キリが良かったので、連日投稿です。
マルオさんが悪者っぽくなってますが、作者が嫌いだからそうしてる、とかではないのでご安心ください。
それではどうぞ!
追記 ゼロワン33話視聴しました。
唯阿さんの『辞表パンチ』の一撃に痺れましたね!
1000%社長はどうなることやら・・・
「これは酷い・・・」
「あんなに勉強したのにこの結果か~」
そんな声を上げるのは、期末試験の結果を見ていた五月と一花だった。マンションで風太郎と翔太を待つ5人の前には期末試験の成績表があった。残念ながら、結果は赤点回避とまではならなかったが、前回の結果に比べれば5人共大きく進歩した結果だった。
「改めて私たちって馬鹿なんだね」
「二乃、元気出して」
「あんたは自分の心配しなさいよ」
思い通りの結果にならなかったことに落胆する三玖の横で、四葉の励ましを受けた二乃が反論していた。
「丁度家庭教師の日だし。今日は期末試験の反省がメインだろうね」
ピンポーン
「おっ。噂をすれば・・・」
そんなことを一花が言っていると、インターホンのチャイムが鳴った。出迎えに行った五月を見送りながら、五つ子たちは今日の勉強会の内容を話していた。
「フータローにしこたま怒られそう」
「多分、佐桐さんが途中で止めてくれるよ!」
「四葉、なんであんたそんなに嬉しそうなのよ」
「あはは・・・結果は残念だったけど、またみんなと一緒に頑張れるのが楽しみなんだ」
「・・・そういうこと」
そう言う二乃の頬も少し赤くなっていたので、思うことは同じだったようだ。そうこうしていると、五月が残念そうな表情をしながら振り返って告げた。
「佐桐君たちじゃありませんでした」
そう、インターホンを鳴らしたのはマルオの運転手である江端だった。
「失礼いたします、お嬢様方」
「なんだー。江端さんか?」
「今日はお父さんの運転手お休み?」
「小さい頃から江端さんにはお世話になってるけど、家に来るとか初だよね?」
「ホホホ。何を仰る。私から見たらまだまだ皆様小さなお子様ですよ」
「それにしても、フータロー君たち遅いね」
「江端さんはどうしていらしたのですか?」
江端の登場に盛り上がりながら、風太郎たちが来るのを待つ五つ子たち。そんな中、五月は江端がここに来た理由を尋ねていた。
「本日は臨時家庭教師として参りました」
江端の言葉に五つ子たちが一瞬フリーズした。が、すぐさま我に返った。
「そ、そうなんだ」
「江端さんは元は学校の先生だもんね」
「あいつら、揃ってサボりか」
「体調でも崩したのかな?」
そんな推測をしていく五つ子たちだったが、江端は非情な事実を述べた。
「お嬢様方にお伝えしなければならないことがあります・・・
上杉風太郎様は家庭教師をお辞めになられました」
「「「「・・・・・え?」」」」」
「それと、家庭教師の後任を予定されておられました佐桐翔太様もこれを辞退されました。新しい家庭教師が見つかるまで私が勤めさせて・・・」
「ま、待って、待って!」
「何かの間違いだよね、江端さん?」
「もー、ずれた冗談は・・・」
「事実でございます。旦那様から連絡がありました。お二人は先日の期末試験を終えた時点で契約を解除されました」
その事実に今度こそ五つ子たちの思考は完全に停止した。
誰も何も言えない状態が続いた。ショックのあまり、誰も驚きの声を上げることができずにいた。そんな中、最初に正気に戻った一花がその事実を飲み込んだ。
「それじゃあ・・・
フータロー君たち・・・もう来ないの?」
「嘘・・・・・」
「やっぱり・・・赤点の条件は生きてたんだ」
ショックで目を見開き呆然とする三玖。その時、二乃が零した言葉にようやく我に返った。
「どういう、こと?」
「試験の結果のせいよ。やっぱりパパに言われてたんだわ」
試験前に、二乃は風太郎に以前のようなノルマがないか確認を取っていたのだ。その際に、風太郎はノルマは存在していないと言っていた。そして、その事実を肯定するように江端が言葉を発した。
「それは違うと思われます。上杉様はご自分からお辞めになることを告げられたと伺っております。佐桐様も、旦那様に直接後任を辞退することを告げているのを聞きました」
「じ、自分からって・・・?」
「二人とも・・・どうして・・・?」
「そんなの納得いきません。彼らを呼んで直接話を聞きます」
四葉と三玖が顔を見合わせながら困惑する中、五月は翔太たち自身に確認しようと動こうとしたが、それを江端が制止した。
「申し訳ありませんが、それは叶いません。お二人のこの家への侵入を一切禁ずる・・・旦那様よりそう承っております」
「な、なぜそこまで・・・?」
「私が行くよ・・・江端さん、そこを通して」
「なりません。臨時とはいえ、私は家庭教師の任を受けております。最低限の教育を受けて頂かなければ、ここを通すわけにはいきません」
そう言って、五つ子たちの行く手を阻む江端。そして、懐から何かを取り出した。
「この先を行きたければ、この問題用紙を解いて行ってもらいましょうか!」
「「「「「・・・・・えええええぇぇぇぇぇ!?!?」」」」」
「江端さんの頭でっかち!」
「ホホホ!」
問題用紙を五つ子たちに突き付け、どこぞの門番風に告げる江端。笑みが零れていることから、確実にこのシチュエ―ションを楽しんでいるのは確実だった。
そんなかんやで、問題に取り組み出した五つ子たち。
「これが終わったら、行ってもいのよね?」
「ええ、ご自由になさってください」
江端に確認し、再び問題を解き始める二乃。話しながら解いていると、話題は風太郎たちが家庭教師を辞めた件に移った。
「全く。あいつらどういうつもりよ」
「私はまだ信じられないよ」
「本人たちの口からちゃんと聞かないとね?誰か終わった?」
「私はもうすぐです」
「私も」
順調に問題を解いて行く五つ子たち。
「この問題、比較的簡単だよ。きっと江端さんも手心を加えてくれてるんだよ」
「そうね。でも、前の私たちなら危うかった・・・自分でも不思議なほど問題が解けるわ。悔しいけど、全部あいつらのおかげだわ」
改めて、風太郎たちの凄さを実感する五つ子たち。だが、最後の問題で全員の手が止まってしまった。
「あと一問・・・あと一問なのに・・・!」
「私もあとは最後だけです・・・」
「ホホホ。その程度も解けないようであれば、特別授業に変更致しますよ?」
「「「「「~~~っ!!」」」」」
「こ、これ前にやったよね?」
「うーん・・・」
「なんだっけなー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
最後の問題で姉妹たちが頭を悩ませる中、黙っていた五月が意を決したように言葉を切り出した。
「あの・・・・・カンニングペーパー見ませんか?」
「!」
「それって・・・期末の?」
そう・・・五月が提案したのは、風太郎が冗談で提案した秘策・・・カンニングペーパーの覗き見だった。驚きながらも、それを忍ばせた筆箱に目線が行く五つ子。
「今は有事です。なりふり構ってられません」
「五月が上杉さんみたい!」
「あんた変わったわね・・・」
四葉と二乃の感想通り、五月の言葉は風太郎によく似ていた。眼鏡を手で直しながら告げる五月の表情までもそっくりだったのは気のせいではないはずだ。
そして、江端が背を向けた瞬間、チャンスと全員が筆箱からカンニングペーパーを取り出した。
「今だよ!」
「はいっ・・・・・あれ?」
「どうしたの、五月?」
「・・・なんというか、私のはミスがあったみたいです」
「じゃあ、私の使おう」
困惑する五月の横で、一花が自分のカンニングペーパーを開いた。が、そこに書かれていたのは・・・
『安易に答えを得ようとは愚か者め』
答えなどではなく、諫言だった。そして、それは風太郎の字であった。
その言葉に呆然とする五つ子だったが、どこか納得した部分があった。
「なーんだ」
「初めからカンニングさせるつもりなかったんじゃない?」
「でも、フータローらしいよ」
「ですが・・・どうしましょうか?」
「・・・!待って。何か続きがある・・・②?」
「②って・・・私のかしら?」
一花の言葉に、自分のカンニングペーパーを開く二乃。そこには、
『カンニングする生徒になんて教えてられるか→③』
「・・・いや。自分で言ったんじゃない」
「・・・あっ、繋がってる・・・これ、上杉さんからの最後の手紙だよ」
四葉の言葉に次々と手紙を開いていく五つ子たち。
『これからは自分の手で掴み取れ→④』
『やっと地獄の激務から解放されてせいせいするぜ→⑤』
「・・・・・あはは。やっぱり辞めたかったのかな?私たちが相手だもん。当然といえば、当然だよね」
「最後、五月だけど・・・どうしたの、黙って・・・五月?」
二乃に呼び掛けられ、五月はそれを読み上げた。
「『だが、そこそこ楽しい地獄だった。じゃあな』
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
風太郎の最後の言葉に、これまでの日々を思い出した五つ子たち。そんな中、五月は自身の筆箱にもう一枚の紙が入っていたことに気付いた。そこには、
『姉妹たちと仲良くな。お前との付き合いも悪くなかったぜ S.S.』
「・・・っ!?」
それは佐桐から、五月にだけ当てたメッセージだった。ここに来れなくなることを察した翔太が、風太郎がカンニングペーパーをすり替えた際に一緒に仕込んだのだ。
それぞれが干渉に浸っていると、四葉からポツリと言葉が零れた。
「私・・・まだ上杉さんたちに教えてもらいたいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私だって・・・フータローなしじゃ・・・もう・・・」
「そうは言ってもあいつらはここに来られないのよ。もうどうしようもないわ」
四葉に釣られ、本音が漏れ始める一同。そんな妹たちを見つめていて一花が・・・あることを切り出した。
「ねぇ、みんな。私から提案があるんだけど・・・」
一花の提案に全員が耳を近づける。その提案を聞いた一同は・・・
「え・・・」
「それ本気・・・?」
「うん、ずっと考えてたんだ」
「でも、フータローたちは納得してくれるかな?」
「・・・!そこはなんとかなるかもしれません。むしろ彼は協力してくれるはずです」
「それじゃ、決まりだね」
一花の言葉に全員が頷き、その提案を実行するために動き始めた。
「おや、どうなされました?」
「江端さんもお願い・・・協力して」
「!」
そう告げる一花の・・・いや、五つ子たちの目を見た江端は驚いた。昔は送迎の車の中でぐっすり眠っていた五つ子たち。が、目の前の彼女たちの目には決心の火が宿っていたからだ。
「(あのお嬢様方が・・・そうですか)・・・大きくなられましたな」
今の五つ子たちの成長を喜びながら、彼女たちの提案を聞き始めたのだった。
場所は変わり、喫茶店『ウィンドウ・シティ』。
ある人物に呼び出された翔太はマスターが淹れたコーヒーを飲みながら、その人物を待ち続けていた。すると、ドアが開くとともに鐘が鳴り、翔太が入り口を見ると、
「よう、久しぶりだな・・・・・五月」
「・・・・・ええ。お久しぶりです、佐桐君」
翔太の挨拶に五月はそう返し、翔太が座っている席の反対側に座った。
「考えましたね、佐桐君。あなたから私たちに連絡を取ることは禁止されてますが、私からあなたに連絡するのは禁止されてませんもんね。特に、探偵の『風都』さんに連絡を取るのなんて尚更ですよね」
「よく気付いたな。お前たちのことだから、もしかしたら気付かないかもと思ってたんだが・・・」
「・・・どういう意味ですか」
「冗談だ。それじゃ、依頼を聞こうか?」
「・・・実は・・・」
翔太に依頼の内容を聞かれ、全員で決めたことを話し始めた五月。それを聞いた翔太は・・・
「・・・お前ら、本気・・・なんだな?」
「・・・はい」
「分かった。上杉の居場所はこっちで突き止めておく。任せとけ」
「・・・お願いします」
多少驚いた翔太だったが、五月たちの覚悟も固いのだと理解し、その思いに応えることにした。
「それで?決行日はいつなんだ?」
「・・・それは」
作戦の打ち合わせをしていく二人。そして、月日は流れ・・・
12月24日。
行き交う人々がクリスマスイブを楽しみ喧騒する中、看板片手にサンタ姿の青年がケーキ売りの声掛けをしていた。寒い中、白い息を大きく吐きながら、バイトに励む青年。その青年に声を掛ける人物がいた。
「すみません、ケーキを一つくれませんか?」
「はい!・・・って、お前。なんで?」
「・・・クリスマスイブまでバイトとは精が出るな。上杉」
「・・・佐桐」
サンタ姿の青年・・・風太郎に声を掛けたのは翔太だった。そんな翔太の少し後ろには、
「もっともケーキを欲しがってるのはあいつらだけどな?」
「・・・!・・・お前ら」
翔太が指さした方向には、風太郎を注視する五つ子たちの姿があった。
「ケーキご注文のお客様~・・・」
やる気のない声でケーキの箱を持ってきた風太郎。その先には、
「おおー!上杉さん、サンタコス似合ってますね!」
「クリスマスイブまで働いているのなんて偉いねー」
「・・・というか寂しい」
「ケーキも遅いわ」
「三玖も二乃も言い過ぎですよ!?」
風太郎のアルバイト先のお店でケーキの準備ができるのを待つ五つ子たちが席に着いていた。そこに翔太の姿はなかった。
「仕方ないだろ。今日はクリスマスで繁盛・・・」
「ちょっと。私たちお客。あんた店員」
(イラッ・・・佐桐の野郎・・・!やっかいなもん押し付けやがって!?)
『お前がいなくなった理由をあいつらも知りたがってるんだ。少しでいい。あいつらに付き合ってくれ。な?』
(そう言って、とっとと姿消しやがって・・・!仕方ない、さっさと済ませてバイトに集中しないとな)
先程の翔太の言葉を思い出しながら、心の中で溜め息をついた風太郎は意識を五つ子たちに切り替えた。
「・・・さっさとお持ち帰り下さいませ~」
「あーら、できるじゃない?」
風太郎の棒読みでの接客スタイルに、半眼で笑みを浮かべて答える二乃。そんな空気に割って入ったのは五月だった。
「すみません、上杉君」
「・・・なんだよ、五月まで」
「ケーキの配達ってできますか?やっぱり家に届けてほしいのですが?」
「はぁ?」
まさかの提案に風太郎から間抜けの声が漏れた。まさかの面倒事の増加に風太郎のテンションが更に下がった。
「配達なんてやってないけど」
「えー、落としちゃうかもしれないしな~」
「あんた、か弱い乙女に持たせるつもり?」
「雪降ってて滑っちゃうかもね」
「そこをなんとかできませんか!?」
「すぐそこなので、お願いします!」
「店長―――!!やばい客がいまーす!!」
1対5では圧倒的に不利だと悟った風太郎は店長へと助けを求めるべく叫んだ。だが、彼の助けは無残にも届くことはなかった。
「いいよ、行ってきなよ」
「店長!?」
「もう店も閉める。こっちはいいから、そっちに行ってあげなよ」
そう言って、カウンター越しに店長は風太郎に向けて、
「上杉君・・・メリークリスマス!」
(・・・このバイトも辞めよっかな)
親指を立てながらウィンクし、風太郎の健闘を祈った。そのメッセージに風太郎は勤め先を間違えたかもしれないと思うのだった。
「四葉。雪の上は危ないよー」
「お子様なんだから、滑っても知らないわよ?」
帰路へと着いた五つ子たちと(ほぼ無理矢理)ケーキの配達に向かうことになった風太郎が雪道を歩いていた。先行する四葉に一花と二乃のお姉さんコンビから注意が飛んだ。
その最中、風太郎はあることに気付いた。
「おい。お前らの家はこの道じゃないだろ?」
「ちがうよー」
「こっちこっち」
(こいつら・・・わざと遠回りを・・・)
五つ子たちの思惑に思わずため息が漏れそうになるも、勝手にいなくなったのは自分の方だと思い、風太郎は口を開いた。
「あのさ・・・黙って辞めたことは悪かった。佐桐に後任を頼んだんだが、あいつも色々あったみたいでさ・・・だから俺もあいつももう家庭教師には戻れないんだ・・・」
「・・・これを見て下さい」
風太郎の懺悔を無視し、立ち止まった五つ子たち。代表して、五月が一枚の紙を風太郎に見せた。
「この人が新しい家庭教師です。これはその方の履歴書です。上杉君には見ておいてほしかったんです」
「・・・・・そ、そうか。佐桐が後任を断ったと聞いた時には心配していたが・・・意外に早く見つかったんだな。東京の大学出身で元教師か・・・へぇ~。優秀そうな人で良かったじゃないか。見た目は怪しいがな」
履歴書の男性の写真は笑っていた。人に親しみを与える笑み・・・自分とは全然違うタイプだ。経歴もかなりいい。彼なら、自分と違って五つ子たちともうまくやってくれるだろう。
風太郎は履歴書を見てそう思っていた。本当は佐桐に後任をお願いしたかったのが風太郎の本音だったが、この人が家庭教師を務めることで五つ子たちが笑顔でいられるのなら・・・その姿を想像した風太郎の口から・・・
「この人ならお前達を赤点回避まで導いてくれるだろう・・・」
思わず弱気の発言が漏れた。だが、
「いいの?」
「・・・二乃?」
「このまま次の人に任せて私たちを見捨てんの?」
「・・・!」
二乃の言葉に、本心を突っつかれた風太郎は目線を反らす。その口からは思わず言い訳が出てしまった。
「俺は二度のチャンスで結果を残せなかったんだ。佐桐の助けを借りてまでもだ・・・そんな調子じゃ次の試験だってうまくいくとは限らない。だったら、プロに任せるのが正解だ・・・・これ以上、俺の身勝手にお前らや佐桐を巻き込めない・・・迷惑をかける訳にはいかないんだ」
風太郎の本音・・・やっとそれを知った五つ子たち。だが、それで止まる彼女たちではもうなかった。
「迷惑?・・・そうね。あんたはずっと身勝手だったわ。そのせいでしたくもない勉強をさせられて、必死に暗記して公式覚えて・・・でも問題を解けたら嬉しくなっちゃって
佐桐もよ。あいつが来なかったら、あたしは大事なものを見失ってたと思う。私だけが飛び立てず、いつまでも別れを告げられずにいたと思うわ
そうよ・・・ここまで来れたのは全部あんたらのせいよ!だったら、最後まで身勝手でいなさいよ!!謙虚なあんたなんて気持ち悪いわ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二乃の指摘に何も返すことができず俯く風太郎。本当はどうするべきなのか、どうしたのか・・・風太郎の中で答えはとっくの昔に出ていたのだ。だが、
「悪い。でも、もう戻れないんだ・・・俺は辞めた。お前らの家に入ることさえも禁止されてる」
「・・・それが理由?」
「ああ・・・だから、早くお前らの家に行こうぜ?いつまでも雪の中を歩いてたら、風邪を引いちまうしな」
一花の問いかけに答え、再び歩き出した風太郎。ところが、その行く手を一花が遮った。
「もういいよ。ケーキの配達ご苦労様」
「え・・・?いや、お前らのマンションまでまだ距離あるだろう?」
「・・・ううん。ここだよ」
「・・・は?」
一花の言っていることが分からず、思わず焦る風太郎。そのまま視線を横に向けた一花に釣られ、風太郎が見たのは・・・
「ここが私たちの新しい家」
「・・・・・え?」
築数十年は経つであろうオンボロアパートだった。理解が追い付かない風太郎を置いて、話を進めていく五つ子たち。
「どういう、意味だ?」
「借りたの。私だってそれなりに稼いでるんだから。といっても未成年だし、契約したのは別の人だけど」
「ここを教えてくれたのは佐桐君です。事後報告ですが、父にももう言ってありますから。ですので、今日から私たちはここで暮らします」
「これで障害は無くなったね?」
一花と五月の言葉にようやく事態を飲み込んだ風太郎。そして、驚きのあまり五つ子たちの行動が未だに信じられずにいた。
「嘘だろ・・・?
たった・・・それだけのために・・・?
あの家を手放したのか・・・馬鹿か!今すぐ前の家に戻れ!こんなの・・・間違ってる!」
五つ子たちがここまでする必要はないと説得にかかる風太郎。だが、
「このままあの家で新しい家庭教師を雇えばお前らは・・・!」
「言いましたよね、上杉さん。
大切なのはどこにいるかではなく・・・
五人でいることなんです!!」
バッ!!
「・・・っ!マジかよ・・・?!」
風太郎の言葉を遮った四葉の言葉と共に、五つ子たちはマンションのカードキーを近くの川へと迷うことなく放り投げた。まさかの行動に風太郎は今日一番の驚きの声を上げた。
「マンションのカードキー・・・やりやがった!」
(あいつら、ここまでの覚悟で俺を・・・!それに比べて俺は・・・!?)
その時だった。呆気に取られ、放り投げられたカードキーを見上げていた風太郎の足が雪に取られ、体勢を崩した。その背後には、
「フータロー君!?」「上杉さん!?」
カードキーが落下しようとしていた川が位置していた。突然のことに対応できるわけもなく、風太郎の体はゆっくりと川へと落下し始めた。
(あ、やべ・・・落ちる)
『さよなら』
『必要とされる人になれてるよ』
『久しぶり』
(これって・・・走馬灯って奴か。アハハ、本当に死にそうな時には見えるんだな)
視界に映る川を見ながら、思っているよりも冷静だった風太郎はあることを思い出していた。それは、零奈との思い出と・・・バラバラになった五つ子たちをどうすれば和解させることができるかと、零奈に出会う直前に考えていた時のことだった。
『どうしたら、あいつらが纏まってくれるんだ?
・・・もしここで俺が溺れたら』
その時とまったく同じシチュエ―ションが起き、そんなことを思い出していた風太郎の視界に五つの影が飛び込んできた。
風太郎を助けようと、考えなしに飛び込んだ五つ子たちだった。
そして、近くで彼らを見守っていたこの男もすぐさま飛び出した。
「っ!」
『Spider』
「ぷはぁ!?こ、これは・・・!?」
「早く掴まれ!」
「・・・!佐桐?!」
水面に浮上した風太郎たちの頭上の近くに一本のワイヤーが存在していた。川岸から怒鳴り声が聞こえ、風太郎が声の主を確認すると、反対側の川岸へとスパイダーショックを射出した翔太の姿があった。実はこっそり近くで6人の会話を聞いていたのである。
「待って、二乃が!?」
「・・・!ったく・・・!」
一花の言葉に翔太が視線を向けると溺れかけていた二乃の姿が目に入った。どうやら寒さで体が上手く動かせないようだ。スパイダーショックのワイヤーを両岸に固定させ、上着を脱ぎ捨てた翔太は川へと飛び込んだ。
すぐさま二乃の元へと泳ぎ近づき、これ以上パニックにならないように背後から二乃の体を掴む翔太。そのまま川岸の方へと泳ぎながら、風太郎たちがワイヤーに捕まったことを確認し、手首の操作パネルでワイヤーの巻取り操作を行う。
全員無事に川岸に上がったところでホッと一息を吐くも、川の寒さにやられ全員が凍えていた。
「全員で飛び込むなんて、なに考えてたんだ、お前ら・・・寒!?」
「か、体が動いてしまって・・・くしゅん!?」
「お、お前ら・・・本当にバカだろう・・・ううう!?」
翔太の注意にくしゃみをしながら答える五月に呆れる風太郎。そんな風太郎を見て、翔太が口を開いた。
「それで・・・どうするつもりだ、上杉。ここまでお前のために動いたこいつらを、それでもお前は失敗を恐れて見捨てるのか?」
「・・・・・!」
「そうだよ、フータロー・・・たった二回の失敗で諦めないでほしい・・・!」
翔太の言葉に三玖が続いた。風太郎の腕を掴み、声を張り上げた。
「今度こそ私たちはできる・・・フータローたちとならできるよ・・・
成功は失敗の先にある・・・でしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉を受けた風太郎は、先程落ちた川を見ていた。
さっきの騒動で風太郎はあるものを失くしていたのだ。
『自分を認められるようになったらそれを開けて』
別れ際、零奈から渡されたお守りだ。それを落としたことにはすぐに気付いたが・・・風太郎はそれを拾う事よりも五つ子たちを助けることを優先した。
そう・・・風太郎の覚悟も決まったのだ。
「無茶苦茶だ・・・お前ら・・・後先考えて行動しやがって・・・これだか馬鹿は困るんだ。
なんだか・・・お前らに配慮している自分が馬鹿らしくなってきたぜ・・・
だから・・・俺もやりたいようにやらせてもらう!」
ビリィ!
「「「「「「!!」」」」」」
そう宣言し、先程の履歴書を破り捨てた風太郎。その顔には、いつもの笑みが蘇っていた。
「俺の身勝手に付き合えよ・・・最後までな!」
「ようやく家庭教師復活だな・・・上杉」
「ああ・・・悪いが、俺の気が済むまで付き合ってもらうぜ、佐桐?」
(そして・・・さよならだ、零奈)
肩を叩き、そう告げる翔太に答える風太郎。そして、心の中で思い出にさよならを告げるのだった。そのまま、一同は寒さを思い出し、誰かがくしゃみをしたところで家に入ろうということになり、移動し始めた。
「うう、寒いわね」
「早く家に入ろー!」
「このままじゃ風邪引いちゃうよ」
「あ!ケーキは無事ですか?」
「大丈夫・・・フータロー、ショータ。どうしたの?」
「ケーキ食べちゃいますよ?」
「ああ。すぐに行くよ」
「でも、俺たちが行ってもいいのか?」
「「「「「・・・・・?」」」」」
「俺たちまで行ったら、ケーキ五等分できないぜ?」
そんな風太郎の冗談に一同は思わず笑い出してしまうのだった。
「江端、今日は遅かったね。それにしてもその恰好はどうしたんだい?」
「ホホホ」
同時刻。江端の運転する車で帰宅するマルオは、江端のイメチェンに疑問を持ちながらも、一枚の書類を見ていた。ちなみに、今の江端の恰好は、風太郎が見ていた新しい家庭教師の履歴書の写真とそっくりだったりする・・・つまりはそういうことだ。
「佐桐翔太・・・まさかとは思ったが、そういうことだったとはね」
「・・・旦那様?」
「なんでもないよ、江端」
江端の疑問になんでもないと答えながら、マルオは翔太の個人情報が記載された書類を睨んでいた。
「娘たちのこともやってくれたね・・・だが、君たちに娘はやれないよ」
誰にも聞こえないその呟きは車の走行音に掻き消された。その視線は、今までにないほど冷たいものへと変わっていた。
次回 仮面ライダーダブル
『Pからの使者/死者が蘇る』
これで決まりだ!
予想外の長篇となりました『Nのさよなら』編もこれでおしまいです。
次章『Pからの使者』編は久々のダブルサイドのお話になります。
五つ子たちが風太郎の家庭教師復活に向け奮起する中、翔太の元へと舞い込んできた依頼のメール。
『死人に殺される』
という内容に不吉なものを感じた翔太とフィリップは風都イレギュラーズの面々と調査を始める。
だが、調査の途中に襲撃を受けた翔太は愕然とすることとなる。なぜなら、襲ってきたのは死んだはずの翔太の父・・・佐切壮吉が変身した仮面ライダースカルで・・・
があらすじとなっております。
本作における冬の劇場版『ビギンズナイト』となります。一気にお話が進みますし、原作のあの人気キャラたちも登場します。
GWということで、明日からの連日投稿になります。外出自粛の中、皆様に是非お楽しみ頂ければと思います。
長くなりましたが、次章でお会いしましょう。
それでは。
オリジナルドーパントに関しての解説は必要でしょうか?
-
あると助かる
-
別にいらない
-
フッ、その情報はもう既に検索済みさ