火の拳を次々と叩き込んだ。
『コザカシイノヨ!?』
「おっと!危ねぇ!?」
全身から放電するドーパントの攻撃を回避し、いったん距離を取るダブル。飛んでくる電撃を躱しながら、ダブルはタイミングを見計らい、ジョーカーメモリをマキシマムスロットに装填する。
『Joker! Maximum Drive!』
メモリのエネルギーがダブルの両腕にたまり、電撃攻撃の合間を掻い潜り、両腕のエネルギーを推進力として、水平飛行しながらドーパントに突っ込んだ。
『ナメルナァ!?』
直進してくるダブルに電撃を放つドーパント。だが、電撃が直撃する瞬間、ダブルの体が真っ二つに分かれ、電撃を回避した。まさかの出来事にドーパントは動揺し、ダブルがその隙を見逃すわけがなかった。
『ソンナ・・・!?』
「『ジョーカーグレネード!!!』」
「おらぁぁ!!」『はぁぁ!!』
真っ二つに分かれたダブルはドーパントを挟み込むように、ジョーカーとヒートの拳を連続して叩き込んだ。直撃を受けたドーパントは爆発を起こし、炎と煙が晴れた時には、ダブルだけが立っていた。
しかし、次の瞬間・・・ダブル目掛けて、電撃が飛んできた。
「『っ?!』」
それに気付いたダブルは地面を転がり、その攻撃を躱した。電撃を放ったのは・・・先ほど倒したはずのハ―ミット・ドーパントだった。
『ザンネンダッタワネ』
「・・・やっぱりか」
ドーパントの言葉に、ダブルはあまり驚いていなかった。そして、気配を感じ、背後を振り返った。そこにいたのは・・・まったく同じ姿をしたハ―ミット・ドーパントだった。
『ムダヨ。アナタニワタシハタオセナイ』
『ワタシハハ―ミット。インジャデアルワタシハダレニモトラエラレナイ』
『スガタナイモノヲタオスコトハダレニモデキナイワ』
『・・・ケッシテネ』
そう言って、電撃を放ちながら次々と出現していくハ―ミット・ドーパント。だが、ダブルは一向に慌てない。その理由は・・・フィリップにあった。
『問題ない。もう既に・・・ハ―ミットメモリに関する検索は完了している』
『Crusher!』
『Heat! Crusher!』
そう言って、ダブルはヒートクラッシャーへとメモリチェンジした。
『イッタハズヨ?ワタシハタオセナイト・・・』
「ああ。このままじゃ駄目だろうな」
『だからこうするのさ!』
『Crusher! Maximum Drive!』
クラッシャーメモリをクラッシャースレッジに装填する。そのまま飛び上がり、クラッシャースレッジを地面へと振るう。
「『クラッシャーバンカー!!!』」
クラッシャースレッジを叩きつけた地面が次の瞬間、大爆発を起こす。その一撃により、床のコンクリートは崩壊し、地面へと大きな穴を空けた。
「さてと・・・隠者のトリックの種明かしといくか!」
ドーパントたちが体制を崩している間に、ダブルは大穴へと飛び込んだ。そこは・・・機械が音を立てて動いている地下空間だった。
「どうやらお前の推測通りだったみたいだな、フィリップ」
『ああ。そして、あれこそが・・・ハ―ミット・ドーパントの本体だ』
『・・・・・ヨクワカッタワネ』
ダブルの視線の先には、大型の機械に取りついたハ―ミット・ドーパントがいた。その大きさは先ほどの群体よりも一回りほど大きいサイズだった。
『違和感を感じたのはこのホテル全体をセンサーで確認した時だった。ホテルのどこにもガイアメモリのエネルギー反応はなかったことが引っかかっていた・・・けど、ハ―ミットメモリの特性が電撃と寄生だと知った時、気付いたんだ。もしかしたら、僕が見落とした箇所に君がいるじゃないかと。そして、デンデンセンサーでこのホテルをもう一度見渡した・・・このホテルの発電施設がある地下室を含めてね』
「・・・つまり、本体であるあんたを倒せば、全て丸く収まるってわけさ」
ハ―ミットメモリを検索し終えたフィリップは、このホテルの構造についても検索し、デンデンセンサーで本体の居場所を突き止めていたのだ。
クラッシャースレッジを突き付け、ダブルは本体に向かってキメ台詞を述べる。
「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」
『キエナサイ!!』
発電機から体を起こし、電撃を放つドーパントの攻撃を躱しながら、ダブルはメモリをチェンジする。
『Luna!』『Triger』
『Luna! Triger!』
ルナトリガーへとチェンジしたダブルは電撃を避けながら、変化自在の弾丸を放った。だが、
ドーパントに直撃する直前で弾丸が全て消滅した。
「っ?!何!?」
『・・・まさか、電磁バリアー!?発電機からホテル全体の電力を吸収して、メモリの能力が上がっているんだ!』
「だったら、接近戦で・・・!」
『サセルワケナイデショ!?』
再びメモリを変えようとするダブルを阻止するために、先にドーパントが動いた。右腕を動かすと、ダブルの周りに先ほど戦った群体が出現した。
「ちぃ。さっきのザコ集団か!」
『翔太!こいつらに時間を掛けてる場合じゃないよ!?』
「分かってる!」
フィリップの忠告にトリガーマグナムの引き金を引きながら答える翔太。ダブルが焦る理由・・・それはドーパントの特性にあった。
『早く倒さなければ、ドーパントの分身体が僕と二乃ちゃんを見つけてしまう!ファングメモリが警護してくれているが、集団で襲われれば一溜まりもない!?』
電気エネルギーを使い、分身体を生み出し、電気配線を使った瞬間移動ができるドーパントに意識を失っているフィリップとターゲットである二乃が見つかれば・・・それがダブルが焦る理由だった。だが、戦局はさらに悪化した。
『ソウハイカナイワヨ!!』
群体を蹴りと銃弾で捌くダブル目掛けて、ドーパントが両手を振り下ろし、地面へと電撃を流した。その電撃は群体のものとは比べ物にならない威力とスピードだった。群体を捌くことに集中していたダブルはそれを避け切れず、
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
地面の電撃がダブルに伝わり、そのボディに大きな火花を散らす。思わず地面に膝をつくダブルに一斉に攻撃を仕掛けるドーパントの群体。それを何とか撃退するも、再度本体からの電撃がダブルを襲い、吹き飛ばされる。
「っ・・・!?不味いぜ、フィリップ。こいつは強敵だ!」
『ハ―ミットメモリ自体が強力なメモリに加え、このホテル全体の電気を吸収しているせいでかなり強力になっている。パワーが今まで戦ってきたドーパントの比じゃない!』
「・・・・・どうする!?一番パワーが出るヒートトリガーでもあの電磁バリアは突破できそうにないぞ!?」
『パワーではこちらが不利だ。だから・・・こちらは空間とスピードで勝負しよう!』
「・・・まさか、あのフォームのことか?!・・・まぁ、このままじゃこっちがやられちまうか・・・やるか!」
『ああ!』
本体からの三度目の電撃攻撃を跳躍し、なんとか回避したダブルは機械の上に飛び移り、追撃しようとしてくる群体にトリガーマグナムを投げつけることで妨害し、新たなメモリを取り出した。
『Spark!』『Ninja!』
「S」の文字が刻まれたエメラルドカラーのメモリと、「N」の文字が刻まれたパープルカラーのメモリを起動し、ダブルドライバーへと装填してドライバーを開く。
『Spark! Ninja!』
ダブルの色が青と金色から、エメラルドと紫のカラーへと変わる。腰に装備された専用装備『ニンジャブレイド』に、胸元のデザインも電光と手裏剣を表すものへと変化した。電光の義賊:仮面ライダーダブル スパークニンジャへとメモリチェンジが完了した。
『スガタヤイロガカワッタッテムダヨ!!』
そう叫び、電気の球弾を作り出し、ダブル目掛けて放った。だが、ダブルはそれを壁に飛び移り、回避した。そのまま、ダブルは地面へと着地せず・・・なんと壁を走り、ドーパントに接近した。
『ナンデスッテ!?』
驚きながらも次々と電撃を放ち、ダブルを打ち落とそうとするドーパント。だが、強化された電撃のスピードを上回る速さで壁や天井を次々と飛び移りながら移動していくダブルを捉えることができずにいた。
そして、攻撃範囲に入ったダブルはニンジャブレイドを構え、ニンジャブレイドのギミックであるワイヤーを壁へと射出し、更にスピードを上げドーパントに斬りかかった。電磁バリアにより刃が防がれてしまったが、完全に防げているわけではなく、徐々にニンジャブレイドがバリアを貫通していく・・・だが、それを待ってくれるドーパントではなく、ダブルを左手で振り払った。
「ぐぅぅ!?今のは効いたぜ・・・!」
『このままじゃやられる!次の一撃で勝負を決めよう!』
「ああ!鋭いやつ、おみまいしてやろうぜ!!」
空間適応能力と素早さを活かしたスパークニンジャの弱点・・・それは全メモリの中で耐久性が一番低いことにあった。他のフォームであれば、先ほどの一撃も特段問題はなかったが、今のダブルにとってはかなりのダメージになっていた。
フィリップの提案に乗った翔太は群体の攻撃を躱しながら、ニンジャメモリをニンジャブレイドに装填する。
『Ninja! Maximum Drive!』
ニンジャブレイドとダブルの両足にエネルギーが充填していく。地下空間を飛び移りながら、ダブルはワイヤーを今度はドーパントの背後の壁へと射出し、必殺技を放つ。
「『ニンジャアクセラレート!!!』」
その瞬間、電磁加速されたワイヤーの引き寄せにより、先程以上に加速したダブルがシノビブレイドを逆手に構え、
「『・・・はぁぁ!!!』」
斬りかかる瞬間、加速したダブルは電磁バリアを通過し、すれ違いざまにドーパントに一太刀を浴びせた。そして、ダブルがゆっくりと立ち上がり、時間差で・・・
『イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!?!?』
ハ―ミット・ドーパントが絶叫を上げ、メモリブレイクされた。その爆発と共に群体の体もドロドロと崩壊し、ハ―ミット・ドーパントの支配が解け、ホテルの明かりも元に戻っていた。残されたのは、
「ふぅぅ・・・なんとかなったな」
『ああ。今は彼女に話を・・・聞けそうにないね』
フィリップの言葉にメモリの使用者:仮納照琉奈が意識を失って倒れていた。先ほどの話が気になった二人だったが、今の彼女はすぐに目を覚ます雰囲気がない。
「これは駄目だな。早く病院に運ばないと・・・」
『彼女が使っていたハ―ミットメモリはブロンズメモリだ。出回っている他のメモリに比べて強力なものだが、その分副作用も大きい。話は彼女が回復してからだね』
「そうだな。俺は彼女を病院に運ぶ。警察・・・ジンさんたちにも上手く伝えておくから、そっちは頼んだぜ」
『・・・了解した』
そう言って、ダブルは変身を解除した。翔太の姿が元に戻り、フィリップは・・・
「・・・うん?」
「・・・・・終わったの?」
「ああ。無事に倒したよ。もう危険が及ぶことはない」
意識を取り戻したフィリップは二乃にそう告げる。その言葉に二乃はホッと一息を吐くのだった。
「さぁ、早くここを出ようか。いつまでもここにいてはいざという時に変な疑いを掛けられてしまうからね」
「・・・・・ええ」
そう言って、立ち上がったフィリップは・・・隠れていた『女子トイレ』の扉を開き、先にその場所を後にした。それに続き、女子トイレを後にした二乃の顔は・・・何かを決意したものだった。
「今日は・・・ありがとうね。フィリップ君」
「・・・・・気にしないでくれ。あれも僕の仕事のようなものだからね」
停電が回復し、ごたつくホテルでは警察による事情聴取が行われていた。だが、ハ―ミット・ドーパントを直接見ていないホテルのスタッフや宿泊客にとっては、今回の事件はただの停電としか認識していなかったこともあり、事情聴収はかなり難航していた。
1時間後、翔太から匿名のメールを送られ、警察がようやく事件の経緯を知ることになるのだが、それは後の話だ。
宿泊していた部屋はドーパントの襲撃でテレビの残骸などが散っていることもあり、部屋に戻らず、奇跡的に席が空いていたカフェで一休みするフィリップと二乃。
ホテルのスタッフは早くも業務に復帰しており、カフェも営業を再開していた。流石はプロのホテルマンといったところだろうか。フィリップはホットコーヒーを、二乃は紅茶を頼み、そんな会話をしていた。
「それだけじゃないわ・・・私、今日貴方に会えて本当に良かったわ」
「そうかい・・・君の助けになれたのなら良かったよ」
「それでね・・・私、フィリップ君にどうしても言いたいことがあるの」
「・・・・・?」
顔を赤くした二乃の言葉に理解が追い付かないフィリップは眉を顰めながら、二乃の言葉を待った。そして、二乃が・・・
「あっ!?佐桐!!」
「?!」
立ち上がり叫んだ二乃の言葉に、フィリップは思わず後ろを振り返りそうになったがなんとか堪えた。ここで自分が振り返ってしまえば、翔太と自分の関係を疑われてしまう・・・冷静になり、フィリップは平然のフリをして二乃に問いかけた。
「佐桐?確か、君の家庭教師の一人だったよね?」
「そう・・・けど、ゴメンなさい。よく見たら、違う人だったわ」
「そうかい・・・急に立ち上がって叫んだからびっくりしたよ」
席に着いた二乃にそう言いながら、こっそり後ろを見て翔太がいないことを確認するフィリップ。そのままホットコーヒーに口をつける。
「ゴメンなさい。話の途中だったわね・・・私が言いたかったのはね・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうして私たちが五つ子だって知ってたの?」
「・・・っ!?」
冷たい声色の二乃から告げられた疑問に、流石のフィリップも目を開いた。そして、自分の失言に気付いた・・・自分と翔太の関係を明らかにしてしまったことを・・・
動揺するフィリップが立ち直る前に、二乃の追及が続いた。
「佐桐の奴もたまにはいいこと教えるわよね・・・声は個人それぞれで違うって。あの夏祭りでの仮面を被った佐桐の弟はあなたね?声を思い出してみたら、よく似てたわ。
それに、さっき貴方が意識を失っている間に携帯を見せてもらったわ・・・・・親しくないのにあんなに連絡を取り合ってるなんて・・・・・仲がいいのね」
「っ!?に、二乃ちゃ・・・・・・?!?!」
弁解しようとしたフィリップの視線が歪んだ。思わず顔を手で押さえるが、どんどん意識が遠くなっていくのを感じた。
(まさか・・・飲み物に薬を・・・!?)
「誤魔化せると思った?こっちは同じ顔をした姉妹といつも接してるのよ」
「・・・っ!?」
「・・・あの時は思わず言葉が出ちゃったんだろうけど・・・私は貴方の裏切りを許さない」
「に・・・に、のちゃ・・・」
「・・・バイバイ」
完全に意識を失ったフィリップを置き去り、背を向けた二乃はそう言ってその場を後にした。
ドンドンドン!
「二乃ちゃん!二乃ちゃん!!」
意識を取り戻したフィリップは慌てて二乃の部屋へと来ていた。今は、一刻も早く弁解をしなければならないと思い、扉を叩くフィリップ。だが、
「どうかされましたか、お客様」
「っ・・・あ、あの。ここに泊まっていた女性の方は?」
「・・・先ほどチェックアウトされましたよ」
「!?」
その事実にフィリップは全てが失敗に終わったことを悟った。
一方、キャリケースを引く二乃は夜の道をどこかへと向かっていた。
期末テストまで残り三日・・・
次回 仮面ライダーW
『Nのさよなら/二乃と三玖』
これで決まりだ!
オリジナルフォーム:スパークニンジャの登場でした。
このお話で色々と謎をばらまいてますが、その謎に触れるのは次章からになりますので、ひとまずお忘れ下さい。
それではまた。
今回、スパークニンジャが出たことで、タイトルの『N』が出揃いました。意味は「二乃」「七つ」「ニンジャ(Ninja)」になります。