この話を書いてる途中、軽くスランプになってました。
おかしい…マルオさんのキャラがブレブレで定まらない。
そんなわけで、何故か長くなってしまったマルオと翔太の会話です。
マルオの意外な過去が明らかになります。のでサブタイも変更になりました。
後半は五月もちょっと登場します。
それではどうぞ。
追記 お休み頂いている間にUA30000達成してました。
読者の皆様、ありがとうございます。
第46話 「戦士たちのH/中野マルオは語り出す」
(ジェノサイドと呼ばれていた男、そして、俺たちに組織を正体を明かしたドクターという真っ白なドーパントの影はあれから全くといって見ることはなかった。
あのドクターの去り際の言葉を本当に信じるのならば、当面の間、奴らが仕掛けてくるということはないのだろう。警戒を怠るべきではないだろうが、俺自身の怪我も完治するまでは大っぴらに活動できないのだから幸運だと思うべきなのかもしれない)
筆記体による報告書を書いていた翔太は、先日のジェノサイド・ドーパントの一件に関することをそう纏めていた。ようやく左手だけの生活に慣れてきたが、そんなことよりも翔太の頭を悩ませていることが目の前で起きていた。
「だからここは…!」
「関数の問題を完璧にしておかなければ、他の問題を解こうと思った時に完全に煮詰まってしまう。なので…」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
(なんで俺の家で勉強会してるのに、俺は見学だけしてるのかね…)
風太郎とフィリップが五つ子たちに勉強を教えているのは置いておくとして、どうして週末の学校終わりに佐桐家でこんな光景が起こっているのか…翔太はこうなった経緯に思わずため息を吐き、二日前のことを思い出していた。
ニ日前・・・ダブルがジェノサイド・ドーパントとの激戦を制した二日後の朝。
(……どっかで見たことある天井だな)
意識を取り戻した翔太の視界に真っ先に入ってきたのは真っ白な天井だった。スカルに化けたペルソナ・ドーパントに襲撃された時、担ぎ込まれた病院だと判断するのに時間はかからなかった翔太。
痛みを堪えながらなんとか体を起こす翔太。頭や全身は包帯だらけ、右手に至っては動かすことができないように固定がされている状態だった。ともかく誰か人を呼ぶべきだと思い、翔太が動かせる左手でナースコールを求め探していると、
「……目が覚めたようだね」
「っ!?」
不意に聞こえてきた入り口から聞こえてきた声に翔太は硬直した。とても聞き覚えのある、だが、現在会いたくない人上位に位置する人物の声に翔太は錆びた機械のように顔を向けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「(やっぱりか…)…どうも」
不機嫌を隠そうとしなそうな仏頂面でドアの間から翔太へと声を掛けた人物…中野マルオは、またこちらも険悪感を隠そうとしない翔太のあいさつを無視し、部屋へと入ってきた。そのまま翔太の状態を一瞥すると、手慣れた手つきで院内用PHSを操作し始めた。
「…僕だ。VIP病室の患者さんが目覚めた。診察するから道具一式を持って来てくれるかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
思わずポカンとなりながらも、まるで当然のように業務を進めていくマルオに翔太は見ていることしかできなかった。そのまま、マルオに呼ばれた看護婦たち付き合いのもと、診察を受ける翔太。
怪我の具合や包帯の交換、薬の投与を終え、診察が終わったことで看護婦たちも病室を去り、残されたのはマルオと翔太の二人だった。気まずい空気が漂う中、どうすべきか迷う翔太の一方で、マルオは淡々とカルテを書き続けていた。
「………全治3週間だね」
「…はい?」
いきなりマルオからそんなことを言われた翔太は思わず聞き返していた。そんな翔太の反応などお構いなしに話を進めるマルオ。
「その怪我が完治するまで全治3週間と言ったんだ。二度も同じことを言わせないでくれ」
「あ、ああ…すみません」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「……何も聞かないんですか?」
「………何をだい?」
翔太の疑念にマルオは興味がないと言った風に問い返した。そんなマルオの反応に困りつつも、翔太は話を本題に移した。
「この怪我…どう見たって尋常じゃないでしょう?医者なのに聞かないんですか?気になりませんか、娘たちが関わっている人物がこうなっているというのに?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
翔太の言葉にマルオはカルテから目を離し、ようやく彼の目を見た。翔太自身、別に喧嘩を売っているつもりではなかったのだが、以前の件もあって語気が強まってしまった。
だが、次のマルオの言葉に思わず言葉を失ってしまった。
「娘が泣きながら僕のもとに駆け込んできた時、僕が何も思わなかったと思うのかい?」
「っ!?」
始めてマルオの感情の籠った言葉に思わず息を呑んだ翔太。確実に地雷を踏んでしまった瞬間だった。
「血だらけで、全身打撲と所々の火傷、右腕の骨に入ったひび…明らかに尋常でない怪我を見た時、僕自身少しばかり動揺したよ。すぐに治療しなければ危険だということも…
だが、事情が分からなければ治療をするわけにもいかない…だが、娘たちは事情を語ろうとしない。五月君に至っては涙を流しながら、懇願してきたよ」
『お願いします!お父さん…佐桐君を助けて下さい!!』
「……正直言うと、父親として嫉妬したぐらいだよ。僕の前ではあんな表情を見せたことがない五月君や二乃君が今の状況を鑑みず、あそこまで嘆願してきたんだ…父親として娘の想いに答えないわけがないだろう」
「……すみませんでした。安易なことを言いました」
事情を聞かなかったのは、五月たちの言葉を聞いたマルオなりの配慮だったのだと悟った翔太は気まずい表情で謝罪した。だが、マルオはそんなことなど気にしていないといった風だった。
「……五月君には特にお礼を言っておくべきだ。昨日も学校帰りに君の見舞いに来ていたくらいだ。目元に隈が出ていたからあまり寝れてもいないのだろう」
「そう、ですか…」
ダイナソーメモリの一件でも危険な目に合わせたこともあり、マルオからその事実を聞いた翔太は目線を合わすことができないでいた。だが、そんな気まずく感じる翔太のことなど構わずマルオは話を切り込む。
「…ガイアメモリ…」
「っ!?」
「以前、君は僕に言ったね。僕のせいで娘たちに危険が迫っている、ガイアメモリについて何かを知っているかと…覚えているだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「君のその怪我…それもガイアメモリ関連なのだろう?長年医者をやっているが、そんな怪我を見たのは君で二人目だよ」
「……ふ、二人目?」
マルオの口から告げられた事実に翔太は思わずその言葉を繰り返してしまった。どういうことかと翔太が困惑していると、
「君に尋ねよう…君は仮面ライダーだね?」
「‥‥‥‥‥!?」
まさかの正体を当てられたことに翔太は思わず息を呑む。なんとか動揺を隠そうとするも、一切考えが読めないマルオの表情にそれすらも見透かされているのはないかと錯覚してしまう程だった。
「もし、そうだとしたら……どうするつもりですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ある種の肯定とも言える翔太の答えにマルオの目が少しだけ開かれたような気がした。だが、すぐに表情を戻したマルオが取った行動は、
「礼を言わせてもらおう…娘たちを助けてくれてありがとう」
「……えっ?」
突如告げられたその言葉に今日何度目になるか分からない驚きの声でが漏れる翔太。だが、マルオは一向に頭を上げようとしない。このままでは話が進まないと思い、翔太は慌てて声を掛けた。
「な、何を……!?」
「一人の人間として礼を言っているまでだ。おかしなことではない筈だ」
「そうじゃなくて!?お願いですから頭を上げて下さい!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
慌てる翔太の言葉も聞かず、マルオは頭を上げようとしない。今の状況に流石の翔太もどうすればいいか分からず、困惑してしまう。だが、事態を変えたのは頭を下げたままのマルオだった。
「私は君のことが嫌いだ…それは以前に聞いていたね?」
「え、ええ…(あー、やっぱりこっそり聞いてたことがバレてたか)」
マルオの言葉に、以前五月と密会していた現場を目撃していたことがバレていたのだと悟った翔太。だが、大事なのはそこではなかった。
「はっきり言って、あんな暴言を吐かれてた上に娘さんたちの家出に加担したことが原因かと思っていたんですが…」
「それに関しては否定しないよ」
(……否定しねーのかよ!?)
心の中でマルオへのツッコミを入れた翔太だったが、苦笑いでなんとか誤魔化して話を聞き続けた。
「だが、僕が君を上杉君より嫌っている理由は、君が佐桐壮吉の息子だからだよ」
「っ!?」
「僕は彼の正体を知っていた。いや、正確には知ることとなった、と言うべきかな。だから、君が娘たちに近づくことを良くは思っていなかった。君が近くにいれば、娘たちに危害が加わると思ったからね」
マルオが告げた事実に驚きを隠せない翔太。だが、マルオはどんどんと話を進めていく。だが、その口調はどこか疲れた物へと変わってきていた。
「だが、期末試験後に君に言われたことが気になってね。知人を頼って、調査をしてもらった。そこで初めて知ったよ…二乃君が泊まっていたホテルでの事件や五月君が訪れた教会での怪しげな教会での騒動をね……そして、それぞれに君が関与していることをね」
「・・・・・・・・・(俺だけを指しているところを見ると、フィリップが関与していることはバレてないみたいだな)」
マルオの話を聞きながら、ダブルの正体がまだ自身にしか嫌疑がかかっていないのだと判断し、安堵する翔太。
「仮面ライダー…巷では都市伝説と言われているが、僕はその正体を知っていたよ。11年前に僕は彼に命を救われたのだからね」
「………まさか」
「そうだ…佐桐壮吉は僕を助けるために、目の前でその姿を変えた。まだガイアメモリと呼ばれる代物が闇で蠢いていた時にね」
意外な父とマルオの接点に思わず目を見張る翔太。11年前と言えば、まだ翔太がフィリップと出会う前の話であり、壮吉がスカルとして孤高の戦いを繰り広げていた時期だった。
「その時の僕は丁度研修医になったばかりでね。業務が長引き、夜も更けた頃だったよ。僕は人を捕食する化け物と君のお父さんが戦っているところを目撃したんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「その時の戦いで、彼は流れ弾から僕を庇って被弾した。なんとか化け物自体は倒したが、酷い傷でね…僕がこっそりと手当てをしたんだ。初めは拒まれたが、僕もその時は駆け出しのドクターだったから、放っておくわけにもいなかったからね」
そう語るマルオの表情は少し懐かしそうな色を出していたように翔太には見えた。
「そこから彼との奇妙な付き合いが始まった。彼が怪我した時や、衰弱した患者を連れてきた時には治療をし、警察の事情聴取を少し誤魔化したりもした。その時に、この前君を連れてきた刃野刑事とも知り合ったんだ」
「刃さんとも…」
「ああ。刃野刑事だけじゃない…佐桐壮吉は僕のことを少しだけ信頼してくれていたらしく、少しずつ人を紹介してもくれた。今、こうして大きな病院を経営できているのも、彼の繋がりがあったからといっても差し支えないだろう」
「……でも、どうしてそんな話を俺に?」
自身の父親とマルオの関係はよく分かった。だが、そんな話をスラスラと話し出したマルオの意図が分からず、思わず顔を顰める翔太。そう問われたマルオは持って来ていた茶封筒からある書類を取り出した。
「君の誤解を解いておこうと思ってね。受け取りたまえ」
「これは……っ!?この書類は!?」
マルオから手渡された書類に目を通した翔太は思わず顔を上げた。その書類は手書きのものであったが、翔太には大変見覚えのある字だった。
「それは2年前の春に僕のところに届けられた書類だ。君もその字の主は知っているだろう?」
「…父さんの字…」
マルオの指摘に頷きながら肯定する翔太。その書類は、生前に壮吉がガイアメモリとそれを街に蔓延らせたある組織についてのレポート…報告書のようなものだった。一昨年の春といえば、それは翔太とフィリップの元へと壮吉からの遺書に近い手紙が届いた頃と同じ時期だった。
「どうしてそれが僕の元に届けられたのかは分からない。彼が何を想ってその資料を僕に預けたのかも分からない…だが、君にその資料を預けるべきだと僕は判断した」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「君のことを誤解していたことも謝罪しよう。そして、娘たちを助けてくれてありがとう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「………どうかしたかい?」
何も言わない翔太に流石のマルオもどうしたのかと思い、声を掛けた。そんな翔太は我に返って応えた。
「い、いや…まさか貴方からそんな言葉が出てくるとは思ってなかったから…意外というか、想像もつかなかったというか…」
「前もそうだったが、君は意外と失礼な人間だね」
驚きの余り、敬語が崩れてしまった翔太の反応に、以前暴言を飛ばされたことも言い含めて言及するマルオ。そのことを指摘され、思わず目線を反らす翔太。
「あれは…その節はすみませんでした。その…意外に五月達のことを大切に想っているんですね」
「……どういう意味だね?」
「いや…いきなり転校させるとか、上杉のことを認めないとか、冷たいイメージばっかりだったので…本当に意外といいますか」
「僕は彼らの父親だ…娘たちのためだと思うことをするまでだ……例え嫌われようともね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マルオの意外な一面を見た翔太は思わず思ってしまった。
(この人、不器用なだけじゃないのか……どうしてここまで捻じ曲がれるのかね)
親バカというか、どうしようもなく距離感を詰めるのかが下手というか…どこかマルオと自分が重なって見えてしまったのだった。だからこそ、翔太は言わずにはいられなかった。
「どうして…素直に五月たちと話さないんですか?」
「……どういう意味だい?」
翔太の言葉にマルオは静かに尋ね返した。翔太はおせっかいだと分かりつつも、踏み込むことにした。
「五月たちだって、本当に貴方を嫌ってこんなことをしているわけじゃないのは分かっているでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「貴方なりの家族の在り方を求めているのかもしれませんが……五月たちもあいつ等なりに出した答えなんです!だから…!?」
「…君が娘たちの命の恩人だとしても、僕の考えは変わらない。僕は娘たちの行動を容認するつもりもないし、君や上杉君を彼女たちの家庭教師とも認めない」
翔太の言葉に自身の考えを全く変える気はないといったマルオは、話は終わりとばかりに病室を去ろうとした。そして、去り際にこう告げたのだった。
「もしも、認めてもらいたいというのなら、結果が示してもらおう。僕は結果で判断する人間だ。君が娘たちを守るというのなら、上杉君には上杉君なりの存在意義を証明してもらわなければ、僕は彼を認めはしないよ。それだけは覚えておきたまえ」
そう告げ、今度こそマルオは病室を後にした。そんなマルオの姿が見えなくなったところで、
「……どこまで素直じゃねーんだよ」
思わずそんな心の声が漏れた翔太。そして、マルオから手渡された書類へと視線を落とすのだった。
「それじゃあ、その偽物仮面ライダーが警察に挑戦状を送り付けてきた犯人で、その偽物を仮面ライダーが倒したのを見たんだな?」
「そうだよ。その爆発の余波で壁に吹き飛ばされてこのザマだよ。話はこれで終わりだよ、刃さん」
翔太が意識を取り戻したとのことで、マルオから連絡を受けた刃野は翔太からそんな話を聞いていたところだった。
もっとも、刃野は翔太が怪我をしたと聞いて、見舞いに来ただけだったのだが、まさかの話が警察も手が焼いていたジェノサイド・ドーパント(警察では仮面ライダーの強盗襲撃事件という認識だったのだが)の一件だったのだから、流石の刃野も話を聞かない訳にはいかず、翔太への事情聴取(に近い雑談だが)を終えたところだった。
「それにしてもお前さん…昔からそうだが、どうして仮面ライダーが絡むとその場、その場に居合わせるんだか……そして、今回こんな大怪我をしてたら世話ないだろうが」
「…心配かけて悪かったよ、刃さん。何というかな…探偵の勘っていうのが働いちまってさ」
「お前さんが仮面ライダーを追っかける気持ちも分からないこともないが、お前さんに何かあったら、俺はお前の親父さんに合わせる顔がないんだからよ」
(……悪いな、刃さん。俺がその仮面ライダーなんだよな)
自身を本気で心配する刃野の言葉に苦笑いしながらも、告げることのできない事情に謝りながらも翔太は眉を顰めた。そして、大体の話を聞き終えた刃野はその場を去ろうとして、
「ところで翔太…さっきから病室の外からコソコソしてる女の子は誰だ?」
「………あー、俺の知り合いだと思う、多分」
刃野が聞こえないようにこっそりと小声で翔太に尋ねるも、とても見覚えのあるアホ毛と赤髪の制服姿の女子に翔太は思わずため息を吐いてしまった。だが、刃野にとっては逃すことのできないネタが今、目の前に泳いでいたのだから聞かない訳がない。
ニヤニヤしながら、刃野はトレードマーク(?)のツボ押し棒を翔太に押し付けながら、問い詰め始めた。
「なんだ、なんだ?お前さん、青春してるのか?ええぇ、彼女か?」
「違―よ。あいつは同じ学校の娘だよ。見舞いに来てくれただけだっつうの…というかいいのかよ。早く帰らないと、またマッキーがうるさいんじゃないのか?サボり、サボりってチクられるぞ?」
「…いいんだよ、俺は別に出世なんて興味ないからな…まぁ、そろそろ戻ってやるか。それじゃ、翔太。怪我が治るまでおとなしくしとくだぞ?」
「分かってるよ」
ようやく重い腰を上げた刃野の忠告に翔太も手を振りながら応える。そのまま、病室のドアを開け、様子を窺っていた人物へと声を掛ける。
「お嬢さん、もういいよ」
「ひゃ!?は、はい…!?」
そして、刃野が去っていた後、入って来たのは・・・
「……佐桐君?」
「あー…よう、五月」
「………ううう!佐桐君!?」
不安げな表情で入って来た五月に、気まずそうに挨拶する翔太。そして、翔太が危惧していたように五月は目に涙を貯めたと思えば、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんん!?」
「おおっ!?痛た痛た痛い痛い痛い!?」
躊躇なく翔太に抱き着いた五月だったが、今の翔太は全身打撲に一部やけど、更には右腕の骨にはひびが入っている重傷の身である。そんな体に思いっきり抱き着かれでもすれば、歴戦の猛者である翔太も痛みの余り、悲鳴を上げてしまう程だった。
「っ?!す、すみません!!」
「ぜぇ…ぜぇ…死ぬかと思ったぜ……」
翔太の悲鳴に我に返った五月が慌てて離れる。ようやく痛みから解放され、肩で息をする翔太。もしここにマルオがいれば更に大変なことになっていたことだろうが、幸いなことにマルオは診察中だったため、近くを通るなんていうオチははなかった。
「その…悪かったな。心配かけちまったみたいで…」
「……本当に心配したんですから…あの後、血だらけのまま、意識を失って…私、何が何だか分からなくなってしまって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう告げる五月の深刻な表情から、余程自分の状態が酷かったことを悟る翔太。今にも再び泣き出しそうな五月の目元には、涙だけでなく、マルオから聞いたようにほとんど眠れていないようで隈ができていた。
「…そうだ。フィリップは…他のみんなはどうしてる?」
「一花たちも話を聞いてとても心配してました。フィリップさんも万全ではないみたいですが、元気だと連絡を受けました…というか、何も聞いてないんですか?」
「今朝目覚めてからな…ダブルドライバーやメモリ、メモリガジェットがなかったから連絡を取る手段がなかったんだよ」
「……ああ。二乃が気を遣って、病院に運ぶ前に変身の道具を回収したんですよ。見られたらマズイかもしれないって…」
自身の手元からダブル関連のアイテムが消えてしまっていたことについての疑問が解けた翔太は納得し、二乃に感謝していた。自身の正体に気が付いたマルオはともかく、他の人に安易に見られては困る代物であることは違いなかったからだ。
「そういうことだったのか。はぁ…安心したわ」
「でも、思った以上に元気そうで良かったです。あの時の血の量は本当に心の底から怖かったんですから」
「……当分はあんな無茶はしねーよ…多分…」
「多分!?多分ってなんですか!?」
「しょうがねーだろう!?どうしても体を張っちまう仕事なんだから!」
「しょうがないってなんですか!?大体佐桐君は無鉄砲すぎませんか?人に散々言っておいて、それはどうなんですか!?」
「……アハハ!アハハハハハ…!!」
「な、何が可笑しんですか!?」
いつもの口喧嘩が始まろうかとしたところで、翔太が笑い出してしまい、困惑する五月。そんな翔太はというと、
「やっといつものお前に戻ったな。それくらいの威勢がないと、お前らしくないだろう」
「…も、もしかしてワザとですか…ワザと怒らせたんですか!?」
「……さぁな」
「さ、佐桐君!!」
そう言ってはぐらかす翔太に五月は思わず恥ずかしさを誤魔化すように怒るも、翔太にはその怒りは届かず、五月自身も自分のことを思ってのことだと理解し、それ以上追求することを止め、あることを思い出して話を切り出した。
「そうだ…佐桐君、退院はいつになる予定なんですか?」
「怪我自体は全治3週間って言われてるけど、明後日の午後には退院していいと言われてるな…それがどうかしたのか?」
急に退院の日程を聞かれて首を傾げる翔太。尋ねた理由を聞かれ、五月は話を本題へと移した。
「フィリップさんから佐桐君に会ったら聞いておいてくれって頼まれまして…フィリップさんの携帯、今修理中で直接の連絡ができないので」
ジェノサイド・ドーパントの一件で、二乃が勝手に持ち出したフィリップのスタッグフォンは絶賛修理中だったため、五月がメッセンジャーとして翔太にフィリップからの伝言を頼まれていたのだった。
「佐桐君の退院日に一花や上杉君たちに全てを話す…そう伝えてほしいと言われました」
「……そういうことか」
五月の告げた言葉の意味を理解した翔太は小さく息を吐きながら、そう返した。
それは、ダブルとしての全てを語る時が来た、そのことを意味していたのだった。
次回 仮面ライダーダブル
『戦士たちのH/五つ子with上杉inアジト』
これで決まりだ!
というわけで、次回はダブルメインの解説&日常回になります。
五つ子たちや上杉兄妹も出まくりますのでお楽しみに。
そして、一花役の花澤香菜さんがご結婚されましたね。
おめでとうございます!筆者は『ロウきゅーぶ』の頃から花澤さんのファンだったので、ニュースを聞いた時は大変驚きましたね…余談でした。
次回更新 19日0時予定