本作だと何かと出番の多いファングジョーカーですが、アクセルとの初共闘(?)になります。
それでは、どうぞ!
「………よし、いいぞ」
通路から顔を出し、周囲に怪しい影がないことを確認した照井の言葉に従い、一花と背後をカバーしていたフィリップが続いた。
エリザベス&クイーンから大まかな話を聞き終え、メールにて翔太と情報を共有し終えたフィリップがスタジオに戻った時には、無事に今日の収録は終わっており、残りは明日の夜に収録し切るとのことになり、一同は解散となった。
一花の事務所の社長は明日の打ち合わせをしてから、車を地下に回してくるとのことだったので、三人は先に向かって待っていることになったのだ。
「う~ん……今のところ、変なところはなかったよね?やっぱりイタズラだったのかな、あの脅迫状…」
「そう判断するのは早計だよ、中野一花。もしかすれば、車で帰っている途中に何かがある可能性だってあるだろう?」
「そりゃそうかもしれないけど…こうも何も起こらないと、無駄に気にしすぎちゃってたのかなと思ってさ…二人にも余計な心配を掛けちゃっただけかもしれないし…」
「そんな気遣い、余計なお世話だ」
「…アハハ…流石は照井君というか、見事にバッサリ返してくるね…」
時刻はもう20時を迎えようとしていた。脅迫状がイタズラだったのではと思い始めた一花だったが、油断は禁物だとフィリップに諫められる。もっとも、照井は最小限の返答だけをして、周囲の警戒を続けていた。
『プップー!』
「あっ…!車が来たみたい…社長、思ったよりも早く打ち合わせが終わったのかな」
その時、向こうの方からクラクションが聞こえ、車が自分たちの元へと向かってきているのに気付いた一花がそう呟いた。こっちだと一花が手を振って合図すると、車は更に一花たちの方へと速度を出して近づき、
「…ちょ…スピード出しすぎじゃ……?」
「っ…!?照井竜!!」
「分かっている!?」
減速するどころか、速度を一気に高めていく車に困惑の声が一花から漏れたが、それと同時に危機感を覚えたフィリップと照井が動いた!
呆然とする一花の腕を引っ張った照井と、フィリップが左右に分かれてその場から退避した直後…体感的に100キロは越していたであろう車がその場を通り過ぎ、そのまま止まることなく壁に激突したのだ。
壁に衝突したことで、車は爆発と共に大破し、煙と爆風が三人を襲う。風と車だった部品たちが飛んでくるが、一花を庇う様に照井が彼女を覆い抱きしめ、フィリップも顔や胸といった急所を腕で庇っていた。
「こほッ…!照井竜、中野一花は?!」
「無事だ…!それよりも、今のは…」
「待って!?運転手の人は大丈夫なの?!早く助けないと…!」
「その必要はないさ」
「…!」「えっ…」
駐車場に黒煙が漂い、互いの無事を確認し合うも、炎上する車を運転していたであろう者を救助すべきだという一花の意見を、フィリップが冷静に否定した。
「さっきすれ違った時に中を見たが…誰も乗っていなかったんだ。あの暴走車は無人だった…」
「…そんな…だったら、なんであんなスピードで…?!」
「それは……あいつの仕業だろうな」
「えっ……っ!?!?」
〈エクセレントォ!今のはなかなかいいアクションだったよぉ!!〉
フィリップが告げた事実に、更に困惑する一花だったが、照井の放った言葉とその視線に、答えを知ることとなった。
三人の動きを褒めるかのような言葉と共に姿を現した人物…顔は人間のものとは異なり、大きく変形し非対称となっており、左目らしき部分は大きく肥大し、レンズのような機械的な委託が見受けられる。そして、身体の部分はかろうじて人型を維持しているが、それを構成するのは同じ機械、もしくは光沢がある円形の何かがいくつもぐちゃぐちゃに組み合ったものだった。
〈いやぁ~…恐怖と困惑する一花ちゃんに対し、冷静に対処する男二人……モブでも、あんないい動きができるなら、画としては一応成立するわけだぁ……まぁ、本当なら、死んでくれるのが理想的な画だっただけど…〉
「…ドーパント…!」
〈おっとと、知ってたんだ…まぁ、芸能界にいるなら、ちょっとは聞いたこともあるだろうね?まぁ、いいや……忠告しただろう?あの番組に出るのを止めないと、裁きを下すって?〉
「っ…貴方があの脅迫状を…!」
(声を変えてるのか…?奴は、僕たちが…いや、中野一花が知っている誰かなのか…?)
あっさりと自身が脅迫状の主だと告げたドーパントに、一花は口を抑えながら驚くことしかできなかった。それに対し、明らかに普通の声ではないドーパントに、正体を隠すために変えているのではとフィリップは疑念を抱いていた。
〈あれでちょっとはビビってくれるかと思ったけど…やっぱり駄目だったか。生意気に何にもなかったかのように出やがって……まぁ、ここで痛い目に逢わせれば、少しは賢くなるのかなぁ…?〉
「さっきから聞いていれば、下らんことばかりを…もうほざくのはその辺でいいだろう。聞いていて、うんざりするだけだ」
〈…誰が勝手にしゃべっていい言ったよぉ…!モブはモブらしく、黙って俺の華麗な画に邪魔にならないようにしていればいいんだよぉ!?〉
「…貴様の都合など知ったことか。貴様がなんだろうが、ここで終わりにしてやるだけだ」
「君と意見が合うのは癪だが…それに関しては同意しよう。どうやら、こいつは加減をしないでいい相手のようだ」
〈アーハッハッハッ!!強がってるつもりだろうだが、助けは来ないぞ!?俺の能力で、ここら一体の防犯機能は全部機能しなくしてるからねぇ!!〉
「へぇ~…それは良い事を聞いたね。ということは、誰にも見られることなく暴れられるということだね?」
〈…?何を言って、ぎゃああぁ!?〉
完全に自分のペースだとばかりにハイテンションで語るドーパントだったが、一向に怯える様子がない照井とフィリップの姿に、ようやく覚えたようだったが…それを口にしようとした瞬間、影から飛び出したそれの一撃を喰らった。
「よし…来い、ファング!」
ドーパントに不意打ちを食らわせたそれ…ライブモードのファングメモリが、呼び寄せたフィリップの手元へと収まる。それを器用に片手だけでメモリモードへ変形させていくのだが、その時、一花があることに気付いた。
「…待って!?フィリップ君、ショータ君にベルトを着けてもらわないと、変身できないんじゃ…!」
「心配は無用さ、中野一花……もう既に連絡済みさ…この通りね」
ファングメモリを持った手は逆の手…左手に握られたスタッグフォンをも掲げ、ゆっくりと一花の方へと振り向くフィリップ。その時、彼の腰にダブルドライバーが出現した。
「いつでも変身できるように、合図用のメールを送っておいたのさ。奴がペラペラとご光悦に到ってくれたお陰で、翔太の方も準備ができたようだ。悪いね、勉強会の途中だったんだろう?」
『気にすんな…まぁ、電話だって言って無理矢理抜けてきたからな…あんまり時間を掛けるのはあれだから、さっさと片付けようぜ、相棒?』
『Joker!』
「…というわけさ。さて、それじゃ行こうか?」
「ふん…手際がいいことだ」
『Fang!』『ACCEL!』
途中から独り言のように聞こえるフィリップの言葉だが、脳内では五つ子たちのアパートの裏手にいる翔太との会話が成り立っていた。そんな相棒が送ってきたジョーカーメモリと言葉に応えるように、フィリップはファングメモリを起動させる。
あまりにも手際の良いフィリップに、照井も呆れながらも自身のメモリ…アクセルメモリを起動させながら、アクセルドライバーを装着した。
「『変身!』」「変……身ッ!!」
『Fang! Joker!』 『ACCEL!』
獣の咆哮とバイクの轟音が駐車場に鳴り響き、白と黒の風がフィリップを、赤き熱と鉄甲が照井を纏い、それぞれの姿をライダーへと変える。
〈お、お前ら…仮面ライダー…なのか!?〉
「まぁ、そういうことさ…さて、大事な人の姉妹を狙ったんだ…流石の僕もかなり頭にきてるわけだが…覚悟はいいかい?」
『「さぁ、お前の罪を数えろ!!」』
「すぅぅ……さぁ!振り切るぜ…!」
自身の顔で怒りに震える右手を力強く握りしめながらそう告げたフィリップの言葉に合わせ、右手をドーパントへと指差しながらダブルが決め台詞を放つ。
それに続き、アクセルも変身と同時に装備したエンジンブレードを構え、ヘッドライドを輝かせながら、二人してドーパントへと攻めかかった!
「おおおぉぉぉぉ!!」「しゃあああぁぁ!!」
〈ぐぅ…!?ごおおぉぉ?!〉
飛び掛かりと同時に、ダブルライダーの蹴りがドーパントの胴体に決まり、その身体が大きく仰け反る。しかし、それで終わりではないとばかりに、エンジンブレードの追撃が次々と繰り出され、斬撃と共に火花が散る。
「はぁぁ!うううオオオオォォォォォォォォ!!」
いきなりの猛攻に対応し切れてないドーパント…その頭を飛び越え、背中を取ったファングジョーカーに更なる追撃を貰うことになる。刃を召喚していないが、そのスペックの高さを十二分に使った格闘技が、嵐と如く叩き込まれていく。
〈うううぅぅ……調子に乗るなよぉ、ガキどもがぁ!?〉
【カシャ!】
「っ…何だ、今のは…?!」
「知ったことか…何かをされる前に、倒すまでだ…!」
『ああ…このまま押し切るぜ、フィリップ!』
一気にダメージが蓄積し、ラッシュの終わりに打ち込まれたファングジョーカーの蹴りで吹き飛んだドーパントだったが、左目のレンズらしきものを左手で動かしたかと思えば、シャッターを切ったような音が鳴った。
ドーパントの能力ではと警戒するフィリップだったが、優勢である今の流れに続くべきだと照井と翔太は気にせずに攻めようとしたのだが、
〈アーハハハ!チェック!〉
高笑いと共に、レンズを左手で操作していたドーパントが右指をパチンと鳴らした。その瞬間、
『なぁ!?』「ぐぅぅ…!?」
距離を詰めようとしていたライダーたちの足が沈んだのだ…いや、正確には、踏み出した足がいとも容易くコンクリートの床を踏み抜いたのだ。まさかの事態に思わず、翔太と照井から驚きの声が漏れ、太ももまで片足を突っ込んだ二人はその場に崩れ落ちる。
『な、何だよ、これ!?さっきまでなんともなかったのに、急に床が…!?』
「ぐぅぅ…こんなものぉ…!」
動揺する翔太を横に、無理矢理足を引き抜いたアクセルが再びドーパントへと駆け寄ろうと…
〈チェック!〉
「ぐうううぅぅ…ああああぁぁぁぁ!?!?」
再び右手で指を鳴らしたドーパント…それが合図だったかのように、地下駐車場を照らしていた電球から、異常な電流が流れ落ち、アクセルのボディへと襲い掛かったのだ。
「…まさか…あれが、奴の能力…でも、一体どうやって!?」
〈いいね、その驚きよう…!ちょっとはいい画になりそうだね……それじゃ、お次はと…!〉
いきなりの電流攻撃に痺れてしまったアクセルを見て、ドーパントの能力が何かを分析しようとするフィリップだったが、それをドーパントが待ってくれるわけもなく…違う方向へ顔を向けたかと思えば、三度レンズを左手で弄り、
〈チェック!〉
またしても右指を鳴らすドーパント…今度は何が起こるかと思えば、先程と同じように車のエンジン音が響き渡り、その方向をライダーたちが見ると、
「くっ…また車を操ってるのか…!?」
体勢を立て直したアクセルだが、自分とダブル目掛けて、今度は3台の車が迫っていることに思わず悪態を吐いてしまう。
「翔太!意識を合わせてくれ!避けてても、埒が明かない!?一気に斬り裂こう!!」
『オッケー!そういうの、嫌いじゃないぜ!』
『Arm Fang』
「っ……舐めるなぁ!?」
『Engine! Maximum Drive!』
避けることなく、迎撃を選んだライダーたち…フィリップの提案に翔太は意識と呼吸を合わせ、召喚したアームファングを右半身を引きながら構える。一方のアクセルも、エンジンブレードにメモリを装填し、居合の様に構えた。
『「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」』
「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アンダースロー気味に振り上げた右手に備わったアームファングと、目視するのがやっとの速度で振り切られたエンジンブレードが迫ってきた車たちに振るわれた…その衝突寸前、ライダーたちの前で縦半分にされた車が、二人を避けるかのように通り過ぎていく。
〈いいねぇ、いいねぇ!そんじゃ、次の画に行ってみようか!!〉
「ちぃ…また何か仕掛けてくるつもりか…!」
「…大丈夫。打つ手はあるさ」
ドーパントがまたしても固有能力で何かを仕掛けてくると察し、アクセルが悪態を吐く。だが、それに答えるかのように、フィリップから冷静な言葉が漏れた。どういうことかとアクセルがダブルの方を見るも、ドーパントが仕掛けてくるのが先だった!
〈チェック!〉
能力発動のための指パッチンが鳴り、今度は天井に設置されていたスプリンクラーや、水道管が破裂し、辺り一帯に大量の水が降り注ぎ始め、
〈高圧水のレーザー…今度はどう対処するかな…!〉
「っ…!?」「伏せろ、中野長女!?」
「えっ…きゃああ?!」
その言葉と共に、流れ出ていた水が一度制止し、その場にいた一同の頭の位置を薙ぎ払うかのように、高圧で集約された水が放たれた。アクセルの合図に咄嗟に避けた一花…薙ぎ払われた部分のコンクリートが罅割れることなく、斬撃を喰らったかのような傷が入っていた。
「あんなものまで……おい!?このままでは、中野長女が…!」
〈おやぁ…さっきまでの余裕はどこにいったのかな?それじゃ、二発目い…ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!?〉
「…何…?」
「言っただろう…打つ手はあるって」
まさかの広範囲攻撃まで繰り出され、一花の身にも危機が迫る中、珍しく焦りの声がアクセルから出るも、そんな心配など無用とのばかりにドーパントの体を何かが斬り裂いた。
いきなりダメージを受けたドーパントの姿にアクセルの頭上に疑問符が浮かぶ…その疑問に答えたのはフィリップだった。その左手には、
『どうやら、お前の読みが当たったようだな、相棒』
「ああ…まぁ、目の前で何度も手の内を見せられれば、見破ることなんて大したことじゃないさ」
「…ブーメラン…そうか、さっき車を斬った後に放っていたのか…」
「そういうことさ…僕が回避に専念している間に、翔太がショルダーファングのコントロールをしてくれていたのさ」
ドーパントに攻撃した物体…それは、瞬時のうちに召喚し、放っていたファングジョーカーのショルダーファングだった。先程から翔太が黙っていたのは、これを一度遠くへと移動させてから、再びドーパントの元へと向かわせるようにコントロールすることに集中していたからだった。
「思った通りだ…お前の能力はその視界…レンズに映しているものにだけにしか及ばない。だから、一度死角に消し、再び襲ってきたこれに気付かなかったんだ…そして…!」
〈ぐぅ…このぉ…もう一度、ぐおおおぉぉぉぉ……!?〉
「その性質上、能力を発動させるために一定の時間が必要な以上、素早い武器には対応できない…おそらく、人といった有機物にも適応できないんだろう。できていたのなら、僕たちが駐車場に来た時点で、直接狙っていた筈だからね」
『なるほどな…それなら、お前が聞いたADの凍結事件も…こいつが何かを操って凍らせたってことか?』
「断定はできないけどね……まぁ、ここでメモリブレイクするんだ。そんなのは関係ないさ」
今度こそ能力を発動させようとするも、させまいとダブルが再びショルダーファングを投げ放ち、全身を斬り裂かれていくドーパントから苦痛の声が漏れる。
頭脳担当のフィリップの前で何度も能力を見せてしまったことが仇となった…大まかな能力を見切ったフィリップの解説に、感心しながらも疑問の声が翔太…ダブルが左目を点滅させながら尋ねるも、それは全てを終わらせてからだとフィリップはアクセルの方を向く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「異論はないだろう?メモリブレイクした後、煮るなり焼くなり、君の好きにするがいい…見た感じ、君の仇とする相手とは姿は似ていないようだけどね?」
「……俺に質問をするな…やるなら、さっさとやれ」
「では、お言葉に甘えて」
暗に「暴走して、襲い掛からない様に」と釘を刺されたアクセルが顔を背ける。その言葉に従い、ダブルはメモリブレイクを行うために、マキシマムドライブの射程距離まで近づこうと、ドーパントに歩み寄った。
〈ふ、ふざけんなぁ…!こんなところで、終わりだと……こんな下らない画で、俺の作品が終わっちまうだとぉぉ…!?何ボーっとしてやがる……てめぇぇぇぇ!!〉
「…うん…?『てめぇ』…一体何を…?」
ファングメモリのタクティカルホーンを叩こうとしていたフィリップだったが、ドーパントの放った言葉が引っ掛かり、その手を止めてしまった。だが、それがいけなかった。
〈さっさと出てきやがれぇ…!木偶の坊ォォォォォォォォォ!?!〉
〈ボオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!!〉
「っ…何!?」『っ…何が…!?』
ドーパントの怒鳴り声に応えるかのように、駐車場に日常ではまず聞くことのない雄たけびが響き渡った。何事かと身構えたダブルだが、その足元で何かが爆発し、視界が塞がれてしまった。そして、
『「…!?うわあああああああぁぁぁぁ!?!?」』
塞がれた視界を確保しようとした最中、いきなり胸元に何かが着弾し、爆発によってダブルの体が後方へと吹き飛ばされた。
「っ…フィリップ!?佐桐!?…何…が……っ!?」
煙の中から吹き飛んできたダブルに、警戒を深めるアクセル…その視線が晴れてきた煙の方へと注がれた時、アクセルの…いや、照井は言葉を失った。
晴れた煙の中…最初のドーパントを庇うかのように、新たなドーパントが立ちはだかっていたのだが…その姿が問題だった。
頭上には黒い帽子のような鉄の塊を身に着け、溶けていた何かが強引に固まったかのようなギリギリの人の形を保っている、全身真っ白のドーパントがそこに立っていたのだ。
『氷の化け物に襲われた…白い人間に似た姿をした化け物が…』
「はぁ…!?はぁ…!?…はぁ…!?!?」
父親の最期の言葉……自分たちを襲ったドーパントの特徴と瓜二つ…それが、目の前に現れたことに、照井の鼓動と息がどんどんと激しくなっていく。
〈コオオオオォォォ……フォォォ……〉
「新たな…ドーパント…!?」
『二体目が居やがったのか…クソッ、油断した……フィリップ…!?』
「っ…これは…体が……凍って動けない…!?」
先程の攻撃が、白いドーパントの仕業だと理解したダブルが立ち上がろうとしたが、翔太が異変に気付き、フィリップも自分がどうなっているのかようやく理解した。
倒れ込んでいるダブルの半身…ソウルサイドのファング側は完全に凍ってしまい、ボディサイドのジョーカー側も一部が氷に覆われ、地面にくっついてしまっていたのだ。
〈コヲオオ……ウウウウゥゥ……〉
「そうか……貴様か…貴様が俺の家族をォォォ……!?」
「…マズい…!?照井竜、落ち着くんだ?!」
「ぐうううぅぅぅ……あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『Engine! Electric!』
フィリップの制止などまるで聞こえておらず、憤怒に駆られたアクセルが呪言と咆哮と共に、白いドーパントへと攻撃を仕掛けた。それを迎撃しようと、白いドーパントが手のひらから出現させた何かをアクセルへと投げつけた。
躱すことなく突っ込んでいたアクセルがそれをまともに受けた。直撃した右肩とボディが一瞬にして凍り付き、アクセルの動きを鈍らせるが、
「この程度でぇ…!俺を止められると思うなあああああああぁァァァァァァァァァァァ!!!!」
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
アブソーブ・ドーパント戦でも見せた、アクセルドライバーの能力で全身に炎を供給したアクセルは、その氷を一瞬にして溶かし尽くす!
「貴様がぁ…?!貴様さえいなければ!?やっと見つけた……ここでお前を…必ず殺すぅ!!」
〈ゴオオオオォォォ……フゥゥゥゥゥ……〉
「……貴様だけはァァァァァァァァァァァ!?!?!?」
怒りと憎しみを全て込めるかの如く、何度もエンジンブレードを白いドーパントへと叩きつけていくアクセル。その斬撃が全く効いていないかのように、ただただその攻撃を受け続ける白いドーパントの様子に、不気味さを覚えた翔太は、すぐさま加勢に向かおうとするのだが、
『フィリップ!ファングの力で、この氷を砕けないのか!?』
「……駄目だ!?ビクともしない…!ファングで砕けないなんて…物理的な力に対して、異常なまでに耐性があるみたいだ…!?」
『っ…マキシマムのスロットはそっちにあるし、お前が動けないなら、俺の方でなんとかするしかないか………そうだ!来い、スパイダーショック!』
フィリップ側ではどうすることもできない状態に、辛うじて動ける自分がなんとかすべきだと思考を巡らせる翔太。物理で駄目ならと、あることを思い付き、メモリガジェットのスパイダーショックを呼ぶ。
近くで待機していたスパイダーショックが天井を伝って来て、ダブルの頭上からその体へと着地した。そのまま、翔太は器用に疑似メモリを抜き、
『Heat!』
『Heat! Maximum Drive!』
フィリップが持っていたヒートメモリを起動させ、スパイダーショックに装填した!ヒートメモリの力を持ったスパイダーショックがダブルの体を覆っている氷に大量の糸を放つ…闘炎の力が込められた糸が幾多も重なり、氷を徐々に溶かしていく。
そして、糸に触れていた氷が溶けていき、罅が入った時、フィリップがファングの力を解放した!
「っ…ぬぬうううううう……うううおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」
『よし、脱出成功!!』
「助かったよ、翔太!さぁ、僕たちも……何だ…?」
ようやく自由の身になったファングジョーカー…アクセルの加勢に加わろうとした時、何か異変を感じ、その足が止まった。
「…何…?何か、変な匂いが……?」
「…っ?!まさか…!…あの黒いドーパントは…?!」
一花も異変に気付き、思わず鼻を抑える。その異臭の正体に気付き、ダブルが初めに闘っていたドーパントの姿を探す。少し離れた場所…白い凍気が漂っていない所で、能力発動のためにレンズを触っている黒いドーパントを見つけ、ダブルの背筋が凍った。
凍気に紛れて分かり辛くなっているが、アクセルと白いドーパントの足もとに…黒いドーパントが能力で管から漏らしたガスが溜まっていたのだ。
〈じゃあーな……ライダーども…〉
「しゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
『Engine! Maximum Drive!』
「っ…!?よせ、照井竜?!」
『くっ……一花ぁ!?』
「っ!?」
全く応える様子のないドーパント…それをなんとしても倒そうと、エンジンブレードのマキシマムドライブを発動させてしまったアクセルの一撃を止めようと叫ぶフィリップだったが、もう既に止めるには遅すぎた。
咄嗟に一花の身を抱きしめたダブルが、出来る限りの力を振り絞り、駐車場へと続く通路の方へと飛んだ瞬間…
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンン!!!!
マキシマムドライブが火種となり、駐車場を爆発の火が一気に包み込んだ…!
…一体いつから、ドーパントが一体だと錯覚していた…?
正体はともかく、能力があっさり判明してすぐに攻略かと思いきや、まさかの二体目乱入でした!安定の爆発オチですが、果たしてアクセルは無事なのか…そして、事件の真相とは……そんなわけで、次回は考察回です。
ちなみに、スパイダーショックのヒートメモリのマキシマムドライブは、『Sな戦慄』のバットショットのオマージュです…ダブルファンの方はニヤッとされた方も多かったのではないでしょうか?
それでは、また!