仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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え~…大変お待たせしました!?
もう時間がないというか、筆が進められなかったというか…本当すみません…忙しすぎて、ちょっと放置気味でした。

さてと…!そんなわけで彼が一同の元へとやってまいります!

それではどうぞ!


第74話 「テレビ局に潜むE/家庭教師交代!?」

「上杉君…申し訳ないが、君には娘たちの家庭教師を降りてもらう」

「「…はっ…?」」

「「「「「!?」」」」」

 

五つ子たちのアパートに二つの驚きの声と、五つの息を呑む音が静かに響き合った。その原因となった中野マルオを前に、風太郎と翔太、そして、五つ子たちは困惑するしかできずにいた。

 

どうしてこんなことになったのか…時を少しばかり遡ろう。

 

「さてと…こうして、全員集まったわけが…お前ら揃って勉強会するなんていつぶりだ?」

「…結構久しぶりだね。学校で何人かでってことは多かったけど、ここでみんな集まって勉強するのは…本当に久しぶり」

「最近はみんなバイトだったものね…一花は一花で、仕事でいないこと多かったし」

「アハハ…面目ない」

 

一花から護衛の依頼を受けた翌日の放課後…

今日は五つ子全員のスケジュールが空いており、風太郎もバイトがなかったため、翔太と共に五つ子のアパートで勉強会に参加しに来ていた。

 

ひさびさに全員集結したことにそんなことを疑問に思った翔太。その言葉に、三玖と二乃も近況を述べ、一番家を空けていたであろう一花が苦笑いしていた。

 

「昨日も試写会のお仕事だったんでしょう?やっぱり一花は凄いな~…」

「私たちも見習わないといけませんね…!」

「見習うのは結構だが、その前に目の前の課題を片付けるために口と一緒にペンを動かしてくれ」

 

四葉と五月が感心の声を上げるも、今は課題のプリントを片してくれと風太郎から注意が飛ぶ。

 

「月末の全国模試はもうすぐだぞ?油断してたら、また痛い目を見るぞ」

「分かってるわよ…よし、これで一通り埋め終わったわ。佐桐、答え合わせよろしく」

「へいへい」

「……私も終わりました。佐桐君、お願いします」

「お姉ちゃんも終わったー!フータロー君、答え合わせお願い!」

「私も終わった…フータローお願い」

「終ーわりましたー!!上杉さん、わたしのもお願いします!」

「分かった、分かった!順番に丸付けしていくから、落ち着け、お前ら!?」

 

二乃と五月の回答を翔太が、一花・三玖・四葉から一斉にプリントを押し付けられた風太郎が悲鳴を上げるも、それぞれ丸付けを行っていく。待っている間、それぞれの出来栄えに関して話し合う五つ子。

 

「模擬試験、結構難しかったねー」

「そうですね…しかし、それほど不安でもないと言いますか…」

「おっ…五月ちゃん、意外に余裕だね?」

「でも、五月の言うこと、ちょっと分かる…私たち、あの学年末試験を乗り越えたんだもん」

「それもそうね…一度壁を越えられんだから、余裕を感じるのは当然かもね」

「だよね!だよね!こうなると、いよいよ卒業も見えてきましたね!上杉さん、佐桐さん!」

 

(余裕か…これが半年前のことだったら、舐めてるとか、楽観視しすぎてると思うところだが…こいつらがどれだけ頑張ってきたか、俺たちは見てきたからな)

(こいつらの言ってることも間違いじゃないんだよな…試験の難易度なんでそうそう変わるものでもないし…出会った時には全く見えなかったゴールが…見えてきたってことなのか?)

 

急に四葉からそんな話を振られ、翔太と風太郎はそんなことをそれぞれ思っていた。

 

出会って半年…色々なことがあったが、それぞれの関係性も立場も大きく変わってきた。あの時から、こうなるとは思っていなかった二人は笑みを零していた。

 

「それじゃ、答え合わせをしていくか」

「そうだな」

 

手ごたえがあるという五つ子たちの言葉を信じ、家庭教師たちは採点を始めた。

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

「…おい、これはどういうことだ…」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「嘘だろう…嘘だと言ってくれよ…」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

絶望感漂う風太郎がなんとか言葉を捻り出すも、翔太は天を見上げることしかできず、五つ子たちも目を逸らすことしかできずにいた。そんな6人に対し、風太郎は机に手を突き、叫ぶ…

 

「全員、ほとんど赤点じゃねーか?!」

 

そう…採点が終了した結果…五つ子全員が赤点前後の点数だったのだ。期待していただけに、家庭教師陣の受けた精神的なダメージも結構なものだったわけで…

 

「ふざけんな、お前ら……あれか?学年が上がると、脳がリセットされる仕組みなのか?」

「誰が新学期になったら、ニューゲームにしろっつったよ…この前までなんとかボスをギリギリ倒せるぐらいだったのに、続編になったらレベルもスキルもリセットされるゲームと同じなのか、お前らは…!」

「おおー!その例え、今の私たち通りですね!」

 

スパン!

 

「四葉…俺も上杉も冗談言ってる程に余裕ないんだわ…次言ったら、二発叩くからな?」

「スリッパで一発叩いてから言わないで下さいよ!?」

 

問答無用とツッコミスリッパを繰り出した翔太の顔から感情が少し消えていた。叩かれた頭を抑えながら抗議する四葉だったが、他の4人はテストの出来がイマイチだったことに落胆してしまっていた。

 

「できたと思ったのに…」

「言い訳になるかもだけど…ここ最近仕事ばかりであまり自習できてないのよね」

 

三玖は申し訳なさと悔しさから顔を俯かせる横で、二乃がここ最近思う様に勉強できていなかったことを告げる。

 

「私もなんとか合間に勉強してたんだけど…やっぱり厳しいよね」

「でも…五月はそんなに点数下がってないね…」

「あー…塾のお手伝いが今週末からなので、時間はありましたので…なんかすみません」

 

一花は机にあごをくっつけながら言葉を漏らし、四葉はそれぞれの回答用紙を見ながらそんな感想を言葉にするも、居たたまれなくなった五月が思わず謝っていた。

 

「はぁ~…無事卒業だとか、言ってる傍からこれだ。俺の模試勉強もあるっていうのに…」

「「「「「……っ……」」」」」

「それじゃ、間違えた場所を確認していくか」

「「「「「…!…お願いします!」」」」」

「…おう」

 

(こいつら…分かりやすいな)

 

風太郎の言葉に身構える五つ子たちだったが、次の言葉に気合を入れて返事をし、笑みを浮かべる。その反応に風太郎も満更でもない様子の風太郎…そんな彼らを見て、翔太もクスリと笑っていた。

 

そして、風太郎を中心に間違った箇所の解説をしていこうとした時だった。

 

ピンポーン!

 

「…来客?…宅急便とかか?」

「何かを頼んでいた覚えはないんですが…ちょっと出てきますね」

「フータロー、ここなんだけど…」

「…あー…この問題は頻出度が高「えっ!?」…どうした、いつ……」

 

玄関のチャイムが鳴り、翔太が来客かと首を傾げる中、五月が玄関へと向かう。その間に、三玖が風太郎に質問し、答えようとした時に、五月の驚きの声がそれを遮った。何事かと風太郎が顔を上げると、その言葉が途切れ…

 

「失礼するよ」

「!?」「「「「お、お父さん!?」」」」

(げっ!?中野父…!?)

 

五月の後ろから姿を現した中野マルオの姿にそれぞれリアクションする一同…特に、翔太はフィリップと二乃の一件もあり、内心で物凄い嫌そうな悲鳴を上げていた。

 

「佐桐君…僕がここに来たことがそんなに気になるのかな?」

「そ、そんなことはありませんよ…アハハハ…(嘘だろう!?表情には出さない様にしてたのに!心を読んだわけじゃないよな!?)」

 

見透かされたかのようにマルオにズバリとそう言われた翔太は乾いた笑いを浮かべながら、内心で更なる悲鳴を上げていた…歴戦の戦士である彼にとっても、この場は今すぐにでも逃げ出したい気持ちに駆られるものだった。

 

「ど、どうしたのよ、いきなり…というか、この家…」

「…もうすぐ全国模試と聞いてね。君たちのために彼を紹介しに来たんだ……入りたまえ」

 

翔太がヤバいと感じ、二乃はマルオにここへと来た理由を尋ね、話題を逸らす。それ以上の追及を止めたマルオは来た理由を答え、誰かを呼んだ。すると、玄関から人が現れ…

 

「お邪魔します…申し訳ないね、突然押し掛ける形になっちゃって」

「た、武田!?なんでここに…!」

「…紹介って…どういうこと?」

「わ、私…何がなんだか…」

 

「簡単なことさ…上杉君…申し訳ないが、君には娘たちの家庭教師を降りてもらう。その代わりに、今日からこの武田君が君たちの新しい家庭教師だ」

「「…はっ…?」」

「「「「「!?」」」」」

 

マルオから告げられたことに、7人は驚くことしかできずにいた。こうして、話は冒頭の部分へと辿り着いたわけである。

 

「ど、どういうことでしょうか?どうして、その…そちらの武田さんが上杉君の代わりになるんですか…説明して下さい」

「その理由は…上杉君、君が一番分かっている筈だろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ど、どういうことよ…?」

 

五月がマルオへと家庭教師交代といういきなりの出来事に対する理由を尋ねると、マルオは風太郎へと視線を向けた。その言葉の意味を理解しているのか、風太郎は何も答えず、代わりに二乃が疑問の声を上げた。

 

「確かに…先の学年末試験での君の功績は大きい、成績不良で手を焼いていた娘たちだが、優秀な同級生たちに教わるということで一定の効果を生むと君は教えてくれた。至らない部分は助っ人を求め、その人選に関しても適切だったといえるだろう」

「だったら…フータローを変える必要なんてないんじゃ…」

「…そう…彼が未だに優秀ならば、家庭教師を変える必要もないだろうね…彼が優秀ならばね」

「「「「「…えっ?」」」」」

「残念だが…上杉君は、先の学年末試験でどの科目も点数を落としてしまったんだ…全科目満点だった彼が、全ての科目でそれを逃し、順位を落とすことになった」

「「「「「…!?」」」」」「なぁ…!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

寝耳に水の話とはこのことを言うのだろう…マルオが告げた事実に、五つ子だけでなく、翔太までもが驚き、6人の視線が風太郎へと集まる。風太郎はマルオが言ったことを否定することなく、黙って受け止めていた…その沈黙の姿が事実だと肯定しているようだった。

 

「そして…彼に代わり、新たに学年一位の座に就いたのが彼…武田君というわけだ。ならば、家庭教師に相応しいのは彼ということにならないかな?」

「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

マルオの言いたいことを理解できてしまった一同…何と言うべきか、言葉に迷っているも、そんなことなどお構いなしにと武田が口を開いた。

 

「ふっ…ふっふっふっ…ふっふっふっ!くくく……」

「た、武田…一体どうし「ヤッター!!勝った!勝ったぞー!!!」うおぉ!?」

「イェス!オ~~イェス!イェス!イェス!イェス!」

(…駄目だ、こっちのことなんか、全く目に入ってない)

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

いきなりハイテンションと共に勝利宣言の言葉を発していく武田の姿に、翔太は表情を引き攣るのを覚えていた。五つ子たちも突然の奇行に少し引いていた。しかし、そんな一同のことなど眼中にない武田の視線が風太郎に向けられたと思えば、

 

「上杉君!長きに渡る僕らのライバル関係も今日で終止符が打たれた!遂に、僕は君を超えた!この家庭教師も僕がやってあげよう!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「君と僕の因縁の始まりは二年前…僕が学年トップを目指して…」

 

「いや、お前誰だよ」

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

 

風太郎の放った一言に武田の饒舌だった口が黙らされた…武田だけでなく、今何と言ったとその場にいた者は思ってしまっていた。

 

「………えっ…ほら…ずっと二位で君に迫っていた武田祐輔…」

「……あー……それであんなに突っかかってきたのはそういうわけか。何言ってんだこいつはって思いながら、付きまとわれる理由がずっと分からなかったんだ」

「えっ…う、上杉…本当に武田のこと、知らない…というか、認識してなかったのか?この前のホームルームだって、発言してただろう?」

「正直面倒くさいとしか思ってなかったな…というか、今まで満点しか取ってなかったから、二位以下は気にしたことなかったわ」

「に、二位以下…?!気にして、なかった……!?」

 

ホームルームで風太郎と四葉が司会をしている時、声が小さいと武田が発言した時のことを翔太が取り上げるが、風太郎は容赦なく切り捨て、更なる追撃の言葉を放った。まさか、眼中にすらなかったと知り、流石の武田もいつものイケメンスマイルはどこにいったのか、大きくショックを受けていた。

 

「…憐れだわ…あそこまで意気込んでおいて、相手されてないどころか、認識すらされてないとか…」

「武田には同情するが…俺、初めて上杉が凄いと思えてきたんだが…あんな台詞を言えるのとか、漫画の中だけだと思ってたわ」

「アハハ…なんか、出会った時のフータロー君みたいだね」

 

崩れ落ちそうになっているのをなんとか堪えている武田を見て、二乃が同情と憐みの視線を向けていた。一方の翔太も同情しながらも、あそこまで言い切れる風太郎の姿にちょっと圧倒されていた。一花も懐かしさを感じると共に、風太郎の対応に苦笑いしていた。

 

「お父さんの言いたいことは分かりました。それならば、学年で一番優秀な生徒が家庭教師に相応しいということですね…それだけが理由なのではないでしょうが…しかし、それなら、私にも考えがあります」

 

話が脱線してしまったが、家庭教師交代の理由を理解した五月がそう切り出した。何を言うのかと全員の視線が彼女に集まる中、五月は自身の考えを述べ始めた。

 

「私が三年生で一番の成績を取り「(スパン!)この馬鹿!?ちょっとはできる範囲での提案をしやがれ!?」な、何するんですか!?」

「…ふむ」

「『…ふむ』じゃねぇよ!?なにちょっと考えようとしてんだよ、あんたも!?」

 

親娘それぞれに翔太のツッコミが炸裂した!

 

余計なことを言うなと暴れる五月を羽交い絞めにして退く翔太…そんな彼の行動に、マルオが冷たい視線を向けるのは当たり前だが、今の翔太はそんなことなど気にしてる場合ではなかった。

 

「ちょ、ちょっと待って!お父さんに何を言われても関係ない…だって、フータローは私たちが雇ってるんだもん!」

「そうよ!これは私たちが決めたことよ!?ずっとほったらかしにしてたくせに、今になって…」

「いい加減にしたまえ!」

「「「「「っ!?」」」」」

 

三玖と二乃が反論しようとするも、立ち直った武田が厳しい声色でその言葉を遮った。

 

「まだ気付かないのかい?上杉君が家庭教師を辞めるということ…それは他ならぬ上杉君のためだ!

どうして彼が一位から転落することになったか…それは君たちのせいだ。君たちに時間を割いたせいで、彼は自分のことを蔑ろにした……君たちが上杉君を凡人にしたんだ!」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

「武田君の言う通りだ…彼に彼の人生がある。それに、人間関係を気にしているというのなら、武田君の補助に佐桐君を付けるとしよう…それならば、色々と君たちも安心できるものがあるだろう?…そろそろ上杉君を、君たちから解放してあげたらどうだい?」

「っ…」「でも…!」「…それは」「「・・・・・・・・・・・・」」

 

姉三人がなんとか反論しようとするも、上手く言葉にすることができず、四葉と五月は黙っていることしかできずにいた。

 

武田とマルオの言うことに納得しつつも、風太郎の成績が下がったことを…いや、風太郎を凡人にした元凶が五つ子だという武田の主張に…怒りを覚えた翔太が口を開こうとした時だった。

 

「その通り…だな」

「っ…上杉…」

 

翔太の行動を手で制し、風太郎が武田たちの主張を受け入れた。制止されたことで幾ばくか冷静になった翔太は、事の成り行きを見守っていた。

 

「武田…お前が俺のことを過剰に評価してんのは分かった。お前が言っていることも間違いではない…というか、合理的に考えれば、それが最も良い事なんだろうな…この仕事を受ける去年の夏までの俺だったら、同じ事を考えてただろうな。

 

けど、この仕事を受けてなかったら、俺は凡人にもなれてなかっただろうな」

 

そう告げる風太郎の表情は以前のものとは全く違った。この仕事を受けたことが間違いではなかった…そう物語っていた。

 

「教科書を最初から最後まで覚えただけで俺は知った気になってた。だから、知らなかったんだ…世の中にはこんな馬鹿共がいるってことを…俺がこんなにも馬鹿だったっことも…時には馬鹿をやることも悪くないってことを…誰かを想って動くことがどれだけ大変なことかってことを……この仕事を受けてなかったら、一生知ることはなかったと思う」

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

「こいつらが望む限り、俺は付き合いますよ…俺の為に解放なんてしてもらわなくて結構です」

「…佐桐君はともかく…君がそこまでする義理はないだろう」

「ええ、義理も義務もありませんよ…俺が好きでやってるだけです。だからこそ、これだけははっきりと言えます…この仕事は俺にしかできない自負がある!!

こいつらの成績を二度と落とすことはしません…俺の成績が落ちてしまったことに関してはご心配をお掛けしました。

俺はなってみせます…そいつに勝って、学年一位に……いや、全国模試一位に!!」

 

「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

まさかの風太郎の宣言に、一同の思考が停止してしまう。堂々と自信満々に宣言する風太郎は更に口を開こうと…

 

「そして「(スパン!)この勉強馬鹿!?なんで自分から無駄にハードルを上げんだよ!?誰がそこまで言えって言ったよ!?」な、なにすんだよ、佐桐!?」

「それは上杉さんの方ですよ!?」

「なんだと?!」

「全国は無茶ですって!私が学年一位になるくらい難しい話ですよ?!」

「五月!やっぱり無茶ぶりだと思ってたんだろうが…!?」

「フータロー、もう少し現実的に…」

「あ!?学校内で一位だけじゃ、今までと変わらないだろ!」

「いいから!ちょっと落ち着きなよ、フータロー君?!」

 

三度目のツッコミスリッパの一撃を皮切りにごちゃごちゃとああでもない、こうでもないと言い合う7人…言い合う一同を傍に放置される武田とマルオ…

 

「全国で十位以内!これならどうだ!」

「お、おい?!離してくれ、佐桐!ちょっと関節決まってるから?!」

 

一同の意見を代表してそう答える翔太…未だに納得のいかない風太郎を拘束しているのだが、いつもの癖で関節を決めてしまっており、風太郎から軽く悲鳴が上がっていた。

 

「……大きくでたね。無理に決まってるだろう…それも五人を教えながらなんて…」

「武田…お前、何も知らないんだな」

「…どういうことだい、佐桐君」

 

風太郎の宣言を無理だと言い切る武田だったが、挑戦的に笑う翔太の言葉に圧を感じ、その意図を尋ねた。

 

「あいつはやると言ったら、やる男だぞ…お前が同じことをすることが無理だと思ってんなら、お前が上杉に勝つなんて夢の話だぞ…それを証明してやるよ。あいつは俺の依頼人でもあるからな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

翔太と武田の視線がぶつかる…そして、風太郎の提案を聞いたマルオは考えを纏め終わったようで、

 

「…いいだろう…上杉君。もしこの全国模試でそのノルマをクリアできたのなら、改めて君が娘たちに相応しいと認めよう…それで構わないね?」

「…望むところです」

 

マルオが挙げた条件を了承する風太郎…こうして、家庭教師の座を賭けた勝負の火蓋が切られたのだった。

 

 

…だったのだが…

 

 

「君は馬鹿なのかい?」

「…しょうがねぇだろう!?あの時は、逃げるわけにはいかなかったんだよ…!」

 

秘密のガレージ…

 

今日の出来事の説明を聞き終わったフィリップは開口一番にその言葉を放った…表情はいつものことだとばかりにやれやれと、呆れの色を目に宿して半眼で翔太を見ていた。翔太自身もやらかしたという自覚はあったが、逆ギレの勢いで言い訳していた。

 

「はぁぁぁぁ……明日の昼からは、中野一花の護衛だろう?これが長引いたりしたら、上杉風太郎のサポートどころじゃないだろう?」

「ううぅぅ…」

「…まぁ、君が怒る理由も分かるけどね…二乃ちゃんが足手まといとは……僕がいたら、間違いなくファングを仕掛けてただろうね…いや、地球の本棚でその男の情報を調べ上げて……フフッ」

「…おい…冗談だよな?流石にそんな非人道的なことしないよな?」

「……アハハ」

「誤魔化すな!?」

 

今のフィリップならやりかねない…そんな不安が翔太の脳裏をよぎり、フィリップの胸元を掴みながら問い詰める…まさしく悪魔のように思えたのは気のせいではないだろう。

 

「…仕方ない…君は上杉風太郎のサポートに専念したまえ」

「…でも、それじゃ一花の方が…」

「そっちは僕が担当しよう」

「…えっ!」

 

まさかのフィリップの提案に翔太は驚く。

 

「お、お前が一花の護衛を…!?マジで言ってんのか…!」

「冗談でもないし、本気だよ」

「いやいやいや…そっちをお前に任せるぐらいなら、お前には上杉…というか、五月たちの勉強を見てもらった方がいいんだが…」

「今回大事なのは上杉風太郎のフォローだ…彼はどこか君と似ている部分がある。変に不器用で、時折無茶をする…林間学校の一件と言えば、君にも心当たりがあるだろう?」

「……それは」

「それに、メタルとトリガーはまだ修理中だ。君の持っている他のメモリは防御がそう得意じゃないだろう?そうなってくると、総合的に能力の高いファングジョーカーなら、万が一の対応もしやすくはないかい?」

「……………分かったよ。なら、今回は分担作業って訳だな。一花には俺の方から言っておくから、そっちは任せたぜ…相棒」

「ああ、任せたまえ」

 

反論できないと悟った翔太は折れ、フィリップの提案を受け入れることにした。いつもの笑みを浮かべ、ホワイトボードへの記入を再開するフィリップを見て、

 

(…照井とこいつを一緒にするのは不安があるが…流石のこいつらも、そうそう喧嘩することもないか……どちらかといえば…)

「テレビ局…これは検索のし甲斐があるね…!明日までには全てを閲覧し終えなければ…!」

(フィリップの知識欲が暴走する方が不安だな…やっぱり俺が行くべきだったか…)

 

一抹の不安を感じながらも、翔太は自身のガジェットを取り出し、点検を始めるのだった。

 




●原作との相違点 
・いなかった一花が勉強会に参加していたため、早めに家庭教師対決の一件を知ることになった。
・それに伴い、映画の試写会の日程がズレた
・幾ばくか、風太郎の台詞増加

そういうわけで、次回からはようやくライダーサイドのお話になります。まぁ、一花以外と翔太、風太郎の出番が激減するんですが…(苦笑)照井に関するお話や、できればバトルパートまでいけれればいいのですが…できるだけ早めに更新できるように頑張る所存ではございます。

それでは、また!

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