色々と詰め込んだお話ですが、まずはダブルの活躍となります!
余談ですが、(今さらですが)風都探偵の最新刊を読んだのですが…『えっ、嘘だろう?』みたいな感じで、シザース・ドーパントに驚きました。
あ、あっちは『シザーズ』で、こっちで出したのは『シザー』なので…いや、それでもビックリしましたよ、本当に(苦笑)
あと、『memory_of_heroez』もストーリー見ましたので、アニメ版『風都探偵』への準備は整いました!色々楽しみですね~
それでは、どうぞ!
「小鳥遊翠さん、ですよね?」
「えっ?」
番組の直前、準備も一通り終わって一息吐いていた女性に声を掛けるものがいた。突然のことに、驚きながら振り返った女性AD…小鳥遊は何事かと思っていた。
「お忙しいところ、急に声を掛けてしまい、すみません。実は自分、こういうものでして…」
首からかけているゲストパスが見え、外の人だろうと思っていた小鳥遊だが…流れるように差し出された名刺を思わず受け取ってしまい、それに目を落とすも、
「…探偵さん?かなり若そうなのに…」
「依頼人の方からはよくそう言われます。といっても、みなさんが驚くのはこの見た目で探偵というよりも、本当に困りごとを解決できるのかという面から、というのはほとんどですが」
「…探偵『風都』…もしかして、エリザベスさんたちがよく話してた探偵さん…?」
「おっと…なら、話が早い。それは助かり…」
「その…『マセマセの見栄っ張りだけど、いざという時には頼りになる』探偵さんって、よく二人して話してまして…」
「…そ、そうですか(…エリザベスにクイーン、どんな風に俺のことを吹聴してやがる!?)…コホン!実は、貴女にどうしてもお伺いしたことがありまして…」
ここで動揺が隠せてない時点ではっきりしたが、小鳥遊に声を掛けたのは翔太だった。一花とテレビ局に来てすぐ、護衛をガジェットたちに任せ、探偵服(ボストンバックに入れて持ってきていた)に着替え、こうして情報集めに来ていたのだ。
マスターとフィリップから得た情報を元に、まずは氷を使うドーパントの被害者であるADの同僚…小鳥遊へと声を掛けたのだ。そして、翔太は本題を切り出した。
「入院されている呉 球太さんのことでお伺いしたことが」
「っ…こっちに来て…!」
翔太の口から出てきた名前に息を呑んだ小鳥遊だったが、我に返ると翔太の手を掴み、人気のない物置へと連れてきた。
「…どうしてあなたがそのことを…あなたも私が呉君をあんな目に遭わしたって疑ってるの?」
着いた途端、小鳥遊が翔太に向けたのは怒りと疑いと、そして、悲しみが映った目だった。ただでさえ、第一発見者ということで警察から散々話を聞かれ、今も疑われている彼女にとって、その話が出てくる度に嫌な思いをしてきたので、当然といえば当然の態度だった。
しかし、それなりの場を探偵として踏んできた翔太は怖気づくことはなく、しかし、疑ってはいないということを表すかのように苦笑を浮かべながら口を開いた。
「そういうわけじゃないです。俺はガイアメモリ…近頃、勃発している超常犯罪を専門とした探偵なもので…俺は彼を襲った化け物を追っているんです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「奴はこのテレビ局にいる誰かで、昨日のあの爆発事故にもあいつが絡んでいるんです」
「っ…!?」
「そして、奴はもう一人の化け物と結託してある人を狙っているんです。今もその人は狙われてます…奴の正体を知るためにも、呉さんが襲われた事件のことを知りたいんです。お願いです、呉さんと話していたことを教えて貰えませんか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
流石に狙われていることが一花であること、エディター・ドーパントの正体が本松であることは伏せたが、話せる限りのことを伝え、翔太は帽子を取って深く頭を下げた。
今の翔太にはこれ以外の手はなかった…しかし、時間もない中、彼女から話を聞くためには、こちらのことを信じてもらうしかなく、何かしらのリアクションがあるまで頭を下げ続けようと…
「…あなたは捕まえてくれるの…彼を襲った犯人を…」
「…!」
そんな覚悟を決めようとした時、小鳥遊の言葉が耳に届き、翔太は顔を上げた。そこに見えたのは、不安と恐怖が入り混じった小鳥遊の顔だった。
「…俺は警察じゃありません。捕まえることはお約束できませんが、あいつの凶行を止める依頼を受けることはできます…必ず止めます」
「………いいわ。それで、何を聞きたいの?」
言葉だけでなく、その態度と目に宿った意志の強さに小鳥遊の方が折れた。翔太自身を信じてみてもいいと思えたのだ…それがフィリップや照井にない、人の心に寄り添うことを得意とする翔太だから、勝ち取れたものだった。
「事件のすぐ前、呉さんと揉めていたそうですが…何があったんですか?」
「…別に大したことじゃないのよ。私が勘違いして、彼に突っかかっちゃって…今、思えば、あの時、別れずにいたらとは思うこともあるけど…」
「本松ディレクターのことを調べている…呉さんはそう言っていたんですよね?」
「よくそこまで知ってるわね…警察にしか話してないのに。そう、あのクソディレクターのことを、呉君は調べていたの」
そこまで情報を掴んでいるのかと純粋に驚きながらも、小鳥遊は話を進めていく。
「本松は他人の手柄だろうと、利益になると分かれば掠め取っていくクズよ!この番組だけじゃない…企画からゲストの選定まで、呉君が主導になって進めていたのに…視聴率やスポンサーの反応がいいと分かったら、それをあたかも自分がしたかのように振舞って…!」
「それで、呉さんはそいつに関して調べ始めた、ってことなんですね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…どうやら、他にも何か理由があったみたいですね」
「……呉君は自分の手柄を取られても平気そうにしていたわ。本当は一番悔しい筈なのに…それでも、自分が立てた番組でみんなが楽しんでもらえるなら、それが今後も続いていくならって…そう言ってた。けど…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「本松が番組のスタッフに手を出そうとしたよ…例えば、私とかね」
「っ…?!」
自虐に近い笑みと共に告げられた事実に、翔太の顔が強張った。怒りで頭が冷えていくのを感じながらも、表に出すことはなく話の先を聞き続けた。
「別に襲われそうになったわけじゃないわ…ただ、あいつは立場をいいことに関係を迫ってきたの。それで、ある日、キスされそうになったところで呉君が助けてくれたのよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「同期の中でもパッとしないイメージだったんだけど…そのことがあってから、一緒にいることが増えて…仕事終わりに飲みに行った時にする話はいつも決まって番組のこと…どうすればもっと面白いと感じてもらえるか、どんなものが人に見てもらえるか…外見からは全然見えないぐらい、熱い思いを持ってるとは知らなかったから驚かされた。
そんな彼が、ここ最近付き合いが悪くなって…他の仕事が入って忙しくなったのかと思えば、今までしたことがないようなミスまでするようになって…私、心配になって聞いたんだけど、彼は何も教えてくれなくって…
それで、彼が襲われたあの日、こう言っちゃったの…『どうせ好きな女性に現を抜かしてるんでしょう!?』って…それで喧嘩別れしたんだけど、その後、呉君から話がしたいってメールがあって、先にいつもの居酒屋に行ってたんだけど…」
「呉さんはいつまで経っても来ず、探しに行ったあなたが彼を発見した…そういうことだったんですね」
「…ええ。急いで救急車を呼んで、それからは警察に話をして…今に至るわけよ」
小鳥遊の独白を聞き終え、翔太は頭を巡らせていた。警察の情報からして、小鳥遊は白いドーパントではないと考えていたのと、凍傷事件の方を探れば、何かしら掴めるのではないかと期待していたのだが、彼女から事件に関わることは得られなかったと落胆しそうに、
「…そういえば…警察に話してなかったことなんだけど…」
「えっ…?」
無駄足だったかと諦め掛けていたところに、何かを思い出した小鳥遊の言葉が響いた。
「えっと…私が見つけた時、まだ彼の意識はあったのよ。それで、その時に言ったの…『気を付けて…あいつらは君を狙ってる』って」
「あいつら…?」
「ええ。私も気になって、私なりに他のスタッフに話を聞いてみたんだけど、どうやら呉君は、襲われる前に本松だけじゃなく、他の誰かのことも調べていたみたいなの…本松に関わりがある人を知らないかって…」
「本松には部下がいたってことですか?」
「部下かどうかは分からないわ…本松に弱みを握られている人も少なくはないし、あいつは人の隙につけこむのが得意な人間だから…」
苦々しく、そして、吐き捨てるようにそう言い切った小鳥遊の表情は本心を晒し出しているかのようだった。その姿を見ながら、翔太は先程の話を纏めていた。
(被害者の呉さんは本松を探っていた…ってことは、本松の協力者にも検討をつけていたんじゃないか?そして、それを知ったから協力者がドーパントの力で口封じに…
白いドーパントの狙いが彼女だったと分かって、わざと遠ざけたんだろうな。もちろん、本松たちのことを調べるのに必死だったっていうのもあったとは思うが…まさか、狙われているとは伝えられないよな)
呉が小鳥遊にどういう感情を持っていたかは分からないが、それでも、彼の行動から察することはできる。下手に言い出せば危害が加わると思い、でも、誤解されているのに耐え切れず、打ち明けようとして襲われてしまったのではと…
(…やるせないよな)
事件の手がかりを得られなかったことよりも、呉と小鳥遊たちの現状に翔太はそう感じずにはいられなかった。そして、呉が為そうとしたことを完遂させるべきだと思ってしまうのが、翔太の悪い癖であり、誰にも真似できない長所だった。
「打ち明けてくれたこと、ありがとうございます。ここからは俺に任せておいて下さい。それとちょっとお願いしたいことが二つあるんですが…」
探偵帽を深く被り直し、言葉通りに二本指を立てながら、そのお願いを口に出した翔太に、小鳥遊は黙って頷くことで応えた。
「用意してもらいたい物と…それと、もしあったりしたらなんですが…」
(クソッ!?クソッ!?一体何がどうなってやがる!?)
怒り心頭…そんな言葉がぴったりハマるかのように、廊下を早歩きで移動していく本松の姿がそこにはあった。廊下の真ん中を我関せずの状態で行くため、何人ものスタッフと肩をぶつけることになるも、そんなことを気にしている余裕は本松にはなかった。
(…一体、どこの誰がこんなものを…?!)
邪魔者を始末し、仕掛けをも用意し、万が一のための手も打ったことで、全てが思惑通りに進み悦に浸っていた…番組が始まれば、ガイアメモリの力で一花をどうとでもできると高をくくり、後は時を待つだけと思っていた矢先に、
『貴方の真実を全て暴露します。 マスコミなどに知られたくなければ、一人でE5スタジオに来て下さい 呉』
自身の部屋のドア下部に挟まれていたそれを見た瞬間、本松の頭の中で何かが切れたような音がした。自分のプランにないトラブルに見舞われたことに対する怒りと、すぐさま対処しなければという焦燥感が優り、本松は急いで呼び出された場所へと向かっていた。
もちろん、無策で突っ込むほど本松も馬鹿な男ではなかった。エディター・メモリは持ってきており、スマホを片手に操作しながらも、この先の展開を予想して、万全の体勢で望もうとしていた。
「おい!誰だ、こんなふざけた手紙を用意し…っ?!」
スタジオに通じる扉を乱暴に蹴り開き、怒鳴ろうとした本松だったが、視界に捉えたその姿に思わず言葉が詰まった。
『…お久しぶりです、本松ディレクター』
「っ…!?お前…その声、呉か…!」
本松の視線の先…真っ黒なコートにサングラスと帽子をした姿が分からぬ人物…しかし、聞こえたその声は、本松がよく知る人物のものであり、ここにいる筈がないAD呉の声だった。
「ば、馬鹿な…!お前は意識不明のはず…いつ目覚めやがった?!」
『僕がここにいるのは、貴方がしてきたことを暴露するためですよ。僕や小鳥遊…いいや、横領から脅迫といったあらゆる犯罪を告発しに来たんです』
「…!?また、その話か…!」
『僕を襲って安心したつもりでしょうけど、証拠は他の場所に預けてあります。貴方が罪を認めないのなら、今度こそそれを日の目に晒すだけです』
「…!まだそんなものを…あいつを唆して襲わせた時に壊させたのはあくまでも一部だったわけかぁ!?」
「…なるほどな。それで呉さんは襲われたってわけか」
「っ?!」
背後から突如として聞こえてきた声に、本松は思わず振り返る。すると、積まれていた機材やスタジオのセットといった物陰から出てくる影が三つ…先程の声の主である翔太と、事の成り行きを見守っていた一花と小鳥遊の姿だった。
「お、お前ら…これは…?!」
「別に種明かしをしてやる必要もないんだが…あんたみたいな人間にはそっちの方が色々と効きそうだしな。そこにいるのは呉さんじゃない…それどころか、人間でもないんだよ」
「なぁ…!」
精神的に追い詰めようと解説を始めた翔太の言葉に、本松は再び呉の声を発していたそれへと視線を戻した。すると、黒い恰好をした人物…いや、その物体が小さく動いたかと思えば、乗っかかっていた帽子がズレ落ち、
『…お久しぶりです、本末ディレクター』
「カエルの…ロボットだと…!?」
「そう、フロッグポットっていう小型スピーカー搭載のガジェットでね。こいつにはサンプリング機能もあって、データさえあれば自在に声を作り出せるのさ」
先程と同じ声と言葉…呉その人とそっくりのものがカエルを模した機械から発せられていることに、流石の本松も、そして、作戦を聞いていたとはいえ、実際に目の当たりにした小鳥遊は驚いていた。
翔太から『呉の声が分かる何かを持っていないか?』と、等身大の人形らしきものと併せて要求された時には何事かと思い、今回の一計を聞いて上手くいくのかと思っていたところに、こんな光景を見ることになるとは思ってもみず、小鳥遊は開いた口を閉じることができずにいた。
そんな中、手元に戻ってきたフロッグポッドから疑似メモリを抜き、更なる追い打ちを掛けるように翔太が口を開いた。
「そして、もちろん録音機能も搭載されてる。さっきの会話も全て録音してたわけだ。これで警察も重たい腰を上げるだろうな…凍傷殺人未遂事件の協力者さん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
冷静になったことで、翔太の言葉通り、自身が嵌められた上に追い詰められたことを理解した本松は、苦々しい表情をしていた。そんな本松を糾弾するように、我に返った小鳥遊が口を開いた。
「あなたが…あなたが呉君をあんな目に逢わせたのね!?」
「…はぁ~。バレたらなしょうがない…だが、勘違いしないでぇほしいなぁ~。俺があいつを襲わせるように仕向けたのは、元はといえば、お前が俺の誘いを断ったからだろう?」
「…えっ?」
「たかがADがディレクターに抵抗して…その上、ちょっとした横領を大げさにして、『自首して下さい』…なんて、自分は間違ってませんみたいな態度で言い放ってきて…ふざんけじゃねぇよ!?
この地位にいる俺が偉いんだぁ!全部、俺のやることに従い、黙っていりゃいいんだよぉ!?」
「…本松さん。あなたに良心はないの!」
「良心…?これはまたガキ染みたことを言ってのけるねぁ、一花ちゃん!この業界、良心なんてあっても意味なんてないんだよ~!たかが高校生が、女優気取りで俺様の番組に出ること自体がNGなんだよぉ!?」
「「…っ?!」」
本心を隠すことなく、小鳥遊と一花の言葉を一蹴する本松。その反応に、小鳥遊は更に怒りを募らせ、一花はショックを受けていた。しかし、そんな二人を制するように左腕を上げた翔太は、静かに、そして、それ以上に怒りを覚えていた。
「本当にどうしようもねぇ男だな、あんた。男の風上どころか、人に言ってはいけないことまで平然と言いやがって…」
「クハハハハァ!俺は何も間違ったことは言ってない!これこそがこの業界の真理…そして、俺にはその真理すらも支配する力が、この手にあるんだよぉ!?」
『Editor』
「フゥン!」
翔太の言葉さえも全く堪えることなく、それどころか、隠し持ってきていたガイアメモリ…エディターのメモリを起動した本松は、生体コネクタが出現した右瞼に挿入した!
独特な奇怪音と共に本松の体が、「編集者」の記憶を体現した黒きボディ…エディター・ドーパントへと変貌を遂げた。
『プランが狂ったのなら、正しくなるように編集すればいい!俺に逆らうものは何もかもNG…全て、俺の思うがままに動けばいいんだよ!?』
「はぁ…その考え自体が既に間違ってることにも気づけなくなってんだな…本当に救いようがないクズだ…けど、それでもあんたも一人の人間だ。犯した罪を償ってもらうためにも…ここで俺が止めてやるよ…!」
『止める…?仮面ライダーでもない限り、俺を止めることはできないぜぇ!?』
「…ああ、ちょっと訂正するよ。俺、じゃなくって…俺たち仮面ライダーが、っていうのが正確だったな…フィリップ!」
自身の正体を知った3人を始末する…暗にそう告げたエディター・ドーパントだが、彼は仮面ライダーダブルという存在をあまりにも知らなさ過ぎたのだ。
既に自身の正体は看破されていたことも、そして、目の前に翔太こそが、その仮面ライダーの片割れであるということを知らないでいたのだから…もっとも、ダブルの変身システムやらフィリップに備わった能力そのものが、ある意味特殊過ぎるせいでもあるのだが…
全く動じることなく、自信の笑みを浮かべる翔太が取り出したダブルドライバーを見て、エディター・ドーパントが動揺するも、気付いた時には手遅れだった。
「…やっと出番か」
秘密ガレージのソファーに寝転がる形で待機していたフィリップが、自身の腰に出現したドライバーを見てそう呟き、サイクロンメモリを起動させた。
『Cyclone!』
『Joker!』
それに合わせるかのように翔太もジョーカーメモリを起動させ、互いに装填する側の方へと腕を動かすことで変身ポーズを取ったところで、
「「変身!」」
『Cyclone! Joker!』
転送されたサイクロンとジョーカーのメモリが挿入されたダブルドライバーを開き、お決まりの効果音と共に翔太の姿が、ダブル サイクロンジョーカーへと変わる!
『ば、馬鹿な…?!仮面ライダーはあのガキたちだったんじゃないのか!?』
「言っただろう?俺たちがお前を止めるって…俺たちは二人で一人の探偵で、仮面ライダーなんだよ」
「…あなたが…噂の仮面ライダー…?」
ファングジョーカーやアクセルが変身するところを眼前で目撃していたせいもあり、翔太が変身したことにエディター・ドーパントは驚くことしかできず、そもそも、さっき知り合った人物が仮面ライダーだと知った小鳥遊は更なら驚きに襲われていた。
そんな面々を置き去りに、エディター・ドーパントに対抗できるメモリにすぐさまハーフチェンジしようとドライバーを閉じ、サイクロンとジョーカーのメモリをダブルが抜いた時、
「本松さーん、ここですか?もう本番がはじ…うわぁ、なんだこれ…!?」
「『『「「!?」」』』」
おそらくエブリィ・トーカーのスタッフが本松を探しに来たのだろう…スタジオに入り、続けていた言葉が悲鳴に変わり、一同の意識が彼に集まってしまった。
そして、それを見て真っ先に動いたのはエディター・ドーパントだった。
『チャンス!?………チェック!』
能力を発動させ、指パッチンを鳴らす…次の瞬間、積まれていた荷物が一人でに動き出し、スタッフと小鳥遊、そして、一花へと降りかかってきたのだ!
『クハハハハァ!守れるもんなら、守ってみやがれぇ~!?その間に俺は逃げさせて…』
『Luna!』『Metal!』
『Luna! Metal!』
エディター・ドーパントの勝ち誇った声を遮るかのように、神秘的なものと轟々しいものが重なり合った効果音が響き、ダブルの手元に出現したそれが伸びた!2度振るわれたそれは、瞬く間に3人に降りかかろうとしていた荷物を、別の咆哮へと弾き飛ばしていた。
「そうはさせてたまるかよ…!一花!ここは俺に任せて、小鳥遊さんとそこのスタッフさんを連れて、早く逃げろ!?」
「う、うん!」
『逃がしは、ぐおおおぉ!?』
一花たちにここから逃げるよう告げながら、エディター・ドーパントが能力を発動できないよう、伸縮自在な鉄鞭と化したメタルシャフトで追撃を加える。そして、一花たちが無事に逃げられたところで、改めて意識をドーパントへと集中させるダブル。
『エディター・ドーパントの能力は既に検索済みさ。確かに強力なメモリだが、それは周囲の環境を操れるからこそであり、咄嗟に戦闘になった際にはその力を思うように発揮できない』
「そして、能力を発動させるのにイチイチ指を弾くことによる、編集完了のポーズをとる必要がある…だったら!はああぁぁ!!」
フィリップの検索により、既にエディター・ドーパントの攻略方法を察知していた二人は、能力発動のための隙など与えないとばかりに、メタルシャフトを乱打する。
縦横無尽に振るわれる鉄の鞭を避けるどころか、まともに喰らい続けるエディター・ドーパントに反撃する間などあるわけもなく、
「ぐあああああああああああぁぁぁ…!?」
終いには、完全に体勢を崩したところを胴体を拘束される形でメタルシャフトを巻き付けられ、ダブル渾身の力で壁へと叩きつけられてしまった。
メカメカしいボディは全身傷だらけで、叩きつけられた壁から零れ落ちた小さな破片がその身体に降りかかっていた。
「さて…今度こそトドメだな」
前回はこの時にもう一体のドーパントに邪魔をされてしまい、メモリブレイクをすることができなかった。今度はそんなことがないように、周囲に最大限の警戒をしながら、ドライバーからメタルメモリを引き抜く。
ルナメタルのマキシマムドライブ『メタルイリュージョン』は自在に操れる複数の鉄輪を生み出し、相手にぶつける技だ。妨害してこようとも、エディター・ドーパントに近づけることなく、同時にメモリブレイクを図ることもできる。
ともかく、邪魔が入る前に終わらせようと、メタルシャフトにメモリを装填しようと…
『クククッ…クハハハハハハハハハハ!!』
「『っ?!』」
急に高笑いをし出したエディター・ドーパントに、思わずダブルも警戒をしてしまう。もう既にもう一体のドーパントが近くにいるのか…そんな疑念が頭を過ぎるも、ドーパントは笑い終えると、言葉を発した。
『本当に驚いたぜ…まさか、もう一人の仮面ライダーが、別の奴が変身する仕組みになってるなんて…折角あの赤い復讐鬼の方を葬ってやったっていうのになぁ~』
『…赤い…?…っ、まさか!?』
「てめぇ…!照井に何かしたのかぁ!?」
『な~に…ちょっと敵だと仄めかしたら血相を変えて追っかけてきて、まんまと俺の罠に嵌ってくれたよ、あのガキはぁ~。大量の角材やらパイプやらに潰されて、真っ赤な血を流していたから……今はもうあの世に行ってるだろうなぁ~』
「…てめぇ、なんてことを…!?」
『俺の撮影プランを邪魔したからだよぉ!それに…中野一花とクソADも始末できるしなぁ~…!』
『なんだと…!?まさか、もう一体のドーパントに!?』
照井を始末したと告げるだけでなく、もう一体のドーパントに一花たちを襲わせうようとしている…未だに諦めようとしていないエディター・ドーパントに舌打ちをしたくなる翔太に対し、フィリップも焦燥感を覚えていた。
そして、そんな二人…ダブルを更に挑発するかのようにエディター・ドーパントは愉快そうに口を開く。
『本当に…保険を掛けておいて正解だったぜぇ。ここに来る時にメールで呼び出しておいたからなぁ~』
『呼び出す?………しまった?!さっきの…』
エディター・ドーパントの言わんとすることが分かってしまい、フィリップが慌てた声を出すも、既に手遅れだった。
『お前たちの目の前にいたのになぁ…俺の忠実な下僕がなぁ…!』
「こ、ここまで来れば大丈夫だと思うッス…!」
スタッフの男性に誘導される形で避難してきた一花と小鳥遊…息を切らせながら辿り着いたのは、誰もいない、そして、セットもない、ただ広い空間だけが存在しているスタジオだった。
「あ、ありがとう、鴨井さん。助かりました」
「…そうね。それよりも、早く警察に連絡しないと…!」
「その必要はないッスよ」
「えっ…?」「…っ!?」
一花にそう呼ばれた男性スタッフが放った一言に、一花と小鳥遊が息を呑む。先程まで味方だと思っていた人物から、直前まで感じていた嫌な気配がしたような気がした。
「僕は…僕はずっとあなたを見ていました、小鳥遊さん。あの日も…僕はあなたを見ていたんだ…」
「か、鴨井君…どうしたの?」
「…待って、小鳥遊さん…!」
いきなり様子がおかしくなった鴨井に戸惑いを隠せない小鳥遊だが、彼女を庇う様に手を引いた一花は、自身が感じる嫌な感覚が間違っていないことが分かってしまっていた。
目の前にいる人物…話したことはほとんどないが、一花は彼を知っていた。
鴨井良造…エブリィ・トーカーだけでなく、様々な番組でカメラアシスタントを勤めているスタッフで、寡黙だが、仕事はそつなくこなす…一花も何度か番組で見かけたことがあり、その際にスタッフのこぼれ話から聞いた程度に知っていた。
しかし、眼前の人物は…一花が知る彼の人物像とはどこかが違っていて…
「も、本松ディレクターがあなたを襲おうとしていた時…ぼ、僕も近くにいた…け、けど…僕は動けなくって…そしたら、呉の奴が…!?」
「あ、あの時…君もあの場所に…」
「(コクッ)…き、君のことは…僕が守らないと……でも、僕にそんな力はなくって…せめて本松ディレクターを止めないとって……でも、違ったんだ」
「「…!」」
ボソボソと話していた鴨井の表情に笑みが…狂気を思わせる笑みがその唇に浮かぶ、一花と小鳥遊は後退ってしまった。
「本松さんが教えてくれた…力がないのなら手に入れればいいって…欲しいものがあるのなら強引に奪えばいいって……そして…そのために邪魔者がいるのなら…それを消去するための力を手に入れればいいってぇ!?」
「…っ!?それは…!」
その狂った思考が本心だとばかりに、高らかにそう宣言した鴨井が胸ポケットから取り出したそれ…『S』の頭文字が刻印された薄水色の歪な造形が特徴の、ドーパント用のガイアメモリを目にした一花が息を呑む。
「あなたが…昨日、駐車場で私たちを襲ったもう一体のドーパント…!」
「どー、ぱんと…?」
「さっきディレクターさんが変身した怪物の名称です…鴨井さん、考え直して!?それは危険な道具なの!使い続けたら、どうなるか分からないんだよ!?」
事情が分かっていない小鳥遊に最低限の説明をし、まだなんとかなるのではと一存の望みに賭けた一花が説得を図るも、
「ありがとう、一花ちゃん…そういう気遣いができる女優さんは僕の好みだよ。君のことも、カメラを通していつも見ていたよ……でもね、僕は許せないんだよ」
「えっ…?」
「君も小鳥遊さんも…僕とは一緒にいられない。仕事だけの関係、いつも一緒にはいられない…だから、こう考えたんだ。邪魔なものは氷漬けにして壊して…欲しいものは氷のオブジェクトにして、永遠に僕のものにしてしまえばいいんだって!?」
「「…!?!?」」
「そうすれば、衰えること、老いることも、別れることにもならずに済む!?本松から、このメモリを売っている人を紹介してもらって…この力と出会った時、僕はこれが運命だと感じたんだ!これが僕の使命、やるべきことなんだって!?」
『Snow man』
説得どころではなかった…完全にメモリに心を呑まれてしまっていた鴨井の狂気を魔の当たりにした一花はそれ以上何も言うことができなかった。
そして、話は終わりだとばかりに鴨井はスノーマンメモリを起動させ、左手首へと挿入した!本松同様、奇怪な音と共に白き歪な雪だるまを思わせる異形の姿…スノーマン・ドーパントへと姿が変わった!
『サァ…フタリヲエイエンニシテアゲルヨ(さぁ、二人を永遠にしてあげるよ)』
一花と小鳥遊に、最大の危機が迫っていた!?
「くそっ!?さっきのスタッフまでもが仕込みだったのか!?」
『翔太?!すぐに決めて、向こうに行かないと?!』
『クハハハハハハ!?気付いたところで、もう遅いんだよ!?お前らもなぁ!?チェェェェック!?』
策に嵌めた筈が、いつの間にか立場が逆転していたことに気付いたダブルが慌ててメモリブレイクを試みようとするも、時間稼ぎをもしていたエディター・ドーパントがその隙を見逃す筈もなく、準備を完了させていた能力を発動させた!
「な、なに……うおぉ!?」『床が…?!』
床が硬度を失くしたかのように一気に崩れ、重力に引っ張られたダブルが下のフロアへと落下した。幸いなことに下のフロアもスタジオらしく誰もいなかったが、状況としては最悪だった。
「…倉庫…?」
『…!翔太、早くここを離れるんだ!?』
電気が点いていないせいでここがどこなのか把握するのが遅れるダブル…しかし、物がいくつも無造作に置かれたり積まれたりしているこの場所の危険性を察知したフィリップが叫ぶも、一手遅かった…!
『チェック!!』
「『っ!?」』
エディター・ドーパントの声に、咄嗟にその場から飛びのくダブル…次の瞬間、転がっていた鉄パイプが、ダブルのいた場所へと勢いよく突き刺さった!
その時、翔太もようやく理解した…周囲に転がっている・放置されている全ての物が自身の脅威となろうとしているのだと…そして、上階の穴から覗き込んでいるドーパントは高みの見物をしながら攻撃し放題なのだと…
『チェック!!チェック!!チェェェェェク!?』
左手で自身の頭部カメラに映っている光景を編集しながら、右手を鳴らすことで能力によりその編集を現実世界へと反映させていく!
次々と飛んでくるものをなんとか躱していくダブルだが、マキシマムドライブはおろか、メモリチェンジする暇さえもなく、完全に防戦一方へと追い詰められていた。だからこそ、エディター・ドーパントの真なる目的へと気付くのが遅れてしまった。
『さぁ、そろそろクライマックスにしようじゃないかぁ~!』
「っ…ヤバい、逃げ場が!?」
ダブルの動きを制限するように飛び交ってきた複数の角材を避けた瞬間、身動きを封じるかのように鉄パイプたちが迫り、ギリギリで避けたものの、脚の合間や脇の下の部分を擦り抜けたパイプがダブルに纏わりつき、地面に刺さることでその身体を逃げられない様に固定した。
そして、先程まで重力を無視しながら襲い掛かってきていた無数の物体がダブルの上空に集結し、今にも彼らを圧し潰そうとしていたのだ。
『タイトル…『ゴミの下のゴミ』といったところか…チェェェェェェェェックゥゥゥ!!!』
「っ…フィリップ!?」『っ…翔太!?』
止めとばかりに、今日一番の指パッチンを右指で鳴らした瞬間…物体の塊が重力に引っ張られるよりも早く…ダブルを押し潰した…!
『クククッ……クハハハハハハハァ!?クハハハハハハハハハハハハハ!やったぜぇ、やってやったぜぇ?!』
勝利を確信したエディター・ドーパントは穴から覗き込むのを止め、高笑いを始める。無理もない…照井だけでなく、あのダブルまでもを倒したと思ってしまったのだ。
『俺様に敵う者は誰もいない!?俺様こそが全てを手に入れ『…ドゴン…!?』…なぁ…?!』
しかし、その声を掻き消すかの如く、轟音が地面の振動と共に鳴り響いた!何事か、咄嗟に振り返ったエディター・ドーパントの視界に映ったのは…先程まで自身が能力で操っていた無数の無機物が、暴風によって吹き飛ばされながら下層に繋がる穴から出てくる光景だった。
『Blizzard!』
『Blizzard! Dinosaur!』
その音が聞こえた時、下層から何かが飛び出してきて…
「今のはヤバかったぜ…けど、脱出成功だな」
『て、てめぇ…生きてやがったのか!?』
下層から飛び出したのは、仕留めていたと思っていたダブルだった。しかし、その姿は先程とは少し異なるものに変わっていた。
無機物の塊に押し潰される直前、メモリチェンジできる時間が僅かに生まれ、咄嗟にサイクロンダイナソーへと変わることに成功していたのだ。そして、塊を一旦受け止めることで潰されたかのように見せ、ドーパントが油断した瞬間に暴風で塊を吹き飛ばし、戻ってきたのだ。
そして、その途中で更なるメモリチェンジを行い…ソウルサイドが緑から氷白へと変化したブリザードダイナソーへとチェンジしたのだ。
『…ぐぅ…!だったら、また下に落っことしてやるだけだぁ!?』
『そうはさせない…!』
先程、ダブルが戻ってくる際に辺りに撒き散らした物を操り、再度攻撃を仕掛けようとするエディター・ドーパントだったが、フィリップによって右手を動かすダブルが先手を打った。
『Blizzard! Maximum Drive!』
マキシマムスロットに装填されたブリザードメモリがダブルの右足に絶対零度を集中させ、それが充填する直前に振り上げた右足を勢いよくダブルが踵落としの要領で地面に振り下ろすと…!
『…なぁ、ぐおおおぉぉ?!』
ダイナソーの力であれば、容易く砕いたであろうコンクリートの床は砕けることはなかったが、しかし、その足から発せられた絶対零度がコンマにも満たない一瞬で部屋全てを凍結させてしまったのだ!
まさかの大技に、予想すらしていなかったエディター・ドーパントも腰から下を凍結させられてしまい、身動きが取れなくなってしまった。
『エディターメモリのもう一つの弱点…それはあくまでも能力によって動かせるのは、そのカメラに映した画面によるものだけということ…つまり、それ以上の強力な力で固定されたものは簡単に操ることができない…こうやって、全てのものを凍結させてしまえば、お前が操れるものは皆無に等しくなる』
ブリザードエイジ…ダイナソーメモリの力で昇華したブリザードメモリの力を解放することで、周囲一帯を絶対零度の空間で包み込む超範囲拘束攻撃を目的としたマキシマムドライブを、エディター・ドーパントの能力を封じる秘策として繰り出したのだ。
もっとも、ブリザードダイナソーの特性上、自身にとっては問題ないが、この技を含め、周囲に人がいてはそう多用することができないのだが、スタジオという小さな密室においてのタイマン勝負はその心配をする必要がなかったのも大きかった。
マキシマムドライブを発動し終えたブリザードメモリをドライバーに戻しながら、二人は今度こそ決めるべく、決め台詞と共に今度はドライバーからダイナソーメモリを抜き、マキシマムスロットに装填する!
『Dinosaur! Maximum Drive!』
「『さぁ、お前の罪を数えろ!!』」
マキシマムスロットのスイッチを右手で押すと同時に、左鍵爪を指さす様にそう宣言し、必殺技を放つ構えを取る。
「『…うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!』」
二人の方向に呼応するかのように、既に凍結している氷を塗り潰すかのように更なる凍気が地面を走る。それがエディター・ドーパントの足元をくぐり、背後に回った瞬間、その背中を押し流すかのような雪崩が発生した!
『があああああああああああああああああああぁぁぁぁ!?!?』
拘束されているエディター・ドーパントは為す術もなく、その雪崩に巻き込まれた。そして、その雪崩はダブル目掛けて向かって行くも、ダブルは避けるどころか、左半身に左鍵爪を下から振りかぶる様に構えて…
「『…ダイナソーアヴァランチア!!』」
二人の掛け声と同時に、雪崩ごとアッパーを放つかの如く雪崩の中にいたエディター・ドーパントの身体を深く切り裂いた!防御することもできず、まともにその強撃を受けたドーパントの身体が宙に打ち上げられる形になり、
『ぐううぅぅ…ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!?』
マキシマムドライブのエネルギーが全身を駆け巡った瞬間、そのボディが大爆発を起こし、周囲に氷鱗を撒き散らした。そして、爆発から抜け出たドーパントは、地面に落ちる瞬間、元の人間の姿へと戻っていた。
「があぁ…!ぐうううぅぅ……ぅぅう…!」
メモリブレイクに成功し、呻き声と共に完全に意識を失った本松の顔の傍に、砕けたエディターメモリが確認できたことにホッと一息吐きつつも、ダブルはすぐさま意識を切り替える。
「よし…次は一花か…!?一体どこに連れていかれちまったんだ!?」
『時間がない!?騒ぎになるのはしょうがないが、変身したまま探しに行こう!ガジェットたちも総動員して…!?』
…ゴオオオオォォォ!…
「…なんだ、今の振動は…!?」
すぐさま一花たちの救援に行かなければと、移動しようとしたダブルだったが、フィリップの言葉を遮るように地面が大きく揺れ、何かが起こったのだと察することになった。
『サァ…フタリヲエイエンニシテアゲルヨ(さぁ、二人を永遠にしてあげるよ)』
少しだけ時間を遡り…スノーマン・ドーパントに迫られ、最大の危機を迎えていた一花と小鳥遊。
五つ子たちの中で、二乃、五月に次いでドーパントとの接触率が高い一花ではあったが、それでも、一高校生である彼女にこの状況をどうにかしろというのは大変な酷な話だった。
なんとか逃げなければと頭では分かっているのだが、足がすくんでしまい、後退ることが精一杯だった。背中に小鳥遊を庇う様に立つのは長女としての自然な行動か…しかし、そんな一花の行動さえも、スノーマン・ドーパントにとってはその歪んだ愛情を加速させるものにしかならず…
『アンシンシテ…イタイオモイハサセナイヨ。フタリトモ、ズットズットボクガミテテアゲルカラ!(安心して…痛い思いはさせないよ。二人とも、ずっとずっと僕が見ててあげるから!)』
一花と小鳥遊を、自身の永遠にしようと、凍気が漏れ出している両手を近づけようと迫っていた。
(…もうダメ…!?殺される…!)
あと僅かの距離にまで迫られ、助けを求められる相手もおらず、諦めかけた一花が思わず目を瞑ろうとした…その時だった!
「伏せろ、中野長女!?」
「っ…!小鳥遊さん!?」「えっ…きゃあぁ!?」
その呼び方をした声に、咄嗟に反応した一花が小鳥遊を引っ張る様に共にその場にしゃがみ込む…すると、すぐさまその頭上を通り抜けた何かが、スノーマン・ドーパントへと直撃し、その図体を吹き飛ばした。
『グゲェェ…!?ナ、ナンダ…?!(ぐげぇぇ…!な、何だ…?!)』
いきなりの攻撃にかなりのダメージを負ったスノーマン・ドーパントはすぐに立てずにいた。それと対照的に、一花たちの目の前に、地面を陥没させる程の音と共に落ちてきたのは…シザーズ・ドーパントの時と同じように、またしても彼女を助けたエンジンブレードだった。
「…あの程度で俺が死ぬとでも思ったのか?あのディレクターはとんだ節穴の目の持ち主だったらしいな。どんな人物でも、死体の確認すらせずに勝ちを確信するなど…ド三流以下のやることだ。」
辛辣で、そして、全く容赦のないドライ言葉が背後から聞こえ、一花はそちらへと視線を移した。その姿に一瞬目を見開くも、何を言えば言いか分からず、目で追うことしかできない。
そんな一花の視線などお構いなしに、全身はズタボロ、引き摺る左足からはかなりの血が未だに流れ出ていたが、その目の闘志は全く尽きるどころか、命の限り燃やし走り続けようとする意志の炎が…エディター・ドーパントの卑劣な罠に掛かりながらも、不屈の意志で戻ってきた照井の目に漲っていた。
『オ、オマエハ……オマエハアノトキ、モトマツガシトメタハズ…?!ドウシテイキテイル!?(お、お前は……お前はあの時、本松が仕留めたはず…?!どうして生きている!?)』
「知らない様なら、次からは覚えておけ……あの程度で俺は死なない。死ぬわけにはいかない…まだ、やらなきゃいけないことが…あるんでな…」
「…照井、君…!」
アクセルドライバーを既に装着し、スノーマン・ドーパントから一花たちを庇うように立ちはだかった照井のその姿に、一花が思わず呟く。
「貴様らが何をしようが…貴様のその愚行……俺がここで終わらせてやる」
静かに、だが、はっきりと怒りと気合の入ったその言葉と共に、照井はアクセルメモリを起動させる!
『Accel!』
「変…身!!」
『Accel!』
アクセルドライバーにメモリを装填し、右グリップを一捻りしたことで変身シークエンスが開始する。照井の眼前に8つの赤きメーター針のような紋章が環状に並び、エンジン音と共にその姿を仮面ライダーアクセルへと変える!
「…さぁ…思う存分、振り切るぜ…!」
落ちていたエンジンブレードを拾い上げ、いつものフレーズを放つアクセル。ようやく奇襲のダメージから立ち直れたスノーマン・ドーパントに斬り込み、その火ぶたが再び落とされることとなった!
最後の場面、多分…『知ってた』…と、皆さん思っていたかと(黒笑)
みなさん、心配してなかったと思いますけど、よくよく考えると、瀕死の状態なのに、本作だとあのエンジンブレードをぶん投げてますからね?もう本当…照井さんは本当に…(苦笑)
というわけで、次回が決着回となります。ちょっと駆け足でいった感はありますが、あくまでも本章のメインはアクセルなので…ダブルがさり気なく新技出してても、アクセルがメインですので(大事なことなので二回言いました)
ちなみに、照井がどうして一花たちの元へと駆けつけられたかというと、
①エディター・ドーパントたちが立ち去って、しばらく意識を取り戻す
②ドーパントたちを探している中、逃げている一花たちを目撃
③その後をなんとか追い、一花たちがスノーマン・ドーパントに襲われそうになっていたところに駆けつけ、エンジンブレードをぶん投げる!
みたいな流れだったわけで、偶然に近いものです(笑)
それでは、また!