仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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一「…えっ、これを読んだらいいの?コホン……仮面ライダーW、前回の三つの出来事は!」

三「一花!?それはOOOの奴!Wの場合は『今回の依頼は…』だよ!?」

二「あんた、キャラ変わり過ぎでしょうが!?」

四「そうそう!『ラブラブ!クズ!』じゃなかったかな?」

五「四葉、それはまた違う相棒ものです!?」


翔「…なんとかしてくれ、照井」
照「絶望が……俺のゴールだ」
風「おい…あらすじっていつもこんな感じなのか?」
フ「…まぁ、おおむねそうだね…」

らいは「それでは、皆様大変お待たせしました!久々の『仮面ライダーW/Kの花嫁』第78話をどうぞ!」

(照井を除く)一同『らいは(ちゃん)?!』



第78話 「テレビ局に潜むE/動き出す者たち」

…カランカラン…

 

電子音ではなく、レトロチックな音を響かせる小さな鐘が鳴ったことで、グラスを磨いていた男は音を発生させた来客へと視線を向けることとなった。

 

「…どうもッス、鷹荒さん」

 

少しくたびれたスーツがとてもマッチした来訪者…ネクタイを外しているのは首元が窮屈なのが嫌だというくだけた理由で、半笑いではあるが、嫌気を感じさせないその雰囲気が、彼が「継風署」に勤める警察官だと感じさせないものであった。

 

だが、トレードマークとも呼んでいいツボ押し器を片手にやってきたのだから、尚更その姿が、彼の階級である警部補だとは思わせない…しかし、彼をよく知る人からすれば、その姿こそが刃野幹夫その人だと分からせるには十分だった。

 

「…ここではマスターと呼べと言っただろう」

 

『鷹荒』と呼ばれた男…正確には、ダブルの協力者であり、数少ないその正体を知り、風都イレギュラーズの総括をも務める…この喫茶店「ウィンドウ・シティ」のマスターである鷹荒剛の本名だった。

 

もっとも、この店においても、風都イレギュラーズの面々にも、翔太たちにも、『マスター』と呼ぶようにと徹底させていたのだが、刃野は構わず苗字で彼を呼んだわけだ。再びグラスへと視線を落としつつも、声に呆れたと少々の怒気が混じった彼に、刃野は苦笑してしまう。

 

「そう言われてもな~…俺の中で、鷹荒さんは鷹荒さんですから~。現役時代に、散々そう呼べって言われたのを直せって言うのは酷でっせ」

 

「…注文は?」

 

「梅昆布茶で」

 

「……ちょっと待ってろ」

 

このやりとりは通例だということもあり、マスターの方もそれ以上言うことはなく、刃野に注文を訪ね、ここが洋風喫茶店であるにも関わらず、マイペースな注文を繰り出した。

 

しかし、言われたマスターも動じることなく、グラスを置いてしゃがみこむ。下の戸棚から梅茶のパックを取り出し、事前に沸騰させてあったお湯を湯飲み茶碗へと注ぎ、さっと注文通りの品を差し出した。

 

「どうも………いや~、この程良い酸味が疲れた体に染みわたるのがいいッスよね」

 

「おべっかは使わんでいい…本題に入るぞ」

 

「…相変わらず素っ気ないっすね。これが、こっちから提供できる資料の全部ですよ」

 

出された梅昆布茶を一口飲み、全く捻りのない感想を告げる刃野だが、マスターはばっさりと切り捨てる。

 

この『梅昆布茶を注文する』というやりとり自体が、二人が情報を交換し合う際の一種の通過儀礼だ。別に特段決めた訳でも、合言葉代わりに定めたわけでもない…いつの間にか、この一連のやりとりが当たり前となっていただけであり、それだけ二人のこの情報リークが一度や二度ではないことを物語っていた。

 

「………この凍傷殺人未遂事件…前日に被害者が揉めていたっていうのは確かなのか?」

 

「確かですよ…というか、第一発見者の同じADの女性が自分がその揉めていた相手だって、取り調べの時に認めてましたからね」

 

「だが、逮捕してないってことは、そいつが犯人じゃなかったのか?」

 

「ええ。ガイアメモリらしきものは持ってなかったですし、アリバイも確かでしたから。犯行当時、居酒屋にいたのを店員と何人かの客が証人として見てましたから」

 

「…こいつもアリバイが確認取れたのか」

 

「うん…?ああ、ディレクターの本松ですか。取れましたよ…高級料亭で接待していたと、相手方にも料亭側にも真倉が確認を取ってます。なんで、後は番組関係者…もしくは、何かしらの怨恨かと、捜査本部は睨んでいる…ですけとね…」

 

さっさと資料を一読し、不明な点を刃野へと尋ねるマスター…その様子から、やはり警察の方でも進展は望めていないことが把握できた一方、何か言いにくそうな様子の刃野にも気が付いていた。

 

「何か引っ掛かることでもあるのか?」

 

「…まぁ、確かなことじゃないんですが…その女性ADが被害者と揉めていたことなんですが…どうにもその呉っていうディレクター絡みだったようなんですよ。被害者はそいつについて何かを探っていたらしく、それを浮気だと勘違いして問い正したそうなんです。それで、そいつのことを調べているだけだって聞いたらしく…詳細は教えてくれなかったそうですが、その直後に襲われたのがどうにも引っ掛かりまして…」

 

「それで、俺に情報を求めたということか」

 

「そういうわけです…昨日の爆破事件もガイシャと疑わしい奴らが集まっている場所で起きたとなると…どうにも関係がないとは思えないもので」

 

その情報は、第一発見者に事情聴取をした刃野だからこそ知り得た情報だった。アリバイがあることから、本松を被疑者から外していたが、刃野はどうしても納得できない部分があったのだ。

 

「なら、この情報がその答えになるかもしれないぞ」

 

「…なんです?………こいつは…」

 

「さっき、本松は高級料亭で接待をしているといったな?そいつは、ここ直近、その料亭で奴が接待をした相手とその回数だ。いくらディレクターといえど、月に十回以上も高級料亭を接待に使うには不自然だ」

 

マスターが渡してきた何枚かの資料…それは、本松が頻繁に通う高級料亭の明細書やら接待相手が誰かというものであった。

 

明らかにグレーゾーンな資料であり、それを誰が手に入れたのか…聖夜に赤い服を着た者の名を名乗っている男がその料亭の関係者と知り合いで帳簿をこっそりと見せて貰ったり、それをもとにどこぞの有名ブロガーが企業を全て調べ尽くしたことを、刃野が知る由はない。

 

「それと…これが奴が担当している『エブリィ・トーカー』に関する経費に関する資料…それと、口コミではあるが、奴の付き合いのあるスタッフや共演者の声を募ったものだ」

 

「助かります……結構真っ黒なことが書かれてますね。悪い噂は聞こえてましたが、ここまではっきりとしたのはなかなか…」

 

警察官という立場では届いてこないその情報に、いつものことながらと思いつつ、刃野は舌を巻いてしまう。

 

もっとも、この情報を集めたのは継風TVによく通う、周囲からの好感度も高い二人組の女性大学生ユニットが、講義を入れてなかった午前中に収集してくれた仕入れたばかりの情報だったのだが…

 

そもそもの話、エディター・ドーパントの襲撃を受けてすぐに翔太からマスターを通して風都イレギュラーズへの依頼が舞い込み、それから少し遅れて刃野の情報リリースによる交換依頼がやってきたのだが、刃野が店を訪れたこの午後まで…約半日もなかった短時間で精度の高い情報を集めてきた彼らが如何に優秀なのかを証明したようなものでもあったわけで…

 

「…不自然な金の流れはないのに、豪遊三昧…挙句の果てには女性の共演者にセクハラしまくり…景気が良くなったのはここ最近とは…匂いまくりですねぇ」

 

「奴にアリバイがあるのだとしたら、共犯者の線を疑うべきだろう。豪遊するための資金繰りなんか、一人でするには限度がある」

 

「でしょうね…とにかく、頂いた情報を元にもう一回周囲関係者を当たり直してみますよ…さっさと解決しないと、次の不可思議事件が舞い込んできちまうので」

 

やれやれといった様子と同時に、不敵な笑みを浮かべる刃野…いつもはだらしなく、そして、人の良い彼であるが、警察官としての職務を全うすることに関してはブレることがない。

 

「…それはそうと…鷹荒さん。ついでに聞きたいことがあるんですが…今回の一件に、翔太の奴が絡んでるなんてことはないですよね?」

 

「……どうしてそれを俺に尋ねる」

 

いきなり話題を変え、そう尋ねてきた刃野の目は珍しく真剣なものになっていた。警察官としての顔よりも、そちらの方が鋭い眼光を宿している程にだ。対するマスターも動ずることなく、逆にそんなことを尋ねてきた理由を問い返していた。

 

「…いや、大したことじゃないんですが…爆破事件に関わりがあるかもしれない女優の卵…中野一花ちゃんという子なんですが…いや、名前を聞いた時には、まさか推しの子が関わっていたとは夢にも思って…コホン…失礼しました。

まぁ、その子がこの事件に関与してるみたいで…しかも、翔太と同じ高校の同級生だったのが気になりまして…」

 

「高校の同級生なんて珍しくともなんともないだろう。むしろ、それで疑うという方が無理がある」

 

「その子の妹と親密な仲であったとしてもですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

問い詰めるかのような言葉に、マスターは沈黙のまま、刃野の話を聞いていた。下手に答えられないのと、刃野が何を疑っているのかを把握しようとしていたからだ。

 

「この前、あいつが入院したのは荒鷹さんも知ってるでしょう?その時、彼女とほとんどそっくりな子に病院ですれ違いまして…一花ちゃんとも知り合いなら、また危ないことに手を首を突っ込んでるじゃないかって思いまして…」

 

「(…そういうことか)…あいつはこの件には関わっていない。そもそも、翔太の奴が、その爆破事件の現場にいたのか?」

 

「…いえ、そういう目撃情報はありません。ただ、こういうガイアメモリ関連の事件には、あいつがいつも絡んでそうな気がしてならないもので…保護者代理としてはどうしても気になっちまうんですよ」

 

疑うような雰囲気から、マスターの言葉を信じたのか、安堵を笑みを浮かべる刃野は肩の荷が下りたかのようだった。

 

刃野が危惧していたこと…それは小さい頃から知っている翔太が、また何か危険なことに関わっているのではないかということであった。マスターも、事件の関与云々ではなく、翔太の身を案じてのことだと悟り、警戒を解いたわけだ。

 

…もっとも、刃野の懸念通り、その場におらずとも、がっつりとこの事件に関与しているわけで、その勘はものの見事にあたってはいるのだが…人のことをすぐに信じる刃野は、マスターの言葉を疑いもしなかった。

 

「どうにも、あいつは目が離せないといいますか…佐桐の旦那がいなくなってからのあいつは、張り切り過ぎてるというか…高校に入ってからは殊更それが酷くなったような気がしまして…ここ最近なんかは病院に担ぎ込まれたりして…」

 

「……まぁ、確かにな」

 

刃野が心配する理由は、マスターも理解はできた。しかし、それを止めることはできないと、そうすることを決めたのは翔太自身であり、止める権利がない自分にはどうしようもないことでもあった。

 

『あんたが情報屋たちのトップだろう?俺は、父さんの跡を継ぐ佐桐翔太だ!俺に力を貸してもらえませんか?』

 

今、刃野が座っているすぐ横…2年前の春、突如としてそんなことを言いに来た翔太の姿が、マスターの脳裏に思い起こされていた。

 

(あの時は、何も知らないガキだとは思って一蹴してたが…今は戦士としての風格が少しは出てきたからな)

 

かつて、刑事でありながらも情報をリークするという形で、コンビを組んでいた戦友…佐桐壮吉の面影が、翔太に見え始めていることに、懐かしさを覚える。

 

最初はマスターも、翔太が『仮面ライダー』の後継者となることを認めてはいなかった。むしろ、協力する気すらもなかったが…そんな彼を認めさせるにあたった事件からすれば、格段に成長したのだろうが…未成年の彼らに闘いを任せてしまっていることに思うところもあった。

 

「……難儀だな、お前も」

 

「まぁ、そういうのは慣れっこですから。それに、あいつに何かあったら、佐桐の旦那に見せる顔がありませんから」

 

マスターとしては違う意味で言ったのだが…刃野は表面上の意味で受け取ったようだ。慣れているというのは、翔太が事件に首を突っ込むことに対してか、それとも、小さい頃から知っていて目を離せないという意味か…きっと両方なのだろう。

 

実はマスターが翔太を認めることになった事件に関しては、刃野が大きく関わって…いや、酷く利用されたりしているのだが…それはまた別の機会に話すことになるのだろう。

 

「そろそろ行きますわ…あんまり長居すると、サボりだと煩い奴がいるんで」

 

「…事件の早期解決を期待している」

 

「そう言うなら、現場に復帰して下さいよ、鷹荒さん。ただでさえ、人手が足りないのにガイアメモリ関連の事件はほとんど俺たちにたらい回しでくるんですから」

 

「残念だが、今の俺はしがない喫茶店のマスターだ。この仕事から足を洗う気は全くといってない」

 

「…って言うと思いましたよ。鷹荒さんがいてくれれば、もうちょっと負担も減るんですが…こっちとら、ガイアメモリ犯罪検挙率トップってことで扱き使われまくりですし…」

 

「よかったじゃないか、早々出世できそうで」

 

「全然よくないですよ…俺は、鷹荒さんやデカ長みたいな役は合ってませんよ。それぐらいなら、現場で初動捜査やったり、悪ガキたちを追いかけます交番勤務の方がお似合いですうよ…なのに、本庁の本願寺とかいう人が、継風署に『超常犯罪対策課』を設けるべきだと進言してるみたいな話も風の噂で聞こえてきてますし……やっぱり、鷹荒さん、現場に戻って「戻らない」…ですよね~…」

 

長居しないと言った矢先、まだしゃべり足りないとばかりに愚痴を零す刃野…元上司に職場復帰を二度に渡って求めるも、取り付く島もなく断られる…そんな穏やかな空気が喫茶店に漂っていた。

 

 

 

「…えっ?大丈夫なの、フィリップ君は?」

 

同時刻…昼休みも半分を過ぎた辺り。翔太は一花と教室のすぐ傍の廊下で、今日の警護についての相談をしていた。二人とも窓の外を見ながら話しているので、近くで耳を立てるようなことをしなければ、話の内容を聞かれる心配もなかった。

 

…もっとも、どちらかといえば、学園のマドンナとなりつつある一花と二人っきりで話している翔太への嫉妬の視線(主に男子生徒)が凄いのだが、翔太は内心やれやれといった感じで無視している。

 

「護衛に就けないといっても、爆発の余波でグロッキーになってるようなもんだから心配ねぇよ。もともとファングでの戦闘は耐久戦よりも短期決戦向けだからな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「それに、あの時は生身のお前の方が爆発が直撃した方がヤバかったんだ。フィリップもそうならなかったことに比べれば、自分のダメージなんかそこまで気にしてなんかねぇよ。ガレージのソファーで寝そべりながら、事件に関して意気揚々と検索してたからな」

 

フィリップ自身の身体能力(といっても、風太郎と比較すれば圧倒的に上ではあるのだが)もそこまで戦闘向きではないことも踏まえ、一花へとフォローの言葉を掛ける翔太。

 

今頃は集めた情報を元に検索をしているのではないかと話すも、一花の顔色は優れない。

 

「…照井君はどうだった?今日、学校休んでるけど」

 

「ボロボロだったが、逆になんともないみたいな感じだったな。本当なのか、強がりなのかは微妙なラインだけど…今日姿が見えないところをみると、テレビ局で張り込んでるのかもな」

 

「……そっか」

 

「『私のせい』だなんて思うじゃねぇぞ?」

 

「えっ…?」

 

心情を見透かしたかのような翔太の言葉に、思わず声が漏れる一花。

 

「今回の一件はお前のせいなんかじゃない。完全に向こうが悪意を持って行ってきてる犯罪だ。お前に非はないから…そんな顔をするじゃねぇよ」

 

「…そんなに酷い顔をしてた?」

 

「映画のシーンなら、名女優ばりな。ともかく、警護は俺たちに任せて、お前は自分のやるべきことに集中しろ…いいな?」

 

「……うん。分かったよ」

 

そろそろ予鈴が鳴ることもあり、翔太は先に教室へと入っていくのを一花は、笑顔で見送っていた。

 

…その笑顔が、無理やり作ったものであることが見抜けたのは…ここにいる人たちの中では、きっと風太郎だけのだろう。

 

一花は仮面の笑顔を浮かべていた。

 

 

 

「…駄目だ…どうしても、もう一体のドーパントの正体が掴めない」

 

絶対安静を翔太から言い渡されていたフィリップ…ガレージに常設しているソファーで寝そべるその表情は芳しくなかった。

 

マスターを通して、警察や風都イレギュラーズが掴んだ情報を加え、『地球の本棚』に潜っていたのだが、もう一体のドーパントに関しての情報は掴めずじまいだったからだ。

 

「氷だけではやはり情報を絞り切れない…だからといって、人間関係から調べるのも…昨日は、ほとんど人と話してないから情報がないし……困ったな」

 

手詰まりを感じ、他のアプローチを探るも、ここにきて自身の対人能力の低さが裏目に出たことをフィリップは悔やんでいた。

 

昨日の警護は一花にのみ集中していたのもあり、フィリップはスタッフたちと話すことをほとんどしなかったのだ。これが翔太であれば、合間の時間を縫って色々と情報を仕入れていたのかもしれないが…

 

終わったことを嘆いてもしょうがないと、まだダメージが残っている体に鞭を打ち、マスターから送られてきた情報や写真が、書かれ貼られたホワイトボードの前へと移動する。

 

「…もし『エブリィ・トーカー』のスタッフの中に犯人がいるとすれば、候補はAD,カメラマン、小道具係に化粧担当…絞り切るのも難しいか」

 

クイーンとエリザベスたちが集めた情報からすれば、ディレクターの本松を恨んでいる者は多くとも、協力者となるような慕っている者は皆無に思える。

 

そうなってくると、もう一人のドーパントの変身者は脅されているか、もしくは、何かしらの別の目的があって、一時的に協力しているかということになるわけだが…

 

「『地球の本棚』では、人の感情までも検索できない…仕方ない。時間はほとんどないが、翔太に頑張ってもらうしかない」

 

時計を見ると、もう既に夕方といっても差し支えない時刻…17時を迎えようとしていた。今日の番組の収録は18時半から…それまでになんとか情報を掴めなければ、またしても後手に回る可能性が高い。

 

あとは相棒に託すべきだと判断したフィリップは、現在の状況と、調べてほしいことを伝えるべくスタッグフォンで翔太へと連絡を取った。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

継風TVの廊下…職員たちが慌ただしく行ったり来たりを繰り返す通路を、照井はボッーと見つめていた。

 

別に無駄に時間を潰しているわけではなく、・・・・ドーパントの正体が分かった今、行動すべきだとここまで来たのはよかったが、照井は行動を起こすことなく、テレビ局にいた。

 

『あそこで狙われていたのは誰だ?!…少しは周りを見ろ!お前がしようとすることで、誰かが傷つくかもしれないことを…少しは考えろよぉ!?』

 

照井の復讐を止めているその言葉…いつもであればここまで受け止めることはなかった筈だが…胸に響いたその言葉が頭を離れず、昨日殴られた右ほおの痛みが思い出される。

 

(…俺は復讐するためだけにここまで来た筈だ…そうすると決めた筈だったのに……事実は小説より奇なりとはいったものか)

 

今回の一件というよりも…頭を掠めるのはある思い出。事件がこの継風TVにて起こったのも、また何かの縁を感じさせられてしまうのも、照井の足を止める一因でもあった。

 

…♬♪♪…!

 

しかし、そんな考えを邪魔するかのように、胸ポケットにしまっていたビートルフォンが着信を告げる。誰かと思い、画面を見るとそこには「非通知」の表示があった。不審に思いながらも、電話に出ると、

 

「はい、照井です」

 

『ご機嫌はいかがかな、復讐鬼君?』

 

「っ!!?」

 

電話越しに聞こえてきた声…明らかに機械か何かで声を変えている不審人物からの電話だったが、何よりも照井を驚かせたのは『復讐』というワードだった。

 

『クククッ…俺を追って、またここに来るなんて…そんなに俺を殺したかったのかな?』

 

「…そうか。貴様があの氷のドーパントの正体か!?俺の家族を皆殺しにしたのも、お前かぁ?!」

 

『家族…?ああ、そんなことで俺を殺そうと、ノコノコまた来たわけだ。それはご苦労なことだ。アハハハハハハハハ!!』

 

「どこだぁ!?貴様はどこにいる!コソコソせずに、堂々と出てこい!?」

 

『隠れてなんかいないよ?だって、僕は君を見ているんだから』

 

「っ…?!」

 

自分を視界に捉えている…その一言に、慌てて照井は周囲を見渡すと、すぐ背後にそいつはいた。

 

青白いポリエステルの服に、人を嘲笑うかのようなピエロらしき被り物をしたそいつがいた…携帯電話を耳に当ててながら、小馬鹿にするように手を振ってもいた。

 

『復讐鬼君…僕を捕まえられるかな?』

 

「貴様ァァァァ!?!?」

 

挑発を最後に、電話を切った道化師は曲がり角へと姿を消し、完全に頭に血が上った照井は叫ぶのと同時に跡を追うべく駆け出していた。

 

道化師は通路を駆けていくのを、逃がしはしないと憤怒の表情を全く隠すことなく追従する照井。道化師の姿が部屋に消えたのに、迷うことなく照井もその部屋へと飛び込んだ!

 

「どこだぁ!?逃げずに俺と闘え!姿を見せろぉ?!」

 

倉庫らしき小さい部屋を見渡すも、先程の道化師の姿はない…出入口は他になく、どこかに隠れているに違いないと、乱暴に辺りを物色しようと照井が動こうとした時だった。

 

「チェック!」

 

聞き覚えのある言葉…前日に何度も対面して聞いたその言葉に気付くも既に手遅れだった。気配を感じ、振り返った照井の視界を埋め尽くすかのように、何もなかった空間に大量の鉄パイプや木材が浮かんでいたのだから。

 

そして、照井が反応するよりも早く…重力による縛りを受けたそれらが地面へと降り注ぎ…

 

…ガラン!!ガン!!カラァン!!…

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

「…オーケー…いい画だね。『復讐鬼の哀れな末路』…モブにはもったいないタイトルだね、これは…」

 

大量の鉄パイプやら木材やらが積まれたそこ…その合間を掻い潜るかのように流れ出てくる大量の血を見ながら…エディターメモリを抜き、ドーパントから人間の姿に戻った本松は歪な笑みを浮かべ、満足そうにその光景を見ていた。

 




いや、本当にお待たせしました。

構想は前々から考えていたんですが、時間とか気力とかがね…はい。
向こうの作品が落ち着いたので、こっちの更新頻度も上げられればと思ってます(願望)

多分、次回から戦闘回に入れるかと…えっ、それどころではないって?
いや、だってね…もうお約束ですから、敢えて言及する必要はないかと。というか、今回のラストの為だけに、エディター・ドーパントは生まれることになったのですから(黒笑)

書いてたら、半分ぐらい刃野さんとオリキャラの話が占めるという…そのうち、過去編とかも短編でいいから書きたいんですけどね…

それでは、また次回。
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