仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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ようやくスランプ脱出です…!少しだけ筆が進むスピードが直りましたので、来週も投稿できると思います…多分!

そんなわけで、風太郎と彼女のお話となります。
本章もようやく終わりが見えてきました…

それではどうぞ!


第60話 「Mの試練/私を探して…?」

フィリップと二乃の一件が佳境を迎える中…旅館に残された者たちにも大きく動きがあった。

 

『夜になったら、宿を抜け出してフィリップ君に会いに行くわ…お願い、手助けしてちょうだい』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『その時、ネックになるのはパパね。だから、一花にはパパを見張っていてほしいの』

 

二乃からそんな相談を受けた一花は時計を見上げながら、マルオの様子を見張っていた。現在時刻は11時…祖父と話を終えたマルオが姿を消したと思い、慌てて姿を折った一花だったが、

 

(…えっ!?五月ちゃん!?何して…あっ、お父さんがショータ君とどっかに行っちゃった。どうしたんだろう…?まぁ、これでお父さんが私たちの部屋に来ることは当分なさそうだから一安心かな)

 

二乃の恰好をした五月の姿を見かけ、五月に追い縋る翔太をマルオが(表情は変えずに)連行していく様を見かけ、胸を撫で下ろしていた。これで後は二乃が戻るまで、マルオが移動しないかどうか見張り続けていればいいだけの話で、翔太とマルオが入っていた部屋の入り口が見える場所で座り込み、考え事を始めた。

 

(多分二乃は今日、フィリップ君にもう一度気持ちを確認するつもりだ…もしかしたらキスまでするかも…キス、か…)

 

そのワードと共に思い出されたのは、お昼に自身が風太郎へとキスをしようと迫った時のことだった。

 

(二乃は本当に凄い…私みたいにずるくない。誰の目も気にせず、全力でフィリップ君に恋している…そして、その想いを伝えようと踏ん張ってる…)

「…情けないな…私、お姉さんなのに……二乃と違って勇気も資格もない………」

 

自身と二乃とを比べてしまい、暗い気持ちが一花の心へと刺してしまっていた。その心が考えまでもより深く暗い面へと誘おうとしていた。思わず顔を膝へと埋めていると…

 

「…一花…?」

「っ!?…四葉…」

 

名前を呼ばれ、ハッと顔を上げた一花…その視線の先にはいつものリボンを着けていない四葉がいた。寝る前にお手洗いに来た四葉だったのだが、座り込んでいる一花を見つけて声を掛けたのだ。

 

「部屋にいないからどこにいるかと思ってたら。こんなところで何してるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「…おっと!私、お手洗いに来たんだった!早くしないと~…!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

自身の問いに気まずそうに目線を逸らす一花の姿に、何かを察した四葉は慌ててお手洗いへと向かおうとして…

 

「…一花……何かあったの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

歩みを止め、廊下へと引き換えした四葉は優しく姉へと問い掛けた。本当なら放っておくべきだと思ったのだが…

 

「私で良かったら話を聞くから……泣かないで…」

 

涙を目元へと溜めた一花の姿を放っておくことができず、四葉は一花へと視線を合わせ、そう言葉を投げ掛けた。

 

「四葉…」

「…よし!ねぇ、一花。久しぶりにあそこに行こっ?」

「……(コクッ)」

 

そんな四葉の提案に一花は黙って頷き立ち上がる。そんな二人が向かった先は、旅館の屋根であり、二階の窓から外へと出た二人は屋根へと座った。未だに黙ったままの一花に対し、何か話題を思った四葉が一方的に話し掛けていた。

 

「星が綺麗だね!マンションからもよく見えてたけど、やっぱりお爺ちゃん家から見る星の方が好きだな~!」

「…………」

「でも、お父さんにバレたら絶対に怒られるよね?夜更かししたいけど、家出しているせいか、お父さん厳しいし…でも、こんな所にいるとは流石に思わないだろうね?」

「…………………」

「一花…?」

「…………………………」

 

自分の言葉が全く聞こえていない姉の姿に、流石の四葉も言葉に困ってしまう。どうするべきか…ともかく一花に言葉を掛け続けるべきだと思い、なんとか言葉を捻り出そうとするも、

 

「えっと…よく分からないけど…その、ブエックショ!?」

「ええぇ?!はは……3月といっても、夜はまだ寒いね。これ着ときなよ」

 

言葉の途中でくしゃみをした四葉の姿に、我に返った一花は自身の羽織を四葉に貸した。

 

「そんな薄着で外に出てきたからだよ。ほら、鼻も出てるから、これでチーンしな?」

「こ、これくらい一人でできるよ!?ううぅぅん…!?」」

「…ふふっ。まったく四葉は…いつまでもお子様なんだから」

 

恥ずかしさのあまり、慌てて鼻をかむ四葉の姿に、暗い気持ちになっていた一花は少しだけ心が軽くなったような気がしていた。

 

「ありがとね…元気づけようとしてくれたんでしょ?でも、私は大丈夫だから…寒いし、お父さんにバレる前に部屋に戻ろか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

笑みを作り、そう四葉に告げる一花は立ち上がり、旅館の中へと戻ろうとするが…その動きを四葉は一花の手を握り、待ったを掛けた。

 

「待って…!一花、無理してない?私、心配だよ」

「っ……え…?」

 

四葉の言葉に一花は驚いた…自分の作り笑いが見抜かれたのか、それとも本気で自身のことを心配している妹の姿に…一瞬作り笑いが表情から抜けてしまった程に一花は驚いていた。

 

「ど、どうしてそう思うの?」

「……気のせいだったらごめん。この旅館に来てから、昔のことを思い出したんだ。昔はお爺ちゃんが怖かったな~とか、イタズラばかりしてお母さんによく怒られた~とか…」

「ふふっ…四葉は昔からやんちゃだったもんね?」

「何言ってんの…一番怒られてたのは一花でしょ?」

「…!そ、そうだっけ…?」

「忘れたとは言わせないよ。似た者同士の私たちの中でも、一花はガキ大将って感じだったんだから」

 

四葉の告げた事実に一花は記憶を辿るも、イマイチ思い出せないようで四葉は過去に一花にされたことを暴露し出した。

 

「おやつを横取りされたことなんて数えきれないし」

「ご、ごめん…」

「私が集めていたシールが一花の鞄に貼ってあったり」

「すみませんでした…」

「仲良くしたいって言った子も、次の日には一花とお喋りしてたっけ?」

「昔の私はそんなことまでしてたの…!?」

 

次々と明らかになる自身の罪に流石の一花も笑みが引き攣ってしまっていた。特に最後の事柄に関しては完全に忘れてしまっていたため、とてつもない罪悪感が生まれる程だった。

 

「ま、まぁ…そんな私も大人になったってことで…」

「ずっと不思議だったんだー。なんで私は子供のままなのに、一花だけ大人になれたんだろって」

「…それは…お母さんが死んじゃった後の、あの痛々しい五月ちゃんの姿を見てたらね…当然だよ。私がお姉ちゃんらしくしないと…まぁ、ただ私がお腹から出てきたのが一番だったからの話なんだけど…」

「あはは…私が一番じゃなくて良かったよ…」

 

もし自分が最初だったら、まずそんなことはできなかっただろうと思った四葉は一花の言葉に本気でホッとしていた。

 

「…でも、私は一花が一番で良かったと思うな!」

「…!」

「その…さっき言い掛けていたのは、これだけは言っておきたいと思ったからなんだ。子供の頃の一花はガキ大将で、すぐ人の物が欲しくなっちゃう嫌な子だったけど…それでも私たち姉妹のリーダーだった。

 

あの頃からずっと…私は一花のことをお姉ちゃんだと思ってたよ?」

 

「…っ!?」

 

四葉のその言葉に一花は言葉にならない驚きの声を上げた。

 

「だから…えーっと…あれ?何が言いたかったのかな……そう!一花だけ我慢しないで、したいことしてほしいってこと…かな?」

「私が…したいこと…?」

 

四葉の伝えたかった言葉を反芻する一花の脳裏に、風太郎と三玖、二乃とフィリップの姿が映った。

 

(私は…ずっと今が続いてほしいと……ううん。この一番心地のいい空間が変わってほしくなかったんだ。でも、二乃の話を聞いて…学年末テストで三玖に勝った時、どうして心にモヤモヤしたものが生まれたのか、ようやく分かった…本当は私…)

「…誰にも取られたくなかったんだ…」

 

二乃がフィリップへと想いを伝えようとする勇気が羨ましいと思った

 

三玖が風太郎へと告白しようとしたのを邪魔してしまったことに罪悪感を抱いた。

 

だって……自分も上杉風太郎という人間が大好きだからだ…

 

自分の笑顔を見つけてくれて、一目ぼれした相手なのだから…長女だからとどこかで我慢していた自分の本心を、一花は認めたくなかったのだ。

 

上杉風太郎を誰にも取られたくない…それが姉妹であっても…

 

「…?」

「…えい…!」

「ええっ!?いきなりどうしたの!?」

 

いきなり貸してくれていた羽織を奪われ、四葉は更に混乱するも、一花はしてやったりといった笑みを浮かべ、四葉へと声を掛ける。

 

「ふー…ゴメン、四葉。実は私も寒かったんだ」

「えーっ?!さっき貸してくれたばっかりなのに!?」

「あはは!いいじゃん、別に。じゃあ、部屋に戻ろうか?」

「そうだね……そういえば、二乃の姿が見えないけど、どこに行ったか知ってる、一花?」

「…さーね?」

 

(頑張ってね、二乃?私も…これからは自分の気持ちに向き合ってみるから)

 

「よっと…痛っ!?」

「一花、大丈夫?」

「う、うん…登山の時に捻った足がね…」

「気を付けないと…悪化しちゃうよ?」

 

ここにいない、勇気を振り絞っているであろう妹へと内心エールを送る一花は、四葉に肩を借りながら自分たちの部屋へと戻るのだった。

 

 

 

「い、言われた通りにしましたけど…大丈夫でしょうか、佐桐君」

『馬鹿!変態!スケベ!この…ストーカー!?』

「だ、駄目です!静かにして下さい!?」

 

マルオに連れて行かれる翔太を不安そうに見つめる五月。だが、フロッグポットが勝手にしゃべり出し、慌てて止めようと操作するも、イマイチ使い方が分かっていなかった五月は苦戦していた。そこに、

 

「…五月…何してるの?」

「ひゃぁあ!?み、三玖…?」

 

背後からいきなり声を掛けられ、振り返ると、そこには自身と同じ姿をした三玖がいた。驚く五月を置いて、三玖が五月の手元でしゃべり続けるフロッグポットを手に取り、疑似メモリを抜いた。メモリを抜かれたことで音声を再生し続けていたフロッグポットが待機状態になった。

 

「よ、よく分かりましたね…」

「この前の勉強会の時、休憩中に四葉がショータに教わりながら遊んでいたのを見てたから…それでこんなところで何をしてるの?」

「え、えーっとですね…そう!旅の思い出に音を録音してみようかと思いまして!それで佐桐君にフロッグポットを借りてたんですよ!?」

「…スマホで良くない…?しかもさっきの、二乃の声じゃなかった?」

「あー……先程、佐桐君に二乃がなじられていたのを録音したんです!?これも旅の思い出でしょう!?」

「…えぇー…」

 

混乱した五月の吐いた嘘に三玖はドン引きしていた。そして、内心で翔太に対してもちょっと引いていた…五月のせいで翔太の風評被害が拡大した瞬間だった。

 

「…まぁ、五月のとんでもない性癖は置いておいて…」

「なぁ!?勝手に変な認識をしないで下さい!それで…?三玖はどうしてここに?」

「誰も部屋に戻ってこないから…なんか落ち着かなくて、お風呂にでも入りに行こうかと思って」

「そ、そうだったんですね…っ!(そうだ…!)私もご一緒していいですか?」

「…?いいよ。なら行こっか?」

「はい」

 

五月のいきなりの提案に首を傾げる三玖だったが、それ以上疑問を持つことはなく、二人は揃って廊下を歩き、大浴場へと向かい始めた。

 

「もう録音はいいの?」

「そ、それはもういいですか!?…あっ」

「…っ…フータロー?それにお爺ちゃん?」

「……えー…「五月、三玖」あーーっと!今、言おうとしたのに!先に言われちまったぜ!今、言おうとしたのに!?」

 

その道中、風太郎と祖父に出くわす二人。お昼から何故か一緒にいる組み合わせに五月と三玖が首を傾げる一方で、風太郎が何故か悔しがっていることに更に頭に疑問符を浮かべる。

 

「あ、あの…お昼からお爺ちゃんと一緒にいますけど、一体何をしているんですか?」

「ちょっとな。もう少しだ…もう少しだけ待ってくれ。お前たちの爺さんがもう少しで教えてくれそうなんだ」

「はぁ…ともかくお願いしますね?」

「ああ…そういえばさっき佐桐がお前の親父に連れて行かれたけど、どうかしたのか?」

「…い、色々とありまして…」

「…あ、ああ(もしかして、フィリップ関係か…!?)」

 

五月が言い淀む姿に、風太郎は嫌な予感を覚えていた…その予想は半分当たりで半分外れではあるのだが…

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「じ、爺さん!?悪い、もう行くな」

「あ…(本当に大丈夫でしょうか?)」

 

無言で先を行く祖父を風太郎は慌てて追い始めた。その姿に一抹の不安を感じる五月だったが、今は風太郎を信じることにし、三玖と共に大浴場へと再び向かい始めた。

 

「フータロー、大変そうだったね?」

「そうですね…でも、それが分かっているのなら、三玖たちもこんなタイミングで彼を試すようなことをしなくてもよかったのではないですか…?」

 

大浴場に着き、先程の風太郎の様子から同情する三玖。それに同意しつつも、風太郎に五つ子ゲームを仕掛けたことを少しだけ諫めていた。

 

「はぁ…それにしても、あの人は本当に解決する気があるんでしょうか?佐桐君は佐桐君で苦戦してるみたいですし…」

「仕方ないよ…たった半年の付き合いで私たちを見分けようなんて無理な話だよ…むしろ、ショータやフィリップの観察眼がおかしいんだよ」

「…そうかもしれませんね…(…っ…!)」

 

浴衣を脱ぎつつ、会話していた二人。その時、五月はあるものを目撃し、浴衣に手を掛けていた三玖の腕を制止した。

 

「…どうしたの、五月?」

「その足…その傷……貴女だったんですね、三玖。上杉君たちにあんなことを告げたのは…?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

驚きを隠せない五月…一方の三玖はさほど驚いておらず、むしろいつもクールな彼女と違い、どこか冷たい雰囲気を纏っているように感じられた。

 

「…そっか。この足の傷…残ってたんだ」

「三玖…どうして…なぜ一番協力的に見えた貴女が上杉君たちとの関係を断とうとしているのですか?」

「その前に五月に謝らなくきゃね…あの時…フータローに詰め寄られた時にお爺ちゃんやショータが傍にいたから、咄嗟に五月のフリを……いや、それも言い訳だね。

五月の姿じゃないと…三玖としては言えなかった。フータローが大好きなのにあんなこと…」

「…えっ?」

「…?」

 

「………………三玖って上杉君のことが好きなのですか!?」

 

三玖の言葉を一泊置いてようやく理解した五月が三玖に詰め寄る。まさか気付かれていなかったとは思ってもみなかった三玖は上手く答えることができないでいた。

 

「ああ!なんてことでしょう!こんなこと、皆が知ったら驚きますよ!」

(…多分知らなかったのは五月だけ…)

 

歓喜する五月を見ながら、内心で突っ込む三玖…実はその知らなかったに翔太とフィリップが含まれているとは彼女は思っていなかった。

 

「で、でもいいのでしょうか!?私たちは仮にも教師と生徒なのに…そんな関係はありなんでしょうか!?」

 

この場に翔太が確実にツッコミが入っていただろうが、残念ながらこの場にはツッコミ役は不在だった。

 

「…だからだよ」

「…え…?」

 

そんな冷たい三玖の言葉に五月は我に返る。どういうことかと三玖の方へと視線を向けると、

 

「私たちは教師と生徒…それでいいと思ってた。私が一番の生徒になればいいって…フータローに喜んでもらえるような一番の成績を取れる生徒になればいいと思ってた。そうだったら…こんな私でも認めてもらえる公平なチャンスだと…」

「み、三玖…?」

「でも、駄目だった…私は一番を取れなかった…あんなに頑張って、努力して……でも、やっぱり駄目だった」

「…もしかして、学年末テストのことですか…?」

「……その一縷の望みも潰えた今、こうする他なかったんだ。生徒と教師じゃ、私とフータローの関係はずっと変わらない…だから…」

 

言葉を続ける度に辛そうな表情に変わっていく三玖…その想いの大きさに三玖の覚悟を知った五月は…

 

「三玖の気持ちは分かりました。ですが、その上でお願いです。最後に上杉君に会って下さい…彼にラストチャンスをあげて下さい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

(上杉君…後は頼みますよ…!)

 

自分にできることはここまで…今の三玖を助けることができるのは自分でも、翔太でもない…上杉風太郎しかいないと思った五月は、最後の望みを託すため、今できることをしようと三玖の説得に掛かった。

 

 

 

一方…そんな状況だとは知らない風太郎はなんとか祖父から五つ子を見分ける術を習おうと付き添っていた。

 

「じ、爺さん!?いい加減教えてくれ…あいつらを見分けるのにコツとかないんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(…だ、駄目か…!?)

「………(ボソボソ)」

「えっ…?」

 

微かに祖父から発された言葉を聞き取ろうと傍に近寄る風太郎。祖父が放った言葉は…

 

「愛」

「……へっ」

 

風太郎の天才的な思考が完全にフリーズした。まさかのワードが祖父から飛び出し、風太郎の表情が硬直する。

 

「愛があれば見分けられる」

『私たちの見分け方はお母さんが昔言ってました・・・愛さえあれば、自然と分かるって!』

(……この人が発端かぁぁ!?)

 

以前の四葉の言葉が再び頭にリフレインし、風太郎の中で『祖父→母親→子供』という方程式が確立した瞬間だった。だが、祖父の言葉はそこで終わりではなかった。

 

「…長い月日を経て…相手の仕草、声、ふとした癖を知ること……それはもはや愛とも言える。だからこそ…儂も、あの二人組の少年もあの子たちのことを見分けられる」

「っ…!?(佐桐とフィリップ…!あいつ等のことをしっかりと見ているから見分けられるってことなのか……)」

「孫を見分けると、そう言ったな?お主はなぜそうしようとする?

 

お主に孫たちと向き合える覚悟があるのか?」

 

「…俺は…」

 

祖父にそう問われる風太郎。その口から出た答えは……

 

そして、二日目の夜が明けた…

 

「あーあ!今日でここの飯が食えなくなるのか…最後に温泉入っときてーな」

「あれー?お兄ちゃんは?」

「ん?どこ行ったんだ?それより、さっき仲居さんから不思議な話を聞いたんだが…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「な、なんかお父さんの機嫌悪くない?」

「もしかしてほとんど寝てないんじゃないのかな?日が明けるまで、玄関で立っていたっみたいだよ?そういえば…いつの間にか帰って来てたけど、二乃は何時に部屋に戻ってきたの?」

「みんながいない間によ…フフッ!」

(…どうやら上手くいったみたいだね、二乃)

「(二乃の機嫌がいいけど、何かあったのかな?)…あれ、三玖がいないね?一緒に温泉に行こうと思ってたのに…五月、知らない?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「…?五月ちゃん?」

 

「はぁぁぁぁ……まさか旅行先で徹夜することになるとは思ってなかったわ……とてつもなく眠いわ~」

「…はい、亜希子さん。コーヒーです」

「ありがと~、フィリップく~ん!(…どうやら無事に悩みは解決したようね…良かった、良かった)…そういえば、翔太は?」

「ちょっと野暮用を済ませに行ってます」

「…野暮用?」

 

三家三様の朝の光景を迎える中、それぞれいない人物が話題に上がる中、当人たちはどうしているのかというと…

 

「…よう、上杉」

「…佐桐…」

 

母親同様、徹夜で考え事していたせいでクマができている翔太が、廊下を歩く風太郎に声を掛けていた。五月から三玖…偽五月との場を設けたという話を聞いた風太郎は、彼女が待つ部屋へと向かっているところであった。

 

「こっちは一応解決した…あとは偽五月の正体を見分けるだけだ。話は五月から聞いた。見当はついてるのか?」

「………いいや。それをこれから確かめる」

「そうか……なぁ、上杉。多分だが、偽五月は「待ってくれ、佐桐」…えっ?」

 

自分の推理を語ろうしたところ、遮った風太郎の言葉に翔太から驚きの声が上がる。

 

「これは俺とあいつの問題だ…お前の手助けは禁止だろう?それに…」

 

乾いた笑いを浮かべる風太郎は一呼吸置いて、その先の言葉を口から紡ぎ出した。

 

「お前みたいに、あいつらと向き合えていない俺にそんな資格はない」

 

『俺は…俺にはそんな資格はないと思ってました』

 

それが昨晩、祖父に告げた風太郎の言葉だった。

 

『あいつらは駄目駄目で、手が掛かる生徒だとばかり思ってました。けど、あいつらと一緒に…半年ではありますが、何かを教えてもらった気もするんです。それなら、家庭教師として、あいつらのことにできることがあるのならそうしてやりたい…それが俺なりの「教師」としての覚悟です』

 

「…俺も覚悟は決めてる。これであいつらの信頼を回復して家庭教師を続けるか、クビになるか…やってやるさ」

「…そうか…なら、ちょっとだけアドバイスだ」

「ア、 アドバイス…?」

「ああ…上杉。もしもお前が何か違和感を覚えたのなら、それを信じろ」

「…!?」

 

翔太の放った言葉に、風太郎はどういうことか顔を顰める。

 

「お前は理屈で考えすぎるとかがあるんだよ。でもな、時にはこれだと感じることが人間にはあるんだよ…直感って奴かもしれないけどな。だけど、俺はいつも探偵としてそれを大切にしてる……フィリップにはいつも馬鹿にされてるけどな」

「…直感…」

「…ともかく、後はお前に任せる。しっかりと解決してこい!」

「…おう」

 

翔太の言葉に、戸惑いながらも応えた風太郎は先へと進み始めた。その後ろ姿を見送りながら…

 

(頼んだぜ、上杉)

 

翔太は欠伸を噛み殺しながら、風太郎に文字通り全てを託したのだった。

 

 

 

「すぅぅ…ふぅ…」

 

テスト前でもそうそうすることのない深呼吸で呼吸を整える風太郎。五月が作ってくれた最後のチャンス、翔太から託された期待を背負い、風太郎は彼女との待ち合わせ場所である宴会場の襖を開いた。風太郎と偽五月が部屋にやってきたタイミングはほとんど同じだった。

 

「…お前は初日の夜、俺たちと話した五月ってことでいいんだよな?」

「…はい…」

(っ…佐桐を真似て声で判断しようかと思ったが、流石に声色を五月に寄せてきてる…のか?イマイチ違いが分からん…!?)

「私の正体は…」

「待て」

 

第一声で正体を絞ろうとした風太郎だったが、彼女はそれを見通して声色を変えてきていた。そして、彼女が自身の正体を制止し、風太郎は最後の賭けへと出た。

 

「佐桐と違って、五つ子ゲームを結局俺は正解できなかった…降参だ。だが、負けっぱなしってのも癪だ…だから……リベンジだ」

「っ…!?」

「せめて、お前だけは俺から正体を暴く」

(…それが今、俺が示せるお前たちと向き合う覚悟だ)

 

彼女の顔がよく見える距離まで近づいた風太郎は宣言した。その宣言に彼女は何も言えず、沈黙でそれを肯定してしまった。

 

「五月から話は聞いてるな?」

「え、ええ…」

「それなら、あいつに頼まれた件を含めて、順を追って説明していこう」

 

そう言って、風太郎は時間を稼ぎながら、彼女の反応を伺っていた。何か一つでいい…彼女の正体に迫れるきっかけを風太郎は必死で探しながら、話を進めていった。

 

「最初は四葉だ。あいつの悩みはこの旅行自体にあった。よって、今日が終われば、自動的に解決する…そして、お前は四葉じゃない。あいつはお前ほど完璧に変装できないからな」

「正解です」

「…っ…続いては二乃だ。けど、あいつに関する悩みは俺じゃない…そして、それはもう昨夜の内に解決したと聞いてる。そんなあいつが、俺をこうして試すようなことをするとも思えない。だから、二乃でもない…そうだな?」

「そうです…でも、どうして二乃の悩みが分かったのですか?」

「…色々あったんだよ…」

 

まさか告白の場面を盗み聞きしていたましたとは言えない風太郎は、彼女の追及を誤魔化し、話を強引に戻した。

 

「まぁ、いいでしょう。これで私は一花と三玖に絞らられたわけですが…」

「ああ、そうだ…だが、先に言っておくぞ?……俺はお前が一花か三玖か、まだ分かっていない」

「…そう、ですか…(…っ…私は何を期待して…!?)」

 

風太郎の放った一言に思わず悔しさが込み上げ、手に力が籠ってしまうも、なんとか彼女は五月のフリをし続けていた。順調に正体を絞り込んでいた風太郎に僅かでも期待してしまったことを後悔していた。

 

(…っ…一花と思えば一花にも、三玖と思えば三玖にも思える…くそっ!手掛かりが見つからねぇ…今、ここで特定するしかない!俺にその資格はないかもしれないが、このまま終わらせるわけにはいかない!)

 

「お前さ、えーと…俺のことを呼んでくれないか?」

「っ!………「上杉君」…その手にはかかりませんよ」

「ぐぅ…!?なら、徳川四天王って、酒井、本多、榊原と後は誰だっけ?」

「分かりません」

「な、内緒話があるから耳を貸してくれ」

「左耳ならどうぞ」

 

(ん~~~~!?なかなかボロを出さねぇ!ここまで完璧に隠し切れるということは三玖

…?いや、演技ということなら女優の一花だってありえる…!)

 

歴史に関する問いも、ピアスを確認しようとする策さえも躱されてしまい、風太郎は彼女の正体をなんとか見分けようと睨みつけるように視線を飛ばしていた。真剣に自身を見分けようとしてくれている風太郎に…彼女の心は悲鳴を上げていた。

 

(…もう止めて、フータロー…こんなことに意味なんてないよ…だって…

 

フータローに私は見つけられない)

 

「はぁぁ…駄目だ、分からん。お手上げだ」

 

彼女に悲鳴にも近い願いが届いたのか…風太郎は両手を上げ、お手上げだとばかりに降参の意を示した。その姿に彼女は安堵し、少し残念そうに反応した。

 

「そう…ですよね…」

「ああ…あいつを呼んでくれ」

「…?あいつ…?」

「ほら、あいつだよ。お前らの末っ子の…今、お前が変装している、名前は確か……えーと、い、五…」

 

(ああ…そういうこと…)

 

「五月ちゃんね?」

 

彼女は悟ってしまった…これが風太郎の最後の策で…これで本当に全てを終わりにできるのだと…そして、彼女は風太郎の策を利用した。五月の名前をワザと「一花」が呼ぶであろう言い方で答えたのだ。

 

「…!ハハハハハ!かかったな!五月をちゃん付けで呼ぶのは一花のみ!つまり、お前が一花ってことだ!」

 

「…っ……あはは!まんまとやられちゃったなぁ」

 

彼女は再び仮面を被った…今にも泣き叫びそうな本心を押さえつけ、一花を演じる。その反応に風太郎は、本心に気付くことができず、やれやれといった様子で首を振っていた。

 

「ったく…手間掛けさせやがって。まぁ、お前だけが悩みの見当がつかなかったからな。そうじゃないかと睨んではいたんだ」

「…へぇ、凄い」

「仕事絡みか?忙しくなったとは聞いていたが…」

「ま、そんなとこかな……じゃあ、私行くね」

「え…いや、まだ…」

「帰り支度があるから…またね?」

 

風太郎との会話を強引に終わらせ、彼女は部屋を去ろうとする。今すぐこの空間からいなくなりたい心を押さえつけ、仮面を被り続けたまま、その場を去ろうとする。

 

(ギリギリだったな…結局俺はこんな方法でしか判別できない…教師として、あいつらの悩みをどうにかできればと思っていたが……やっぱり俺にはそんな資格はないのかもな。だが、これでいい…これで一件落着だ。偽五月の正体はいち……っ!?)

 

そう心で安堵し、彼女へと視線を向けた時だった。

 

風太郎の目はそれを見た…それは本当に偶然だった。しかし、風太郎の目にその光景は何かを感じさせるものがあった。

 

去り行く彼女が悔しそうに力を込める右拳

 

その光景と共に風太郎の脳裏にあの言葉たちが蘇った。

 

『長い月日を経て、相手の仕草、声、ふとした癖を知ること…それはもはや愛と言える』

『上杉。もしもお前が何か違和感を覚えたのなら、それを信じろ』

 

その言葉と共に去り行く彼女の姿が一瞬ブレて見え、風太郎は思わずその名を呼んだ。

 

「…三玖、か…?」

 

突如呼ばれた名前に彼女の足が止まった。

 

「……なんで?さっき、私のことは一花だって言ったじゃん」

「いやっ…すまん。何故か自分でも分からんが、気のせい…なんとなくなんだが、一瞬だけお前の姿が三玖に見えたんだ。一花でも二乃でも、四葉でも五月でもなく、三玖に…っ!?」

 

「当たり」

 

風太郎の言葉が先に続くことはなかった。変装を解いた三玖が、涙を流しながら風太郎の胸に飛び込んでいたからだ。だが、その涙はもう既に悲しいから流しているわけではなかった…自身を見つけてくれた嬉しさから流す涙だった。

 

「マジか…」

 

一方の風太郎は突如抱き着かれ、反応し切れず床に押し倒されていた(尤もモヤシな風太郎に受け止められたのかという話は野暮なので触れないお約束だ)。正解したというのに、まさか本当に直感が当たったとは信じられず呆然としていた。そんな風太郎に三玖は先程思ったことを尋ねていた。

 

「ねぇ…一つ聞いてもいい?私の悩みは心当たりがあるみたいに言ってたよね?私が偽五月じゃなかったら、何に悩んでると思ってたの?」

「……間違えてると分かった今となっては恥ずかしい話だが、笑わないで聞いてほしい

 

バレンタイン…返していないことに腹立ててるのかと思った」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…あはは…あはははは」

「わ、笑うなって言っただろう!?」

「だって…フータローらしいと思って…あはは!ショータだって返してくれてないのに、どうしてそんなことで怒ると思ったの……あはははは!」

 

恥ずかしそうに、自身が思っていた三玖の悩みに関して告げる風太郎。そんな風太郎らしい回答に三玖は思わず笑いを我慢しきれず、噴き出してしまう。

 

「というか…お前こそ!なんで俺たちに辞めて欲しかったんだよ!?」

「あ、それやっぱなし」

「はぁ!?」

 

三玖の前言撤回宣言に困惑する風太郎…だが、三玖にとって、そのことは本当にどうでもいいことになっていた。なぜなら…

 

(フータローは教師、私は生徒…それは変わらない。でも、全部が変わらないなんてことはないんだ……私を見つけてくれてありがとう、フータロー)

 

彼女の悩みはもう既に、求めていた人によって吹き飛ばされたからだ。

 

 

次回 仮面ライダーダブル/Kの花嫁 

 

『Mの試練/旅は最後まで慌ただしい』

これで決まりだ!

 




次回は本章のエピローグになります。
各組に焦点が当たるお話を予定しておりますので、お楽しみにお待ち頂ければと思います。おそらく来週の投稿と間章の一話を挟んで、新章に突入できるかと思います。

それでは、次回でお会いしましょう!
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