仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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アブソーブ・ドーパント戦、決着です!
そして、迎える衝撃の結末…

それではどうぞ!


第70話 「Aは止まれない/悪夢が止まる時」

『キュルルルクルクルクル!!』

「「『っ!?』」」

 

その奇声が可愛く聞こえる者は、この光景を見ていない愚か者だけだろう。

 

奇声とは異なる爆音がアブソーブ・ドーパントの全身から発せられ、まるでデパートのバーゲンセールの如く多彩な攻撃の雨が仮面ライダー二人へと降り注がれていた。

 

「くっ…!?これじゃ、近寄ることすらできねーぞ!?」

「おい、フィリップ!お前はあのドーパントの能力を閲覧したんだろう!?奴の弱点は、他にないのか!」

 

回避に専念するため、メモリを変えたダブル サイクロンニンジャが魔焔と弾丸をサイクロンの風を宿したニンジャブレイドで弾き飛ばしていくが、防御に徹することしかできない状況に翔太からそんな言葉が出ていた。

 

その隣で電撃や石像といった重攻撃は躱し、躱し切れない攻撃は腕の装甲を犠牲にしながら受けるアクセルがフィリップに戦況の打開法を尋ねるも、先程の作戦が破られたフィリップはどうにか対抗策がないかと頭を働かせていた。

 

『…アブソーブメモリの本質は吸収だ。一度受けた攻撃でもダメージは与えられるが、その分、奴の能力がアップしてしまう。だから、最も貫通力と速度に優れたスパークトリガーのマキシマムでメモリブレイクを狙ったんだ…!

この攻撃を防ぐためにマキシマムを放ったとしてもそれで奴にまで当たってしまえば、更に強化を許すことになってしまう…!?奴の吸収能力をなんとかできれば…!』

「…使えん奴め…」

 

ダブルの右複眼が光り、焦燥に駆られたフィリップの言葉が聞こえる。それに対し、アクセルから舌打ちと共に悪態が飛び出すも、それをとやかく言う余裕などダブルにもなく、じりじりと追い詰められていくばかりだった。

 

「はぁ…!はぁ…!っ……流石にこれ以上捌き続けるのはキツイぜ…!」

『(どうすれば…奴に吸収を許さない程の攻撃をしようにも、もしダイナソーの一撃すらも耐えられてしまったら…!?)』

「あー、もう!?あいつは俺たちの攻撃を吸収できるのに、あいつは攻撃をずっと放ち続けてられるとか、それすら反則技だろうが!?」

『…えっ…………っ?!!?』

 

相棒の妬け交じりの叫び…その言葉がフィリップの頭脳に何かを引っ掛からせ、その思考が一気に加速した。

 

『(アブソーブメモリの記憶は吸収…奴がずっと攻撃を放ち続けられていられるのは、吸収した能力等をガイアメモリで増幅させるからこそ…なら、どうして…昨日の戦闘で全身から煙を上げていたんだ…?)』

 

フィリップの脳裏に蘇ったのは、昨日の戦闘…街の一区画を消し飛ばした大爆発をエネルギーと共に発した後、全身から煙を上げたと思えば、いきなり撤退したアブソーブ・ドーパントの姿だった。

 

あの時は過剰なエネルギーを集約し、解き放ったことによる反動だとばかり思っていたが、もしそれが違うのだとしたら…

 

『(奴の外見からそうかもしれないと思っていたが…そうだ。奴のメモリの記憶はあくまでも『吸収』…それなら…!)…照井竜!』

「っ…何だ!」

『君に聞きたいことがある!質問をするなというのはなしだ…君のアクセルの能力なんだが………………………という認識で間違っていないかい!?』

「そうだ!それが…っ!…どうかしたのか!?」

 

フィリップの真面目な問い掛けに、飛来してきた悪魔の石像三つを地面へと蹴り落としながら、答えるアクセル。その答えを聞き、再度計算を始めたフィリップ…そして、全ての歯車が組み合わさった瞬間、その表情に笑みが生まれた。

 

「どうやら、その様子だと何か思い付いたようだな、相棒!」

『ああ…僕は奴のことを警戒し過ぎていたようだ。君たちの行動自体がある意味で正しい攻略方法だったんだ…!』

「あん…?俺らが…?どういうことだ…?」

『説明は後だ!照井竜…いや、アクセル!君にやってもらいたいことがある!』

「御託はいいと言った筈だ!何か思い付いたのなら、さっさと話せ…!」

『簡単なことさ…いいかい………………ということだ』

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

フィリップから告げられた作戦に…攻撃の嵐をなんとか凌ぎ続ける翔太と照井が思わず顔を見合わる。仮面越しに正気かというアクセルの視線がダブルへと突き刺さるが、

 

「…よし、その賭けに乗ったぜ、相棒!」

「お前……本気か…?!」

「ああ。俺はフィリップを信じる…それにお前もな」

「俺も、だと…?」

「お前がやろうとしたことも戦う理由だって、俺は未だに認めたつもりはねえけど…少なくとも、さっき助けてくれたお前のその姿だけは…仮面ライダーとして信じられると思ったんだよ!だから…半分手を貸せよ、アクセル!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『どうする?かなり危険な作戦だが…悪魔からの提案に乗るかい、照井竜?』

「…ふっ…愚問だな、フィリップ…そして、佐桐…

 

俺に質問をするな」

 

その言葉でアクセルも覚悟を決めたのだと悟ったダブルが降り注ぐ攻撃の合間を掻い潜る様に飛び出した。

 

『Ninja! Maximum Drive!』

「『っ…ニンジャゲルネード!!!』」

 

ニンジャブレイドにニンジャメモリを装填したことで、突風を思わせる効果音が鳴り響き、ダブルの体を緑の竜巻が包み込んだ。その竜巻と一体化したダブルが体を回転させ、ライダーたちに降り注がれていた攻撃全てを呑み込んでいく。

 

そして、技名と共にダブルが竜巻を解き放ち、全ての攻撃を呑み込んだアブソーブへと襲い掛かった。突如の反撃に、アブソーブは…慌てることもなく攻撃の放出を止め、その竜巻を吸収しようと身構えた。

 

その歪な体に竜巻が直撃するも、包まれていた攻撃がエネルギーを拡散させることなく、竜巻ごと徐々にアブソーブの体へと吸収されていく。

 

『キュアキュアキュアキュアキュア!!!』

 

ダブルの反撃すらも、自身の糧にできたことを喜ぶかのような狂喜の笑い声がアブソーブから上がり、素顔がないその顔にも笑みが浮かんでいるように見えた…

 

「そこだ!!」

『キュアアァァ!?!?』

 

その様子を邪魔するかのように、割り込んだ声と共にアブソーブの体が背後から羽交い絞めにされた。突然の出来事にアブソーブから驚きのような叫び声が上がり、その背後にいたのは…ダブルのマキシマムドライブを隠れ蓑に忍びよっていたアクセルだった。

 

背後をとるため、アクセルドライバーの出力を全開にしたため、その全身からはアクセルメモリから発されたエネルギーが駆け巡っており、炎を纏う姿と化していた。

 

前方の大技を吸収することに気を取られていたアブソーブは一瞬驚くも、もう既に竜巻は吸収し切っており、ゼロ距離にまで接近していたアクセルは、邪魔どころか、吸収するに当たってこの上ないカモにしか見えていなかった。

 

能力を発動し、アクセルごと吸収してしまおうとアブソーブが反応しようとするが…

 

「そんなに腹一杯になりたいというのなら、俺が存分に満たしてやろう…!」

『……!?』

 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

 

不敵な笑みと共にアクセルの放った言葉にアブソーブが思わず首を傾げてしまった。それが命取りとなった…アクセルドライバーの右グリップが握ると共に轟音が鳴り響き、アクセルの体を纏っていた炎が更に燃え上がったのだ。

 

『キュルルルルルル…!』

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

『グォ…?!キュルルルルルル…!』

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

『グオオオォォォォォ…?!?!』

 

遅れてアブソーブが吸収しようとするが、アクセルがドライバーの右グリップを握りしめる事に全身に炎が行き渡り、どんどんと活性化されていく…いつまでたっても、アクセルを吸収できないことに、アブソーブから初めて恐怖を感じさせる声が上がった。

 

そして、アクセルの炎を援護するかのように、この二人も動き出した。

 

『Heat!』

『Heat! Ninja!』

 

「こっちからも前菜のお見舞いだ!ちょっと腹の足しになるだろう!」

『ダブル特製ランチだ。火加減は……もちろんバーンアウトだけどね』

 

『Heat! Maximum Drive!』

「『ニンジャフレイムアート!!!』」

 

ヒートニンジャにメモリチェンジしたダブル…今度はヒートメモリをニンジャブレイドに装填し、右側のソウルサイド全身から大量の炎が噴出され、ニンジャブレイドに集約された、大規模な火遁の術を思わせる火炎放射が解き放たれた。

 

『キュルル…!?ゴオオオオアアアァァ!?オオオオォォォ?!』

「『…ぐぅぅ…!?』」「おおおおおおォォォォォ!!」

 

前方からの火遁、後方からの発炎…そのどちらも呑み込もうと絶叫と共に能力を全開放するアブソーブ。負けじとアクセルも全身の炎を更に活性化させる。

 

一方、先程の戦闘のダメージが残るダブルから苦痛の声が漏れていた。ダメージだけではない…元々、マキシマムドライブはガイアメモリの能力を瞬間的に限界まで引き出す技である…一本での発動でさえも制御は簡単な話ではない。

 

それをなんとか継続し、火遁を放ち続けるダブル。そこにはアブソーブ・ドーパントを倒すという決意もあったが…何よりも、自身が吸収されるかもしれないという危険を冒してまで、この作戦に乗ってくれたアクセルに負けられないと意地も存在した。

 

「『っ…はあああああああぁァァァァァァァァァァ!!!』」

 

その精神に呼応したかのように、火遁が更なる勢いを増し、アブソーブを前身を覆い尽くした。だが、アブソーブは未だ吸収をし続けており、その体表には一切のダメージが入っていない…このままではこれまでの二の舞に終わってしまう…そう思われた時だった。

 

『キュルル…!?ゴル、リュア…!?ガァガァガァ……?!Ь※Δ※±§И¶¶ΓΘΛΦΧε〈¶Δ……?!!?!?!!?!?!?!』

 

『…来た!?』

 

アブソーブ・ドーパントの全身が痙攣し出し、その全身から以前のように煙が吹き始めたのだ。その様子に、フィリップからも歓喜の声が上がる。

 

フィリップが閃いた作戦…それはアブソーブの特性を逆手に取った戦法だった。

 

前回の戦闘時、満身創痍となっていたダブルとアクセルを吸収できるチャンスであったのに、撤退したアブソーブの姿に違和感を覚えたフィリップ。

 

そこに翔太の言葉が閃きを与えた…もしかすれば、しなかったのではなく、できなかったのではないかと…ブロックホームのように全てを呑み込もうとしているのは見かけだけで、吸収できる容量には限界があると。

 

しかし、ダブル単体のマキシマムドライブではその容量を超える物量攻撃はなく、ダイナソーメモリでの一撃は、威力はあっても吸収されてしまい意味を為さない…だからこそ、アクセルの能力が必要だった。

 

「ううおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

今もなお、咆哮と共にアクセルの全身からエネルギーと共に炎が噴き出し続ける…アクセルメモリの能力を限界まで引き出すドライバーから身体へとほぼ無尽蔵に供給されているため、いくらアブソーブが吸収しようと、アクセルの炎が消え去らない。

 

ダブルと比べ、高い出力を誇るアクセルは、アクセルドライバーのスロットルを回転させることでエネルギーを追加することができる。

…その能力は、吸収し続けることに特化したアブソーブにとって、尽きることのない獲物であると同時に、タネを知られてしまえば永遠に吸収できない天敵でもあったのだ。

 

そこに、火力を集中して浴びせることができるヒートニンジャのマキシマムドライブ『ニンジャフレイムアート』が同時に浴びせられたのだ。

 

限界を知らせる危険信号…容量オーバーの証である煙がアブソーブ・ドーパントの全身から絶え間なく噴き出していた。そして、マキシマムドライブの発動を止め、決定打を放つべくダブルが動いた。

 

『Joker!』

『Heat! Joker!』

 

「照井!うまく避けろよぉ!!」

「っ…!?」

 

『Heat! Maximum Drive!』

「『…!ジョーカーバックドラフト!!!』」

 

ヒートジョーカーにチェンジしたダブルが素早くマキシマムスロットにヒートメモリを装填し、駆けながら拳を振りかぶる。

その姿を見たアクセルが咄嗟にドーパントから離れた直後、ソウルサイドから発された炎を右拳に収束させたダブルの一撃がアブソーブのボディへと放たれた!

 

拳が減り込んだ瞬間、収束された炎が解き放たれ、アブソーブの体を貫通…その勢いを、先程のようには吸収できず、アブソーブの体が大きく吹き飛ばされ、明確なダメージが入った。

 

『ルュキキ…!?ゴァァ…?!※±§И¶?!!?6396267161378……!?!?!グオオオオオォォォォォォォォォォォォ?!!?!?!』

 

痛みを掻き消そうとするように全身を地面に擦り付けれるアブソーブ…絶叫と共に全身から煙が吐き続けるが、それらが消える気配は全くない。

 

『狙い通りだ…!これで、奴はもう攻撃を吸収することはできない!』

「なら、後はいつも通りだな!」

 

『Cyclone!』『Dinosaur!』

『Cyclone! Dinosaur!』

 

今こそ好機…暴走の権家に止めを刺すべく、サイクロンダイナソーへと変わるダブル。その横にアクセルも並び立ち、ドライバーへと手を掛け身構える。

 

「さてと…お前も一緒にやるよな、照井?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

『ACCEL! Maximum Drive!』

 

「ハハハ…そうこうなくちゃな」

 

『Dinosaur! Maximum Drive!』

 

『俺に質問をするな』…まさしくそれを言動で表すかのように、無言でマキシマムドライブを発動させるアクセル…その姿に苦笑いしながら、ダブルもダイナソーメモリをマキシマムスロットに装填する。

 

暴風がダブルの全身を覆い尽くすかのように纏まりつき、アクセルの全身からは三度轟音と共に爆炎が噴き出す…二人のライダーから、これまでやられた分をやり返すかの如くのエネルギーが溢れ出す。

 

その動きを認識できていたかどうかは分からないが、アブソーブはフラフラになりながらも立ち上がり、先日の様に逃げようとしていたが、そうは問屋が降ろさなかった。

 

『逃がさない!翔太!』

「ああ、決めるぜ、フィリップ!」

 

暴風を解放するかのように右足で地面をスタンプしたダブルが音と共に消え、風と化した勢いで、凶爪を模した左手ですれ違い様に切り裂いた。

 

「『うううううおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』」

『…ゴフゥ…!?』

 

二人の重なった咆哮と共に高速の乱舞がアブソーブの体を切り裂いていく…そして、その勢いで宙へと浮いたドーパントの体に暴風が纏わりついた左足を叩き込む!その威力はアブソーブを吹き飛ばすには十分で…

 

その方向にはエネルギーを貯め続けていたアクセルが待ち構え、ドーパントに追い縋る様に再び風と化したダブルが追い付く。ドーパントの体を交点とし、二人のライダーの必殺技が解き放たれた!

 

「『ダイナソーディバイド!!!』」

「だあああありゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ダブル二人の技名とアクセルの気合が重なった瞬間、高速移動による速さが加わった暴風の爪が、爆炎をタイヤ状のエネルギーとして纏った後ろ回し蹴りが、アブソーブの前後に叩き込まれた!

 

ダブルの一撃がすれ違い様による一瞬の斬撃だったのに対し、アクセルグランツァーは減り込ませるように重く長い一撃がアブソーブの体に叩き込まれ、全ての衝撃を前方へと押し返すかの如く、その怪体を吹き飛ばした。

 

容量が限界を迎えていたところにマキシマムドライブ3連発…ヒート、ジョーカー、アクセル、サイクロン、ダイナソー…そして、これまで吸収してきたガイアメモリや物体のエネルギーがアブソーブの体を駆け巡る。

咄嗟に手を伸ばすような様子をしたアブソーブ…それは、限界を迎えまでも記憶に則り何かを吸収しようとする本能か、苦しみから逃れたくて助けを求める手か…だが、余りにも暴走しすぎたその凶行を繰り出してきた手を掴んでくれる者はおらず、

 

「『…さぁ…お前の罪を数えろ…』」

「絶望が…お前のゴールだ!」

 

『…キュルルルキュルキュルルルキュ?!!?!?!』

 

高速移動の余波を爪で殺し切ることで停止したダブルが振り返り様に右手をアブソーブへと向け、対照的にアブソーブへと背中を向けたアクセルそれぞれの決め台詞が放たれて、すぐに断末魔と共にアブソーブの体が大爆発を起こした。

 

エネルギーが収束していたこともあり、普段とは比べ物にならない爆発が一帯を襲うが、爆煙が晴れると共に、そこには激闘を終えたライダー二人の姿があった。

 

「ふぅ……マジで今回はヤバかったぜ。サンキューな、照井」

「貴様は本当に甘いな…俺なんぞに何度も礼を言いおって…」

「そう言っておきながら、本当はちょっとまんざらでもないと思ってるんじゃないのか?」

「…よく回る口だな。少しはフィリップの冷静さを見習ったどうだ…ハーフボイルド探偵?」

「なぁ…なんでそのあだ名を知ってんだよ、お前!?」

 

翔太が揶揄い気味に照井へと言葉を向けるが、反撃とばかりに少し浮いた声で放った照井の言葉に、翔太は動揺した。尤も言われたくない二つ名を知っている理由を問い詰めようとした時だった。

 

カラン!カラン!

 

『…うん?あれは……メタルシャフトだ!?』

「俺のエンジンブレードもだ…こうして返ってきたとはいえ、さっきまでこれらに苦しめられていたと思うと複雑だな」

 

二つの金属音が鳴り響き、ライダーたちの前方へと何かが転がっていた。それは、アブソーブにより吸収されたメタルシャフトとエンジンブレードだった。多少損傷しているようだったが、修理すれば使える状態ではあった。

 

武器のメンテナンスを主に担当するフィリップとしては少し安堵していたが、先程までアブソーブがこれらの武器を使って攻撃してきたのだと思い出した照井は、仮面の下で苦々しい表情をしていた。

その感想は翔太も感じてそうだと思っていたフィリップだったが、先程から静かな相棒の様子が気になり、声を掛けようとしたが…

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『翔太…?どうし……っ!?』

 

声を掛けようとしたフィリップの言葉が止まった…相棒が見ている視線を通して、それをフィリップも認識してしまったからだ。ダブルの二人が驚くのも致し方なかった。

メモリブレイクによって粉々にされた銀色のメモリの近くにいた…アブソーブ・ドーパントに変身していた人物…それはダブルがよく知る人物だったからだ。

 

『あいつは…!?』

「マーカス・小島…!こいつがアブソーブの正体だったのか?!」

 

メモリブレイクの余波でか、体を動かすことができないその人物…マーカス・小島の姿にダブルの二人は動揺してしまった。うめき声を上げてはいるが、意識は失ってしまっているようだった。

 

「マーカス…?知っているのか?」

「ああ…以前、ペルソナ・ドーパントっていう他人の記憶や能力を自在に真似する力を使って、五月を攫おうとした奴だ」

『それを契機に五つ子たちを狙ったんだ…奴はガイアメモリを蔓延らせている組織…オリジンのメンバーだ』

「っ…なんだと!?」

 

落ち着きを取り戻したダブルは照井の問いに手短に答える。あの時は何者かの介入を受けて取り逃がしてしまったのだが、まさかこうして再会することになるとは思ってもいなかったダブルが衝撃を受けるのはしょうがない話だった。

 

「照井…悪いが、こいつだけはお前に任せるわけにはいかねぇ。お前はこいつをどうにかしたんだろうが…俺たちにだって、こいつには聞きたいことが山ほどあるんだ。邪魔するっていうんなら、戦ってでも…!」

「…好きにしろ」

「『…えっ?』」

 

あっさりとそう答えた照井の言動にダブルの二人からそんな間抜けな声が漏れた。拍子抜けで肩透かしを食らうも、照井はその理由を話した。

 

「奴がガイアメモリの組織の手の者だというのなら、白いドーパントの正体も知っている可能性が高い…俺もそこまで癇癪を起こすほど馬鹿ではない」

「…そ、そうか(昨日はブチ切れまくってたじゃねーか…)」

『とても信じられないな…昨日の態度から一転…どうしたというんだい?』

「ただの気まぐれだ…それに…」

 

『貴方みたいな人を…誰も仮面ライダーなんて認めない…!少なくとも…私は絶対に認めない!?この前みたいに助けてくれた貴方みたいな人のことを…皆がそう呼ぶのよ!?』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『どうしたんだい…?』

「いや…お前たちの甘い風に気が削がれただけだ。ほら、さっさと連れて行け…俺の気が変わらぬ間にな」

「『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』」

 

一花の言葉が脳裏に蘇り、フィリップの問いかけを誤魔化す様に答えた照井は、さっさと小島を連れて行くようにとダブルの二人を促した。その態度が変わらぬ内に小島を拘束しようとした時だった。

 

「ぐぅぅ!?ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!?」

 

「『「っ…!?」』」

 

絶叫がその場に響き渡り、何事かとライダーたちが音の発生源…小島の方へと意識を移した。その視線の先には…異常な光景が広がっていた。

 

「がぁぁぁぁ!?あああぁぁ…いぐぅぅうぅぅぅぅううぅ!?!」

「な、何だよ、あれ…どういうことだよ…これは!?」

 

語彙が崩壊している翔太の言葉の意味…地獄のような苦しみを表わすかのようにうめき声を上げる小島の姿は…アクセルはおろか、ダブルですら見たことない状態となっていたからだ。

 

小島の全身に…それこそブラックホールを思わせるかのような空虚な空間がいくつも出現し、どんどんと大きくなっていたのだ。それに比例するかのように小島の体がどんどんと崩壊していたのだ。

 

「フィリップ!?これは一体…!?」

『強力なメモリを過剰使用したツケが回ったんだ…!ペルソナメモリもアブソーブメモリも直差しで使っていた反動だ…!』

 

「ああああぁぁ…!?たす……があああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああぁぁぁぁ!?!?!?!」

 

なんとかできないかとダブルが迷っている内に、空虚は一気に小島の体を包み込み、その体を完全に消滅させてしまった。助けを求める声に、ダブルが伸ばした手は届かず…塵となった小島の体は風と共に消え去ってしまった。

 

「『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』」

「………(奴にとっては救いだったのかもしれんな。組織に命を狙われ続ける恐怖からは解放されたわけだからな」

 

突然起きた出来事に…ダブルの二人は完全に言葉を失ってしまっていた。アクセルも、いつもであれば、冷徹な言葉を掛けたであろうが…ダブルが戦ってきた理由を知った今となっては、その言葉を内心に留めておいた。

 

誰もが喜ぶことができない空気がその場に漂い、ライダー二人は虚しい思いに襲われていた。そして、その結末を見届けていた者がもう一人…

 

「アブソーブまでもがやられましたか…まぁ、マーカスの口封じができたと前向きに捉えましょうか。それに…必要なデータは取れましたからね。ですが…」

 

光学迷彩が搭載されたドローンを撤退させながら、戦いの一部始終を見ていた者…ドクターは残念そうにしながらも、笑みを浮かべていた。だが、

 

「しかし、そろそろ目障りとなってきましたね…仮面ライダー…次のメモリのテストまで邪魔されるのは……面白くありませんね。これは、私の出番ですかね」

 

その言葉とは裏腹にどこか嬉しそうな表情を浮かべるドクター…その手には自身が使う銀色の『W』の文字が刻まれたメモリと…

 

『S』の文字が刻まれた金色のメモリが握られていた。

 

 

 




オリジナルドーパント解説 
アブソーブ・ドーパント 『Absorb』
 シルバーメモリに属するガイアメモリを使うことで変身したドーパント。内包する記憶は『吸収』、変身者はペルソナ・ドーパントでもあったマーカス・小島(意識はなく、ドクターが無理矢理変身させた。ちなみに、ペルソナメモリ同様に過剰適合者)
 内包する記憶の通り、あらゆる物体を吸収・受けたダメージを自身の身体に特性として反映させる能力。長期戦になればなるほど強く、(後述も併せて参照)痛みや感情、知性がなくなっており、どんなに強力な一撃であってもダメージを与えることができないといった厄介な特性を持っている。
 素体は細い人間態に、ブラックホールを思せるようないくつかの空虚がくっつている姿だが、吸収した能力が歪な形で体に表れるため、仮面ライダーたちとの二度目との戦闘時には、あらゆる災厄や武器を全身で表したかのような、凶鬼の姿と化していた。(言うならば、乱暴に色々なものをくっつけたキメラ人間とも言えるか)
 劇中では、ダブル・アクセルのメモリ・武器の能力を奪い、アルカナシリーズの4体のドーパントの能力を得たことで、手の付けられない状態まで強くなった。フィリップの策『ガイアメモリ本体を直接狙う』で、ダブルがメモリブレイクを狙うも、能力でその一撃を跳ね返して追い詰める。だが、アクセルの介入と、先日の戦闘から『吸収できる容量には限界がある』と推測したフィリップの奇策により、容量を大きく上回るライダーたちの攻撃を受け、吸収能力がパンク…そこにダブル ヒートジョーカーの一撃を受け、キャパシティダウンしたところを、サイクロンダイナソーの『ダイナソーディバイド』とアクセルの『アクセルグランツァー』を受け、メモリブレイクされた。
 メモリの特性上、変身者の理性までも吸収するため、行動全てが本能やメモリの記憶に則ったものである。変身者のマーカス・小島はかなり珍しい数多くのガイアメモリの過剰適合者であり、ダイナソーメモリの攻撃すらも耐える(だろうと予測ではあったが…)までにアブソーブの力を限界以上にまで引き出せていたのはそのため(第37話でドクターが『彼ほどメモリに愛された人間はそういない』と評したのはそれが理由)
 しかし、ブロンズメモリであるペルソナに引き続き、シルバーメモリであるアブソーブを立て続けに使用したこと、そして、様々なメモリの能力を吸収してしまったために、メモリブレイクによる毒素の中和には成功したが、過剰使用の反動で小島の体は消滅してしまった。
 元ネタは仮面ライダーブレイドに登場した『アブソーブQueen』とブラックホール。あちらが各ライダーたちの強化アイテムの一部だったのに対し、こちらではライダーの能力を奪って強くなるというのは何という皮肉か…

オリジナル技解説
ニンジャフレイムアート
 ヒートニンジャのマキシマムドライブの一種。ヒートメモリをニンジャブレイドに装填することで発動する。
 ソウルサイドから噴出した炎をニンジャブレイドで自由自在に操り、様々な形あるものに変化させ攻撃する。基本的には鳥や魚といった生き物を模したものだが、今回は火力を集中させるために炎の塊として放った。
 ちなみにどうして技名が『フレイムアート』かというと、火遁の術を英訳にしたものを翔太が技名に設定したため。(火遁=『ヒート』≒『フレイム』、術=アート)

珍しく後味の悪い結末となりました…
ここまで強力なドーパントの変身者をどうするかと考えた時に、こうするしかないかなと思っていたところもあり、ペルソナ・ドーパントの変身者が再度登場したわけです…つまり、あの時からいつかこうするつもりだったわけです(作者の残酷さが出たと思って頂ければと思います)

さてと…いかがでしたでしょうか、アブソーブ・ドーパント戦。
アクセルの初登場の章ということで、強敵を出そうと思っていたオリジナル敵でしたが、結構悩んだ倒し方でもありました。
できるだけ、アクセルの性能を活かし、かつ、ダブルを空気にしない闘い方をどうするか…そして、思い付いたのがまさかの物量作戦でした(苦笑)
まぁ、ダイナソーメモリでパワーインフレは起こっていましたので、それを封じてという縛りまでもありましたので、更に難易度上がるという現象(笑)

そして、少しだけ柔らかくなった照井さん…まぁ、もう少しダブル…特にフィリップとぎくしゃくするのですが、それは次章のお話ということで。そして、さり気なく一花だけが(台詞の流用ではありますが…)出ているというヒロインポジション。
次回に五月と二乃も出ますので、もうしばしお待ち頂ければと思います。
そんなわけで、次回はエピローグになります。できたら、休まずに更新できればと考えておりますので…とりあえず執筆頑張ります!(ほとんど真っ白ですが…!?)

それでは、次回でお会いしましょう!
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