仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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そんなわけで、番外編後半となります。

次章につながることや、原作とは異なる点も出てくるので、ご期待頂ければと思います。

それでは、修羅場からバトルパートのお話をどうぞ!

追記 まさかのごじょじょゲーム化に、限定版にはドラマCDだと…!?これは買わねば(謎の使命感)
劇場版ゼロワン見てきました……最高でした!!
もうその一言に尽きますね!


第63話 「Sは見た!/フィリップは放っておけない」

「あれ、三玖?あんた、何してるの?」

「奇遇だね…君もここに来ていたのかい?」

「フ、フィリップ…二乃…!」

 

絶対絶命…翔太の話に意識を集中していた三玖は、二人の行く先を追うことを失念していたのだ。不思議そうな表情をするフィリップに対し、勘が働いた二乃は三玖がここにいる理由に見当をつけていた。

 

「…ああ、そういうこと。三玖…あんたつけてきたわね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

二乃にジト目で責められ、冷や汗が止まらない三玖。以前、家出騒動の時、ホテルで詰められたことが頭をよぎったが、それとは別のプレッシャーが二乃から放たれていた。

 

「はぁ……まぁいいわ。で、あんただけでしょうね、ここに来てるのは?」

「…う、うん。他のみんなは来てないよ」

「そう…なら「嘘だね」フ、フィリップ君…!?」

 

それまで会話に入ってこなかったフィリップが突然口を挟んだことに、隣の二乃が驚くも、変装用の眼鏡を掛け直しながら、フィリップは言葉を続ける。

 

「中野三玖…今、二乃ちゃんの質問に答える時に一瞬反応が遅れたね?それに、答える直前に目が右上を向いていた。これらは、人間が嘘を吐く直前に見られる兆候だ」

「…っ…!」

「それに不自然な点は、僕たちが声を掛けた時に驚いていたことだ」

「それは…私たちが背後から声を掛けたからじゃないの?」

「普通ならそうだよ。でも、彼女は僕たちの行方を追っていた筈だろう?なのに、僕たちから目を離すなんてことはおかしくないかい?…例えば、誰かと一緒にいて、はぐれてしまうかなどして、目を離すような事態に見舞われていた、とかかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ほぼ見抜かれてしまった三玖は何も言い返すことができず、対する二乃はフィリップの推理に開いた口が塞がらずにいた。

 

「まぁ、彼女と一緒にいれば、直に戻ってくるんじゃないかい?」

「えー…それはそれで面倒ね。せっかくのフィリップ君とのデートなんだし…」

(…!これは逃げるチャンス…知り難きこと陰の如し…!)

 

フィリップと二乃の反応から、ここが撤退のチャンスだと悟った三玖は、真実を知られる前にこの場から去ることを決意した。

 

「な、なら…私、帰るね?えーっと…一花が向こうにいるから…じゃあ」

 

ここにはいない一花を巻き込んでしまったことに内心謝罪しながら、三玖は普段ではそうそう見せない早口で言葉を紡ぎながら、その場を去ろうと後退った。

 

(疾きこと風の如く…このまま…っ!)

 

このままダッシュで逃げようと振り返ろうした三玖だったが、残念ながらそうすることはできなかった。

 

「…待ちなさい、三玖。確か今日…一花は撮影だった筈よね?」

「…あっ…!」

 

手を掴んできた二乃の指摘に、今度こそやらかしたと思った三玖の口から短い悲鳴が漏れた。完璧に詰んだ三玖に、二乃が迫る。

 

「さぁ、言いなさい、三玖?あんたは一体何を隠しているのよ?」

「そ、それは…えーっと……言えない」

「はぁ…?なんでよ?」

「だって………言ったら、二人の邪魔をすることになるから…」

「…?…?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

三玖の言いたいことがイマイチ要領を得ない二乃が眉を顰めるが、フィリップは彼女の態度からその真意を察し、スタッグフォンを取り出し、あることを調べ始めた。

 

「もう…!はっきり言いなさいよ…どうして、訳を話せないのよ!?」

「だから……」

「…なるほどね。そういうことだったんだね」

「っ…!」「え…?」

 

一人納得したフィリップの言葉に違う反応を見せる三玖と二乃。スタッグフォンを閉じたフィリップはどこか悲しそうな表情をして、

 

「ゴメン、二乃ちゃん…デートはここで終わりにしよう」

「「…えっ…」」

 

まさかの一言がフィリップから放たれ、絶望と驚きの悲鳴が二人から漏れた。

 

 

 

「ぐぅぅ!?おわぁぁぁ!?」

 

単身、ドーパントに立ち向かうジョーカーが空中に舞っていた。対するドーパントは、ダメージ一つ受けておらず、ジョーカーを吹き飛ばした拳を上空へと掲げ、咆哮を上げていた。

 

「がぁ…なんてパワーだよ。いくらメモリを単体でしか使用してないジョーカーだからって、ここまでパワー負けするとか…!?」

 

戦闘を開始して10分…戦況は完全に不利な方向へと傾いていた。

 

最初はドーパントと互角に撃ち合っていたジョーカーだったが、戦っていくうちに相手のパワーがどんどんと上がっていき、今やジョーカーの攻撃は一切通じ、一方に攻撃を受け続けているばかりだった。

 

「くぅ…けどな…俺もそう易々と負けてやるわけにはいかないんだよ!今日は、あいつを呼ぶわけにはいかないからな」

『Crusher!』

「ふぅ…いくぜ!」

 

ドライバーのメモリをクラッシャーメモリに変え、肩から先がダークレッドに変わった右腕でクラッシャースレッジを握り、反撃に出るジョーカー。

 

「ゴォォォォォォォォォォ!!」

「おおおおぉぉぉぉぉ!」

 

ジョーカーのクラッシャースレッジとドーパントの拳が互いにぶつかり合う。クラッシャースレッジによるダメージで少しだけ後退るドーパントに対し、更にパワーが上がったドーパントの拳に、ジョーカー素体の翔太に激痛が走る。

 

それでも、負けじとクラッシャースレッジを乱打するも、メモリの力を一部だけしか反映できないジョーカーのフォルムシステムでは、パワーアップし続けるドーパントの攻撃に対抗できるわけがなく、

 

「ごおおおおぉぉぉぉぉ!?」

「ごはぁぁ!?」

 

顔面への強力な一撃を喰らい、怯んだところにボディアッパーを喰らい、ジョーカーの体が硬直する。そして、右肩に携えたライオンのパーツをジョーカーへと向けた。

 

「っ…マズイ?!」

 

至近距離の砲撃を悟り、なんとか距離を取ろうとするも、いつのまにか足元が茨で覆われており、ジョーカーは身動きが取れなくなっていた。そして、眼前に迫るライオンの口からジョーカーに向けてエネルギー弾が放たれようと……

 

「グルル…グギャァァ!?!?」

「なぁ…!?」

 

雄たけびが悲鳴に変わり、物凄い勢いで吹き飛ばされたドーパントの代わりに、ジョーカーの目前に現れたのは、

 

「リ、リボルギャリー…?!……まさか…!」

 

超高速から急停止したリボルギャリーに嫌な予感がジョーカーの頭に浮かぶ。そして、それを証明するかのように、リボルギャリーのハッチが開かれ、姿を現したのは…

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「…フ、フィリップ…!?それに…二乃と三玖まで…!?」

 

静かに佇むフィリップと、その傍らには二乃と三玖の姿があり、翔太は驚きの余り、それ以上の言葉が出てこないでいた。そんな翔太に対し、フィリップはゆっくりと近づいた。

 

「ぐるる…ぐおおおおおぉぉぉぉ!」

「…やれ、ファング!」

 

フィリップの意思に応え、どこからか飛び出してきたファングメモリが、ドーパントの足止めに出た。その間に、フィリップはジョーカーの元へと歩み寄った。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「…なんで来た!?お前は…ぐぅぅ!?」

 

ここにフィリップが来たことに思わず怒鳴ってしまった翔太だったが、その言葉が続く前に、フィリップが翔太を殴った。まさかのフィリップの行動に二乃と三玖も驚いていた。

 

「な、なにしやがる…!?」

「それはこっちの台詞だ!?」

「「「っ…!?」」」

 

大声で言い返され、翔太は衝撃を受け、二乃たちはその行方を見守っていた。

 

「僕がいつこんなことを頼んだ!?君一人で闘って、僕がなんとも思わないと…気にしないとでも思ったのか!?僕は…そこまで君に頼りにしてもらえないぐらいに弱いのかい?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そんなフィリップの言葉に、言葉を失う翔太。

 

「それに…君を放って、デートなんて楽しめるわけがないだろう?それこそ…二乃ちゃんに嫌われてしまうさ」

「……はぁぁぁ…はいはい。今日ばっかりは、気を遣った俺が悪かったよ」

 

降参とばかりに首を振りながら、変身を解いた翔太。そして、フィリップが差し伸べた手を掴み、立ち上がる。

 

「…ったく。本当に世話が焼けるんだから…ほら!さっさと片付けなさい!」

「だってよ?お前のお姫様のご命令通り、さっさと片付けるぞ…半分力貸せよ、相棒」

「ああ。行こう、翔太!」

 

ファングメモリが吹き飛ばされ、時間稼ぎも限界だと悟った二人は不敵な笑みを浮かべ、ドーパントと対峙する。

 

「気を付けろ…あいつのパワーは尋常じゃない。しかも、どんどんとパワーを増してきてやがる。右肩のライオンと左腕の茨も、只の飾りじゃねーぞ」

「ふむ…本来ならメモリの正体を突き止めたいところだが、このままでは被害が広がる一方だ。翔太、ダイナソーでいこう」

「分かった」

 

『Cyclone!』『Dinosaur!』

「「変身!」」

『Cyclone! Dinosaur!』

 

翔太がダブルドライバーを装着したことで、フィリップ側にもダブルドライバーが出現し、互いにメモリを取り出し、サイクロンダイナソーへと変身したダブル。そして、すぐさまフィリップがダブルの右腕を操り、メモリをチェンジする。

 

『Luna!』

『Luna! Dinosaur!』

 

虚構と現実を捻じ曲げる特殊フォーム…ルナダイナソーへと姿を変え、ダブルは変化してしまっている左腕の代わりに、右腕で決めポーズを取りながら、いつもの台詞を告げる。

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

『二乃ちゃん、僕の体を宜しく!行くよ、翔太』

「えっ、ちょ…!あー、もう!?三玖、手伝いなさい!?」

「えっ!?私も…?」

 

いきなり話を振られた二人がリボルギャリーから降り、フィリップの体を回収する横で、ダブルはドーパントに飛び掛かった。先程以上のパワーを宿したドーパントの剛腕を受け止めながら、フィリップは敵の能力を分析していく。

 

『くっ…!?ダイナソーに迫るまでのパワー…!これは長期戦は不利だね』

「しかも、さっきよりも更に力が増してやがる!?ぐぅ…一体、何のメモリを使ったら、こんなことになるんだよ…!」

 

ダブルの体を拘束しようとしてくる茨を強引に切り裂き、ドーパントを羽交い絞めにするも、ダイナソーの力さえも振りほどこうとするドーパントの力に、ダブルから苦痛の声が漏れる。

 

そして、力任せに拘束を解かれ、ドーパントの拳をダイナソーの左腕で受け止め、力比べによる拮抗状態が続く中、フィリップがドーパントの姿からあることに気が付いた。

 

『…ライオンと茨に、女体のドーパント……そうか!奴のメモリはストレングスかもしれない!』

「すとれんぐす…?なんじゃそりゃ…はぁぁぁ!!」

 

聞きなれない言葉に首を傾げる翔太は、左足でドーパントを大きく吹き飛ばし、相棒へと解説を頼む。

 

『翔太、以前戦ったハーミットのことは覚えているね?ストレングスもタロットの大アルカナに属するカードの一つで、正位置では剛力・潜在能力の引き出しといった意味を持っているんだ』

「っ…なるほどな。そう聞けば、奴の力がどんどんと上がっていくのも納得だな」

「ぐううう……ごおおおおぉぉぉぉぉ!?」

「うぉ!?地面を割りやがった…!」

 

敵の正体…ストレングス・ドーパントの能力を理解したところで、それを証明するかの如く、拳を振り降ろしたドーパントの一撃でアスファルトがひび割れ、ダブルも揺れによって体勢を崩してしまう。

 

このままでは、戦い続けるだけで被害が尋常ではなくなると判断したダブルは一気に攻勢へと出た。

 

『翔太!』

「分かってる…!いくぜ!!」

 

フィリップの作戦を一瞬で理解した翔太は、ダイナソーの脚力を使い、一瞬でストレングスの眼前へと迫った。いきなり距離を詰められたストレングスも迎撃とばかりに、力が膨れ上がった剛腕を振るうも、その一撃を左腕でなんとか受け止め、ダブルはストレングスを真正面から捉えた。

 

『誘え…!』

「…!?」

 

そんなフィリップの一言と共に、ストレングスの視界が一瞬歪み、不思議な力でその体が後方へと吹き飛ばされた。そして、衝撃から回復したストレングスの視界には奇妙な光景が広がっていた。

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

「…?!……?!!?」

 

自分を包囲するかの如く、無言のまま佇むダブルが六人。いつのまにか増えた敵に、何が起こったのか分からないストレングスは混乱した。だが、そんなことなどお構いなしに、ダブルたちはストレングスへと高速で迫った。

 

「ぐぅぅ?!ごぉぉ!?」

 

その体に四方八方から乱撃が飛び交い、ドーパントは打ちのめされていく。しかし、ドーパントもやられてばかりではなく、反撃の一撃を振るおうとするも、

 

ガァン!?

「…!?」

 

一体のダブルに触れようとした瞬間、今まで触れたことのない頑丈な何かに剛腕を阻まれ、ドーパントに更に衝撃が走る。その間にも、ダブルは自身へと攻撃を続けており、こちらの攻撃は何故か防がれてしまうことに、ドーパント自身は何が起こっているのか分からなくなってしまっていた。

 

「…あれ…何が起こってるの?」

「分からない…ドーパントが勝手に苦しんでる…?」

 

フィリップの体を回収し終えた二乃と三玖はそんな不思議な光景を見つめながら、口から驚きの感想が漏れていた。二人の眼前で起きている現象…それはダブルが何かを集中して操作しているようなのに対し、ドーパントが勝手に苦しみ、剛腕を振るおうとした時には、それを防ぐかのように謎の物体が出現している現象だった。

 

ルナダイナソー…ルナメモリの『幻想』の記憶を『虚構』へと昇華させたこのフォームは、今、ストレングス・ドーパントの意識を完全に操っていたのだ。

 

先程、急接近したところに魔眼により、脳に直接幻覚を掛け、あたかも複数のダブルに攻撃されているかの如く勝手に脳へと認識させ、剛腕が周囲に被害を及ばさない様に、ダイヤモンドの盾を限定的に出現させ続けていたのだ。

 

もちろんそんな能力を使う反動として、ダブルは幻覚や物質の出現などに全集中力を注がなければならず、ほとんど動くことができなくなってしまっていたが、直接的な戦闘が危険である今回に限っては、それはあまり関係のないことだった。

 

「ふぅ…やっぱかなり集中力使うな、この技…!」

『ああ…けど、それは相手も同じだ。この幻覚に、どんどんと増し続ける力を使うのは、かなり体力を使う筈だ。そろそろ決めよう、翔太』

「メモリブレイクだな…よし!」

 

疲弊し切ってきたドーパントの様子に、フィリップの言葉に頷きながら、術を解いたダブルは特殊翼装でボディサイドから出現している翼…『ダイナソーウィング』をルナメモリの力で巨大化させ、ストレングスをビルの壁へと叩き付けた。

 

『Dinosaur! Maximum Drive!』

「『はぁぁぁぁぁぁ……!ダイナソーアンフィクショナル!!』」

 

左腕へとオーラを集中させ、ダブルが技名と共に拳をドーパント目掛けて突き出した。その拳から、解き放たれた黄金の恐竜がドーパントの体を噛みつき、その体を食い破った。

 

「ぎゃああああああああああああああああああ!?!」

 

いともたやすく噛み切られたドーパントの体は爆発を起こし、メモリブレイクされたことで、ストレングスメモリは破壊され、ドーパントの姿も中年らしき男性の姿へと戻っていた。

 

「ふぃぃ…一件落着だな」

『そうだね…翔太。早く、この場を去ろう。警察が戻って来てからだと、色々とやっかいだ』

「そうだな。その前に…」

 

そう言って、翔太はダブルドライバーを閉じ、変身を解いた。いきなり変身を解いたことで、フィリップの意識も自身の体へと戻った。

 

「っ…!しょ、翔太…!?」

「…はぁ…さっさと行きやがれ、そこのカップル。デートの途中だったんだろうが」

「「…!?」」

 

探偵帽を被り直し、ハードボイルダーを近くへと呼び寄せた翔太は、驚くフィリップと二乃へとヘルメットを放り投げる。

 

「ったく…人がせっかく気を遣ったっていうのに…邪魔して悪かったな。こっちのことはいいから、続きを楽しんでこいよ」

「ちょ…あんた!フィリップ君だって…」

「二乃ちゃん、いいから早く行こう」

「えっ…!?フ、フィリップ君!?ちょっと待って…!?」

 

ぶっきらぼうに答える翔太に抗議する二乃だったが、相棒の考えを察したフィリップは話を遮り、ハードボイルダーに跨った。置いて行かれそうになった二乃も後部座席に座り、二人は行ってしまった。

 

「…ショータ。どうしてあんな言い方を……ショータ!?」

「…わ、悪い…!」

 

あっという間に行ってしまった二人を見送ることしかできず、翔太の言い分に流石の三玖も理由を尋ねようとしたが、翔太がその場に膝を突いた姿に驚き、駆け寄る。

 

「だ、大丈夫…?!」

「な、なんとかな…ダメージとダイナソーの反動が…っ…」

 

肩で息をしながらも、三玖の補助を断った翔太はふらふら立ち上がった。ジョーカーで闘っていた時のダメージと、ルナダイナソーの反動が重なってしまい、とてつもない疲労感が翔太の体を襲っていた。

 

「ふぅ…三玖。ともかくここを離れるぞ。リボルギャリーに乗ってくれ」

「えっ…またこれに乗るの?」

「ここにいたら、事情聴取に巻き込まれるぞ。ほら、行くぞ」

「…はぁぁ……」

 

思わずため息が出てしまった三玖は、翔太の後に続き、リボルギャリーに乗り込む。そして、その場を一気に去ろうと豪快な音を立て、リボルギャリーは走り出した。

 

「ま、待ちやがれ!?仮面ライダー!?真倉、パトカー用意しろ!?」

「無理ですよ、刃野さん?!さっき、バケモノに全部壊されたんですから!?」

 

現場に戻ってきた刃野刑事と真倉刑事の叫びが木霊する。だが、その光景を見ているのは彼らだけではなかった。

 

「…はぁ…あれがこの街を守り続けるダブルのもう一つの姿か…あまりにもぬるすぎる。この街に吹く風のようにな…」

 

…それはいつぞやの赤いライダーズジャケットの少年だった。しかし、その恰好は以前のようなライダーズジャケットではなく、翔太たちと同じ旭高校の制服の姿だった。

 

 

 

「…とりあえず、人目がつかないところまで移動して降りるが…悪かったな、巻き込んじまって」

「ううん…というか、私もその場の勢いでついてきちゃったから…でも、良かったの?」

「…フィリップは分かってくれてるよ。というか、変身を解除するまでダブルドライバーを通して、俺たちは意思が通じ合ってるからな…俺が限界だったことも、あいつは分かってたはずだ」

「…それであんな言い方を…」

 

移動するリボルギャリーの中で、先程の続きを話し合う翔太と三玖。翔太がどうしてあんな態度を取っていたのかを理解した三玖は思わず頷いてしまっていた。

 

「はぁぁ…それにしても、二乃には悪いことしちまったな。せっかくの初デートだったのにな」

「…それなんだけど…実は、あの二人ね」

 

自身の力量不足で、フィリップたちの邪魔をしてしまったと感じていた翔太は額を抑えながら後悔していた。そんな翔太に三玖が声を掛けて、

 

「それにしても…いつもあんな感じなの、あいつ?」

「そうだよ…人には辛い思いをしてほしくないのに、自分のことはおかまいなし…それが佐桐翔太だよ」

 

ハードボイルダーで移動しながら、そんな会話を交わす二乃とフィリップ。二乃も、翔太の発言の真意をフィリップから聞かされ、呆れてしまっていたが、相棒としてフォローすることができないフィリップは苦笑いして答えていた。

 

「…本当にハーフボイルドね」

「そうだね…でも、だからこそ、翔太はダブルとして戦っていられるんだよ。誰よりも、この街を…風都の名前を継いでいる街を守りたくて、戦っているんだよ」

「…そう、なんだ」

 

フィリップの言葉にどこか納得した二乃は、あそこまでボロボロになってまで戦う翔太の姿が脳裏に浮かんだ。

 

「…でも、二乃ちゃんが素直に行かせてくれるとはちょっと意外だったかな」

「ちょ…どういう意味よ、フィリップ君!私だって、その辺りは割り切ってるわよ!?」

 

考え事をしていた二乃は、フィリップからその時のことを持ち出され、思わず抗議の声を上げる。それは、フィリップが翔太の元へと行こうとした時だった。

 

『ゴメン、二乃ちゃん…デートはここで終わりにしよう』

『『…えっ…』』

『僕は行かなくちゃいけない…だから、デートはここまでに……』

 

その先をはっきりと言うことができず、フィリップの声が途切れる。その言葉に、恐れていたことが現実になり、三玖の表情も絶望の色が出てしまっていた。だが、

 

『…何してるのよ、フィリップ君…早く行くわよ』

『『…えっ…?』』

 

まさかの二乃の一言に、今度はフィリップと三玖から驚きの声が出た。

 

『佐桐を助けに行くんでしょ?ほら、早くあのバイクかでっかい車を呼びなさいよ!急ぐんでしょ!?』

『あ、ああ…!』

『それから…私たちも行くから!』

『えっ…!?』(えっ…私も!?)

 

立て続けの二乃の言葉に、フィリップは従いながら驚き、三玖に至ってはいつの間にか巻き込まれた形になり、声も出せないぐらいに驚くのだった。

 

「…だって…私だって、フィリップ君の体を運んだりとか、何か助けになれるかと思って…あの時は私も必死だったのよ!」

 

当時のことを思い出した二乃は、顔を真っ赤にしてフィリップの背中を軽く叩く。そんな可愛い抗議の仕方にフィリップからも笑みが零れる。

 

「ハハッ、分かってるよ。さて、それならデートの続きと行こうか?」

「そうね…でも、本当にこんなデートで良かったの?私としては、フィリップ君として、出掛けられるだけでも嬉しいけど…」

「構わないよ。それに理由が二乃ちゃんらしいとも思ったしね。まさか…」

 

「…お前たちの誕生日プレゼントを探してた!?」

「うん」

 

三玖から告げられたまさかの事実に、驚いた翔太の声がリボルギャリーの車内で反響する。その絶叫に三玖は耳を塞ぎながら頷く。

 

「5月5日が私たちの誕生日なの。でも、今はそんなに余裕がないから…でも、二乃はできるだけ良い物をリーズナブルに買えないかって…それでフィリップが地球の本棚の知識で色々と調べて「分かった、もういい。それ以上は聞きたくない」…そう?」

 

相棒がまたしても…いや、既に自身の能力をとんでもないことに使っていたことに、翔太は考えることを止めた…それ以上考えると、ストレスにしかならないと感じての現実逃避だった。

 

「…はぁぁぁ…心配した俺が馬鹿みてぇじゃねーか」

「…お疲れ様…?」

 

頭を抱えてしまった翔太に、三玖も首を傾げならそう声を掛ける。

 

「もう大人しく帰るか…明日から学校だしな」

(…ショータも大変そう…)

「三玖も災難……いや、お前の場合は二乃を付けていたから、ある意味自業自得か。そろそろ人気のない所につくから、今日は早めに帰れよ?」

「…なんか子供扱いしてない?」

 

頬を膨らませながら抗議の声を上げる三玖を無視し、リボルギャリーを停止させようとする翔太。そんな中、翔太はあることを思い出し、

 

「…そういや…三玖の頼み事ってなんだったんだ?あの時、いきなりのことだったから、聞き忘れるところだったぜ」

「……ああ。そうだった」

(こいつも忘れてやがったな)

 

自身の言葉に、ポンと手を叩きながら話を思い出した三玖の姿に、翔太は思わずジト目になってしまった。

 

「あのね…実は五月だけバイトがまだ決まってないの…だから、もし五月が困っているようなら、助けてあげてほしいの」

「あ、ああ…それはもちろんだが…もしかして、それがお願いだったのか?」

「ううん、それはおまけ」

「(…お前…そこは姉として心配だから、とか言うとこだぞ…!)…それじゃ、本題は何なんだ?」

「翔太って料理できるんだよね?…だから、私に料理を教えてほしい」

「…?………はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

二度目となる翔太の絶叫がリボルギャリーに響き渡り、更なる大音量と反響に三玖は思わずヘッドフォンをしてしまうのだった。

 

ちなみに、フィリップと二乃は夕方になるまで、フィリップのガイドを元に街中を駆け回り、買い物デートを楽しんだのだった。

 

 

次回 仮面ライダーダブル/Kの花嫁 

 

『Aは止まれない/ようこそ3年1組へ』

これで決まりだ!

 

 




●オリジナルドーパント 
ストレングス・ドーパント『Strength』
 以前戦ったハーミット・ドーパントと同種のアルカナシリーズと呼ばれるブロンズメモリの一種。 
 変身者の性別に関係なく、女体のドーパント体となり、右肩に大理石で象られたライオン像、左腕は黄土色の茨を纏った姿が特徴。
 内包する記憶の通り、大アルカナの11番「力(剛毅)」を意味し、戦闘の継続・被ダメージに比例して力と防御力が向上していく性質を持つ。また、右肩のライオン像からは万物を砕く衝撃波、左腕の茨は自由自在に拘束できるなど、バランスの取れた
攻撃手段を持つ。
 暴走状態で警察隊を蹂躙する中、駆け付けたジョーカーと戦闘に入り、増し続ける力によりジョーカーを圧倒するも、リボルギャリーに妨害され、ダブルへの変身を許してしまう。ダブルとの戦闘も、ルナダイナソーの幻覚と物質創造で動きを封じられたところをメモリブレイクされ倒される。 
 ……しかし、このドーパントが現れたこと自体が、ある種の実験であることを彼らは知らない。

 
 さて、『Sは見た!』…実はこれ、翔太や三玖だけのことを指しているわけではなく、ドーパントの倒され方も暗示しているものでした。前者が現実に対し、後者は幻覚を見るという対比でもございました。

 そして、さり気なく登場したあの御方…そういうわけで、新章はそういうことでございます!またしても長くなりそうですが、お付き合いを頂ければ有難いです。

それでは、来年でお会いしましょう!

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