次回で少しは大きく動かすことができるかと思いますので、もう少し辛抱頂ければ有難いです。
そんなわけで、二乃&一花の温泉回から釣り回です。
本作では、二乃のベクトルがフィリップに向いてますので、一花がそんなに闇を抱えてなかったりします(笑)
それではどうぞ!
追記 ごじょじょのパズゲーが配信されましたが、みなさんはいかがでしょうか?
作者は少しだけ課金して、後はゆっくりと楽しんでます(笑)
五月と二乃の星5が当たらない……!?
「好きな人ができたの」
そんな爆弾発言を放ったのは二乃だった。そして、それを受けたのは、
「………(ごめんね、二乃……もう知ってるの!?)」
内心で悲鳴を上げる一花だった。
どうしてこんなことになっているのか。
話は風太郎と翔太が五つ子たちの部屋へと押し掛けた後…一同が(炬燵に隠れている)風太郎を置き去りにし、大広間へと向かおうとしていた時だ。
『ねぇ、一花。後で朝風呂に行かない?』
二乃からそんな誘いを受けた一花は特に考えることなくその誘いに首を縦に振って答えた。期末試験以来、一花は三玖や風太郎と一緒にいることに気まずさを覚えていた。この旅行で、風太郎と距離を取ることができると考えていた彼女にとって、上杉一家までもが同じ旅先に来ていたことは予想外の出来事だった。
少しでも三玖や風太郎と接する時間を減らせるならという思いもあり、一花は二乃の誘いに乗ったのだ。
「痒いところはありませんか~?」
「もー、ここまでしてくれなくていいのに…一体どういったつもりなの、二乃?」
「いいから、いいから!私に背中を預けなさいよ…あら、足どうしたの?平気?」
「うん。痛くはないかな?」
大浴場の女湯にて二乃に背中を洗われている一花は、妹の行動に少し不安がりながらも、久々に姉妹でのお風呂に少し心が躍っていることもまた事実だった。
「この温泉も変わらないね」
「昔は五人で入ってたっけ?」
「そうだね。それで…そろそろ教えてよ、二乃。どうして私を朝風呂に誘ったのよ?」
「…一花の話を聞きたくなったのよ。ほら、あんたって、たくさんされてるらしいじゃない…その、告白とか…」
「…!」
「こんなこと、他の妹には言えないわ…私ね……
好きな人ができたの」
「………(ごめんね、二乃……もう知ってるの!?)」
そして、話は冒頭へと戻るのだった。
「恋愛相談なんだけどね…出会いは本当に神懸っていたわ。運命だと言ってもいいくらいだったと思うくらいにね。最初は容姿だけで一目惚れだったけど…いつしか彼の人間性っていうのかしら、私のために必死になってくれる姿に内側まで好きになっちゃったの」
「…(二乃。いつの間にフィリップ君のことをそこまで…)」
温泉に浸かり、それぞれ端に位置した二人はそんな会話をしていた。ぽつぽつと語り出した二乃に、一花は真剣に耳を傾けていた。
「ねぇ、二乃。それって…二乃の友達の話?」
「私の話よ」
(やっぱり~!?)
「相手は…ゴメン!こればっかりは言えないわ!秘密!」
(だから、知ってるってば…!)
さっきから沈んだり、盛り上がったりする二乃に、乾いた笑いを浮かべ、内心ツッコミを入れながら一花は話を聞き続けることにした。
「つい先日、その人に告白しちゃったんだけど、それが正解だったのか自分でも分からないわ。相手も色々と訳アリなんだけど…あんたに聞きたいのは、告白されたら、相手は多少は意識するのかしら?」
「……そうだね。相手によるんじゃないかな?いきなり言われたりしたら、面食らって意識し出す人もいれば、あーこの人そうだったんだ、ってあっさりとスルーする人もいるんじゃないかな?(…フータロー君は後者…いや、案外前者だったりもするのかな?これまで勉強しかしてなかったから、もしかしたら…いやいや、今は二乃の相談に集中しないと…!)」
思考が風太郎のことに傾きかけたが、一花は意識を現実へと戻した。
「…そう。やっぱり告白だけじゃ足りないのかしら…」
「えっ!い、いや…そうじゃなくて…二乃はその人と付き合いたいんだよね?だったら、相手の反応を待ってみるのもありなんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「に、二乃…?」
いつもの強気な姿はどこに行ってしまったのか…またしても弱弱しくなった二乃の姿に一花は思わず首を傾げてしまった。
「…分からないわ…」
「わ、分からない…!?」
まさかの妹の発言にオウム返ししてしまった一花。更に思考が困惑し、どういうことかと二乃の言葉を待つことにした。
「最初は颯爽と現れた理想の王子様だったわ。かなり積極的に迫って、少しでも好かれようと努力して……騙されてたと分かっていた時には、確かに腹も立ったわ…それでも、不器用で、家族思いで…ミステリアスな彼に、惹かれていったんだと思う」
「…それなら、やっぱりその人が好きってことで、付き合いたいってことじゃないの?」
「普通ならそうかもしれないわね…でも、それがその人の負担になるとしても、本当にそうだと言える?」
「…っ!」
二乃の放った一言で、一花は妹の真意を悟った。そして、彼女が何を迷っているのかが分かってしまった。
「彼はいつも私を守ってくれていたわ…でも、それは彼らの使命であって、やるべきことのついでにしたことよ。なのに、惚れたからって…好きになったからって、彼の負担に私がなっていいわけじゃない…そんなの好きでも何でもない…ただの押し付けの偽善よ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一花は言葉を失っていた…内容もそうだが、何よりもあの二乃が大きく変わっていることにだった。家族思いで、強気で、はっきりとした物言いを得意としていた妹が、ここまで悩み、自分の弱さを素直に見せるようになったことに驚きを隠せないでいた。
その理由は間違いなくダブル…フィリップとの出会いがきっかけだったのだろう。ここまで好きな人の為に思える二乃のことを…一花は羨ましく思っていた。
(二乃…どうしてそこまで躊躇えるの?もっと素直になってもいいじゃない…だって、貴女が想っていることは間違ってない。私みたいに、誰かの想いを踏みにじったわけでもない…なのに)
そんな暗い思いが一花の胸に影を差していた。自分とは立場が違う二乃の迷いに、温泉に浸かっている筈が、背筋が冷たくなった気がしていた。
「それに…相手が私のことを好きかどうかも分からないのよ…もしかしたら、感心すらもってないかもしれないわ」
「…それはないよ!!」
「い、一花…!?」
突然の姉の大声に二乃は伏せていた顔を上げてしまった。しかし、そんな二乃など構うことなく、一花は二乃に迫った。
「その人が二乃のことを好きじゃなかったら、守ろうとしたり、そこまで必死に動いたりするわけがないじゃない!絶対にその人だって、二乃のこと好きだよ!お姉ちゃんが保証する!」
「い、一花…」
肩を掴まれ、そう告げられた二乃は眼前の姉を信じられない目で見ていた。普段の姉からは感じられない熱を感じたからだ。
「自分が相手の負担になるから諦めるの?違うでしょ!自分が重荷になるのなら、その分、相手を幸せにしてあげればいいじゃない!だって、それが二乃の想いでしょ!相手も二乃も幸せにならないのが嫌なら、そうすればいいじゃない!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それに…告白したばっかりなんだから、彼だってきっと二乃と同じことを考えているよ、きっと!今ならチャンスだよ、アタックチャンス!」
「わ、分かった、分かったから!?ちょっと落ち着きなさいよ!?」
テンションが上がり過ぎて、ちょっと壊れかかっている一花の圧迫感に流石の二乃も制止の声を掛ける。どこぞのクイズ番組の影響を受けているのは、芸能界に毒されているせいだろうか。
「…ありがとう、一花。あんたに話して、少しだけ楽になった気がしたわ。もう少し…自分の気持ちと向き合ってみるわ」
「そう…力になれたのなら、良かったよ」
二乃からそう告げられ、一花は思わずホッとした…その反面、罪悪感がチクリと胸を刺していた。自身ができないことを自分の妹がやろうとしている…それを応援することで、三玖に対してできなかったことをしようとしていると感じてしまったのだ。
そんなことを二乃に言うこともできず、胸の内にしまったまま、一花は風呂から上がろうとする二乃を見送っていた。
「…ねぇ、一花」
「なに?」
「……いきなりキスするのってありなのかしら?」
「い、いや!?そ、それは不味いんじゃないかな!?」
「そうね…ところで、一花は結構経験あるの?そういうシーン、女優だったら多いじゃないの?」
「そ、そんなことないよ。ああいうのって、ほとんどがフリだし……に、二乃?どうして、お姉ちゃんをジッと見てるのかな?」
何故かギラついた目で自分を見ている二乃に、嫌な予感を覚えた一花は思わずお湯の中で後退った。
「やっぱり練習は必要よね。もしファーストキスが下手に終わったら、印象最悪だろうしね…ってことで、一花」
「き、聞きたくないけど…何をするつもりなのかな…?」
「練習させない!!姉妹同士なら問題ないでしょう!?」
「尚更問題でしょ!?や、やめ…!私のファーストキスを奪わないでぇぇぇ!!」
そんな一花の悲鳴が大浴場に響き渡り、姉妹によるキスの攻防戦が始まった……ちなみに一花の名誉のために補填しておくと、10分間の攻防の末、彼女の(口の)貞操は防衛に成功したのだった。
「えーい!」
「ひゃぁ!?四葉、何するんですか!?」
「…まだ冷たいね…あっ、一花と二乃も来たよ」
「…やっほー。お爺ちゃんは?」
「あそこでフータローと釣りしてる。ショータとフィリップも一緒みたい」
「…なんで二人ともそんなに疲れているの?」
「色々あったんだよ」「色々あったのよ」
「…?」
(…さてと…こうして釣りに来たものの、どうするべきかね…)
五つ子たちが浜辺で戯れているのを眺めながら、翔太は今後の方針に頭を悩ませていた。隣には、普段とは打って違った大人しい姿勢で釣竿に獲物がかかる相棒がおり、未だに元気のない相棒にも、翔太は頭を悩ませていた。
ちなみに翔太の母、亜希子はというと…
「…はぁ!?担当がページ数を間違えてた!?しかも、今日締め切りの奴2件とも!?……10ページも!私聞いてない!?」
と、朝イチで編集部から悪魔のお告げを電話で聞き、必死に締め切りに間に合わせようと部屋でパソコンと睨めっこ状態である…なんでも、家に戻ってくるためにかなりの無茶と膨大な量の仕事をこなしたらしいのだが…残念ながら、水の泡になってしまったようだ。
そんな鬼気迫った母親からそっと退避したダブルの二人はどうするべきと考えていると、風太郎と…何故か彼と一緒に釣竿を持っている五月たちの祖父に誘われ、釣りへと来たわけである。
(はぁ~…上杉なりに何かしらの考えがあるらしいが…本当にどうしたんもんかね。しかも、フィリップの奴もまだ本調子じゃないみたいだからな。あ~、もう!?どうして次々とこう問題が起きるんだよ!?)
「…ショータ、どうしたんだろう?」
「なんか頭抱えてるね…魚が釣れないのかな?」
(佐桐君…すみません…)
翔太の苦悩する姿に見当違いな推測をする三玖と四葉の会話を聞きながら、五月は心の中で謝罪していた。一方で、風太郎と祖父は何をしているのかと言うと…
「今来たのが一花と二乃」
「えっ」
「あれが三玖」
「…えっ!」
「その隣が四葉」
「……えっ!?」
五つ子を見分ける手法を習おうと祖父から教えを乞うていたのだが…次々と五つ子たちを見分けていく祖父に、風太郎は置いてけぼりを食らっていた。
(…ぐぅ…爺さんにお願いして、教えを乞うてみたものの……全然分からん!佐桐もそうだが、この爺さんもどうやってあいつらを見極めているんだよ!?)
顔を真っ青にしながら心の中で絶叫する風太郎…もし五つ子たちを見分けることができるのならと思い、祖父に頼み込んだのだが…早くも諦めそうになっていた風太郎は思考を別のものへ変えることにした。
(早く偽五月を見つけないといけないのに…!もう見分けるのは諦めて、足の傷からの特定に集中すべきか…!?)
(…上杉の方も当てにできないか…なんとか五つ子ゲームのルールに反しない程度に情報収集できればいいが…ともかく残り3人の話を聞かないとな)
頭を悩ます風太郎を見ながら、フィリップのことは後回しにすべきだと判断した翔太は、なんとか一花、二乃、三玖から話を聞き出させねばと思い、方針を決めた。彼らがそんなことを考えている中、合流し終わった五つ子たちが翔太たちのいる防波堤へと来ていた。
「わぁ!たくさん釣れてますね!」
「ああ…ほとんど爺さんの手柄だがな」
「へぇ…これはなんて魚なんですか?」
「クロダイ」
「これは?」
「アイナメ」
「これは?」
「メバル」
(みんな一緒に見える)
(なんでそこまで詳しいんだよ、上杉…!?というか、魚の種類にも反応しないとか…やっぱり変だぞ、フィリップの奴…)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
四葉の問い掛けに次々と答えていく風太郎の意外な博識な部分に一花が驚く中、同じ感想を心中に抱いている翔太は、フィリップの大人しすぎる態度に違和感を覚えまくっていた。それの姿は、まるで会話に入ろうとしないようにも翔太には見えた。そんな時だった。
「この魚は何ですか?」
「ああ…キスだな」
「!?」
そのワードに思わず反応してしまった一花…その脳裏に蘇ったのは、先程の大浴場での二乃とのやり取りだった。そして、その視線は二乃へと向けられるが、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(よ、良かった…!流石に二乃もこんなところでいきなりキスなんてしないよね!?だよね!?)
「…おい、二乃。ちょっといいか?」
「えっ…佐桐、何よ」
「いいからちょっと来い…話がある」
(えっ!ショータ君!?…まさか、二乃とフィリップ君の関係に気付いたんじゃ…!?ど、どうしよう…!)
(平然と五月の恰好をした彼女を見分け)いきなり二乃へと声を掛けた翔太に嫌な予感を覚えた一花。どうするべきかと困惑し、ともかく誰かに相談すべきかと思ったが、
「見て!おじいちゃんが大物引いてる!」
「えっ、凄っ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(だ、駄目だ!?みんな気付いてない!?フィリップ君も釣りに集中してるみたいだし…!こうなったら、私が……痛っ!?)
姉妹や祖父、フィリップまでも当てにならないと判断した一花は慌てて二人を追おうとするが、足に痛みが走り、その場でよろめいてしまい…
「おい、しっかりしろ」
「っ…(フータロー君…!)ご、ごめん。ちょっとよろけちゃって…」
一花が転びそうになったことに気付いた風太郎が、一花の腕を掴むことでそれを阻止した。突然のことに流石の一花も五月のフリをすることを忘れ、素の態度が出てしまっていた。そして、それは言葉にまでも出てしまっていた。
「アハハ…実は昨日足を痛めちゃったから」
「…っ!?」
「うん?フータ…えっ?」
風太郎の様子が変だと一花が感じた時には、もう既に彼女の体は風太郎によって引っ張られていた。突然のことに何事かと思考が追い付く前には、乗ってきたバスを背に風太郎に迫られていた。
「…お前は誰だ?」
「…っ…!?」
咄嗟のことに一花の体が硬直する…今までにない程に風太郎の顔が間近に迫っていた…風太郎が目の前にいる人物が誰かを見分けようとしているとは知らない一花は、今にも飛び出しそうになっている心臓の音を隠しながら、息を呑んでいた。そんな時だった。
「あれ…フータロー?一花?…どこに行ったんだろう?」
「っ!?隠れて!?」
「うぉ…!」
こちらに近づいてくる気配を感じ、一花は思わず風太郎の頭を抱え込み、更に奥へと隠れてしまった。
「…?…?いない…」
(み、三玖…!?三玖が近くにいるのに…私は何を…!)
「お、おい!?なんのつもりだ…」
「ご、ごめんっ!咄嗟に体が…!」
風太郎の頭を自身の胸元へと抱え込んでしまった一花の心臓は爆発しそうなくらいに高鳴っていた。近くに、自分たちを探しに来た三玖が傍にいるのに、自身が今行っていることに、一花の罪悪心は更に増していく。
(なんで私はいつも…こんなことは…悪いことだって分かってるのに…!)
「うぐっ…せめて誰か教えて…!」
(っ…!?そっか…私が誰だか分からないんだ…それなら…)
流石に息が苦しくなってきた風太郎のそんな言葉に一花の心が揺れ動く…風太郎が自身のことを一花だと認識していないのなら…そんな悪魔のささやきのような思いが、彼女を動かしてしまった。
(こんな面倒なこと考えなくてもいいか…フータロー君と…)
「お、おい……?」
そのまま、一花は風太郎の唇に自身の唇を近づけようとして…
「一体何よ?私だけを呼び出して…」
「単刀直入に聞くぞ?お前…一体何があったんだ?」
「っ!?」
一方…翔太に呼び出された二乃は不機嫌を隠そうともせず、翔太を問い質していたが、そんな翔太から切り出された話題に思わず二乃は息を呑んだ。
「…な、何よ!あんたには関係ないことでしょう!」
「……つまり俺が関係してないってことで、何か困ってるってことなんだな?」
「…うぅ…!(こ、こいつ…もしかして、私がフィリップ君に告白したことを知って、問い詰める気なんじゃ…!?)」
何度か見たことのある探偵時の真剣な表情の翔太に、二乃はまさかの可能性を疑ってしまう…尤も、翔太自身は真剣に二乃の悩みを聞こうとしているだけで、そんなことが起こっていたとは露とも知らなかったのだが…
「答えろ。学年末テストが終わってから、お前の様子が可笑しいことは五月から聞いてる。それはこの旅行で俺も何度も見た。もし俺にできることなら、話を聞かせてくれないか?もし俺や上杉に話しづらいなら、フィリップにでも…」
「フィリップ君は関係ないでしょう!!」
「っ…に、二乃…?」
大声で怒鳴られ、翔太は驚く。いつもの二乃からは考えられない反応に言葉を失う翔太。自分よりも好意を向けている相棒の方が適任かと思っての提案だったのだが…何が彼女の逆鱗に触れてしまったのか分からないでいた。
「…放っておいてよ…私の問題は大したことじゃないわ。私が解決しないといけないことなのよ。あんたにもフィリップ君にも…力を借りる訳にはいかないのよ」
「…それはどういう…」
二乃の言葉の真意が分からず、思わず聞き返そうとした翔太。だが、彼の言葉が続くことはなかった。
バッシャーン!
「な、何だ…!?」「ええっ!?」
何かが海に落ちた音がし、慌てて二人は視線を海へと向ける。そこには…
「う、上杉!?大丈夫か!?」
「…大丈夫だ…(あの野郎…!)」
音の主…海に落下した風太郎の姿に翔太は慌てて浮き輪を探しに行く。海に浮かびながら、風太郎は先程の出来事を思い出していた。
「お、おい……!」
眼前の五月(一花)が自身に顔を近づけてくるのに、流石の鈍感な風太郎も相手が何をしようとしているのかに察しがついていた。頭がパニックになり、どうするべきかと考えていると、
「あれ…?もしかして、誰かいる?」
「…!ごめん…!」
「へっ?」
再び三玖がこちらに来ようとした気配を感じ、一花は…なんと風太郎を海に突き落としてしまったのだ。まさか、海に放り捨てられるとは思っていなかった風太郎から間抜けの声が漏れ、
バッシャーン!
(あの五月め…覚えてろよ)
「何してるのよ?」「あははは!」
「お前ら!見てないで、助けるの手伝え!?上杉、掴まれ!」
「…サンキュー、佐桐(…やっぱりこの時期の海は冷たい…)」
二乃が呆れ、四葉が爆笑している横で、浮き輪を見つけてきた翔太が風太郎目掛けて投げ、救助しようとする中、そんなことを風太郎は思っていたのだった。
「大丈夫か、上杉?」
「悪いな、佐桐。服まで貸してもらって…」
帰り道のバス…後部座席に座る五つ子たちに聞こえないように前の席へと座った翔太と風太郎はこそこそと言葉を交わしていた。ちなみに、フィリップは二つのグループに挟まれる様に真ん中の位置へと座っており、ぼんやりと外の景色を眺めていた。
「それにしても、なんで海に落ちたりしたんだ?」
「落ちたわけじゃねーよ。五月の恰好をした誰かに突き落とされたんだよ」
「…お前、一体何したんだよ…?」
「何もしてねーよ…太ももの傷を確認しようとしたら、結果的にそうなったんだよ」
「お、おう…まぁ、その五月は二乃じゃないだろうな。その時、俺は二乃と話してたからな。そうなると、一花か三玖、四葉の誰かか…」
「二乃と話してたのか?それで、話は聞き出せたのか?」
「…いや。俺が駄目なら、フィリップに話を聞いてもらったらどうだって言ったんだが、何故か二乃の奴、怒っちまってな…何が何だかってわけだ」
「そ、そうか…やっぱり二乃はフィリップのことが…」
翔太と二乃の会話の内容を聞き、風太郎はどこか納得していた。二乃が悩んでいることは、もしかしたらフィリップに告白したことではないかとどこかで確信して部分が風太郎にはあったのだ。
しかし、予想が確信に変わったことで、思わず出てしまった言葉が不味かった。そして、それを聞いていた相手がその言葉を聞き逃すことわけがなく…
「…おい、上杉。お前、何か知ってるんだな…!」
「…あっ…いや…!」
「隠してないで知ってることを言いやがれ!二乃とフィリップの間に何かあったのか!?お前は何を知ってる!?」
「……実は…」
翔太の剣幕に押され、折れた風太郎はその口を開いた。そして、その事実を聞いた翔太は…
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「二乃?何を考えているの?」
「…一花…私、決めたわ」
「えっ…?」
後部座席で談話を楽しむ五つ子たち…そんな中、言葉数が少ない二乃の様子に一花が心配で声を掛けた。そんな妹の言葉が分からず、一花が首を傾げていると、
「旅行も明日まで…二人っきりになれるチャンスはもう今夜しかないと思うの。だから…今夜、フィリップ君の気持ちを確かめたいの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「夜になったら、宿を抜け出してフィリップ君に会いに行くわ…お願い、手助けしてちょうだい」
「…っ!?」
そんな妹の宣言に、一花は言葉を失い、呆然とするのだった。
次回 仮面ライダーダブル/Kの花嫁
『Mの試練/フィリップの覚悟』
これで決まりだ!
そんなわけで次回からようやく大きく物語を動くかと思います…多分!
それではまた!