仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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三玖による二乃説得回です。

ちなみにフィリップが二乃の新しいホテルを突き止められたのは、『地球の本棚』によるチートです(^^;
そこはツッコミなしでお願いします。

それではどうぞ!


第30話 「Nのさよなら/二乃と三玖」

二乃に対するフィリップの説得が失敗に終わった翌日・・・

 

「おい、五月。そろそろ起きろ。遅刻するぞ?」

「むぅ・・・もう少しだけ。あと五分・・・」

「そう言って、10分前も起きなかっただろうが・・・ほら、いい加減にしろ」

 

朝食の用意を終え、エプロン姿の翔太は母親の寝室で寝ていた五月を起こしに来ていた。ここ最近で五月の生活サイクルを理解した翔太はため息を吐きながら、五月の体を揺すっていた。

 

「もうちょっとだけいいじゃないですか・・・二乃・・・あっ!?」

 

思わず習慣で二乃の名前を呼んでしまった五月は、自分の失言に気付きようやく覚醒した。昨夜何があったのか、翔太から聞かされていた五月は、おそるおそる布団から顔を出し、翔太の顔を伺った。

 

「あ、あの・・・」

「やっと起きたか?ほら、朝ごはんが冷めるぞ?さっさと降りてこい」

 

だが、翔太は何事もなかったかのようにそう返し、寝室を後にした。その姿に思わず呆気に取られた五月。急いで着替えを済まし、リビングに降りた。テーブルにはトースト(五月の皿には5枚載せられているのはお約束だ)と目玉焼きとサラダが準備されていた。

 

「お、おはようございます」

「おう、おはよう。飲み物はコーヒーでいいか?」

「・・・いえ、牛乳でお願いします」

 

先程のことが尾を引いている五月は恐る恐る挨拶して席に着く。その間に飲み物を用意して、自分も席に着く翔太。

 

「その・・・大丈夫ですか?」

「うん?ああ、昨日のことか?」

「ええ。私たちのせいで気が沈んでいるのではないかと・・・」

「・・・・・昨日のことは俺たちの落ち度だ。それにまだ全てが終わったわけじゃないだろう?こっちのことは気にせず、お前は自分のことだけを心配してろ。昨日は勉強見てやれてなかったが、順調か?」

「は、はい・・・問題集は終わらせましたよ」

「そうか」

 

そんな会話をしながら、二人は朝食を済ませていく。昨日のことが何もなかったかのように振る舞っている翔太。だが、五月の懸念は当たっていた。

 

(フィリップ・・・どこに行ったんだ?)

 

そう・・・実は今朝からフィリップが家から姿を消してしまったのだ。昨夜、二乃に二人の関係を知られ、ホテルを去ったことを聞いた翔太はすぐさま探そうとしたのだが、

 

『待ってくれ、翔太!僕に・・・僕に時間をくれないか!?』

 

そう言うフィリップのいつもと違う態度に、翔太もその日は二乃を探すことを諦め、フィリップを連れ帰宅したのだが・・・

 

(ガレージに書置き残して消えやがって・・・!まだ組織があいつを探してる可能性だってあるのに、無茶しやがって・・・)

 

普段フィリップが家に閉じこもっている理由は、10年前の時のようにフィリップが攫われることを避けるためである。

 

もちろんファングメモリやファングジョーカーといった自衛手段はあるが、正体がバレないことが一番だからである。ダブルができるだけ秘密を守ろうとするのもそれが理由の一つだ。

 

(まぁ、俺に言ったら、絶対に反対されるだろうと思って、書置きして出ていったんだろうな。フィリップのことだからそこら辺は分かってると思うが・・・・・今のあいつはどこか不安定だからな・・・)

 

昨夜の様子からフィリップのことを案じる翔太。今まで見たことのない感情を露わにした相棒がどうするつもりなのかを考えながら、翔太は朝食を終え、五月と共に登校するのだった。

 

 

 

「そうか・・・二乃が」

「悪い、上杉。あんなに自信満々で任せろって言ったのに、俺まで足を引っ張っちまって・・・!」

「いや。謝らないでくれ・・・さっき俺も二乃を説得しようと昼休みに教室に行ってみたんだが、今日休んでるらしくてな」

 

二乃の説得が失敗に終わったことを風太郎に報告した翔太は言葉と共に頭を下げた。風太郎は頭を上げるように翔太に言いながら、二乃が学校を休んでいたことを伝えていた。

 

「・・・マジか(こうなったら、もう一回情報屋のみんなに動いてもらうしかないか?)」

「二乃は問題集をやっていてくれてたんだろう?・・・だったら、信じて待つしかないだろう」

「・・・そうかもしれないが・・・」

「今は他の問題に集中するしかないだろう。とりあえず、俺はもう一人の問題児のところに行こうと思う。佐桐はどうする?」

「・・・・・俺も行く」

 

フィリップが得た情報を翔太から聞いた風太郎は、まずは目の前の問題から解決していくことに決めたようだ。風太郎の問いかけに翔太は頷き、二人はグラウンドへと向かうのだった。

 

翔太と風太郎とグラウンドに着くと、四葉と陸上部のメンバーが盛り上がっていた。話を聞いていると、どうやら四葉のことを賞賛しているようだった。そんな中、風太郎が会話に割って入った。

 

「中野さん!来週は本番だね!あなたがいなければ、参加すらできなかったよ。天才の走り期待してるよ?」

「・・・お前が天才とか世も末だな」

「・・・!う、上杉さん!佐桐さんも!」

「誰、君たち?」

 

ポニーテールの先輩らしき人物の声に答えることなく風太郎は言葉を続けた。

 

「あんたが部長か?期末試験があるのに大会の練習なんてご立派なもんだな?」

「言いすぎだぞ、上杉。ですが、こいつの言う事にも一理あります。俺たちは彼女にテスト勉強をしてほしくてここに来ました。今日はもう終わりにさせてやってもらえませんか?」

 

棘のある言葉を放つ風太郎とは対照的に下手に出た翔太はそう問いかけた。だが、

 

「・・・それはできないわ。大切な大会なの。試験なんて気にしてらんないよ」

「あ?試験なんて・・・?」

「わーーーーー!!!」

 

一生即発の空気になりかけた時、四葉が二人の間に割って入った。

 

「大丈夫です!ちゃんとやってますよ!」

「・・・四葉、本当か?」

「・・・えっ?」

「本当に大丈夫なのか?」

「・・・・・はい。本当に・・・問題ありませんよ」

 

翔太の問い掛けに四葉は笑顔で答えた・・・それが作り笑いであることは翔太にも・・・風太郎にすら分かった。

 

「もういいかな?もうそろそろ練習を再開したいんだけど?」

「・・・そうか。四葉がそう言うのなら止めねぇよ」

「お、おい・・・上杉?!」

 

あっさりと引き下がった風太郎の態度に慌てる翔太。だが、風太郎は・・・

 

バサッ!

「俺も一緒に走ろう・・・それなら邪魔じゃないだろう?」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

まさかの風太郎の提案に翔太や四葉、先輩でさえも言葉を失ったのだった。

 

が・・・思い出してほしい。ガリ勉でもやし体型、体力など女子にすら負けるかもしれない風太郎が、陸上部の練習に付き合ったりすればどうなるのかを・・・もちろん、結果は、

 

「ゼェ・・・!ゼェ・・・!」

「お前、こうなることは読めてただろう?」

 

当然陸上部のランニングについていけなくなった風太郎は転びそうになったところを四葉に助けられ、息を切らしベンチに座っていた。飲み物を買ってきた翔太は呆れた表情でそう問いかけていた。

 

「・・・ハハハ!アハハハハ!」

「・・・・・う、上杉?」

 

いきなり笑い出した風太郎にドン引きする翔太。だが、息を整え終わった風太郎は翔太から飲み物を受け取り語り出した。

 

「驚いたぜ、あいつ。馬鹿なのは変わりないけど、ちゃんと勉強してやがった。答えは微妙に間違ってたけど、あいつ・・・・・本当に両立させるつもりだ!」

「・・・・・けど、今のままじゃ時間が足りないのも確かだろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・どうする、上杉?」

 

翔太の問いかけに風太郎は黙ったままだった。

 

 

 

部活を終え、歯磨きをしながら四葉は考えごとをしていた。

 

『土日で合宿を行うから!』

 

それは陸上部の部長から告げられた土日の予定についてだった。流石の四葉も断ろうとしたのだが、

 

『あなたは走るために生まれてきたの!私があなたを立派なランナーにしてあげる』

『は、はい・・・・・』

 

(私、本当は・・・・・)

 

歯を磨く手が止まり、スマホでメッセージを打つ四葉。風太郎へと謝罪のメール打とうとした。本心を告げようとしたが、そのメッセージを消しては打ち直しを繰り返していると・・・

 

「送らないの?」

「うわぁっ!?い、一花~!心臓に悪いよ!?」

「私も歯磨き~」

 

いきなり現れた一花はそのまま歯磨きを始めた。ほっとした四葉はそのままうがいをして、洗面所を後にしようとしたが・・・

 

「じゃあ、うがいしよーっと」

「・・・待って。もう、まだ歯ブラシ咥えてただけで全然磨けてないじゃん?ほら貸して。やってあげる」

「で、でも・・・」

「いいから、いいから。前はよくしてあげたじゃん」

 

そう言って四葉から歯ブラシを強引に取り、四葉の歯を磨き始めた一花。

 

「はーい、あーん」

「もう子供じゃもごご・・・!に、苦~~!!」

「私の歯磨き粉。これが大人の味なのだ!四葉にはまだ早かったかな?」

「よ、余裕のよっちゃんだよ!」

 

そう言って、平気ぶる四葉の歯を磨き続ける一花。そして、口の中を見て・・・

 

「ふふ・・・体だけ大きくなっても変わらないんだから・・・ほら、無理してるから口内炎できてるよ」

「わ、私無理なんて・・・!?」

「こーら!喋らない!」

 

慌てて否定する四葉の言葉を遮り、一花は優しく言葉を続けた。

 

「どれだけ大きくなっても四葉は妹なんだから・・・・・

 

お姉ちゃんを頼ってくれないかな?」

「っ・・・!?」

 

一花の言葉に四葉は口を開けて、言葉を失った。だが、つい本心が出てしまった。 

 

「私・・・・・・部活辞めちゃダメかな?」

 

四葉の本心に一花は・・・

 

「辞めてもいいんだよ?それが・・・四葉のやりたいことじゃないのならね?」

 

そう返す。だが、思わず本心を言ってしまったことに気付いた四葉は慌てて首を振り、慌て出した。

 

「や、やっぱだめだよ!みんなに迷惑かけちゃう!勉強とも両立できてるんだ!一花がお姉さんぶるから変なこと言っちゃった!同い年なのに、あはは!!」

「・・・こんなパンツ穿いているうちはまだまだお子様だよ」

「わーーーっ!!!」

 

赤面した四葉は脱兎の如く洗面所から逃げ出した。

 

「しまっといて!上杉さんが来た時は見せないでね!」

「はーい!・・・・・さてと」

 

四葉が洗面所から見えなくなったところで一花はスマホを取り出した。そのスマホは通話中になっており、その相手は・・・

 

「ちゃんと聞こえてたかな?二人とも?」

『お子様パンツ』

『・・・四葉のプライベートな事情は聞かなかったことにしといてやる』

「それはよかった」

 

グループ通話で先ほどの会話を聞いていた風太郎と翔太(五月もスピーカーモードで会話を聞いている)はそう答えた。

 

「私、明日陸上部のとこに行こうと思う・・・君たちはどうする?」

『行くに決まってる・・・四葉を解放してやるぞ!!』

『そうと決まれば、動くだけだな!』

 

通話を終え、覚悟を決めた一花は表情を切り替えた。

 

「よし!私は私で頑張るからさ・・・三玖、任せたよ」

 

そう言って、現在別行動している三玖にエールを送ったのだった。

 

 

 

(さてと・・・・・あそこか)

 

翌日。三玖はある高級ホテルに来ていた・・・二乃の恰好をして。五つ子の中でも入れ替わりの変装が得意な三玖は、その特技(?)を活かして、ある作戦を考えていた。

 

林間学校のすり替え(一花のクラスメイトの前田を騙した件)でもその再現度の高さはお墨付きであった。

 

そうして、ホテルの入り口をくぐった時だった。三玖はホテルのロビーが騒がしいことに気付いた。どうやら誰かが騒いでいるようだ。何事かと思い、三玖がロビーに近づくと、

 

「だから!そういうことはお答えできませんって!?」

「それは了承している。だが、僕は決して怪しい者じゃない!彼女に用があって来てるんだ!彼女に会ってどうしても謝らなければならないんだ!!」

「ですから、お客様のお部屋の番号をお答えするわけにはいかないんですよ!」

(・・・いるんだ、こんな人。どうでもいいけど、早くしてくれないかな。只でさえ時間がないのに・・・・・)

 

ロビーで詰め寄る男を見て、イライラし始める三玖。ドラマで見たことあるシーンに最初は感心していたが、こっちも急ぎの案件であることを思い出したからだ。

 

「ともかく!何も申し上げることはありません!お引き取り下さい!!」

「・・・くっ!」

 

ようやく諦めた男はロビーを離れた。そして、三玖の近くに来た時だった。

 

「っ!?に、二乃、ちゃん・・・!」

「・・・えっ?」

 

いきなり二乃の名前で呼ばれた三玖は驚き、反応が遅れてしまった。男も驚いていたが、何かに気付いたようだ。

 

「うん・・・?違う。君は・・・二乃ちゃんの姉妹かい?」

「えっ・・・は、はい」

「そうか・・・・・・・・・・そうだ!君になら頼めるかもしれない!!」

「???」 

 

男の言葉に訳が分からない三玖は頭の上にはてなマークを浮かべた。

男・・・フィリップは何かを思いついたように笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

「わー、すごーい。お兄さん、ありがと!」

「は、はいっ!もう鍵を忘れないように気を付けてくださいね」

「はーい!」

 

そんなやりとりをして、ホテルマンに鍵を開けてもらう三玖。二乃の変装をした三玖のことをホテルマンは他人だとは疑うことなく扉を開けた。もちろん部屋にいたのは・・・

 

「お邪魔します」

「私にはプライバシーは無いのかしら?」

 

不機嫌そうに三玖を出迎えた二乃だった。ローラーを顔に当てながら、自身とそっくりな変装をした三玖を見て、更に不機嫌になり眉を顰める。

 

「何しに来たのよ?言っとくけど、何言われようと帰らないから!」

「・・・お茶淹れるけど飲む?」

「私の部屋なんだけど!?」

 

マイペースな三玖の行動にツッコミを入れる二乃。それに関わらず、三玖はポッドを使いお茶を淹れていく。

 

「はぁ・・・今日はあんたなのね、三玖。まぁ、誰が来ようとも意味ないだろうけど」

「・・・ねぇ、これどうやって使うの?」

「・・・知らないわよ。勝手にしなさい」

 

二乃の話を無視し、ポッドの使い方を尋ねる三玖。呆れた二乃は勝手にしてくれとばかりに手を振って答えた・・・が、

 

ガチャガチャ!

「・・・?」

ガチャガチャ!

「・・・あっ」

ガチャガチャガチャ!

「熱っ」

「あー、もう!鬱陶しい!私がやるわ!紅茶でいいわね?」

 

三玖の不器用さに我慢の限界が来た二乃が動いた。

 

「緑茶がいい」

「図々しいわ!」

 

三玖の我儘に鋭いツッコミが炸裂した。ここに翔太がいれば感心していただろうが、二乃の怒りが増すことになるだけであり、今はそのことは置いておこう。

 

緑茶と紅茶を淹れ、ソファに座る二人。紅茶に二本目のスティック砂糖を入れる二乃を見て、

 

「そんなに入れると病気になる」

「私の勝手でしょ」

 

三玖の忠告を無視し、更に砂糖を入れていく二乃。

 

「その日の気分によってカスタマイズできるのが紅茶の強みよ」

「よくわかんない。甘そうだし・・・」

「そんなおばあちゃんみたいなお茶飲んでるあんたには分からないわよ」

「この渋みが分からないなんてお子様」

「誰がお子様よ・・・って、馬鹿らし」

 

いつもの口論が始まるかと思いきや、珍しく二乃が引き下がった。

 

「こんな時にあんたとまで喧嘩してらんないわ」

(大人の対応・・・)

 

紅茶を飲みながらそう答える二乃を見て、感心する三玖。

 

「これ飲んだら帰ってよね?そもそもなんで新しいホテルがバレたのかしら・・・」

「前のホテルに一昨日行ったんだ・・・でも、そこでホテルから飛び出す二乃を見たの」

「尾けてきたのね・・・ガチのストーカーじゃない」

 

三玖の行動に引く二乃。だが、そんな言葉などお構いなく三玖は言葉を切り出した。

 

「ねぇ、二乃・・・・・フィリップって誰?」

「!?!?!?」

 

三玖の言葉に二乃の動きが止まった。何故三玖からフィリップの名前が出たのか分からない二乃は黙ったまま三玖を見つめていた。

 

「その人と何かあったの?」

「・・・・・最低な人よ。あんな人とは思わなかったわ・・・」

「・・・な、何があったの・・・?」

 

雰囲気が変わり憤怒のオーラが漏れ始めた二乃を見て、おそるおそる尋ねる三玖。

 

「聞いて驚きなさい!!あの人、佐桐と共謀して私を騙したのよ!?」

「・・・なんだ」

「・・・・・・・・・・・・・リアクション薄―――!?」

 

三玖の淡白なリアクションに思わず叫ぶ二乃。共感してもらえると思っていた二乃はショックを受けた。

 

「酷いんだから!もっと反応しなさいよ!?」

「・・・だって私たちがいつもしてることと同じでしょ?」

「・・・そう、だけど・・・」

 

三玖の反論に言葉が詰まってしまう二乃。歯切れが悪くなった二乃はフィリップとの出来事を思い出していた。

 

五つ子裁判の時、家出した際に出会った時のことを・・・

 

林間学校で一緒に踊ったことを・・・

 

ホテルでドーパントから守ってくれたことを・・・

 

「許さないわ・・・!許さない!!あの時から私のことを騙してたなんて!」

 

顔を真っ赤にして憤る二乃。そんな二乃を見て、三玖は懐からあるものを取り出した。

 

「これ・・・」

「・・・なによこれ」

「・・・手紙。その、フィリップって人から」

「!?!?!?」

 

三玖が差し出した手紙を見て驚く二乃。驚いたままの二乃を置いて、説明を続ける三玖。

 

「さっきホテルのロビーで会ったんだ。私のことを見て二乃と一瞬勘違いしてたけど、すぐに私と二乃が別人だって気付いてた。そして、二乃にこの手紙を渡してほしいって・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・読まないの?」

「・・・あんな奴の手紙なんて・・・!」

 

そう言って、手紙を受け取りを拒否する二乃。だが、三玖は退かなかった。

 

「読んであげて。お願い・・・」

「・・・いい加減に・・・っ!?」

 

『・・・二乃・・・拾って』

『二乃・・・謝って下さい』

『家族の誰かがいない方がいいなんて、絶対にない!君が姉妹を想うように、姉妹たちも君のことを大切に思ってるはずだ!』

『君たちは・・・君たち5人は一緒にいるべきじゃないのかい?』

 

三玖の手を振り払おうとした時、二乃の脳裏に先日の出来事が蘇った。そして、次に蘇ったのはフィリップの言葉だった。払う手を下げ、手紙を受け取った二乃は中身を開いた。 

 

『二乃ちゃん

本来なら直接会って謝るべきだとは思うが、ホテルには入れないし、君が会ってくれるという保証もないことに気付いたので、君の姉妹に手紙を託すことにし、今この手紙を書いている』

「・・・・・細かいわね」

 

手紙にツッコミを入れながら手紙の先を読み続けた。

 

『・・・すまなかった。はっきり言って、僕は君に隠し事をすることに対して、最初は罪悪感など全くなかった。むしろ、君に関わることは僕にとってはマイナスにしかならないと考えていた』

「・・・っ!?」

『君たちに関わることは僕たちにとってリスクが付きまとうことになる・・・それが僕の第一印象だった。だが、君と出会って、その考えは変わった』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『君が家族のことを大切にしているのを見て、最初は良い子だと思った。

君とダンスを踊った後、これ以上会うべきではないと分かっていても、会いたいと思ってしまった。

君を傷つけた時には・・・僕の胸もまた痛くなった。

 

こんなことを僕が言えた義理ではないことは百も承知だが・・・それでも聞いてほしい。

 

君は姉妹と一緒にいるべきだ。五人一緒にいるべきと僕は思う。

 

翔太も上杉風太郎もその思いは一緒だ。

 

僕のことを嫌いになってもいい。

二度と姿を現すなというのならそれに従う。

土下座をしろというのなら、君の気が済むまで謝り続けよう。

 

それでも・・・・・君には家族と一緒にいてほしい。僕のように家族を失う前に・・・』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「二乃・・・何が書いてあったの?」

「・・・・・あんたには関係ないでしょ」

「でも・・・二乃、泣いてるよ?」

「・・・!?」

 

三玖の指摘に、手紙を読み終えた二乃は自身が涙を流していたことに気が付いた。慌てて涙を拭う二乃。

 

「・・・なんでもないわよ。私の都合を知って、勝手なことを書いてただけよ!」

「でも・・・その人・・・二乃のことを大事に思ってると私は思う」

「なんで・・・なんであんたにそんなことが分かるのよ?!」

「・・・そのフィリップって人。私の目の前でその手紙を書いていたけど・・・必死だったよ。このホテルに着いた時も、二乃に会おうと必死だった。そんな人が悪い人だとは思えない」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「その人も二乃がこのままじゃいけないと思って来てくれたんじゃないの?二乃が家に戻りたいのなら・・・」

 

三玖の言葉に二乃はカッとなってしまった。

 

「いい加減にしてよ!!」

「・・・!?」

「みんなして、戻ってこい、戻ってこい・・・なんで一緒にいないといけないのよ!?いるだけでストレスが溜まるわ、昔と違って好き嫌いも変わっていってすれ違いも増えたわ!

バラバラの私たちがそこまで一緒にいる意味って何よ!?」

「・・・・・家族だから」

『君には家族と一緒にいてほしい』

「・・・!」

 

三玖の言葉に、フィリップの一文を思い出した二乃。言葉を失っていると・・・

 

「それだけじゃ変?二乃は私たちが変わったと思ってるんだろうけど・・・

私から見たら二乃も十分変わってる」

「か、変わったって・・・何がよ・・・?」

 

そう尋ねられ、三玖は紅茶を指さした。

 

「昔は紅茶飲まなかった」

「・・・それだけ!?」

 

そんな些細なこと!?と驚く二乃に関わらず三玖は言葉を続ける。

 

「私たちは1人20点の五分の一人前だから・・・」

「・・・?どういう意味よ?」

「・・・その問題」

「あ!勝手に見ないでよ!」

 

二乃の制止も聞かず、三玖は二乃が解いていた問題用紙を引っ張り出す。そして、社会の問題の一部を指さし、

 

「問三が違う。正解は長篠の戦い」

「・・・!何よ?自分は勉強しましたって言いたいの?」

「・・・ううん。元々好きだから・・・戦国武将」

「・・・は?戦国武将?・・・・・あんなおじさんが好きなの!?」

「うん」

 

三玖の告白にすっとんきょんな声で驚く二乃。

 

「これが私の20点・・・そして、」

 

二乃の紅茶を飲んだ三玖が放った一言は・・・

 

「やっぱ・・・甘すぎる・・・!」

「何やってんのよ・・・」

 

砂糖を入れ過ぎた紅茶に顔を顰める三玖。だが、

 

「でも・・・この味は二乃がいなければ知らなかった」

「・・・あっ」

「確かに昔は5人そっくりで諍いもなく平穏だった。でもそれじゃあ20点のままだよ?

 

笑ったり、怒ったり、悲しんだり・・・

一人一人違う経験をして、足りないところを補い合って・・・

 

私たちは一人前になろうよ。

 

だから違ってていいんだよ」

 

三玖の言葉を受けた二乃は衝撃を受けていた。一つ下の妹の言葉に、引っ込み思案だった三玖がいつのまにか成長していたことに驚きを隠せないでいた。

 

「因みに・・・二乃がいないからうちの食事はめちゃくちゃ。栄養バランスボロボロ」

「そこは自分たちでなんとかしなさいよ・・・」

 

三玖の暴露に呆れる二乃だったが・・・

 

「ふん・・・そのお茶よこしなさい」

 

そう言って、三玖の緑茶を飲んだ二乃の一言は・・・

 

「苦っ・・・こんなの飲もうとは思わなかったわ。でも、これでハッキリしたわ。やっぱり紅茶の方が勝ってるって」

「紅茶だって元は苦い」

「こっちは気品ある苦味なのよ。きっと高級な葉から抽出されてるに違いないわ!」

「緑茶は深みのある苦味。こっちの方が良い葉を使ってる」

 

そんな口論を始める二人だったが、二乃の表情は穏やかなものだった。そんな口論でさえ、今の二乃にとっては、変わったからこそできた新たな姉妹との出来事の一つだと認識できたからだろう。

 

「いいわ。じゃあ調べましょう?そこら辺の雑草を使ってても泣くじゃないわよ?」

「・・・二乃こそ」

 

そう言って、グーグルで検索を始める二人。フィリップがいたら、気が済むまで『地球の本棚』で検索しようとするだろうが、今は置いておこう。その検索結果は・・・

 

「紅茶も緑茶も同じ葉?」

「発酵度合いの違い・・・ふふっ」

「ハハハハ、何それ!」

 

まさかの事実に笑ってしまう二人。すると、二乃が、

 

「面白いわ!今度、みんなに教えてあげ・・・・・・・」

 

そこまで言いかけて、二乃は気付いた・・・自分の本心に。

 

「・・・過去は忘れて今を受け入れるべき・・・いい加減覚悟を決めるべきなのかもね」

「・・・二乃?」

 

そう言って、二乃は棚から何かを取り出した。

それを見た三玖は・・・青ざめた。

 

なぜなら、二乃が取り出したのはハサミだったからだ。

 

「三玖」

「(ビクッ!)・・・はい!」

 

ゆらりと、だが静かに自分の元に近づく二乃に恐怖を感じた三玖。

だが、二乃の歩みは止まらない。

 

「あんたも覚悟しなさい」

「・・・!?(誰か・・・助けて?!)」

 

三玖は今、命の危険を感じていた。

 

 

 

次回 仮面ライダーW

 

『Nのさよなら/四葉解放作戦!』

これで決まりだ!

 




今回の手紙の部分でフィリップの心情が出ましたが、
更に深掘りするのは先のお話になります。

それではまた。
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