そんな感じで書いてた回です(笑)
何気に三玖の出番も多かったりします。
それではどうぞ。
(最初に出会った時の第一印象は…カッコいい王子様…そう思ったのよね)
学年末試験を終え、成績を返された二乃は姉妹たちや翔太たちとの約束を破り、一人で元々住んでいたマンション『ペンタゴン』の前である人を待ち続けていた。
そんな二乃の脳裏を蘇っていたのは…彼女の想い人との思い出だった。たった半年だが、彼との出会いは余りにも衝撃的で、その記憶は時間に比例してはあまりにも濃すぎた。
よく吊り橋効果で男女が恋愛に陥りやすりと言われているが、それは本当だったのかもしれないと思いつつ、二乃は胸の痛みとそんなことを思っていた。
そして、彼女が待っていたのは…
「帰ってきたか…二乃君」
「その君付けはムズムズするから止めてって言ってるでしょ………パパ」
中野マルオ…車から降りてきた彼女たちの父親と対峙した二乃は今一度覚悟を入れ直した。どうして彼女がこんな行動に出たのか…話はなんとジェノサイド・ドーパントの時にまで遡る。
「二乃ちゃん!?翔太は…翔太は!?」
「お、落ち着いてよ、フィリップ君!?」
ジェノサイド・ドーパントとの激闘を制し、意識を失った翔太が病院に運ばれた後…ダブルドライバーを始めとした変身アイテムを回収して、佐桐家に報告に戻ってきた二乃を出迎えたのは錯乱状態に近いフィリップだった。
今まで見たことのないフィリップの姿に慌てる二乃。今にも飛び出してしまいそうなフィリップを一花と四葉が押さえていたが、二乃の姿を確認したフィリップはその拘束を振り払ってしまったのだ。
「大丈夫…命に別状はないらしいから、意識が戻れば問題ないって……パパが言ってたわ」
「そうか……よか、た……っ!?」
「フィリップ君!?」
二乃の言葉に安堵したフィリップが事切れた人形のように意識を失い、二乃に倒れ込んだ。慌てて四葉と一花も助けに入り、フィリップの体を部屋へと運んだ。
その時、二乃の心の中にはある感情が渦巻いていた。
それは嫉妬と………悲しみだった。
フィリップと電撃的な出会いをして一目惚れし、
林間学校では結びの伝説であるダンスを一緒に踊り切り、
姉妹たちとの仲違いの末に起こした家出騒動では騙されていたことを知りつつも、その後の騒動で彼の秘密を全て知り、互いに隠さないことを約束した。
だが、翔太のことを心配するフィリップの様子を見た二乃は衝撃を受けていた。
そして、嫉妬してしまった…自身よりも必死な心配を掛けられる翔太のことを…それが自身に向けられたことがないことに悲しくなってしまった。
それは初めてのことであり、姉妹たち以外のことで初めて嫉妬したのだと気付いた時には二乃は自身が本気でフィリップを好きになっているのだと自覚してしまった。
それと同時に思ってしまったのだ。
『彼は私のことをどう思っているのだろうか?』
ダブルの二人が五つ子たちと風太郎に明かした時、自身と五月だけが知っている秘密を他の姉妹たちも知ってしまったのだと、また嫉妬の感情が沸いた。
『彼にとって私はただ守る対象の一人ではないのか?』
「僕のはサイクロンメモリだ。だから、今、二乃ちゃんが持ってるメモリと最も相性が良いってわけだ」
「そ、そうなのね・・・!(フ、フィリップ君とお似合い!?……お、落ち着きなさい!メモリの話よ!?)」
相性がいいと言われ意識してしまい、それはフィリップも同じではないかと期待して、彼の表情を伺ったが、フィリップの表情に変化はなかった。
『そもそも…私はそんな関係を望んでいるのだろうか?』
「…佐桐。なんであの二人は頭を抱えているのよ」
「教える側の苦労って奴だよ…分かる奴ほど、分からない奴に教える方法が分からないんだよ」
頭を抱えてしまっているフィリップを見て、申し訳ない気持ちになってしまった。ただでさえ、守ってもらっているのにこんなことまでしてもらって…
そんなことを考えているうちに二乃の中である思いが生まれてしまった。
『私が彼を好きになる権利など…あるのだろうか?』
その思いをぶつけるかのように二乃は彼へと尋ねていた。それは、
「フィリップのことを知りたい?」
「…ええ。フィリップ君って…何者なの?」
それは彼の相棒で、ある意味でフィリップのことを最も知る人物…佐桐翔太その人だった。いきなり放課後に屋上に呼び出された翔太は二乃の問いに顔を顰めていた。
「何者って…お前も知って通り、知識欲の塊の検索ば「そうじゃないわよ!!」っ…二乃?」
二乃の悲鳴に近い叫びに、冗談を言おうとしていた翔太の苦笑は掻き消された。そして、彼女が何を聞きたいのかを知るために真剣に向き合うことにした。
「フィリップの何を聞きたいんだ?俺が答えられる範疇なら答える」
「…あんたが倒れた時…フィリップ君が尋常じゃない反応をしてたわ。どうして?
だって、あんたたちは危険な目に何度も逢ってきたんでしょう?でも、あんなフィリップ君の反応は初めてだったわ…フィリップ君って一体…」
「………あいつが記憶を失っていたっていう話はしたよな?」
以前のダブルの秘密を打ち明けられた時のことを思い出して頷く二乃。
そして、翔太は話を続けたが、その表情は少し曇っていた。
「正確には一部…自分がガイアメモリの製造に関わっていた時からの記憶は思い出したんだ…だが、あいつには過去…名前以外の記憶が戻っていないんだ」
「…っ!?」
「だから、あいつには本当の家族と過ごした記憶がない。俺の家に来た時も人間らしい感情をほとんど無くしてやがった状態だった。だから、あいつにとって俺や母さん、父さんは記憶としてある家族そのものなんだ。
以前の事件でもそこを突かれて錯乱したこともあったんだ。その時は俺たちを家族として強く認識することでなんとかなったが…やっぱりあいつにとって家族はまだ傷の一つでもあるんだな」
「……それじゃ、私の家出の時にあんなに真剣だったのは…」
「そうだ…お前が家族と…姉妹たちとあんな状態のままでいられるのが嫌だったんだよ。あいつにとって、家族との絆はそれほど大事で、あいつにとっては目を背けられないことなんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉を受け止めた二乃の心情は…ゴールの見えない迷宮へと迷い込んでしまっていた。どの答えもフィリップのためにならない、迷惑を掛けてしまう、また彼の優しさに漬け込んでしまうだけではないのか…そんな心情が渦巻いていた。
だが、そんな心情の中、ある出来事が二乃の心情にある変化を起こした。
「一人でできた」
「いよいよ明日ね」
三玖にお願いされ、バレンタインデー当日の早朝までチョコを作り上げていた時だった。欠伸を手で押さえ、出来栄えを確認する三玖にそんな言葉を掛けていた。すると、
「二乃はあげないの…チョコ?」
「はぁ…?なんで私も上杉にチョコをあげないといけないのよ」
「そうじゃなくて…フィリップに」
「っ…!?」
思い出さないようにしていたつもりだった筈が、三玖の問いに嫌でもバレンタインデーのことを意識してしまった二乃。それも相手がフィリップだと三玖に指摘されたことで顔を真っ赤にさせていた。
「な、な、な、なんで私が…フ、フィリップ君に!?」
「……だって、二乃…好きなんでしょ?」
「っ…そ、そんなわけないでしょう…!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
本当に…そんな意味が込められたような三玖のジト目を向けられるも、それ以上言葉を返すことができず、顔を背けてしまう二乃。
「…まぁ、二乃がそうするというのなら、私は何も言わないけど」
「なんでそんな上から目線なのよ、あんた」
「でも、本当にそれでいいの?」
「っ…」
再度言葉にして問われたことに二乃自身も揺らいでしまった。だが、三玖は言葉を続けることを止めない。
「一花が言ってた…後悔しないようにって、今がいつまでも続くとは限らないって…二乃はそうしなくて本当に後悔しないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
早朝の台所に沈黙が訪れた。二乃はその言葉を自身の中で噛み締めていた。そして、少ししてから閉じていた口を開いた。
「ねぇ、三玖…彼にとって私って何なのかしら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「彼は仮面ライダーで、探偵で…
私は守られる側の人間で、家庭教師の生徒…たったそれだけの関係…
……私たちはたったそれだけ。彼にとって私を守ることは当たり前で、私は彼にとっては他のみんなと同じ存在…私の想いをぶつけても迷惑なだけでしょう?」
それが二乃の本心だった。姉の意外な弱さの吐露に三玖は目を丸くしていた。そして、そんな彼女がとった行動は…
「…何してんのよ、あんた?」
「……熱があるかと思って」
「ないわよ!?」
おでこをピタッとくっつけられた二乃からツッコミの声が響く。だが、三玖の心配は止まらない。
「チョコ作りで疲れた?」
「疲れてるけど頭は正常よ」
「もしかして、勉強のしすぎで…」
「殴るわよ…?」
「……偽物?」
「前言撤回…引っ叩くわよ、あんた!?」
あまりにもとんでもない心配をされ、どんどんと二乃の声が大きくなる。
他の姉妹たちが寝静まってなければ、起こしかねない程の音量だった。そして、何故そんな心配をしてくるのかと妹へと怒りの視線を向けると、
「私の知ってる二乃はそんな後ろ手なことを言わない」
「っ!?」
妹の言葉に二乃は固まる。
「私の知ってる姉はいつも強気で口が悪い」
「…あんた、オブラートって言葉知ってる?」
「二乃はフータローにもショータにも一歩も引かなかった」
「それは……私も子供だったのよ」
「二乃も私も……前とは違う。『過去は忘れて、今を受け入れるべき』…あの時、二乃はそう言ったでしょ?」
「……そんなことも言ったわね」
三玖の言葉に反論することができない二乃。それはここ最近彼女が常に気にかけて、考え続けてきた言葉だった。そして、三玖の次の言葉が二乃の本心を突いた。
「ねぇ……二乃は何を恐れているの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それが二乃の迷いだった…彼女は気付いてしまったのだ。
自分とフィリップを取り巻く環境はもう既に変わってしまっているのだと。
自分とフィリップは互いに同じ立場にいるわけではないと。
そして、今の関係が更に変わってしまうことに恐れを抱いてしまったのだ。
このままでは何も変わらない…変わることを恐れているあの頃と何も変わっていないのは自分だけだと…
独自の夢のために、女優と学業の道を邁進する一花…
自身のプライドさえも捨て想い人のために前に進む三玖…
自分たちのために休みさえも犠牲に足掻き続ける四葉…
夢を見つけ、信頼できる人をも見つけた五月…
(…だから私は…)
この鳥かごから抜け出さなければならない…
この孤独から一歩を踏み出さなければならない…
フィリップが自分のことをどう思っていようと思っていなくても構わない…だからこそ彼女は動いた。もう逃げたくない…もう変わることを恐れたくない…そのための一歩として、二乃は今、父親であるマルオと一人対峙していたのだった。
「帰ってきたか…二乃君」
「その君付けはムズムズするから止めてって言ってるでしょ………パパ」
そして、話は冒頭へと戻る。
「悪かったね、二乃…先程、全員赤点回避の連絡を五月からもらったよ。君たちは見事七人でやり遂げたわけだ…おめでとう」
「あ、ありがとう」
そう告げるマルオの言葉に喜びの感動が籠ってはいなかったが、マルオが感情を露わにすることの方が珍しく、それが当たり前だと分かっていた二乃も驚くことはなかった。むしろ、これより話す内容の方に意識が傾いており、緊張で固くなっているくらいだった。
「どうやら、上杉君の方も認めざるを得ないようだ。
だから、明日からはこの家で…」
「あいつ等とはもう会わないわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私たちから会いに行くことももうしない…その代わり、もう少し新しい家にいることにしたわ」
「…何だって…?」
二乃の言葉に一瞬雰囲気が和らいだマルオだったが、その続きの言葉に和らいだ雰囲気を掻き消すところか、一気に周りを凍らせる程の圧を放った。二乃の言葉が信じられないといった風に聞き返すが、二乃もその圧に負けずに口を開いた。
「試験前に五人で決めたの。当然一花だけに負担はかけない…私も働くわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「自立なんて立派なことしたつもりはない、正しくないのも十分承知の上…でも、あの生活が私たちを変えてくれそうな気がするの……
少しだけ前に進めた気がするの!あそこでなら私も変われる気がするの!だから……今日はそれだけを伝えにきたの」
「……理解できないね」
必死な言葉をぶつける二乃。それをマルオは…冷たく否定した。
「前に進む、今よりも変われる、なんて抽象的な言葉になんの説得力も無い。君たちの新しい家とやらも見させてもらった。僕にはむしろ逆戻りに見えるね」
「っ!?」
「五年前までを忘れたわけではあるまい。もうあんな暮らしは嫌だろう?いい加減わがままを言うのは…っ!?」
マルオのその先の言葉が続くことはなかった。まるで狙いすましたかのように二乃とマルオの近くにバイクが急接近し、二乃の近くで停まったのだ。いきなりの出来事に二乃も、そして、仏頂面のマルオでさえも困惑した。
「な、何……え?」
その見覚えのあるバイクと運転手に二乃は…
「二つ結びの子なら先に来てたよ。それと伝言と共にこれを預かっているよ…『おめでとう、あんたたちは用済みよ』って」
「「……あのバカ…!?」」
時間は少しだけ遡る…二乃を探すのと同時に祝賀会と称して風太郎のアルバイト先であるケーキ屋へと他の姉妹たちと来ていた翔太と風太郎は、店長から二乃の伝言を聞き、顔を歪めていた。
伝言の内容から二乃が何かをしようと一人動いていることを察した二人はすぐさま店を飛び出そうしたが、そんな二人の動きを店長の言葉が止めることになった。
「それと…君たちよりも早く変な少年がその娘のことを聞きにやって来ててさ…その少年にも君たちに伝言を頼まれたんだ…『これは僕の仕事…君たちが出る出番じゃないと』」
「まさか…?」
「……あの野郎」
その言葉に風太郎が隣に目線を向ける。その目線を受けながらその変な少年が誰なのかを察した翔太は帽子で目元を隠すように手を頭に置いて苦笑していた。そして、その翔太の予想通り…
「ここにいたんだね、二乃ちゃん!さぁ、行くよ!」
「フ、フ、フィリップ君?!」
バイク…いや、ハードボイルダーから鮮やかに降りたフィリップに強引に手を掴まれる二乃。
色々と聞きたいことはあったが、まさかの人物の登場に驚くことしかできない二乃。
「ちょ、ちょっと待って?!行くってどこに!?」
「祝賀会に決まってるだろう?祝賀会はみんなで祝うものだって本にはあったからね!二乃ちゃんだけがいないのは祝賀会とは呼べないだろう?」
「それ絶対に間違った知識でしょ!?というか、力つよ?!」
「さぁさぁ!時間は有限だからね!」
さっきまでのシリアスな雰囲気はどこにいったのやら…完全にペースを崩されてしまった二乃。そして、いつもどおりマイペースで我が道を征くフィリップにずるずると腕を引っ張られていく。だが、そんな暴挙をこの人が許してくれるわけもなく、
「二乃」
「っ!?」
もちろん、その声の主はマルオだった。今まで以上に冷え切った温度の声に二乃の体がピタッと止まる。
「君が行こうとしているのは茨の道だ。上手くいくはずがない、後悔する日が必ず訪れるだろう。こっちに戻ってくるんだ」
「…っ…わ、私は…!?」
「…二乃ちゃん」
いきなり声色が変わったフィリップに呼ばれ、思わず二乃は振り返った。その時には既に自身の腕を掴んでいた彼の腕が離れていたことに気付いた。だが、その目が物語っていることに二乃は気付いた。
『君が決めるんだ』
そのフィリップの優し気な視線に…二乃はその覚悟を決め、その言葉をマルオに言い放った。
「…パパ、私たちを見てて…!行って、フィリップ君!!」
「了解した…そうだ…」
二乃の言葉を聞き入れ、彼女にヘルメットを渡してからハードボイルダーに乗るフィリップ。二乃も後部座席に座ったことを確認し、エンジンを噴かせたところで気付いたようにマルオへと言葉を投げた。
「…お父さん、娘さんは頂いてきますので…失礼」
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
まさかのフィリップの一言に二乃が絶叫するが、その時にはハードボイルダーは急発進しており、その声はエンジン音に掻き消されることとなった。もちろん、その場に残されたマルオはとても人に見せられない冷たい目をしており、
「江端…めでたいことに娘たちが全員試験を突破したらしい……僕は笑えているだろうか?」
「勿論でございます」
「そうか…父親だからね、当然さ」
運転手の江端の言葉通り、マルオは笑っている…確かに笑っているが、それは喜びの笑みではない。大事な娘を連れ去っていた男に対する敵対心に溢れた笑みだった。
「どうやら佐桐君にはじっくりと話を聞かないといけないようだね…」
「っ~!?!?!?」
「さ、佐桐君!?どうしましたか!?」
「い、いや…今、背中に物凄い寒気が走った気がして…!」
見覚えのあるバイクにある人物が関連していることを確信したマルオ。丁度同じ時間帯、その殺気に怯える翔太を五月が心配していたとかなんとか…
そんな相棒がとんでもない流れ弾に襲われているとは知らず、フィリップは二乃を後ろに乗せ、ハードボイルダーで街を走り抜けていた。
「あんた…!何言ってくれてるのよ!?」
「うん…?娘さんを連れ去る時にはああ言うべきだって、翔太が読んでた小説にあったんだけど…」
(佐桐の奴…後で引っ叩く…!)
「っ!?っ!?」
「…まったく…あんたたちは用済みって伝えた筈だけど?」
「残念ながら、僕の相棒はかなりのお人好しでね。どうやらそれが僕にも伝染してしまったようだ。気が付いたらこうしてしまっていた訳だ」
「…何よそれ…意味分かんないわ」
またしても関係ないところで恐怖を翔太が感じていたところで、そんな会話をしていくフィリップと二乃。言葉とは裏腹に二乃の表情は真っ赤に、そして自然と笑みが浮かんでしまっていた。
「よく私のいる場所が分かったわね。
また地球の本棚っていうやつで検索したのかしら?」
「二乃ちゃん、前のこと根に持っているのかい…?今回は違うよ…ガジェットたちや風都イレギュラーズの皆に協力してもらったのさ」
「ふ~ん…その割にはタイミング良すぎじゃない?」
「あのタイミングで来たのは本当に偶然だよ」
そんな軽口を叩きながら、フィリップは更にハードボイルダーのスピードを上げる。それに比例し、落ちないためにもフィリップにしっかりとしがみつく二乃。
「…本当に…タイミング良すぎだわ」
(あの時とおんなじね…)
しがみつきながら、その背中を見て、ボソッと二乃が呟く。その背中はあの出会いの夜と同じく二乃にはキラキラとして見えた。そして、思い出したのはこれまでのフィリップの記憶だった。
(最初に出会った時の第一印象は…カッコいい王子様…そう思ったのよね)
五つ子裁判で翔太にボコボコにされ、姉妹たちにも姿勢を批判され、一人夜を彷徨っている時に出会い、未知なる怪物…ドーパントから助けられ……今、思えばダブルの二人の戦いを始めて見たのは姉妹の中では自分が初めてだった。
(林間学校で再会して…一緒にダンスを踊った時には運命の相手だと本気で信じてたわね)
まさかの再開は『結びの伝説』が有名な林間学校…彼の意外な一面…知識欲の権化を始めて見たのもその時だったが、それでも奇跡の再会に心を更に奪われてしまった方が強かった。
(でも、裏切られたと分かった時…私は彼に心底絶望した……それでも、彼は私が家族と…姉妹たちと一緒にいられるようにと動いてくれた)
その思いに気付き、初めて素顔の自分を見せようと思い、ダブルとしてのフィリップの一面を知った時、無理矢理な約束をさせた。
(…本当にカッコよすぎよ、フィリップ君…でも、この関係ももう終わり)
二乃が恐れていたこと…それはこの関係が終わってしまうことだった。
フィリップが臨時の家庭教師を務めているのは翔太が怪我をしたためだ。学年末テストを乗り切り、風太郎から依頼を受けていた翔太の仕事も一区切りがついた。
それは、二乃とフィリップの関係が元に戻ってしまうことを意味していた。
守る者と守られる者…家庭教師としてのフィリップはいなくなり、二乃もまた風太郎と翔太の生徒として関わることは少なくなるだろうと思っていた。
だからだった…今の自分を少しでも変えたいと思ったのは、今の関係から元の関係に戻ってしまう前に一段落をつけたかった二乃の我儘だった。
でも、フィリップはまたしてもやってきた。それがどういう魂胆なのかは分からないが、それでも二乃の決心を後押しするには十分だった。
「ねぇ、フィリップ君…私、案外乙女チックなところがあるの」
「・・・・・・・・・・」
「必ず白馬の王子様みたいな、運命な人がいるんじゃないかといつも思ってたわ…
そんな時に私、出会っちゃったみたいなの…王子様に」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
顔を真っ赤にして言葉を繋いでいく二乃に運転に集中しているフィリップは無言で聞き続けていた。
「その王子さまはね…顔はとってもカッコいいんだけど、時々知らない知識に関して暴走して、相棒に向けては容赦なく毒を吐いて、挙句の果てには嘘つきのくせに堂々とバイクで親の前から娘を攫っていく非常識なのよ………中身は全然王子様じゃないのに、知れば知るほど惹かれていくの…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「人の気持ちも知ろうともしないし、常識もないけど…
そんな貴方が私は好き……好きよ、フィリップ君」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二乃の中からもう迷いは消えていた。
この告白で自分と彼の関係は変ってしまうだろう。
でも、それを恐れる自分はもういなかった。
例え彼がこの想いに応えてくれなくても…
例え彼の優しさに漬け込む形になっても…
例え彼が自分を守る者としか見ていなかったとしても…
(…この想いにだけは逃げたくないから)
ハードボイルダーの駆け抜ける爆音だけが夜の道路に響き渡っていた。
次回 仮面ライダーダブル/Kの花嫁
『戦士たちのH/私が愛した探偵』
これで決まりだ!
自分の中でニ乃の一番好きなシーン…
ちょっと分かりづらい文章になったかもしれませんが、本作ではこういう形での告白シーンになりました。
ところがどっこい、本章はもう1話続きます。
そう…作者がもう一つ気に入ってるあのシーンのお話です。
といよりも、翔太が苦労人すぎる…(笑)
もちろん次章へのフラグです。
それではまた。