さて、新章始まっていきなりですが、本章ではダブルの活躍なしのごじょじょメインのお話となります。その分、次章がダブルメインとなりますので、お待ちいただければと思います。
それでは、ダブルの二人のお正月の風景からお楽しみ下さい。どうぞ!
第38話 「Jをナメるな/初の春」
「「明けましておめでとうございます」」
新年を迎えた佐桐家。おせちが置かれたテーブルを挟み、新年の挨拶を交える翔太とフィリップ。ニュースを確認しながらおせちをつつくフィリップに対し、雑煮をすすりながら翔太は届いていた年賀状を確認していた。
「・・・はぁ~、結構送ってないところからも来てるな。そういや、『風都』のアドレスの方にも結構なメールが届いてたな」
「まぁ、去年の事件に関わった人たちから届いたものもあるだろうしね。一応一斉送信での返信メールは送っているのだろう?」
「まぁな。マスターにウォッチャマン、サンタちゃんにエリザベスとクイーン・・・おお、風麺のオーナーからもきてるな」
おせちの蒲鉾を口に含みながら答える翔太。確認し終えた年賀状を覗きながら、フィリップは数の子を齧っていた。
「五月たちからは・・・流石にきてないか。まぁ、あっちはそれどころじゃないだろうしな。上杉からもきてないな。まぁ、一応こっちからは送ってるから特に問題ないだろう」
「・・・それにしてもマスターは凄いね。毎年毎年こんな豪華なおせちを作るなんてね」
「そうだな。流石の俺もおせちはレベルが高すぎるからな」
フィリップの感想に、エビの皮を向きながら同意する翔太。ペルソナ・ドーパントの事件以降、何事もなく年末は穏やかな日々が続いたため、ダブルの二人はゆっくりと過ごすことができた。
まぁ、五つ子が住んでいるアパートに張り付いてたりはしていたため、まったく油断していたというわけではなかったのだが。
「翔太。この後、初詣に行くだろう?やっぱり、僕も・・・」
「無理だ。組織が動いている以上、お前が狙われている可能性だってあるのはお前が一番分かっているだろう?」
「・・・・・分かっている。冗談さ」
「おい。なんだ、今の間は?」
笑いながら答える相棒をジト目で見つめる翔太。ため息を吐きながらも、いつものことだと思い、翔太は雑煮の残りをかき込んだ。
「よっと。やっぱり初詣に来たからにはこれをやらないとな」
朝食の片づけを終えた翔太は、ハードボイルダーを走らせ近くの神社へと来ていた。
お参りを済ませ、翔太がやってきたのはおみくじの区画だった。
「ほら、さっさと引けよ・・・フィリップ」
その言葉と共に翔太の右手が、翔太の意志とは無関係に動いた。おみくじが入った箱を振り、出てきたおみくじ棒を見ると、
「11番か。えーと、これか・・・おお、大吉かよ」
『これは幸先がいいね。まぁ、たかがおみくじだから気休めだろうけどね』
「・・・夢のないことを言うなよ、お前」
『当たり前だろう。おみくじで大吉が入っている割合は16%。もちろん神社によって混入率はバラバラだが、少なく見積もっても5回に1回は大吉を引く計算に・・・』
「わ、分かった、分かった!新年から知識披露は勘弁してくれ!?」
神社で一人慌てる翔太。周りから見れば明らかにおかしな人だが、神社は閑散としており、ほとんど人はいない状態だった。そして、騒ぐ翔太の腰にはダブルドライバーが装着されていた。
雰囲気だけでもと思い、家から出られないフィリップのために翔太がドライバーを通して感覚を共有していたのだ。なので、先程おみくじを引いたのもフィリップの意志によるものだった。
「さて、俺もおみくじを引くか・・・・・どれどれ、14番。・・・・・・・うわぁ。」
『大凶、だね』
今度は自分の番だとおみくじを引いた翔太。しかし、その結果に翔太は愕然とし、フィリップは笑いを堪えていた。
「・・・不吉だな」
『これは興味深いね。おみくじに大凶を入れてる神社はかなり少ないけど、その中でもそれを引き当てるなんて・・・翔太。君はツイてるよ!』
「・・・そりゃどうもー」
そこじゃねーよ、というツッコミを心の内にしまいながら翔太は自身とフィリップのおみくじを結びに行こうとすると、
「あっ!お兄ちゃん!あの人、お兄ちゃんの友達じゃない?」
「「・・・えっ」」
少女の声が聞こえ、翔太が振り返った時、兄と呼ばれた人物と驚きの声が重なった。
「上杉!?」「佐桐!?」
まさかの出会いに驚く翔太と風太郎。慌てて風太郎に見えないようにドライバーを外して隠す翔太。すると、翔太へと近づく影があった。
「明けましておめでとうございます。いつも兄がお世話になっております。えーと・・・」
「ああ。こうやって話すのは初めてだったな。俺は佐桐翔太。確か、らいはちゃんだったよな?」
「はい!上杉らいはです。あの、花火大会の時は助けてくれてありがとうございました!」
「あ、ああ。そういやそんなこともあったな」
改めて自己紹介を終えたらいはの言葉に翔太は苦笑いするしかなかった。アント・ドーパントの一件後、翔太はらいはに口止めをしていたので、風太郎はそのことを知らなかったからだ。
シスコンの風太郎に知られるとめんどくさくなるなと翔太が思っていると、風太郎の後ろから翔太に声を掛ける人物がいた。
「へぇ~、風太郎に友達がいたとはな。ガハハ!」
「え、えっと・・・?」
「ああ!スマン、スマン!俺はこいつらの父親だ!上杉勇成っていうんだ!よろしくな、少年!」
「ど、どうも・・・」
勇成に握手した手をブンブンと振られ、困惑する翔太。
「(う、上杉と違って豪快な性格だな・・・)それにしても、上杉が初詣に来るなんて意外だな。神頼みとかしないタイプだと思ってたが・・・」
「・・・ああ。実家に行ってたんだが・・・どうしてもらいはがご挨拶に行かないといけない、と言ってな」
「あー、大吉だ!やったー!」
「・・・・・なるほど」
大吉を引き当て喜ぶらいはを、見つめる風太郎の言葉に納得の意を示した翔太。風太郎でもあんな表情をするのかとちょっと驚いていた。
「そうだ。そういえば、五月たちの家庭教師の件だが。これからはどういったスケジュールでやるつもりなんだ?」
「・・・本来なら今日からでもやりたいくらいなんだけどな・・・俺も早く帰って勉強したいくらいだし」
「・・・それはまた・・・二乃辺りからクレームが飛んできそうなプランだな」
まさかの元旦から勉強宣言の風太郎に、流石の翔太も顔が引きつってしまっていた。そんな話をしている時だった。
「うわぁ・・・ガラガラだね。いくらお昼前だからってこれは酷くない?」
「一花。あんたが起きるのが遅かったからこんな時間になったんでしょうが!ただでさえ、着付けで時間がかかるのに・・・!」
「・・・二乃だって化粧するのに時間掛けすぎてた」
「まぁまぁ!せっかく初詣に来てるんだから、喧嘩は駄目だよ」
「・・・う~ん。出店は出てないんですね・・・残念です」
とても聞き覚えがある声の会話が聞こえ、翔太と風太郎の顔から冷や汗が流れた。
ギギギ、と音が鳴りそうな動きで首を動かし、声がした方を振り返ると・・・
「「あっ」」
「「「「「あっ!」」」」」
「あっ、五月さんたちだ!」
翔太たちが驚きの声を上げると同時に、振袖姿の五つ子たちも翔太たちの存在に気付き声を上げた。遅れてらいはも五つ子たちに気付き、彼女たちに駆け寄っていた。
「な、なんであんたたちもいんのよ!?」
「・・・いや、家が近所だからだろ!」
「皆さん、明けましておめでとうございます!」
「明けましておめでとうございます、らいはちゃん」
「いやー、偶然だね!お姉さん、ビックリだよ」
「・・・うん。ホント驚いた」
二乃の訴えに翔太がツッコミを入れる横で、新年の挨拶を交わすらいはと五月。そんな光景を見ながら、一花と三玖がそんな感想を漏らしていた。
「そうだ!皆さん、よかったらうちに寄って行きませんか?」
「俺はお邪魔させてもらおうかな」
「いや、悪いが俺は「行くーーー!」・・・はぁ」
四葉の提案に翔太が即答すると一方、らいはに言葉を遮られた風太郎はため息を吐きながらも諦めていた。
そして、五つ子たちが初詣を終えた後。
仕事があった勇成と神社で別れた一同は五つ子たちが住むアパートへと来ていた。
・・・が
『僕も君が好きだ』
「えっ・・・キ、キスしました・・・」
「ロマンチックだわ」
「録画してよかったね」
「なぁ、上杉。俺たち、来る必要あったのか?」
「俺に聞くな・・・はぁ。帰るぞ、らいは」
年末年始に放送されていたロマンス映画の録画を見ている五月・二乃・四葉の姿に翔太と風太郎は来たことを早々に後悔し始めていた。
ちなみに、五つ子たちは振袖から普段着へと着替え終わっていた。
「まぁまぁ。まだ来たばかりなんだし!お正月なんだからゆっくり過ごそうよ」
「フータロー、ショータ。遅くなったけど、明けましておめでとう。今年もよろしく」
らいはを連れて帰ろうとする風太郎を着替えから戻ってきた一花が制止した。新年の挨拶をした三玖は台所へと向かい、何かを持ってきた。
「おせちを作ったけどよかったら食べる?」
「そうだな、いただ・・・・・いや、俺も初詣に行く前に食べたからいいや・・・!」
せっかくだから頂こうと答えようとした翔太は重箱の中を見て、即答でいらない意志を示した。なぜなら・・・
(おかしい・・・三玖が持っているおせち、俺が知ってるおせちの色じゃない!
・・・・・まさか、三玖って・・・!)
「・・・い、いや。俺も遠慮しておくわ・・・・・〈ぐるるるるる〉」
初めて三玖の料理を見た翔太はすぐに答えに辿り着いた。そして、翔太の横で風太郎が腹を抑えて顔を真っ青にしていたのを見て確信した。実は依然、三玖の料理を食べ過ぎたことで苦しい思いをしたことがあってのリアクションだったのだが、そんなことを知らない翔太は風太郎も被害者の一人だと誤認してしまったのだ。
残念そうにおせちを台所に戻しに行く三玖を見て、翔太たちがホッとする一方、らいはは落ち着かない様子で周りを見渡していたので、気になった一花がどうしたのかと思い、尋ねていた。
「どうしたの、らいはちゃん?」
「・・・えっと、私、勘違いしてたみたいで。中野さんのお宅はお金持ちだって聞いてたから」
「あー・・・あはは、いろいろありまして・・・必要なものから揃えている状態なんです」
「いや、それならテレビは後回しだろう」
「何もない部屋でごめんねー・・・そうだ。後で振袖も大家さんに返しに行かないとなー・・・」
苦笑いしながら答える四葉。一花もこたつに入りながら言葉を続けた。
「まぁ、自分の家だと思ってくつろいでよ」
「・・・お前ら、こんな調子で本当に大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫ですよ!テレビやこたつとかも、佐桐君の紹介でかなり安く買えましたから!」
「・・・佐桐の?」
五月の言葉に風太郎は翔太へと視線を向けた。驚く風太郎に翔太がやれやれといった表情をしていた。
「うん。必要なもののリストを送ったら、あっという間に候補のリストを返してくれたの。ショータってかなり顔広い」
「・・・そういえば。前に四葉がバスケの助っ人を頼まれた時も即座に他の助っ人を見つけてたな」
「まぁ、色々あってそういう関係に強い奴らと付き合ってる数が多くてな」
((ああ・・・仮面ライダー関連の))
三玖と風太郎の言葉にそう言って誤魔化す翔太。そんな翔太を、事情を知る二乃と五月が納得した顔で見ていた。
「・・・それじゃ、お言葉に甘えてゆっくりさせてもらうか」
「そうだな」
風太郎の言葉に賛同し、座ろうとする翔太とらいは。そんな3人に待ったの声を掛けたのは、
「ちょっと。なんでそっちに座るのよ」
「「「・・・?」」」
「そこじゃ寒いでしょうが。炬燵入んなさい」
二乃だった。流石に客人を冷たい床に座らせるわけにいかないと思ったのだ。炬燵布団を上げ、3人に入るように促した。だが、もう既に5人が入っていることもあり、炬燵にはあまり余裕がない状態だった。
それに気付いた翔太と風太郎の意見は一致した。アインコンタクトをしたと思えば、
「じゃあ、らいはが」「それじゃ、らいはちゃんを先に」
真っ先にらいはを優先とした二人は彼女を炬燵へと入るように促した。
が、それをよしとせず一花が動いた。
「そうだ!二人ともマッサージしてあげようか?お疲れでしょ?」
「え?」「はい?」
一花からのまさかの提案に疑問の声を上げる男性陣。
「べ、別に疲れてないが・・・」
「一花だけずるい」
「早いもの勝ちだよー」
「あっ!じゃあ、腕取っーた!」
風太郎の言葉を無視し、一花に続き、福太郎の体をマッサージし始める三玖と四葉。そんな兄の状態を目の前で見た妹の反応は、
(お兄ちゃんが急にモテだしたー!?)
兄にモテ期がやってきた、それがらいはの心情だった。
「お母さん、お兄ちゃんに一足早い春が来ました」
「な、なんのつもりだ、お前ら」
「な、なんでもないですよー!」
「日頃の感謝だけだよ」
「嘘つけ!」
そんな報告を天へと告げるらいは、四葉と三玖の回答に訝しむ風太郎たちのやりとりを見ながら翔太は苦笑いしていた。
「・・・本当にどうしたんだ、お前ら。なぁ、五月、二乃。一体何があったん・・・何してるんだ、お前ら?」
「何が?」「何がですか?」
途中で言葉を変えた翔太の疑問に二乃と五月はなんでもないといった風に答える。だが・・・
「ほら、これ持って帰りなさい・・・言っとくけど、あんたのために作ったものじゃないからね!」
(・・・怪しい)
「私の分ですけど、よければ食べませんか?」
(五月が自分の分をお菓子を!?怪しすぎるだろう!?)
「そうだ!お正月らしく福笑いでもどうですか?五つ子バージョンを作りました!」
「難易度地獄!?」
二乃のツンデレプレゼント(もちろん対象は翔太の相棒に対してなのだが)や普段では考えられない五月の行動に困惑する翔太。四葉が提案した鬼畜ゲームに思わず大声でのツッコミが出てしまった。
「おいおい、上杉。なんかおかしくないか?」
「そう、だよな・・・何があったのやら」
なんとか逃げ出した二人は、突然の五つ子たちの行動に心当たりがなく困っていた。そんな男性陣に三玖が声を掛けた。
「えっと・・・ねぇ、フータロー、ショータ」
「うん?」「何だ?」
「実は二人に渡したいものが・・・」
「み、三玖!それはまだ早いよ!みんな、隣の部屋に行こっか!?」
三玖の行動を制止し、一花の一言で慌てて五つ子たちは隣の部屋に移動した。
五つ子たちの行動理由が分からずますます首を傾げる二人。そんな二人を見て、らいはは尋ねた。
「・・・あの、翔太さん。お兄ちゃん、五月さんたちに何かしたんでしょうか?」
「そんなことはないと・・・・・いや、ないとも言い切れないかな?」
「・・・悪かったな。それにしても何を企んでいるのやら」
「まぁ、話し合いが終わるまでそれでもやってみないか。五つ子バージョンなんてそうそうできるものじゃないだろうしな」
机の上に置かれた福笑い(五つ子バージョン)を指さし、翔太たちは五つ子たちの話し合いが終わるまで待つことにしたのだった。
一方・・・隣室で緊急の五つ子会議を行っている彼女たちが何を話しているのかというと・・・
「どうする?」
「あいつら気にしてなさそうだったけど」
「でも、このままじゃ悪いよ・・・クビになった二人に仕事でもないのに家庭教師を続けてもらうんだもん」
そう・・・それは善意で家庭教師を続けてくれる風太郎と翔太への報酬のことだった。今日の献身的な行動もそれが理由だったのだ。
「何かしてあげたい・・・」
「ええ。しかも、江原さんが言うには、佐桐君はこれまで無償で助っ人を引き受けてくれてたそうですし・・・」
「そうだよね。でも、お父さんにはできるだけ頼りたくないしね」
「と言ってもね・・・私たちがあいつらにやってあげられることなんてね」
二乃の言葉にそれぞれが妄想を浮かべる。
一花と三玖、五月は先ほど見ていたロマンス映画の影響でキスを思い浮かべていた。二乃は料理か何かでも作ろうかと真っ当な考えを思い浮かべていた。一方の四葉は、手作りの一等賞メダルを作ろうという純粋すぎるお礼の仕方を思い浮かべていた。
「ふ、不純です!!」
「何考えてたのよ、あんた!?」
「も、盛り上がってるな・・・」
「あ、ああ」「そうですね」
隣室まで聞こえてきた五月と二乃の大声に、何事かとびっくりする翔太と風太郎。一方のらいはは仲いいね、という表情を浮かべていた・・・この妹、意外に大物なのかもしれない。
「ま、まぁまぁ。あの二人がそんなことで喜ぶとは思えないけどな」
「・・・はぁ。まぁ、あいつらも男だし、現役女優のキスならかなり喜ぶんじゃない?女優ならほっぺにくらいできるんじゃない」
まさかの二乃の提言に言葉を真っ赤にさせた一花が反論する。
「じょ、女優をなんだと思ってるの!それに、そういうことなら・・・私より三玖の方が適任じゃないかな!」
「わ、私・・・!?」
まさか自分に振られるとは思っていなかった三玖。だが、三玖は想像してしまった。自分が風太郎にキスをする場面を。
「私が・・・フータローに?・・・・・フータロー」
そして、その先までも想像・・・否、妄想してしまった。
『三玖!俺をその気にさせたな?もう止められないぜ!』
「えええぇぇ!・・・でも、フータローになら・・・だ、だめだよ、フータロー・・・やめて・・・やっぱりやめないで・・・!」
「あんたが止まりなさいよ」
「みんな、なんの話をしてるの?」
妄想を暴走させた三玖に二乃のツッコミが入った。一方、ピュアな四葉は姉妹たちが何を言っているのか理解できないでいた。
「無難に料理でいいのではないでしょうか?二乃も得意ですし」
「・・・それは私も考えたけど・・・上杉は味音痴だし、佐桐は自分で作るだろうから、どうかと思ってね」
「あっ・・・そうでしたね」
翔太の事情を知っている二乃は、翔太が家でフィリップの分も食事を作っていることを聞いていたのでどうかと思ったのだ。五月も二乃の言葉の真意を察し納得した。
「となると・・・やっぱこれかな」
「そうだね。予定通りあげようよ」
「ですね。上杉君もこの方が喜ぶと思いますし・・・佐桐君にもこの部屋や家具などでお世話になった分もありますから」
「決まりだね。それじゃ、渡しに行こうか」
結論が一致したことで一花が立ち上がり風太郎と翔太を呼びに行こうとした。
「フータローく「一花」っ!!!」
いきなりドアの前に現れた風太郎に驚き、一花の体が硬直する。
そのまま、風太郎は顔を一花へと近づけた。
「動くな」
「えっ、ちょ、何・・・(フータロー君の顔が近くに・・・!?)」
風太郎の顔がどんどん近くなり・・・一花の頭の中には、先程まで思い浮かべていたキスシーンが蘇っていた。
「やめっ、んん・・・っ!」
覚悟を決め、一花は目を瞑って口を突き出した。それに対し、風太郎は・・・
「・・・!やはりだ!」
何かを確信した風太郎は急転換して机へと飛びついた。
「これが一花の口だ!間違いない!」
「えー、こっちだと思うけどなー」
「ふ、福笑い・・・?」
「ああ。今、一花の顔を完成させようとあの二人躍起になっててな。さっきまで口のパーツについてあれこれ言ってたところに一花が出てきたもんだからさ」
「・・・・はぁぁぁ・・・」
「い、一花・・・!?」
翔太の説明に緊張の糸が切れた一花は地面へと崩れ落ちた。慌てて、翔太が助けに入り、五月と三玖も一花を支えるように手を貸した。
「わー、遊んでくれてるんですねー!」
「ルール変わっちゃったけど」
「四葉、これはどうだ?」
「えー、どれどれ・・・」
「なんか、『福笑い』というか、『五つ子の顔を作ろう』みたいになっちまっててさ」
「そ、そうなんですね」
上杉兄妹に混じる四葉を見ながら、翔太と五月が言葉を交わしている時だった。
「あっ、上杉さん!
クリーム付いてますよ・・・ペロっ」
「「「「「!!」」」」」
そう言って、四葉は風太郎の頬に付いていたクリームを舐め取ったのだ。
まさかの四女の行動に姉妹たちだけでなく、翔太にまで激震が走った。それは目の前でその情事を目撃したらいはも同じで、
「お、お兄ちゃん!?四葉さん!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
らいはの呼びかけに答える余裕が今の風太郎にあるはずもなく、四葉に舐められた頬を手で押さえながら呆然としてしまっていた。
そして、四葉も自身がしてしまったことに気付き、顔を真っ赤にさせた。
「あ・・・今のほっぺにチューが家庭教師のお礼ということで・・・」
「・・・?・・・?」
「ああ、なるほどな。それでさっきから様子がおかし・・・ひぃ!?」
四葉と風太郎のやり取りで、五つ子たちの行動に納得がいった翔太が振り向いた時だった。珍しく翔太から悲鳴が上がった。なぜなら、
「・・・・・・・・・・(まさかの四葉・・・気を抜いていた・・・)
(ハッ!?殺気!)
背後にゴゴゴゴゴ!という音が聞こえてきそうな程に恐ろしいオーラを纏った三玖が四葉を睨んでいたからだ。髪の毛までもが波打っているように見えるのは気のせいだと信じたい。
「コ、コホン!それで?さっきまで家庭教師の謝礼について話し合ってたわけか」
「え、ええ。その件ですが、今の私たちでは十分な報酬を差し上げられない状況でして・・・」
「せめて行動で示そうとしたわけか」
話題を切り替えた翔太の言葉に頷きながら、三玖から距離を取った五月。それを聞いた風太郎と翔太は思わずため息が出てしまった。
「ったく・・・ただでさえ厳しいはずなのに余計な気を遣いやがって」
「そういうことは早く言え。これは俺がやりたくてやってるんだ。給料のことなら気にするな」
「佐桐君・・・上杉君・・・」
「出世払いで結構だ」
「「「「「「え・・・」」」」」
上杉の一言に五つ子たちがそんな声が漏れた。隣にいた翔太までも信じられないものを見ているような目で風太郎のことを見ていた。
「その代わりちゃんと書いとけよ!一人一日5千円!一人たりともまけねぇからな!」
「アホ!そこは嘘でも、いらないとか言う所だろうが!?」
「・・・そういえば、こんな奴だったわね」
まさかのドケチ発言に翔太のツッコミスリッパが炸裂した。そんなやり取りを見ながら、呆れ顔の二乃の言葉に同じく呆れた表情で頷く五つ子たち。
「ねぇ・・・今日、フータローに渡すはずだったお年玉・・・ショータにこれまでの家庭教師代として渡す?」
「えっと・・・とりあえず保留ってことでいいじゃない?出世したらとのことで」
翔太に抗議する風太郎を見ながら、三玖と一花の意見に残りの姉妹たちも頷いた。
隣室のテーブルの上には、本来であれば、風太郎と翔太に家庭教師代として渡すはずだった『お年玉袋』が置かれていたのだが、当事者たちが口論を始めてしまったので、また別の機会にということになったのだが・・・
らいはに口論を仲裁されている男性陣がそれを知ることはなかったのであった。
次回 仮面ライダーダブル
『Jをナメるな/妹たちも働きたい』
これで決まりだ!
さて、基本は原作通りの流れでした。
本章は翔太が介入したごじょじょのお話としてお愉しみ頂ければと思います。
さて、ここで問題です。
実は五つ子に関して風太郎が知っていて、翔太が知らないことがあります。
それが本章のテーマにもなってきますので、想像して頂ければと思います。まぁ、実は答えは軽く載せているようなもんなんですが・・・(笑)
ちなみにサブタイの『ナメるな』は色々なものに掛けたものなってますので、カタカナ表記になってます。
それではまた。
次回更新 17日0時予定
オリジナルドーパントに関しての解説は必要でしょうか?
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あると助かる
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別にいらない
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フッ、その情報はもう既に検索済みさ