もう少しハプニングとか加えようかとも思いましたが、今の二人の関係ならこれぐらいの方が丁度いいかと思い、こんな感じになりました。
それではどうぞ!
『この関係に終止符を打ちましょう』
(あれは…一体誰だったんだ?)
一夜明け、ほとんど眠れない一夜を過ごした翔太は、睡眠時間一時間で全く回らない頭で、昨日の出来事を思い出していた翔太。家族旅行で休みに来たはずなのに、まさかの出来事に巻き込まれてしまい、翔太のストレスはマッハで加速しつつあった。
あの後、旅館の主人…五月たちの祖父に足止めを喰らい、逃げた偽五月を取り逃してしまった翔太と風太郎。一体どういうことかと問い詰めようと五つ子の部屋へと向かったのだが、
「何をしているんだい、二人とも?」
「お、お父さん!?」「中野さん!?」
「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ、上杉君」
二階にある五つ子たちの部屋へと向かう直前で、まるで二人を待ち受けていたかのようにいたマルオが二人の前に立ち塞がった。
「この先は僕の部屋と娘たちの部屋しかないが、何か用かい?」
「すみません、中野さん。さっき戻ってきた五月…いや、五つ子の誰かに用があるんです。ここを通させてもらえませんか?」
「なるほど…彼女に用があったわけだ」
「だから、行かせて「上杉君」っ…!?」
このまま通してもらえると思った二人だったが、そうは問屋が降ろしてくれなかった。二人を遮るようにマルオは冷たい言葉を発した。
「君と佐桐君には、先の試験で娘たちを赤点回避させてくれた功績がある。佐桐君には、娘たちを守ってくれている恩もある…依頼者としては君たちの願いも叶えてあげたいところだが、それとこれは別の話だ。
父親としてはこの状況は眉を顰めるを得ない。こんな夜中に娘たちの部屋に男を入れてやる父親がいると思うかい?」
「「っ!?」」
ド正論を突かれてしまい、思わず後退る翔太と風太郎。だが、マルオは止まらない。
「それに、娘を誑かして、バイクで連れ去っていき、父親の前から娘を攫っていくかもしれないような男どもを通すと思うかい?」
「「…は、はい…?」」
「…ゴホン…すまない。最近、そんなムカツク男が僕の前に現れてね。君の周りにはそんな知り合いはいないよね……佐桐君?」
「え、ええ!?た、多分…(なんで!?なんで、そんな殺気を飛ばしてくるんだよ、この人!?俺、なんかしたかぁぁぁ!?)」
(…これって、もしかしてフィリップのことか!?)
マルオに問い詰められ、冷や汗を流す翔太。そのやり取りに、二乃との一件を知っている風太郎はピンときた…マルオの言ったことをフィリップがやらかしたのだと。別の意味で嫌な汗が風太郎からも流れ出る。
「さぁ…おかえり願おうか」
(はぁ…結局あのまま中野さんに追い返されちまったんだよな。上杉の奴は携帯充電し忘れてて直接の連絡が取れないし…俺が動くしかないか)
昨夜の出来事を思い出し終わった翔太は欠伸を堪えながら、スタッグフォンを取り出し、部屋を後にしようとする。
「あら、翔太?どこに行くのよ?もうすぐ朝食よ」
「ちょっと外の空気を吸ってくるよ。そういや、フィリップは?」
「まだ寝てるわ。起こしとくから、あんたも早く帰ってきなさいよ?」
「へいへい」
亜希子に適当に返しながら、翔太は部屋を後にした。そして、電話帳からある人物の番号を選んでコールを掛けると、
『佐桐君!?一体どういうことですか!?』
「…朝っぱらから大声出すんじゃねーよ…耳がキーンとなるわ!」
ワンコールで繋がった途端、五月の大声での文句が耳を貫き、思わずスタッグフォンから耳を離しながら抗議する翔太。とりあえず事情を説明しようと話を進める。
『どうして昨日、中庭に来てくださらなかったのすか!?』
「ふぅ…よく聞け、五月。俺と上杉は確かに中庭に行った。そして、お前と会った…いや、正確にはお前の恰好をした姉妹の誰かと会ったんだ」
『なぁ…!?私の恰好…?どういうことですか…!?』
「それを含めてお前と話がしたい。朝食の後で時間を作れないか?」
『そうしたいのは山々なんですが…実は旅行に来てからお父さんの監視の目が厳しくて…なかなか抜け出せそうにないんです』
「そうか(昨日の態度からすると、当たり前か…)…そうだ。それなら、この場所で落ち合わないか?」
『えっ…?』
翔太から提案された場所に五月から驚きの声が出る。その場所は…
カコン…
(来たか…)
ゆったりとした空間に開放感を味わっていた翔太は足跡でその人物がやってきたことに気づいた。溢れ出る汗を拭い、その人物に言葉を掛ける。
「…風と切り札…英語でなんと言う?」
「は、はいぃ!?合言葉は『デミグラス』に『ハンバーグ』じゃありませんでしたか!?」
「オッケーだ。その慌てぶりに正しい合言葉を知っているってことは、今度は本物の五月のようだな。安心したわ」
「なぁ!?騙したんですか!?」
「お前の偽物は声まで似せてきてるんだ。これくらいの不意打ちをしないと、確認のしようがないだろうが」
五月の抗議に翔太は冷静に返す。二人が待ち合わせたのは旅館の温泉だった。この旅館の温泉は男女それぞれの湯に、その間に混浴が挟まれている形で位置していた。女湯にいる五月に対し、翔太は混浴で壁際に会話していた。流石のマルオも女湯にまでは来ないだろうと踏んだ翔太はこの形での密会を提案したのだ。
「ここなら流石に偽物もお前の父親も来ることはないだろう」
「いくらなんでも温泉で仕切り直しなんて…滅茶苦茶ですよ」
「他の姉妹に成り代わって騙そうとしてくるのも滅茶苦茶だろうが…それで昨日のことだが、俺たちはフロントでお前のそっくりさん…偽五月に出会った。そこで偽五月は上杉にこう告げてきた…『この関係に終止符を打ちましょう』ってな」
「えっ…それって」
「そうだ…お前の姉妹の誰かが俺や上杉を拒絶しようとしてるってわけだ。何か心当たりはないか?」
「……いえ。旅行前にも話しましたが、何も……」
「…本当は何かあるんだな」
壁越しに言い淀む五月の声に、翔太は旅行前の言葉が嘘だったことを悟った。そして、責めることなく、優しく五月へと問い掛けた。観念した五月は自身が感じていた違和感を話し始めた。
「…大した事ではないのですが…春休みに入ってから、皆どこか変なのです」
「変…?女優にツンデレ、戦国好きに緑リボンに大食い…お前らが普通じゃないのは今に始まったことじゃないだろう?」
「…上杉君並みに喧嘩売ってるんですか?今なら言い値で買いますよ…コホン…皆、どこか落ち着いてないといいますか、ぎこちないんです。一花と三玖は何か気まずそうに会話していて、二乃は何かを考え込むことが多くなって、四葉もその空気に当てられてしまったみたいで…本当は私たちでどうにかすべきだと思ったんですが…」
「…なるほどな(話を聞く限りだと一花と二乃、三玖当たりが原因か。そういえば、学年末テストの時、一花の奴、どこか様子が変だったな。一番の候補は一花か。ともかく、他の姉妹にも話を聞いてみるしかないか)」
五月の話から大体の事情を推測した翔太は今後の動きを纏めていた。ともかく、他の姉妹にも話を聞く必要があると判断し、翔太は早速行動に出ようとしたが、
「…もう戻れないんでしょうか…」
「…あぁ?」
「あの時みたいに…仲の良かった姉妹には戻れないのかと思いまして…確かに私たちは貴方たちのおかげで少しは変われたと思っています。でも、今の状況を考えるとそれは良かったことだったのかと…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう弱気な言葉を吐く五月。それを聞いた翔太はもう一度湯に浸かり、壁へと背をつかながら、背後にいるであろう五月へと言葉を掛けた。
「かもしれないな…もしかしたら元に戻ることは難しいかもな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「でも、お前たちの絆はそんなもんで壊れちまうもんなのか?」
「っ…!?」
「これまで家出とか姉妹喧嘩とか色々あったわけだが、それでもお前たちは仲を戻してきただろうが…!だったら、お前が姉妹たちの絆を疑うな!誰に何を言われようが、お前だけは信じやがれ、馬鹿野郎!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…それに…俺はとんでもなくお人好しな探偵だ。自分で解決し切れないと思うなら、少しは頼りやがれ。ちょっとは協力してやるからよ」
「そう、でしたね…」
いつものキザな台詞が出てしまったが、それが翔太なりの優しさの言葉だと、密な付き合いをしてきた五月は理解し、思わず微笑んでしまった。そして、今度こそ温泉から上がろうとした翔太だったが、
「でも…私と佐桐君の関係も変わったと思うんです」
「…えっ?」
まさかの言葉に上がろうとしていた翔太の動きが止まった。どういうことかと別の汗が流れ出す翔太だったが、五月の次の言葉でその意味を理解した。
「私たちはパートナーではありません。それに依頼人と探偵でもないです…偽五月の真意は私にも分かりませんが、もう利害一致だけのパートナーではないということです。
数々の試験勉強の日々、花火大会、林間学校、年末年始などなど…これだけの時間を共有してきたのです。それはもはや…
友達でしょう?」
「…っ…!…そうだな」
翔太の中で五月達は守る対象で、どこかで線を引かなければならないと思っていた。それはフィリップからも散々釘を刺されてきたことであり、自身も最低限度の部分では弁えなければならないと…
だが、いつしか翔太は踏み込み過ぎていた…それは良い意味で悪い意味でもだった。いつしか本来の依頼とは関係ないことにまで干渉するようになっていた。
だから、五月が自身のことを『友達』と呼んでくれたことが、どこか嬉しかったのだ。五月には見られていない、真っ赤な顔を伏せる翔太から笑みが零れていた。
「なら、お前の友として解決してやるとするか…お前ら姉妹のお悩みを」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あれ…おーい、五月!いつーき!………まさか!?」
長風呂で倒れてしまったのではないか…そんな疑念が頭の中でよぎった翔太は変態呼ばわりされることを覚悟で、温泉の境を分ける壁をよじ登ろうと…
「ありがとうございます!!!」
「うぉぉ!?」
突如開かれた混浴の扉と大声に驚いた翔太の動きが止まる。だが、次の光景に翔太は思考までもがストップしてしまうのだった。
「い、い、い…五月!?なんでお前、こっちに来てんだよ!?」
扉を開けた声の主は、先程まで女湯で会話をして五月だったのだ。タオル一枚しか身に纏っていない五月の裸体を見て、別の意味で顔を真っ赤にした翔太は慌てて温泉に飛び込み背を向ける。
「えっ?混浴なので問題ないじゃないですか!?」
「なんでそこでそんな天然を発動できるんだよ!?男の俺が入ってるだろうが、馬鹿!?」
「何言ってるんですか!友達ならこれくらい、当たり前……あっ」
そこでようやく五月は気付いた…自身がとんでもないことをしてしまっていることを…
「…当たり前ではありませんね…」
「遅いわ!?はぁ…頼むから勘弁してくれ。ほら、さっさと女風呂に戻「あれ、誰もいないの?」っ!?」
冷静になった五月に、翔太もため息を吐きながら戻るように告げようとしたが…まさかのタイミングで声が割り込んできた。その良く知る声の主に二人は硬直してしまう。
「…変ね。浴衣があったから誰かが入っていると思ったんだけど…ねぇ、誰もいないの!」
((に、二乃…!?))
女湯から聞こえてきた二乃の声に二人の思考はパニックに陥る。もし二乃が混浴に来て、この光景を目撃されたりすれば…その後の展開が容易に想像できた翔太はすぐさま五月に戻るように告げようとするが、時既に手遅れだった。
「おーい!誰か、混浴にいるの!!」
「「……!?」」
混浴に向けて二乃が誰かいないか尋ねてきたのだ。黙ったままでは二乃がこっちに来てしまうかもしれない…それを危惧した五月がその声に答えた。
「い、いますよー!?私です、二乃…!?」
「あれ、五月だったの?なんだ、混浴の方にいたのね」
「え、ええ…誰もいないようだったので、ちょっと混浴にも入ってみようかと思いまして…」
「ふ~ん…なら、私もそっちに行こうかしら」
「えっ…!?そ、それは…!?」
「(ダメダメ!絶対に阻止しろ!?)」」
「…止めておいた方がいいじゃないですか!?もしかしたら、佐桐君や上杉君が入ってくるかもしれませんし…私ももう少ししたらそっちに戻るつもりでしたから!?」
「そう?なら止めておこうかしら…上杉にまた見られるとか勘弁したいしね」
「ア、アハハ…そうですね」
前回の五つ子裁判のきっかけとなった覗き疑惑事件のことをまだ根に持っているらしく、二乃の苦々しい言葉に苦笑する五月だったが、なんとか二乃が混浴に来ることを阻止できたようでホッとしていた。
「…はぁ…寿命が縮まるかと思ったわ」
「あ、危なかったですね…」
「ったく…頼むからもうちょっと考えてから行動してくれ」
「す、すみません…あと…さっき見たことは忘れて頂けると…」
「……分かった、分かった。俺はもう出るぞ…お前も二乃に怪しまれないように……あの、五月さん?なんでこっちを凝視してるんですか?」
「えっ!?…い、いえ…その、男性の裸を見るのは初めてだったんで、つい…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
恥ずかしそうに目を逸らす五月に思わず肩透かしを喰らった翔太はガクッとなっていた。これ以上、自分がここにいると碌なことにならないと思い、二乃に感づかれる前に温泉から出ようと三度立ち上がった。
「…ともかく、姉妹たちのことは心配するな。俺も上杉もすんなりと諦める程、軟じゃないからな。お前の友達としてなんとかしてやるから」
「…あっ」
すれ違い様に五月の頭へと手を優しく起き、翔太はそう言葉を掛けた。その言葉に五月は顔を伏せながら頷く。
「さて、それなら…まずは聞き込みからだな。五月、早速で悪いがお前の力を借りたい」
「…なんでしょうか?」
翔太の頼みを背中越しに聞き、五月は己がすべきことを聞くのだった。
次回 仮面ライダーダブル/Kの花嫁
『Mの試練/私は誰でしょう?』
これで決まりだ!
というわけで、次回はもう少しガッツリと書けるかと思います。
多分五つ子ゲームから一花と二乃のシーンまで書けれればいいなと思ってます。
そして、ごじょじょの2期PVが出ましたね。五つ子も可愛くなってますが、風太郎がイケメンになり過ぎててちょっと笑いました…作者的には『嫌いじゃないわ!』ですが(笑)