仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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今思えば、まさかの50話目…
そして、今までの中で最長の15000字(笑)

ちょっと詰め込みすぎた四葉・三玖・一花回です。
それではどうぞ!


第50話 「戦士たちのH/最後の試験:それぞれの場合」

〈四葉Side〉

月日は遡る…

 

「すみません、佐桐さん。ちょっと別行動を取ってもいいですか」

 

2月。ダブルの二人と五つ子たちと風太郎が遊園地に息抜きに遊びに来ていた時にそれは起こっていた。

 

全員の警護役ということで一同の動向を見守っていた翔太に四葉がそんなことを話し掛けていた。いきなりそんなことを言われた翔太は目を丸くしつつも、何事かと思い逆に聞き返していた。

 

「いきなりどうした?五月に振り回されすぎて、気分でも悪くなったか?」

「あ、あ~…そうなんですよ!ちょっとお手洗いに行きたくて…!」

 

先程から一同を絶叫系アトラクションに連れ回す五月を見ていた翔太からそう聞かれ、四葉はまさしくその通りだとのばかりに手をポンと叩きながら答える。

 

「私のことは置いておいて、みんなには楽しむように言っておいて下さい!それじゃ行って「ちょっと待て」…えっ?」

 

その場の勢いで逃げようとする四葉の言葉を遮る翔太。その表情はどこか呆れた表情が浮かんでいた。その訳は、

 

「お手洗いに行くのにどうして勉強道具を持って行くんだ?」

「えっ!?ど、ど、どうして分かったんですか!?」

 

翔太に指摘され、肩に斜め掛けしていたポーチを後ろ手に隠す四葉。その驚き様が翔太の指摘が間違っていないことを証明してしまっていた。

 

「やっぱりな…どうせこっそり一人勉強するつもりだったんだろう、お前」

「…ち、違いますよ!?このポーチの中にはテスト対策の道具なんて入ってませんから!現代文の教科書なんて私持ってませんから!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

四葉の素直すぎる反応に流石の翔太も天を仰いでしまう。嘘が吐けないにも程があるだろう半分、不器用すぎるその反応に苦笑半分になる翔太。そのまま説得を諦めた翔太は、

 

「なら、あそこで勉強したらどうだ?あそこなら今は人も空いてるだろうし、俺も目を届かせることができるしな…でも、どうしてだ?」

「…えっ?」

「どうして一人で頑張る?今のお前たちなら焦らなくてもまだ可能性は…」

「そうじゃないんです。佐桐さん…私は…」

 

そして、その先の四葉の言葉を聞いた翔太は…

 

 

「…こんなところで勉強してたのかよ」

「…あっ」

 

佐桐に一人抜けることを告げた四葉に気付き、彼女の元へと向かった風太郎は呆れながらも、翔太が勉強場所として提案したガラ空きの観覧車の中へと乗り込んでいた。

 

まさかの風太郎の乱入にこっそり勉強していたことがバレた四葉は驚きながらも、反論することなく風太郎の相乗りを受け入れた。

 

「バレちゃいましたか…佐桐さんには口止めをお願いして、しっかりと見つからないように隠れていたはずなのに…」

「佐桐は言ってないぞ。ただ、そのデカリボンは見えてたからな」

「ああっ!頭隠してリボン隠さずですね!」

 

風太郎が四葉のいる場所に気が付いたのは、翔太の視線とその先の観覧車の中で上下する四葉のトレードマークのリボンのお陰だった。それに気付いた四葉は思わずリボンを抑えていた。

 

「私はみんなよりも体力があるので、こういう機会でもまだやれると思ったんです。それに、私は姉妹で一番おバカなのです」

「それはみんな知ってる」

 

どや顔でそう語る四葉に風太郎も容赦なく切り返す。

 

「だが、休日くらいは休め。せっかく貴重な貯金をはたいて遊園地に来てるんだ。お前がいないと、姉妹たちも…」

「いいえ。上杉さんは知らないんですよ…私がどれだけおバカなのか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

その四葉の言葉に流石の風太郎も言葉が止まってしまった。そして、四葉は先程翔太に語った真実を話し始めた。

 

「私たちが転校してきた理由をご存じですか?」

「かなり酷い成績だったとは聞いているが…」

「あはは…多分想像しているよりも酷いですよ…だって落第寸前だったんですから。

私たちのいた高校はいわゆる名門というところでして、試験に落ちれば落第なんて珍しい話ではありませんでした。当然私たちはその試験に落ちるのですが…」

「当然の様に落ちるなよ」

 

風太郎のツッコミが途中で入ったが、それを無視して四葉は話を続けた。

 

「もちろん追試のチャンスが与えられました。それに向けて、みんなで勉強して再起を図りましたが……」

「……まさか…お前だけが落ちたのか?」

「…さすがは上杉さん。佐桐さんにも同じ話をしたら見事に当てられちゃったんですけど、上杉さんもなんでも正解しちゃいますね」

 

どこか影のある四葉の笑みに風太郎は…いや、先程同じ話を聞かされた翔太も全く同じ反応をしていた。

 

それは四葉の一人のために全員が今の高校に転校してきたことを意味していた。

そして、それは『五人でいることが重要』という母の教えを未だに忠実に守っている証でもあり救いでもあったが、同時に大きな枷となって五つ子たちを縛っていることも同義であった。

 

だから、翔太も四葉にそれ以上説得の言葉を掛けることができず、四葉が勉強することを見逃してしまったのだ。

 

「みんな、私についてきてくれたんです…嫌な顔一つせず。だからお願いです…今は少しでも勉強させて下さい……もうみんなの足は引っ張りたくないんです…」

「…はぁ。佐桐の奴め…あの目線はそういうことだったのか」

 

頭を下げ、必死な声でそう嘆願する四葉に風太郎は思わずため息が出てしまった。

そして、ここに向かう前に意味深に向けられた翔太の目線が『そっちは任せるわ』という意味だったことを悟った彼は、

 

「今日は休日だと言ったが…残り半周あっても手持ち無沙汰で暇だし…やるか、マンツーマン授業」

「…えっ?」

「他の四人には秘密な?」

「…!は、はい!」

 

まさかの風太郎の言葉に四葉は喜びを露わにし、下がっていたテンションが一気に戻っていた。そんな四葉に対し、風太郎は別の意味で笑みを浮かべながら、

 

「ククク…!いい機会だ。昨日教えきれなかった国語の文章問題、今度こそ理解させてやるぜ!」

「あ、それは大丈夫です。昨日できるようになりましたから」

「…えっ?」

 

 

が、奇妙な笑み(本人なりには決して悪気があったりとかでは決してないのだが…)を浮かべた風太郎に四葉からまさかの発言が飛び出し、風太郎の笑みが凍る。

 

「ど、どれ…本当だ…他の姉妹に教えるのは俺もフィリップもあんなに苦労したのに…佐桐だってそこまで……

…四葉!!」

「んなっ!?」

 

そこで何かに気付いた風太郎にいきなり肩を掴まれた四葉から奇妙な驚き声が漏れる。そのまま混乱した四葉が慌て出し、観覧車が揺れ始める。

 

「な、何をするつもりですか!?確かに頂上で絶好のタイミングですが、まさかマンツーマンじゃなくて、マウストゥーマウスをしようなんて!正月のアレは事故で……!?」

「な、何言ってんだ?」

 

完全にそっちの方向に勘違いしてしまった四葉に、今度は風太郎が首を傾げてしまったが、気にすることなくそのまま風太郎は話を続けることにした。

 

「お前のお陰で光明が見えてきたぞ!」

「…?ど、どういうことでしょう?」

「ある意味でお前らの親父は正しかったってことだ。俺たち3人で教えきれない部分があるのなら、教える側に分からないところが理解できる奴を増やしてやればいいだけのことだったんだ」

「…?…?…?できれば、おバカな私にも分かりやすく…」

「国語はお前も教えるんだ」

「…え。わ、私が………無理無理無理!!!」

「無理じゃねぇ!というか、今までの試験結果から姉妹でも各々得意科目があるのは気付いてた。三玖なら社会、五月なら理科、そして、四葉…お前は国語が得意なんだ」

「わ、私の得意科目…?」

 

風太郎の言うことが未だに信じられない四葉は言葉を反芻するのがやっとだった。

 

「何も特別なことをしなくてもいい。感じたままに言えば伝わるはずだ。お前ができるなら、他の4人もできる。俺とフィリップが大まか部分を、佐桐とお前たちが細かい部分を詰められれば…いける!だって、お前たちは五つ子なんだからな」

「……!」

 

その風太郎の言葉を受け、四葉は言葉を失ってしまう。観覧車の中に沈黙が降り立った。

 

「おバカな私がみんなの役に立てるのですか?」

「俺の教師が至らずにすまない。だが、俺たち3人とお前たち…これからは全員生徒で全員家庭教師だ」

「おバカな私にできることがあるんですか?」

「そうだ。お前にしかできない仕事だ」

「もう足を引っ張るだけの私じゃないんですか?」

「ああ。今度は…お前がみんなの手を引いていくんだ!」

「……はい!任せて下さい!私が4人を合格させます!」

「おいおい…お前が最優先だってことを忘れるなよ…?」

 

その四葉の宣言に風太郎も思わず苦笑が漏れてしまっていた。そして、その様子を四葉の警護として観覧車の外に配備していたバットショットを通して見ていた翔太も安堵し、ホラーハウスでダウンしてしまった五月の介抱に戻るのであった。

 

そして、迎えた学年末試験の結果発表。

 

「四葉!」

「…上杉さん」

 

それぞれの結果発表を聞きに回る翔太と風太郎。そんな風太郎に声を掛けられた四葉の声はどこか泣きそうな感情が込められていた。

 

「試験の結果はどうだった!?」

「…すみません。実を言うと、分からないところをみんなで教え始めてから、姉妹のみんなに教えてもらう方が分かりやすい時もありました。不出来ですみません…そして、」

 

涙と共に自身のテスト結果が書かれた紙を差し出した四葉から遂に涙が零れ出した。

 

「ありがとうございます…!

私…初めて報われた気がします」

「…!」

 

その涙には、安堵と感謝の笑みも混じっていたのだった。

 

中野四葉 国語51点 数学33点 理科32点 社会36点 英語32点

合計得点184点

 

 

 

〈三玖Side〉

(この試験で目指すのは赤点回避だけじゃない。他の姉妹にも負けない…あの日、そう決めたんだ)

 

学年末試験に挑む三玖は問題を前に気合を更に入れ直していた。彼女がこの学年末試験に掛ける想いはおそらく五つ子たちの中でも一番だっただろう。

どうして三玖が今まで以上…いや、赤点回避ではなく五つ子の中でも一番の成績を取ろうとしているのか…話は1月へと遡る。

 

 

「三玖、まだ起きてたんだ」

「一花…起こしてごめん」

 

勉強会を終え、全員が寝静まった中、こっそりとチョコを試し作り続ける三玖に、たまたま起きた一花が気づき声を掛けた。

起こしてしまったのか思い、三玖が謝罪するも、気にせず一花は進捗状況を尋ねた。

 

「どう?チョコの調子は?そろそろフータロー君の好みを把握してきたんじゃない?」

「一花には気付かれてたんだ…私は甘いの苦手だからよく分からなくて…」

 

一花と三玖が言葉が意味するのは、先日唐突に始まった三玖の風太郎にチョコを食べてもらうという行動についてだった。

 

『三玖のせいだ。なぜか最近ずっと市販のチョコを無理矢理食わせてきやがる』

『今日も持ってきた』『ってことで、全部食べて感想教えて?』

 

そう…これらの一連の行動は風太郎の味の好みを知るための策だったのだ。抹茶ソーダをソウルドリンクとする三玖にとって、甘味とは領域外の味だったからこその策…まさしく『徐かなること林の如く』といったところだろうか…

 

もっとも、味音痴の風太郎にその策で攻めるのは果たして正しいのかどうかは微妙なところではあるが…

 

一花はカレンダーから三玖の行動の真理を理解しており、三玖が試し作りしているチョコが入ったボウルを覗いたが、

 

 

「試作品を作ってるんだ」

「……えーっと、ドクロマークが出てるけど…」

「これは大丈夫な方のドクロマーク」

「ドクロに大丈夫な奴ってあるの?」

 

そもそもチョコにドクロマークが現れる時点で変だというツッコミを入れる勇気は一花にはなかった。姉なりの配慮だったのだろう…一花は三玖にアドバイスしようと試みた。

 

「もっとシンプルなレシピでいいんじゃない?溶かして固めるみたいな…」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「……(あちゃー…こうなった三玖は説得は無理かな…だからといって、私も料理の腕はイマイチだしなぁ…)あっ、そだ」

 

アドバイスも無理だと思っていた一花だったが、その口から妙案を思いついたような言葉が出た。どうしたのかと思い、三玖も姉へと視線を向ける。

 

「私の知り合いに料理上手な人がいるんだ。その人に教えてもらいなよ?」

「…え?」

 

そんな一花の提案に三玖は首を傾げていた。

 

そして、2月…勉強会を休み、その日も三玖はチョコを作っていた。尤も…

 

(これならフータローも食べてくれるかな?)

 

三玖本人の思いとは別腹にチョコからはドクロマークが浮かんでしまっていた。だが、今日は一花の知り合いだという人から指導を受ける日であったので、三玖は少し期待を寄せていた。

 

(一花の顔が広くて良かった。今日が約束の日だけど、料理上手な人って、どんな人なんだろう?)

 

提案を受けた時、三玖はてっきり助っ人は翔太のことかと思っていた。その腕前は五月から聞いていたので、三玖もアドバイスを貰おうかと思っていたぐらいだったからだ…まぁ、翔太が先日の一件で右腕が使えなくなってしまったので、遠慮してしまったのだが…

 

それに翔太が助っ人だというのなら一花があんな言い方をする訳がないと三玖は思い、早々にその考えを振り払っており、その助っ人が来るのを待っていた。そして、ドアが開いた音がして三玖が視線を上げると、

 

「あれ?一人で何してんのよ」

「二乃…?今日は図書館で勉強会の筈じゃ…?」

「一花に呼ばれて戻ってきたのよ」

「えっ…一花の言ってた人って…」

 

まさかの二番目の姉の登場に、一番上の姉の助っ人が誰かを察してしまった三玖。二人がそんな状況に混乱している時だった。

 

ドンッ!

「…?!…?!」

「な、何よ、今の音?びっくりした…って、なにこれ?」

 

外からの音に二人してビックリしてしまう。次々と起こる予想外の出来事にはてなマークを頭に浮かべる三玖だったが、二乃は台所のそれを見て、更に驚いていた。

 

「こっちにもびっくりだわ…美味しくなさそうだし、めちゃくちゃじゃない。こんなのあげて誰が喜ぶのよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あんたは味音痴と不器用のダブルパンチなんだから、おとなしく市販のチョコを買ってればいいのよ!その方が相手の人も喜ぶと思うわよ?」

 

久々に二乃の毒舌が発動してしまった。尤も、姉妹である三玖の性格を理解してるからこそ、あえて厳しい言葉を掛けたのだ…家族以外にはそうそう言うことはないだろう。三玖の反応も、

 

『う・る・さ・い!』

 

と頬を膨らませた表情で反論してくるであろう妹を予想していた二乃だったが…それは大きく裏切られることとなった。

 

「……うるさい」

「ㇶッ…」

 

俯せ顔で目尻に涙を貯める三玖に、己がやらかしてしまったことに気付いた二乃は思わず悲鳴を上げた。まさかの反応に罪悪感にも襲われた二乃は慌ててフォローに入った。

 

「で、でも!料理は真心っていうし手作りに意味があるのよね!私だって失敗することあるわ!それに少し下手ッぴの方が愛嬌あるし!これなんて虫っぽくてかわいいわ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「(…やっぱり言い過ぎたわよね…)」

 

自身のフォローの言葉に何も返してこない三玖に冷や汗ダラダラの二乃。だが、そんな彼女の不安は三玖が口を開いたことで払拭されることとなった。

 

「最近…フータローが私の料理を食べてくれない。ショータなんかは一度も食べてくれたことがない…フィリップは興味津々で食べてくれるけど…」

「ま、まぁ…フィリップ君はちょっと特殊だしね」

 

正月以来、三玖の料理の腕を知った翔太はさり気なく彼女の手料理を避けていた…それをハーフボイルドだと笑うフィリップは好奇心で三玖の手料理に挑戦し続けていた…もっとも感想を言う前に毎回翔太に口を塞がれていたが…

 

「心当たりはある…私が不器用なのも知ってる。だけど、作りたい…思わず食べたくなるようなチョコを…手作りで…!」

「…!」

「だから…作り方……教えてください。お願いします」

 

いつも趣味が合わず、何かあれば口論し続けてきた妹…その妹が今、必死な言葉と表情と共に頭を下げている。自身の弱みを理解し、自分のプライドなど捨て、一身にそうしていた。それを見た二乃が取る行動は決まっていた。

 

「……油分が分離しているわ。湯煎の温度が高いのよ」

「…えっ?」

「えっ、じゃないわよ。まだあるわよ…生クリームを冷たいまま使ったでしょ?舌触りも最悪…っていうか、それ以前の問題がありすぎだわ。

全く…本当に手がかかる妹だわ…早く準備しなさい。言っとくけど、中途半端なもので満足はさせないから覚悟しなさい」

「二乃……うん!」

「………ほんと…面倒な性格だわ」

 

それが三玖に向けてなのか、自分自身へ向けての評価だったのか…苦笑いとと共に意気揚々と準備を始める三玖に二乃はチョコ作りの指導を始めたのだった。

 

そして迎えた2月14日…

二乃の指導の甲斐もあり、なんとかチョコを仕上げた三玖…そのチョコからはドクロマークが浮かんでいる様子は微塵も感じられない程の出来栄えだった。

だが、仕上げるまでに早朝までかかってしまい、三玖も二乃もほとんど睡眠を取ることができず、いつもより起きるのが遅い時間となってしまった。

 

未だに眠り続ける二乃を横に先に起きた三玖がリビングに向かうと、

 

「あっ、三玖。おはよー!」

「お前も二乃も何時まで寝てんだ」

「…チョコを食べすぎると鼻血が出る…これは大変興味深い!すぐに検索しなければ…!」

「フータロー…来てたんだ。来るなら言ってほしかった。でも、丁度いい」

 

先に起きていた四葉の挨拶と、もう既に来ていた風太郎の諫言と、何故か鼻血を出している風太郎を見て暴走してしまっているフィリップに出迎えられた。残念ながら、いつもストッパーである翔太は私用でおらず、早々に止めることを諦めた三玖。

 

風太郎がもう来ているのならばと思い、三玖は完成させたチョコを渡そうと思い、台所に向かう。ちなみに四葉はフィリップをなんとか止めようと頑張っていたりする。

 

「…あれっ?うん…?!……!?!?」

 

だが、台所に着いて、寝ぼけていた意識が覚醒し、思わず二度見してしまった三玖。そして、冷や汗が全身から流れ始めた。なぜなら、徹夜に近い努力で完成させたチョコが消えてしまっていたからだ。

 

「こ、ここにあったチョコは…!?」

「ああ、それか…

 

今日も食っといたぞ……美味かった」

 

「えっ……………っ!!!」

 

風太郎の感想がどういうことかを理解するまで数拍を有した三玖。だが、それに気付いた途端、一気に喜びが胸に溢れ出した。そして、お礼と共にチョコを作りあげることが出来た理由を話そうとした。

 

「あ、ありがと…そのチョコなんだけど、実は…」

「三玖…お前には伝えておくべきだったな」

 

だが、その彼女の言葉は風太郎によって遮られた。そして、まさかの言葉が風太郎から飛び出した。

 

「やはり三玖が一番だ」

「……え……い、一番!?」

 

そんな爆弾発言にまたしても一瞬思考がフリーズする三玖。正気に戻り、どういうことかと三玖が風太郎に尋ね始めた。

 

「そ、それってどういう意味で……!?」

「それはな……先日行った模擬試験の結果に決まってる!」

「……は……?」

 

3度目となる思考停止に、三玖の目が点となった。だが、そんな三玖の反応などお構いなしに鼻血に詰めたティッシュなどお構いなしのハイテンションの風太郎は一枚の紙を取り出した。

 

「試験の成績…お前が一番の成績だったんだ!喜べー!!」

「あー…そういうこと…?」

「これは希望が見えてきたぜー!」

「…全く…フータローったら…私頑張るから…見ててね、フータロー」

 

一人盛り上がっている風太郎に思わず肩の力が抜けてしまった三玖だったが、その言葉と共に三玖は更に決心を強めたのだった。

 

そんな三玖はある人物を待っていた。それは、

 

「お仕事お疲れ様…一花」

「三玖…?おつかれー。いや~、寒いね?というか、もしかして待っててくれた?っていうか今日はどうだった?ちゃんとチョコ渡せた?」

「一花は…渡さないの?」

「…えっ?」

 

出迎かえられた一花は吐いた白い息で手を温めながら家に入ろうとしたが、三玖の言葉に思わずその動きが止まってしまった。どういうことかと一花が首を傾げていると、

 

「チョコ…フータローにあげないの?」

「…!ど、どうしたの急に…!?」

 

まさかの質問に一花は困惑してしまう。なんとか言葉を捻り出そうとするが、口から出る言葉はしどろもどろになってしまっていた。

 

「そりゃ…誰もあげなかったらかわいそうだし、お姉さんが買ってあげようと思ったけど…三玖があげるなら安心かなと思ってさ」

「安心って…何が?」

「えっ…」

 

三玖の言葉に今度こそ言葉を失った一花。それがどういう意味か尋ねようとしたが、その先を言うことができなかった。しかし、そんな一花に構うことなく三玖は言葉を繋げた。

 

「フータローは私たちのことを全然女子として見てない…そのことは前から知ってたけど…フータローにとっては私たちは…ただの生徒」

「…三玖…」

「だから決めた…この期末試験で赤点回避する。それだけじゃない…五人の中で一番の成績を取って…自信をもってフータローの生徒を卒業できたら…

 

今度こそ好きって伝えるんだ」

「………!?」

 

そんな三玖の独白に一花は…

 

 

 

〈一花Side〉

月日はまた少しだけ遡る…2月。

 

「あれ?一人で何してんのよ」

「二乃…?」

(三玖、ファイトー!)

 

二乃を上手くアパートに戻るよう誘導できた一花は二人の様子を見守りながら、三玖のチョコ作りを応援していた。しかし、その心境は複雑だった。

 

(お菓子作りは二乃がなんとかしてくれる。これで三玖は無事にバレンタインチョコを渡せるわけだ…これでいいよね?)…ふふふ。いくら鈍チンフータロー君でもこれはびっくりするだろうな……はぁ…なんで好きになっちゃったんだろ?」

「何を好きになってしまったんだい?」

「ひゃぁぁぁぁぁ!?」

 

背後から聞こえた問いに慌てて振り返る一花。そこにいたのは、

 

「フ、フィリップ君!?いつからそこに…!?」

ドンッ!

「っ!?」

 

声を掛けたのはフィリップだった。一花の反応に不思議そうな表情をするフィリップだったが、慌てすぎた一花は勢いよく振り返りすぎて手を小窓にはめられていた格子にぶつけてしまった。

 

二乃と三玖を脅かせた音の犯人は一花だったわけだ。

 

「だ、大丈夫かい?中野四葉が参考書を家に忘れたというから、僕が代理で取りに来たんだけど…」

「…やば…そうだ!それ、この前私が間違って捨てちゃったかも!」

「本当かい…それは困ったね…」

「なかったら困るよね!よし、今から買いに行こう、行こう!」

「あ、ああ…?」

 

このままフィリップを中に入れるのはマズイ…そして、中の二人に自分がここにいることを気付かれるのも大変マズイ…今はこの場から遠ざかることが最優先だと思った一花はフィリップを強引にアパートから引き剥がすために嘘を吐いた。

 

(…頑張ってね、三玖)

 

そう妹に心の中で告げながら、一花はその場を後にした…困惑気味のフィリップの背中を押し続けながら…

 

 

「…しまった…やってしまった」

 

一花は後悔していた…フィリップをアパートから引き剥がすことには成功した。だが、彼女は自身が吐いた嘘によって、現在大変な状況に追い込まれていた。

 

「フィリップ君がどっか行っちゃたよ…」

 

一花とフィリップの付き合いは残念ながら短い…そして、彼がガイアメモリを使う組織から狙われているかもしれない可能性を一花は翔太から聞いていた。だが、一花はフィリップの暴走する好奇心を甘く見すぎていた。ちょっと目を離した隙に…

 

「あ、あれは…噂に聞く痛車?!ま、待ってくれ!!」

 

偶然通りかかってしまった痛車(某ゲームアイドルが全体に張り付けられたもの)にフィリップの好奇心が爆発してしまった。一花の目を振り切り、フィリップはそれを追いかけてしまったのだ。

 

(参ったな…ショータ君は今日病院だって言ってたから連絡取れないし…絶対にこれ怒られるパターンだよ…!?)

 

慌てて消えてしまったフィリップを探す一花。もしこのことが翔太にバレたらと思うと、先程から冷や汗が止まらない状態だった。長女として、フィリップのことを心配する翔太の様子からその大事にしていることから痛いほど分かっていた。

 

だからこそ、慌て過ぎていた一花はある通行人にぶつかてしまった。反応が完全に遅れてしまい、尻餅を着く一花。謝ろうとして、その人の方を見ると、

 

「…立てるか?」

「えっ…あ、ありがとうございます…」

 

自身と同い年くらいだろうか…真っ赤なライダーズジャケットを着た青年が差し伸ばした手を取る一花。誰かに似ているかと思い、立ち上がりながら青年を凝視する一花。そして、気付いた。

 

(…あっ。髪型や目付きの悪さが似てるんだ…フータロー君に)

「…君は…」

 

先程まで思っていた想い人に似ている青年に驚き呆然としてしまう一花。しかし、それは一花だけではなかった。青年も一花の顔を見て、何かに気付いたようで…

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「「っ!?」」

 

しかし、そんな二人の空気を裂く悲鳴が商店街に響き渡った。只事ではないことを告げる声に二人が視線を向けた先は、

 

「ば、化物だぁ!?」

「逃げろぉぉ!?」

「ぐぉぉぉぉぉぉォォォォォォォォ!?!?」

 

「…っ!?」

「嘘…ドーパント…!?」

 

全身銀色…その両手には常人が持つには巨大すぎる凶暴な歪な鋏が周りの物を切り裂き、人を血祭りにあげようと凶行に走っていた。そのドーパント自身も暴走しているようで、乱雑に凶器を振り回し続けていた。

 

突然の光景に息を呑む青年。一方の一花も見るのは二度目だったが、驚きを隠せないでいた。早く翔太やフィリップに知らせなければと携帯を取り出すが、その時、ある光景が一花の目に入った。

 

「…っ!?危ない…!!」

 

親と逸れたのか…泣きじゃくる女の子にドーパントが迫りつつあったのだ。その刃が少女に振り下ろそうとしている光景に動けず、一花が叫んだ瞬間だった。その横を駆け抜けた影があった。

 

そして、その影は凶刃から少女を庇うように飛び込んだ。刃が振り落とされる寸前にその場から離脱した影の正体は…

 

「怪我はないか…早く逃げろ」

「・・・・・(コクッ!)」

 

それは一花とぶつかった青年だった。少女に逃げるように告げ、再びドーパントと向き合った青年。ドーパントの狙いは完全に青年へと向いていた。その鋏に青年の血を浴びせようと一歩一歩近づきつつあった。

 

(…た、助けなきゃ…フィリップ君たちを呼んでる時間はない……

あれは……!?)

 

迫るドーパントに抵抗しようと構える青年。そんなドーパントに一花は、

 

「これでもくらえぇぇ!」

ガッシャァァン!!!

「ぐぉぉ!?」

 

騒動で倒されっぱなしだったカートを立て直し全力で押し出した!

背後から隙を突いた一撃に流石の怪人も堪らず体制を崩した…そして、その凶眼を向けて見たのは…

 

「…あっ…あははは……怒った?」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

「っ!?」

「お、おい!?ちぃ…余計なことを…!」

 

一花の冗談交じりの笑みに応えるかの如く叫ぶドーパントに、一花は考えなしに行動してしまったことを悔やみつつ、一目散に逃げ出した。彼女を追いかけ始めたドーパントに青年は舌打ちをしてその場から駆け出した。

 

「はぁ…はぁ…!まだ追いかけてくるの…!?」

「ぐぅぅ…!?おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

公園まで逃げてきた一花だったが、体力の限界を迎えてしまい、遂にドーパントに追い付かれてしまった。フィリップが気付いてすぐに来てくれることを祈っていたのだが、残念ながらフィリップが来る気配は微塵もなかった。

 

このままでは…息を切らしながら命の危険を感じずにはいられない一花。そんな彼女にドーパントは容赦なく襲い掛かろうと…

 

「がああ……ぎゃゃゃゃああああぁぁぁぁぁ!?」

「…えっ…?!」

 

思わず目を瞑った一花だったが、ドーパントの叫びが悲鳴に変わったことに気付き、そろりと目を開けた。そこに見えてきた光景は…

 

「…全く。命知らずな女だ」

「…え?…え?」

 

倒れ込むドーパントの姿があった。何が起こったのかと困惑していると、左側から聞こえてきた声に一花は更に混乱してしまう。その声の主は先程の赤いライダーズジャケットの青年だった。

 

青年は息を少し乱していたが、そんなことなどお構いなしといった風に青年は小走りで走り出した。そして、ドーパントが大勢を立て直す前に、木にぶっ刺さっていた剣らしく武器を抜いた…だが、その光景に一花は目を見開いた。

 

なぜなら、その武器はその場に響き渡るような重量音と共に地面を陥没させていたからだ。そして、それを両腕でやっとこさの状態で扱う青年に信じられないものを見ている気分になっていた。

 

(…うそでしょ?あんな重たいものを振るってるの……というか、もしかしてさっきドーパントに投げたの、あれ…?!何キロあるの!?)

 

木に刺さっていたあの武器を青年が投擲したのだと気付き、更に目を丸くする一花。だが、そんな一花の驚きなど余所に青年は地面を抉りながら武器をドーパント向けて振り回した。

 

「ぬううぅぅぅ!!」

「ごあぁぁ!?」

 

その重量故に体重を取られる青年だったが、直撃を受けたドーパントも堪ったものではなく、ダメージを受けてその体に火花を散らす。そのまま追撃の一撃を放つが、流石のドーパントもやられっぱなしではなく、鋏でその一撃を受け止めた。

 

「ぐぐぬぬぬぅぅぅ…!?」

 

そして、完全に武器を受け止められ、押し返されてしまった青年から声が漏れる。このままではと一花が焦った時だった。

 

「やれ、ファング!」

「「「っ!?」」」

 

聞こえてきた声と共に、小さき影が飛び出し、ドーパントを吹き飛ばした。そして、その声に一花は振り返り、

 

「フィリップ君!!」

「済まない!離れていたせいで来るのが遅くなった。さぁ、行くよ…相棒」

『ああ。さっさとケリつけるぞ!!』

 

『Fang!』『Joker!』

 

スタッグフォンのガイアメモリ反応に気付き駆けつけたフィリップが謝罪と共にファングメモリを呼び寄せ、メモリを起動させる。そして、相棒の言葉に応えるように病院のトイレでジョーカーメモリを起動させる翔太。

 

フィリップの腰には既にダブルドライバーが出現しており、駆けながらメモリを装填し、フィリップは変身した。

 

『「変身!」』

『Fang! Joker!』

 

『「さぁ、お前の罪を数えろ!」』

『Arm Fang』

 

決め台詞と共に空中からドーパントにダイブし、一花たちから更にドーパントを遠ざけたダブルは右手に出現させた刃でドーパントに猛攻を開始した。ドーパントの鋏の反撃をその俊敏性で躱し、カウンターでその体にアームファングを刻み込んでいく。

 

その戦いぶりに一花が目を奪われている一方で、青年はダブルのことを見つめていた。だが、まるで関わりを避けるかのように武器を引きずりながら静かにその場を後にした。そのことに戦闘を続けるダブルはともかく、一花すらも気づくことはなかったのだった。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

『ちぃ!?暴走してやがる!』

「オリジンの手の者でなさそうだね…はぁぁ!これで終わりにする!うおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

ファングジョーカーの猛攻を受けてなお、丸で平気とばかりに攻撃してくるドーパントの左鋏を掴み、その体を拘束するダブルは冷静にドーパントを分析していた。そして、咆哮と共にキックを叩き込み、必殺技を放つ準備に入った。

 

ファングメモリのタクティカルホーンを1回叩き、その間に廻し蹴りで更にドーパントをフラフラにし、残り2回を叩き、マキシマムドライブを放つためにマキシマムセイバーが出現した右足を構える。

 

「ぐるるるぅぅぅぅぅ……!!はぁぁ!」

『「ファングストライザー!!!」』

 

呼吸を合わせるための技名と共にファングジョーカーの空中回転蹴りがドーパントの体を切り刻んだ!

 

その一撃にドーパントは耐えられず爆散した。そして、その変身が解けた女性の左肩から抜け出したシザーメモリがメモリブレイクされて排出されたのだった。

 

「後は…警察の仕事だね」

『だな…うん?おい、一花!さっきの男はどうした?』

「…うわぁ…本当にショータ君の声が聞こえる。二人で変身するってこんな感じなんだ…って、あれ…いない!?」

 

初めて変身したダブルと相対した一花は、ダブルから聞こえてきた翔太の声に驚き、少し引いていたが、その言葉に慌てて青年の姿を探すが…気付くのが遅すぎた。

 

「何者だい、彼?」

「…分かんない。私も商店街でたまたまぶつかって…ねぇ、あの人。二人の知り合いじゃなかったの?」

「……いや、翔太も知らないと言っている。それに彼が使っていた武器…あれも見たことがない物だ。彼は一体…?」

 

変身を解き、頭の中で翔太と会話しながら一花の質問に答えるフィリップ。青年が使っていた武器について思考の海に入ってしまったフィリップ。それはドライバー越しに状況を把握していた翔太もそうだった。謎の青年に一花も驚きのあまり、言葉を失ってしまっていた。

 

そんな二人をカブトムシを模したガジェットが様子を伺っており、その映像をバイクで離れた場所に移動した青年が見ていることに気付くことはなかったのだった。

 

そんな騒動があった中、時はあっという間に過ぎ……

 

(余計なことは考えちゃダメ…今は赤点を回避することに集中しよう)

 

テストを迎える数分前…席に着いていた一花は余計なことを思い出さないように頭を振るったが、その頭の中には三玖との会話が蘇っていた。

 

 

「だから決めた…この期末試験で赤点回避する。それだけじゃない…五人の中で一番の成績を取って…自信をもってフータローの生徒を卒業できたら…今度こそ好きって伝えるんだ」

「………!?い、いいんじゃないかな。それが三玖なりのけじめのつけ方なら…三玖ならできるよ!」

「…私は一花を待ってあげない。全員公平に…早い者勝ちだから」

「うん。だけど、私も手を抜いてられる余裕なんてないから…」

 

三玖の宣言に一花は平然の様に答えていた…いや、平然の様に演技するのがやっとの状態で答えているのが正しいと言うべきだろう。一花は今自身がどう話しているのかももよく分かっていなかった。

 

「頑張ってね!」

 

(頑張って…なんて…私、何様のつもりなんだろ…)

 

仕事の合間、勉強しながら一花は自身の言葉に対し心に靄を感じていた。それは迷いともなり、ペンを止めてしまっていた。

 

『後悔しないようにしなよ』

(三玖がどんどん変わっていく…)

 

三玖に後悔しないようにと言ったのは自分だった。だが、それは三玖へと向けた言葉の筈だったのに、三玖が変わることに焦る自分がいたのだ。

 

『今がいつまでも続くとは限らないんだから』

(私が言ったことなのに…こんな中途半端な気持ちで…フータロー君をこれ以上好きになったら…)

 

女優の仕事をこなしながら、答えを見いだせないまま一花は勉強を両立させた。他の姉妹たちが寝静まった中、一人遅くまで勉強し続けた。意識が眠気に負けそうになっても、

 

(もうだめ…今日は寝て明日に…)

『今がいつまでも続くとは…』

「…もう少し!もう…少しだけ…」

 

自身の言葉が頭をよぎり、頬を叩くことで意識を覚醒させた一花は踏ん張り続けた。だが、勉強は進んでも、自身の迷いに対する答えは見つけることができなかった。

 

そして、学年末試験を終え、成績発表の日を迎えた。

 

「四葉、やりましたね!一番危なかったのに!」

「おめでとう」

「えへへ!私史上一番の得点です!合計184点とギリギリでしたけど…」

 

五月と三玖に挟まれ抱きかかえられた四葉が喜びの悲鳴を上げていた。一番レッドゾーンに近かった四葉が突破したこともあり、風太郎と翔太、そしてダブルドライバー(今は他の生徒もいないので翔太は隠さず装着している)を通して、フィリップも喜んでいた。

 

あの仏頂面がデフォルトの風太郎でさえ微笑んでいるのだ。この3か月間の努力が報われたのは五つ子たちも家庭教師陣も同じだった。

 

「私は計224点。少し危ない科目もあったので、これは今後の課題ですね」

「だな。夢を叶えるためなら必須課題だな。これはまた復習しないとな」

「ええ。そういえば、佐桐君は何点……ええぇ!?よ、442点…み、三玖はどうでしたか?」

 

翔太が見せた成績表に絶句した五月は話題を逸らそうと三玖へと話を振った。おいおいと思いながらも、他の姉妹たちの点数も気になっていた翔太は何も言うことはなかった。そして、話を振られた三玖は自身の点数を述べた。

 

「私は…238点」

「えー、凄い!」

「流石、三玖ですね!」

「おっ、ようやく来たか、一花」

 

三玖の点数を聞き、盛り上がる四葉、三玖の傍らで感心していた翔太が教室に入ってきた一花に気付いた。

 

「…二乃はどうした?試験結果が返ってきたらこの教室に集合の筈だっただろう?もしかしてとは思うが、まさか…」

「大丈夫じゃないかな。さっきすれ違ったけど、そんな様子じゃなかったし…どこかに慌てて向かってたみたいだけど…」

 

一花からその話を聞き、安堵する翔太だったが、それと同時に二乃の行き先も気になった。あの二乃が約束を破るとは一体何事かと思ったのだ。そして、そう思ったのはフィリップも同じだった。一旦、ドライバーを外し、そっちのことは任せたと頭の中での会話を終えた翔太は意識を五月たちに戻した。

 

「よかったー!一花も赤点無かったんだね!合計何点だったの?」

「えーっとね…」

 

四葉が一花の点数を聞いている一方で、三玖は風太郎に声を掛けられていた。

 

「三玖…見違えたな。やはりお前が一番の成長株だったな」

「…フータロー……私ね…実は…「240点」………!」

 

その点数が聞こえ、三玖の言葉は…いや、表情は硬直した。声の主へと視線を向ける。それは点数が聞こえた風太郎も同じだった。

 

「ってことは…」

「一花が一番じゃないでんすか!」

「…えっ…」

 

四葉と五月が喜ぶが、一花は五つ子トップだというのに呆けた声が出ていた。そして、その視線が表情が固まった三玖のものと合ってしまった。

 

「…わ、私……わたし………」

(…一花?)

 

てっきり一花は喜ぶものかと思っていた翔太は彼女の反応がおかしいことに気付いていた。だが、その理由までは気付くことは流石のダブルにも不可能に近かった。

 

もしこの時に気付いて…いや、三玖の反応にさえ気付いていれば、もしかすれば正解に辿り着いていたのかもしれない。

 

それが後の騒動の原因となるとは、翔太も、フィリップも、五つ子たちも、風太郎も…誰もが思ってもみなかったことだった。

 

中野三玖 国語43点 数学48点 理科41点 社会72点 英語34点

合計得点238点

 

中野一花 国語38点 数学63点 理科52点 社会40点 英語47点

合計得点240点

 

 

次回 仮面ライダーダブル/Kの花嫁 

 

『戦士たちのH/最後の試験:二乃の場合』

これで決まりだ! 

 

 




オリジナルドーパント
●シザー・ドーパント
 「ハサミ」の記憶を宿したガイアメモリのドーパント。全身がハサミのように鉄で構成されており、両腕には常人が持つには大きすぎる鋏が具現化されている。
 街で暴走する中、一花と謎の青年を襲うも事態に気付いたダブル ファングジョーカーの猛攻を受け、抵抗することもできずファングストライザーの一撃でメモリブレイクされた。
 ファングジョーカーでも有利に戦えたが、翔太が負傷していなければダブル スパークメタルでも圧倒できたりしたのは余談である。
 オリジンの手先ではなく、オリジンが流通させているメモリを手に入れた女性がメモリの持ち主だが、相性が悪く暴走してしまった。
モチーフは『シザーズロストドーパント』にホラーゲーム「クロックタワー」の『シザーマン』の雰囲気とカラーを掛け合わせたもの。

先週投稿出来なかった訳
・一花パートでフラグを叩き折らないないといけなかったから
・フラグ叩き折ったら、例のあの人を登場させようと思い、シナリオ構成に時間を食ったから
・次話の二乃パートに繋ぐことを考慮したら、話が広がり過ぎたから

「ってことで、投稿が遅れたのも全部作者って奴のせいなんだ」「それは本当かい!?」
…すみません、そんな言い訳もありますが、どちらかといえばスランプってたのが半分を占めていたりします。
次話の二乃編はもう既に書き上がっておりますので、ご安心下さい!

そして、謎の真っ赤なライダーズジャケットの青年…遂に登場しました、例のあの人です!ご期待頂いてました皆様、大変お待たせしました!

本格登場は次々章になりますので、もうしばらくお待ち頂ければと思います。

そして、本章も残り2話となりました。
ここからは二乃とフィリップのターンになります。
ご期待頂ければと思います。

ちやまさん
ご評価ありがとうございます!
コメントでも頂きましたが、あの男が登場しました!
本格参戦を是非ご期待して、お待ち頂ければと思います!

それではまた。
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