仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

82 / 100
ようやくライダーパート、最終局面です!
色々と書こうとしていたら、滅茶苦茶長くなりました!

あれらあの人とかも出てきます!アクセル暴れまくりです!

それではどうぞ!


第80話 「テレビ局に潜むE/死なない男」

『Engin! Steam!』

 

「だあああぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐああぁ?!」

 

覇気が込められた気合と共に何度も振り下ろされるエンジンブレード…重音が散る火花と共に響き、スノーマン・ドーパントの硬いボディを斬り裂いていく!

 

怒りのあまりに冷静を完全に失っていた前回とは異なり、幾分かの冷静さを保つアクセルは的確にスノーマン・ドーパントの脆い部分を狙っていた。

 

スノーマン・ドーパントは文字通り『雪だるま』の記憶を内包した力を持つ。前回での奇襲では力に一辺倒した攻撃だけになってしまい、あのダブルを動けなくしてしまう程の凍結能力を反映させた硬いボディにダメージを与えることができなかった。

 

しかし、あくまでも雪だるまの形に寄った異形の姿だとしても、その姿が人型に近いことは変わりない…それに気付いたアクセルは、人体の急所や関節の防御が薄い部分を、エンジンメモリによって出力を限界に引き上げ、超高温の水蒸気を刀身に宿したエンジンブレードで次々と攻撃していたのだ!

 

「はああぁぁ!ふん!はあああああぁぁぁ!!」

 

メモリの相性が既に最悪なのに加え、今度のアクセルは我を失っていないのだ…戦闘のプロでもないスノーマンがその猛攻を捌けるわけがなく、その身に刃を受け続けていくことに…だが、

 

「ぐぅぅ…ぬうぅぅう…?!」

 

三連続の斬撃のあとに放った横右足蹴りでドーパントを吹き飛ばしたアクセルだが、振り上げたエンジンブレードの手が…いや、アクセルの動き自体が急に止まってしまった。

 

照井自身の意志で止めたわけではない…だが、秘策な罠によって負ったダメージがぶり返し、彼の身体が止めざるを得ない状態になったのだ。

 

取り落としそうになったエンジンブレードで地面に杖突くも、膝を突くように崩れ落ちたアクセルの姿に、ダメージから立て直したスノーマン・ドーパントも余裕を取り戻す。

 

(…!そうだ…強がってはいるが、こいつは死にかけ!?ぼくが…正しい事をしようとしているぼくがこんな凶人に負けるわけがないんだァァ!?)

 

自分のやっていることに疑念を持てなくなっているスノーマン・ドーパントが歪な笑みを浮かべ、苦しそうに息を吐くアクセルへと迫る!

 

それに気付いたアクセルも構えようとするも、まだ身体が言うことを聞いてくれず動けないでいた。その身体を地べたへと這いつくばらせようと、全身の雪の比重を右腕へと集中させたスノーマンがその凶腕を振り下ろした!

 

「ぬぅぅ!ぐうううぅぅぅ…!」

 

「オマエナンカツブレテシマエェェ!?(お前なんか潰れてしまえぇぇ!!)」

 

咄嗟にエンジンブレードを横に構えて受け止めるも、悲鳴を上げている身体に激震が走り、アクセルの口から更なる声が漏れる…徐々に押し込んでいく腕に力を込めるかのように、スノーマンの憎悪が籠った声が重なる。

 

「っ…舐めるなァァ!!」

 

…ブウウウウゥゥゥゥンン!!

『Jet!』

 

だが、アクセルもいつまでも好きなようにさせるかと言わんばかりに、なんとか底力を引き出し、ドーパントを跳ねのけた直後に、エンジンブレードのトリガーを引き、Aの文字を模したエネルギー弾を放つ!

 

腹部に直撃しそうになったそれを、スノーマンは今度は体の面積を腹部へと集中させることで防御力を上げる。エネルギー弾は当たったにも関わらず霧散してしまう。

 

(死にぞこないのくせにしつこい…こうなったら…?!)

 

すぐに倒せると思っていたアクセルの予想外の奮闘に、スノーマン・ドーパントが舌打ちしながら、焦りを覚えていた。もしももう一人のライダーを始末しようとしているエディター・ドーパントがやられたりすれば…いや、そもそもの話、エディターメモリの持ち主である本松に手を出される方が厄介だと、スノーマンは考えていた。

 

その焦燥感に襲われたスノーマンの視線が一花たちへと向く!

 

何も馬鹿正直にアクセルを相手にする必要はないのだ…スノーマンにとって重要なのは、一花たち二人を氷漬けにして永遠にすること…多少怪我をしようが、今の二人を手にできることさえいいのだ。

 

ならばと、一点集中していた雪氷の身体を両腕へと移したかと思えば、その両掌に二つの大きな雪玉を生み出していた。

 

「くっ、そうは…ぐぅぅ?!」

 

スノーマンが一花たちへと狙いを優先したことに気付いたアクセルが迎撃を図ろうとするも、アドレナリンが効いていたことでようやく動かしていた身体が、戦闘の負荷が重なった今、限界が訪れていた!

 

スチームを発動させようとしていたエンジンブレードを今度こそ取り落とし、その身体が肘を突いてしまった。

 

「コオッテシマエエエエエエェェ!!(凍ってしまえええええええぇぇ!!)」

 

「「…!?」」

 

ドーパントの咆哮に狙われている一花と小鳥遊の目が引かれる。このままでは、二人に雪玉が直撃することは確実だった。あのダブルでさえも動けなくなるものを、生身の人間が喰らえばどうなるか…それが分かっていても、アクセルは重力に引っ張れる言うことを聞かない身体を起こそうとしていた。

 

(…あんな…あんなふざけたことを…あんな思いをまた…!?)

 

『…お、にいちゃ、……』

 

『もし失敗でもすれば、中野一花が危険に晒されることぐらい、分かるだろう?!』

 

『お前は…今日、何のためにあそこにいた?!誰のためにあそこにいた?!あそこで狙われていたのは誰だ?!』

 

脳裏に蘇ったのは、自身の家族の最期…自分に助けを求めるように手を伸ばした妹の姿で…その光景に重なるようにダブルの二人から掛けられた言葉が思い出させられた。

 

「(っ…!?…俺はぁ…!)…うおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」

 

一瞬のうちに過ぎ去った脳裏の出来事を振り切るように…魂から叫ぶかのように立ち上がったその赤き鉄の身体が飛び出し、その凶腕から解き放たれた雪玉と、一花たちの間へと割って入った!

 

「っ…照井君?!」

 

「…来るなぁ、中野長女!?」

 

「っ!?」

 

背中からまともに二つの雪玉を喰らったアクセルの身体のほとんどが氷へと包まれる…庇われた直後は驚きのあまり硬直していたが、頭がようやく追いついた一花が心配のあまり駆け寄ろうとするも、僅かに無事だった頭部から発せられた怒鳴り声がそれを制止した。

 

赤き装甲のほとんどが雪氷で包まれ、頭部以外に無事なのは右手とアクセルドライバーだけであり、傍から見ればもう動くことはできないようにしか見えなかった。

 

「…言った筈だ…この程度で俺は死なぬ。それに…」

 

…ブウウウウゥゥゥゥンン!

 

そう…アクセルドライバーは無事だったのだ。

 

そのグリップ部分を操作する右手も…それさえ凍りついていないのなら何も問題はないのだ。轟音と共にドライバーからエネルギーが供給され、雪氷を突き破るかのように炎が噴き出し…!

 

「この程度の薄汚い氷で、俺が凍りつくこともない!」

 

「コ、コイツゥ…!?(こいつぅ…!?)」

 

「…貴様が誰を何度狙おうが…こんな狂った氷で誰かを凍らせることなど、傷つけさせなど二度とさせん!それが…仮面ライダーの流儀だというのならなぁ!」

 

ブウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥンンン!!

 

これが限界などではないと言わんばかりに、アクセルドライバーの右グリップを吹かせ、その全身に炎を纏わせたアクセルが、渾身の力を振り絞る!

 

先程以上の勢いで飛び掛かったアクセルが気合と共に拳の雨を降り注がせる…照井の心情に同調するかのように、アクセルメモリの出力が上がり、その拳と炎に力が乗る…上半身に体積を集中させることでなんとか凌ぐスノーマンだが、徐々にその勢いへと押し込まれ、一歩一歩後ろへと後退っていく。

 

「ク、クルナァ!?チカヅクナァァ!?(く、来るなぁ!?近づくなぁぁ!?)」

 

「ぐうううぅぅ?!」

 

やられてなるものかと、足掻きで放ったのは雪吹雪…そんな細かい技まで使えるとは予期していなかったアクセルの視界を塞いだ。炎が雪を溶かしてしまったことで、水蒸気までもが発生したことで、アクセルに一瞬の隙が生まれた。

 

それにつけ込み、肥大化していた左肩でタックルを放ったスノーマン…ダメージを負っていたアクセルにとっては体勢を崩すには充分な威力を誇っており、その身体が後ろへと吹き飛ぶ。

 

「モラッタァァァァァ!!(貰ったぁぁぁぁぁ!!)」

 

地面に身体を寝かせたアクセルに止めを刺そうと迫るスノーマン・ドーパント。だが、やはり素人…戦場を見渡せていない視野の狭さが仇となった。

 

「…だああありゃああああぁぁぁ!!」

 

「ナァ、バイクゥ!?グハアアアァァ?!(なぁ、バイクゥ!?ぐはあああぁぁ?!)」

 

すぐに体勢を立て直せないのなら、無理矢理すればいい…エンジンドライバーを腰から取り外し、バイクフォームへと変形する反動を活かして後輪タイヤ部分で迫っていたスノーマンへとカウンターの一撃を喰らわせたのだ!

 

まさかの変形に奇襲という反撃に、反応できなかったスノーマンが吹き飛ばされる。そして、バイクフォームへと変形したアクセルのドライバーに装填されていたのは、倒れ込んだ際に近くに落ちていたエンジンブレードから抜いたエンジンメモリで…

 

『Engine! Maximum Drive!』

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

エンジンメモリの力を引き出したエネルギーがバイクフォームへと充填され、轟炎がその身に宿された!更に、ドリフト回転をも加えた突貫が…雪氷で防御を固めようとしていたスノーマン・ドーパントの身体を容易く貫き…

 

「はぁ…はぁ……永遠に止めるだと…?その程度で俺は止められん…!」

 

纏っていた轟炎を消し止めるように、人型へと戻ったアクセルは後ろ見でその台詞を告げ、ドーパントのメモリブレイクが成功したかを確認しようと…

 

「マ、マダダァ…?!マダ……オワレナイ…コレハボクガヤラナイト…ボクニシカデキナイコトナンダァァァ!!!マダ…マダアアアアアアアァァァァァ!!!(ま、まだだぁ…!?まだ……終われない…これは僕がやらないと…僕にしかできないことなんだぁぁぁ!!!まだ…まだあああああああぁぁぁぁぁ!!!)」

 

「っ…!(メモリブレイクできていないだと!?)」

 

直撃した手応えを感じていたアクセルだが、爆炎に包まれた身を踊るかのように悶えるスノーマンが健在していたことに驚きを隠せないでいた。

 

こうなったら、もう一度マキシマムドライブを喰らわせるだけだと身構えたが…一手遅かった。執念の咆哮を上げるスノーマンの身体が不自然に脈動したかと思えば、輝きを放ちながらその身体が天井を擦り抜けていき…!?

 

…ゴオオオオォォォ!…

 

「な、なに…?!」

 

「地震…?!」

 

「いや、これは…!」

 

テレビ局を揺らす地響きに驚く一花と小鳥遊だが、シュラウドからガイアメモリの特性に関する知識を一通り聞いていたアクセルはその可能性を思いつき、即座に否定する。

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!』

 

アクセルの懸念通り…マキシマムドライブを受けた余波と一花たちに固執する使用者の負の感情が重なり、メモリの力が暴走したスノーマンはテレビ局の屋上に巨大な姿で顕在したのだ。

 

テレビ局を根元にした15メートルを少し超えるその巨体は、まるで建物を寄生支配し、猛威を振るう怪物といっても差し支えない姿と化していた。

 

『グググゥ!ウオオオオオオオォォォォォォ!!』

 

完全に理性を失くした巨大スノーマンは周囲に雪玉を乱投しながら暴れまわっていた。いきなりの怪物の出現に、テレビ局にいた面々を始め、夜に差し掛かり帰宅ラッシュによって混雑していたこともあって、周囲にいた人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。

 

そして、根本にあるテレビ局も能力の余波を受け、上部から徐々に氷漬けになりつつあった。

 

「…っ!脱出するぞ!二人とも、俺に乗れ!」

 

「乗れって……まさか、さっきのあれに…!?」

 

「質問をするなぁ!時間がないんだ!」

 

既に自分たちのいる天井にまで氷が伝ってきていることから、一刻の猶予もないと判断したアクセルは、一花の言葉など受け付けないとばかりに遮り、再びアクセルドライバーを腰から取り外した!

 

 

 

「焦らないでください!慎重に!?警官の指示に従って、落ち着いて避難して下さい!?」

 

突如として現れたスノーマン・ドーパント雪巨人体の攻撃が降り注ぐ中、翔太(というよりも、マスターを通してだが)が事前に通報しておいたことで、近くに待機していた風継警察署の面々が避難誘導をする中、陣頭指揮を執らざるを得なくなった刃野の言葉が響き渡っていた。

 

「刃さん!?ダメです!この距離からじゃ、やっぱり拳銃なんか届いたとしても、あんなデカい奴に効きやしませんよ!?」

 

「くそぉ…!SWATとか自衛隊みたいな戦力じゃないと、あんな化け物と闘えるわけがないだろうに…頼みの綱の仮面ライダーは…」

 

最前線でドーパントへの抵抗を試みていた真倉がその元へとやってくるも、状況は芳しく…いや、無力さを痛感させられることになっていた。

 

こうなってしまっては警察の手に負える範疇ではない…刃野個人としては、民間人への被害を考えるならば、もう仮面ライダーに頼るしかないと思っていた。警察官としては情けない考えからもしれないが、そんなことを気にするプライドなど、刃野にとっては必要ないものだと割り切っていた。

 

まだ来てくれないのかと…思わずそんな感情が籠った言葉が出ようとした時だった。

 

…ドゴン!…ガゴン…!

 

「な、なんだぁ…?!」

 

二種類の異なる破砕音…しかし、それぞれが発生した原因は同じという奇妙な現象が、テレビ局の壁のそれぞれ違う所が内側からぶち抜かれることによって起こり、刃野と真倉の…その場にいた面々の視線が思わず、それらに集まった。

 

「来い、ハードタービュラー!」「振り切るぞ、しっかり捕まってろ!」

 

凍結の記憶を宿したシアンカラーの右手でスタッグフォンを操り、左肩にメモリブレイクの余韻で気を失っているエディター・ドーパントの変身者:本松を俵の如く抱えていたダブルがテレビ局の壁を恐竜の記憶を表した左脚で蹴り壊したのだ。

 

そして、スタッグフォンで呼び寄せるのは、現場近くにひっそりと待機させていたリボルギャリーより、車体後部を赤い色ユニット『タービュラーユニット』へと換装した、ハードボイルダーの飛行形態『ハードタービュラー』…それが夜空を掛け、主たちの元へと飛翔していた。

 

対するもう一つの破砕音…同じ赤でも、こちらはバイクフォームに変形したアクセルであり、トップスピードで突き抜けたまま壁を垂直に走り降りるという、器用と強引さを混ぜ合わせたトンデモ方法で脱出したのだ。

 

…もちろん、乗っている人間たちからすれば、堪ったものではなく…

 

「きゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!?!?」

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?」

 

背中(?)に搭乗している一花の絶叫が響き渡り、小鳥遊に至っては前に乗っている一花にしがみつくのに必死で悲鳴を上げることすらもできない状態だった。

 

まぁ、アクセルはアクセルで無事に着地できる自信があったため、地面に降りる手前で蛇行運転してスピードを緩め、最低限の衝撃で地面へと着地してみせた。

 

「…はあ~~~……心臓止まるかと思った。私、こんなの聞いてないよ…」

 

「感想を言う暇があるのならさっさと降りろ」

 

「あっ、ゴメンゴメン…大丈夫ですか、たかな…気絶しちゃってる…」

 

有無を言わさず乗せられたことで、なんとか無事に地面へと降り立つことができたのに安どした一花がホッとするのも束の間、アクセルから催促の声が掛かり、小鳥遊と降りようとするも、彼女は気絶してしまっていた。

 

そんな彼女をなんとか肩に背負い、アクセルから降りた一花。それに伴い、バイクフォームから人型へと戻ろうと…せずに、アクセルはそのまま視線を暴れ回るスノーマンへと向ける。

 

「…中野長女、そいつのことは任せたぞ。できるだけここから離れろ」

 

「照井君…その身体で行くつもりじゃ…!」

 

「俺に質問するな…何度も言ってきた筈だぞ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そう言われてしまっては一花は何も言えなくなってしまう…だが、アクセルが…照井が告げた言葉は意外なものだった。

 

「…俺は死なん。それにあいつを放っておくことなどできんからな。あいつが仇であろうが、そうでなかろうが…あいつを止めることが…仮面ライダーの責務、らしいからな」

 

どこか呆れながらも…しかし、それは絆されてしまった自分に対してか、それとも、そう感じるようになったことにどこか居心地の良いものを感じたのか…そんな言葉を残し、アクセルは排気音を鳴らし、ドーパントへと向かって行ってしまった。

 

「…気を付けて」

 

そんな走り去っていくアクセルを見送り、一花も避難しようとその場を離れた。

 

「…おい、見ろ!あれは…」

「仮面ライダーだ!噂は本当だったんだ!?」

 

「おい、スタッフ!?カメラと照明持ってこい?!噂の仮面ライダーが来てくれたんだ!?こんなチャンス、滅多にないぞ!?」

 

宙を駆けるハードタービュラーに乗るダブルと、再び壁を走って行くアクセルの勇姿…それに気付いた人々が口を揃えてそう叫ぶ。その中にいたテレビスタッフたちも慌ただしく動いていたが、そんな歓声などに応える暇もなく、ダブルはスノーマンの周囲を警戒するように飛び回っていた。

 

離れた場所に本松を置き去りにし、戦線に復帰したダブルはその巨体を分析しながら、攻め方を考えていた。

 

「どうやら照井がなんとかしてくれたみたいだが…まさかこんな街中で暴走するとは…!」

 

『後悔している暇はないよ、翔太。雪玉が落ちた場所から氷の侵食が始まってる!このままじゃ、ここら一帯から継風が凍土へと変えられてしまう!』

 

「氷にはこの組み合わせだろう?さぁ、いくぜ、フィリップ!」

 

『ああ!』

 

『Heat!』『Metal!』

『Heat! Metal!』

 

ブリザードダイナソーからヒートメタルへとメモリチェンジで形態を変えたダブルが、ハードタービュラーの操縦桿を右手で握り、左手でメタルシャフトを構えてドーパントへと突っ込む!

 

フィリップが操縦を担当し、牽制として主翼に装備された機関砲から「エナジーバルカン」が発射される。ダブルに気付いたスノーマンがハードタービュラーを振り払うかのようにその巨腕を振り回すも、スピードで劣っているのが明白でダブルを捕らえることができない。

 

その振り払いを掻い潜るかのように懐に飛び込んだダブルが、ヒートの炎を纏ったメタルシャフトを振るう!

 

「『はああぁぁ!!』」

 

根本から急上昇するのに併せ、左肩の付け根を叩き折るかのようにメタルシャフトが直撃した…その部分から崩れ折れた左腕が地面に落ちて…

 

『ゴオオオオオオオオオオォォォォ!!』

 

「…!?なぁ…再生したぁ?!」

 

砕いたと思った巨腕が、根元の凍り付いた地面に落ちた瞬間、吸い込まれるように消えたように見えた瞬間、パキパキという音と共にとてつもない速さでスノーマンの左巨腕が再生したのだ。

 

「だったら…これならどうだ!」

 

驚きから立ち直ったダブルはすぐさま次の攻撃へと移る。今度はその巨体を抉るかのようにメタルシャフトとタービュラーの前縁部に搭載された「スクランブルカッター」の二連撃を喰らわせた!

 

炎の一撃と超振動のすれ違いざまの斬撃で直撃するも、崩れた身体は少しすれば、もう既に何事もなかったように再生してしまっていた。

 

「無傷かよ…自信なくすぜ…!?」

 

『軽口を言ってる場合じゃない…アントメモリやハウンドメモリの時と同じだ!メモリの暴走が使用者の感情に比例して、力を増しているんだ!相性の良いヒートメタルでも決定打を与えらないとは…!』

 

「こんな時こそヒートトリガーの出番なんだろうが…くそっ!まだ修理が完了してないからな…!」

 

攻撃を躱し続けながら反撃していくも、全ての攻撃を再生という形で無効化されてしまい、流石の翔太も思わずそんな弱音が出てしまっていた。

 

フィリップの分析通り、ヒートメタルでは決定打を与えられないのは分かっていたが、アブソーブの激戦で破損したトリガーメモリの修理がまだ終わっていないため、トリガー系統のフォームへとダブルは変わることができないのだ。

 

(負傷しながらの身ではあったが)一晩でメタルシャフトの修復はできたものの、メモリの基盤に関するところにまで損傷が及んでいたトリガーメモリは、フィリップからすればそう簡単にできるレベルではなかった。

 

現状、ダブルが打てる手段を考えるも、ヒートメタルのマキシマムドライブ「メタルブランディング」はそこまで広い攻撃範囲を持っていない…それは他のヒート系統のメモリにも言えることであり、馬鹿でかい巨体での復元能力を宿したスノーマンに打てる手がなかった。

 

スノーマンの動きをできるだけ鈍らせようと周囲を飛び交いながら、ハードタービュラーから弾丸を放つも、スノーマンの周辺だけでなく、先程乱れ投げられた氷玉を起点に氷のフィールドが広がりつつあるのだ。

 

時間がないと分かりつつも、打てる手段がない現状に思わず舌打ちをしたくなる気分に駆られる翔太だが、

 

『Jet! Steam!』

 

「はあああああああああああああぁぁぁぁ!!」

 

轟音が鳴り響いたと思った直後、下から何かが飛び出し、ダブルの視線がそちらへと向いた時には、ガイアウィスパーの音声が鳴り響き、二種類の力が混ざり合った一撃が、スノーマンの背中へと直撃した!

 

「何をチンタラしている、佐桐!」

 

「照井!?うるせぇ!好きでやってるんじゃないんだよ!?」

 

『…!そうだ、アクセルなら…!?』

 

空中でバイクフォームから人型へと変わった直後に、エンジンブレードからエネルギー弾を放ったアクセルが屋上へと着地し、身構えながらダブルへと声を掛ける。

 

一方、なんとかしようと考えていたところにそんなことを言われた翔太が思わず反論する中、加勢に来てくれたアクセルにフィリップが策を思いつく。

 

『照井竜、聞いてくれ!この暴走したドーパントには生半可な攻撃は通用しない!?復元ができないような、絶大なダメージを一気に与える必要がある!』

 

「っ…!?それは…やっかいな話だな…!」

 

背中に僅かにつけた筈の傷が、既に元通りになっていることを見ながら、フィリップの言葉を理解したアクセルは、自分の存在に気付いたスノーマンが拳を振り下ろしてくるのを躱しながら、その先はと話を促す。

 

『僕たちのメモリの組み合わせじゃ、現状火力が足りない…けど、単体のドライバーとエンジンブレードが独立しているアクセルのシステムなら、なんとかなるかもしれない!』

 

『Luna!』『Ninja!』

『Luna! Ninja!』

 

『照井竜、これを!』

 

ルナニンジャへと変わり、アクセルを援護するように翔太が操縦を肩代わりしたところで、フィリップはメモリチェンジしたことでドライバーから抜いたヒートメモリを屋上にいるアクセルへと投げ渡した!

 

それを受け取ったアクセルは、フィリップの考えを瞬時に理解したようですぐさまエンジンブレードにヒートメモリを装填する!

 

『Heat!』

 

「…なるほど。やってみる価値はあるか」

 

『陽動は僕たちが引き受けよう。君は一撃を叩き込むことだけに集中してくれ!いくら独立しているとはいえ、メモリの同時使用によるマキシマムは負担も大きいだろうからね…翔太!』

 

「ああ、やるぞ!」

 

エンジンメモリのものとは異なる炎を纏ったエンジンブレードを目に、アクセルがタイミングを見計らいながら距離を徐々に詰めていく。

 

それを支えるべく、翔太が引き続きハードタービュラーの操縦を受け持ちながら、フィリップがルナニンジャの能力を発動させる。ダブルの姿がブレた直後、アクセルの周囲にダブルの分身が4体現れる!

 

そして、分身それぞれが独立した動きでスノーマン・ドーパントへと突撃していく!近づいてきた分身たちを跳ねのけようと二つの巨腕を乱暴に振り回すも、俊敏性で優る分身たちを捕え切れず、組みつかれてしまう。

 

『グググゥ…ワアアアアアアアアアァァァァァ!!』

 

頭部を含めた身体の各所に組み付かれ、視界を塞がれたスノーマンは咄嗟に全身から吹雪を発生させ、張り付いていた分身たちを纏めて吹き飛ばした!しかし、その隙はあまりにも大きすぎたわけで…

 

『Heat! Maximum Drive!』

『Accel! Maximum Drive!』

 

「でりゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

エンジンブレードのトリガーを引き、同時にアクセルドライバーの出力を臨界にまで上昇させたアクセルが跳躍していた…屋上をへこませるほどの脚力で飛び、スノーマンの頭上を取る形へとなった。

 

そのまま、振り被っていたエンジンブレードをその頭部を叩き割るかのように振り下ろした!頭のてっぺんから、顔、首と縦真っ二つにしていく二つの炎を宿した刃が暴走する雪巨人へと止めを…!

 

「…なぁ…!?」

 

アクセルの戸惑いと驚きが入り混じった声が零れる。

 

その言葉が表すのは、巨体の途中でエンジンブレードの刃が止まってしまった現実だった。正確には…二つの炎を宿した刃が氷漬けにされてしまい、無効化されてしまったというまさかの事態だった。

 

アクセルどころか、ダブルでさえも予想を超えるスノーマンの力に呆然としてしまう…そして、それもまた大きな隙を生んでしまい、

 

「…!しまっ…があああぁぁ?!」

 

「照井!?」『照井竜!?』

 

刃を掴まれても同然に、空中で制止することになったアクセルをスノーマンがその拳で捕えたのだ!そのまま、力の限り握りつぶそうとする行為に装甲が軋む音と共にアクセルから呻き声で漏れる。

 

このままではアクセルが危ないと、なんとかスノーマンの注意を逸らさなければとダブルがハードタービュラーで弾幕を張るも、逆に吹雪によって弾き返されてしまい、更には突風により飛行バランスをも崩されてしまう!

 

「がああぁ…ぐうううううぅぅぅぅ?!?!」

 

邪魔者はいなくなったと、アクセルを握り占める力を更に強める!アクセルの装甲から火花が飛び散り、煙が上がっていく。脱出しようにも、負傷も重なって力を十分に出し切ることができずにいた。

 

そんなアクセルへと止めを刺そうと、空いている左巨腕で拳を作り、アクセルへと振り下ろそうと空へと掲げた!

 

人々がこれから訪れる悲愴な光景を予期しながらも、何もできないと見守る中、スノーマンの巨拳がアクセルを粉砕するべく振り下ろされそうと…!?

 

…ドン!ドン!…

 

『ぐぉぉ…!?』「うぉお…!?」

 

二発の号砲が鳴り響き、大きな衝撃がスノーマンを襲った!一つは振り下ろそうとしていた拳を巨腕ごと破壊し、もう一発はアクセルを掴んでいた巨腕を破壊した。

 

それにより、解放されたアクセルだが、勢いに吹き飛ばされて屋上から落下してしまった。このままではと思った矢先、先程の号砲を鳴らした主がアクセルの落下地点へと先回りし、砲門をアクセルへと向け、空気を噴射することで重力に引っ張られていた彼を救い、受け止めた。

 

『…あれは……ユニットなのか?』

 

体勢を立て直したところで、アクセルを救った物体…ハードボイルダーの倍以上はある大きさを持つ戦車のような形をしたユニットに驚きを隠せないダブル、そして、フィリップのそんな言葉が零れた時、

 

「…ガンナーA。あなたの新しい力よ、アクセル」

 

「っ…!…シュラウド……」

 

アクセルだけでなく、ダブルの二人にもしっかりと聞こえた声に、三人の視線が近くのビルの屋上へと集中する。

 

そこにいたのは、真っ黒のコートにハット、包帯で全身を覆い隠した上にサングラスを駆けたあまりにも不審者すぎる恰好をした女性…照井にアクセルとしての力を与え、ダブルも話には聞いていた協力者…彼女こそがシュラウドなのだと、初めてその姿を目にしたのだった。

 

『彼女が…シュラウド…!?』

 

「…あの包帯女が照井の協力者、なのか…?」

 

「さぁ、ボサッとしている暇はない筈よ。今、ガンナーAの力をドライバーを通してあなたに送ったわ。それと……これはあなたたちへよ!」

 

話をしている場合ではないと、シュラウドの言う通り、照井の眼前のモニターにガンナーAの詳細データが表示される。そして、今度はダブルに向けて何かを投げ渡した!

 

「…!これは、トリガーマグナム!?…いや、少し差異はあるが、似た銃か!」

 

『…やっぱり‥貴女が僕たちに追加のメモリのデータを送って…!?』

 

「この戦いの間だけ貸してあげるわ…さっさと終わらせてきなさい」

 

呆然とするダブルのことなどお構いなしに、その細身からは信じられない肩力でぶん投げたものを受け取り、翔太は驚く。自分たちがよく使用するトリガーマグナムに似たそれ…銀色のSの字が砲身の横に刻印されたシュラウドマグナムというべきそれを見て、思わず視線をシュラウドへと戻してしまう。

 

対するフィリップも、ダイナソーメモリを始めとした追加の6つのメモリやフロッグポッド・デンデンセンサーの設計図を送ってきたのがシュラウドなのだと確信したが、今は戦闘に集中しろという彼女の言葉に、意識をドーパントへと再び集中させる。

 

『…Dun!Dun!』

 

「…こいつが俺の新しい力……いいだろう!乗りこなしてやろうじゃないか…!」

 

自身の新たなる武器ガンナーAの力を理解したアクセルは、シュラウドに宣言するかのように、もしくは、自分に言い聞かせるかのようにガンナーAを見る。ガンナーA自体もそんなアクセルの姿に応えるかのように、両前輪前に装備されたリフトネイルを上下に動かす。

 

そして、バイクフォームへと変わったアクセルに合わせ、ガンナーAも変形する。リフトネイルを本体部分にまで上げ畳み、中央に位置していたカメラ頭部を隠すように閉じた装甲が砲門を形成…その下のジョイント部分に、アクセルが格納するように後輪部分を畳み上げながら接続する。

 

「…さぁ、振り切るぜ!」

 

右アクセルグリップを吹かせ、爆炎を戦車後輪部分なるものから吹かせた合体形態…アクセルガンナーがその戦輪で地面を揺らしながら動き出す!

 

『グオオオオオオオオォォォ!!?』

 

「はあああああああああああぁぁぁ!!」

 

「そうはさせるかぁ!」『そうはさせない!』

 

未知なる物体と化したアクセルガンナーを脅威と捉えたのか、見降ろしていたスノーマンは先手を打つべく、雪玉を地上へと勢いよく投げていく。

 

それを敢えて撃退せず、アクセルガンナーはドーパント本体へと攻勢を仕掛ける!左グリップの横に設置されたスイッチに連動し、ガンナーの砲身から弾丸が連続して発射される!

 

それに追従するように、見ているだけにはいかないとダブルもシュラウドマグナムを構え、雪玉を撃ち落としていく!トリガーマグナム以上の威力を誇るその弾丸は、正確に雪玉たちを粉砕する。

 

「「『…うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!』」」

 

言葉を交わしていないにも関わらず、ハードタービュラーで上空を駆けるダブルは雪玉の迎撃をしていき、その下を凍った大地を砕きながら重行していくアクセルガンナーは攻撃に集中することができ、その砲弾を何度もスノーマンへと浴びせていく!

 

『ガァァ……ガアアアアアアアアアアアァァァ!?』

 

異常な復元能力を持つスノーマンも、立て続けに高火力の砲撃を受け続け、肉体の再生が間に合わなくなりつつあった。それに伴い、攻撃の頻度も減少していき、どんどんと押し込まれていくという悪循環に嵌っていた。

 

『チャンスだ!このまま一気に押し込もう!』

 

「よし…照井!俺たちがあいつに大技をブチかまして隙を作る。最後の一撃は頼んだぜ!」

 

「…いいだろう。へまするなよ!」

 

『Heat!』『Crusher!』

『Heat! Crusher!』

 

今度こそ止めを刺そうと、ダブルの言葉を受けたアクセルが一旦距離を取り、制止してから砲身の角度を調整し始める。その時間を稼ぐべく、ヒートクラッシャーへとメモリチェンジしたダブルは、スノーマンの巨体を掻い潜るように飛び、その背後を取った!

 

「あつあつの一杯をくれてやるぜ!」

 

『Heat! Maximum Drive!』

 

「『トリガーフレイムスフィア!!』」

 

ヒートメモリを装填したシュラウドマグナムの銃口にその力が収束していく。エネルギーが集まっていくうちに巨大な火球が形成されていく、マグナムの砲身を遥かに超える大きさへとなった瞬間、ダブルが引き金を引いたことで放たれる!

 

スピードはそこまでのものではないが、相手は動くことのない巨体であり、避けることができないスノーマンへと直撃するのは必然で…更に、ヒートトリガーのマキシマムドライブ『トリガーエクスプロージョン』とは異なり、この技は持続性に特化した技であり、氷の巨体であるスノーマンに直撃しても火球は消えず、減り込ませるようにその巨体を溶かしていく!

 

『ゴオオォ…?!アアアアアアアアアォォォォォ!!』

 

「照井!」『照井竜!』

 

今だと、ダブルの叫びに応えるように、待機していたアクセルガンナーがスノーマンへと照準を定め、右アクセルグリップを深く握る!充填していたエネルギーを解放するべく、セーフティの砲身が左右へと開き…

 

「絶望が……お前のゴールだぁぁ!!」

 

先程とは異なる、エネルギーが超圧縮されたレーザーが砲身から解き放たれ、かなりの重量を誇るアクセルガンナーが反動で少し後退する。それほどの威力を誇る一撃をまともに受けたスノーマン…その身体が雪で構成された白から、熱に侵食されていく色へと変わり、

 

『…グググゥ……ウガアアアアアアアアアァァァァアアアアァァァ!?!?』

 

エネルギーが全身にまで行き割ったことで、限界を迎えたその身体が断末魔と共に爆散する!復元能力などまるで間に合わず、その巨体は爆発と共に砕け散る…そして、メモリブレイクされたことで、人間の姿へと戻ったメモリの持ち主の鴨井は空中へと放り投げられ、地上に落下しそうに…

 

「…まったく…世話の焼ける奴だぜ」

 

…しそうになっていた身体が空中で制止していた。

 

こうなる可能性を予想していたダブルが、すぐさまルナジョーカーにメモリチェンジをしており、変幻自在と化した右腕を伸ばして彼の脚を掴んでいたのだ。なんとか間に合ったことに、ため息交じりのそんな言葉が翔太から零れた。

 

しかし、そんな言葉を打ち消すかのように、ダブルの…いや、アクセルを含んだライダーたちにもの凄い勢いの歓声が飛び込んできた!

 

「ありがとう、仮面ライダー!」

「すげぇぇ!?かっこよかったぞー!」

「助けてくれてありがとう!」

 

「おい、カメラ!映してるな!生放送でこの光景を見ているテレビの皆さん!見て下さい!彼らが、この継風を守りしヒーロー…仮面ライダーです!」

 

「…しまった。こうして大勢の前で戦ったのは初めてか…仕方なかったとはいえ、こうも人目がつくとは…」

 

『…まぁ、しょうがないさ。いつまでもこっそりというわけにもいかないだろう。それに…僕たちの正体がバレたわけじゃない。ともかく、彼を警察に引き渡して、照井竜と一緒にすぐにここから引き上げよう』

 

「ああ、そうだな…って、うおぉぉ!?」

 

伸ばしていた右腕を戻し、気を失っている鴨井を右肩で担ぎ直し、やることをやって撤退しようとするダブルだったが、空いていた左手で持っていたシュラウドマグナムが突如引っ張られて…

 

「…まぁ、こんなものね。トリガーよりも30%ほど出力を高めておいたけど、安定感ともに問題なさそうね」

 

「お、おい…!」

 

「何かしら?貸すと言っただけでしょ?」

 

『待ってくれ!シュラウド、貴女には聞きたいことが沢山あるんだ…!?』

 

「残念ながら、私にはないわ…これは返すわ」

 

ワイヤーガンで手元にマグナムを引き寄せたシュラウドは、点検も兼ねて状態を確かめていた。そんな彼女にタービュラーで近づくダブルだが、これ以上の会話をする気はないといった雰囲気のシュラウドは、マグナムに装填されていたヒートメモリを抜き、

 

「って、ううおおぉぉぉ!?なにしや…いない?!」

 

ダブルの上空を飛び越すように投げ飛ばしたのだ!

 

まさかの行動に慌てて右腕を伸ばしてメモリを確保するダブル…そして、文句を言ってやらねばと振り返った時には、ビルの屋上にいた筈のシュラウドは既に姿を消していた。

 

『…一体、何者なんだ?』

 

「さぁな……ともかく俺たちの敵じゃないってことは確か…っと言っていいのかね。ともかく、あの似非ディレクター野郎も回収して、さっさと刃さんたちに引き渡そうぜ」

 

『…そうだね。けど、ちょっと遅かったみたいだよ、翔太』

 

聞きたいことは山ほどあったのだが、気配すら感じられないシュラウドを探すよりも、やるべきことをやろうと思考を切り替える翔太だが、フィリップの言葉に思わず首を捻っていた。

 

『地上は警察だけじゃなく、僕たちが降りてこないかって期待しているやじ馬でいっぱいだよ?』

 

「…嘘だろう!?」

 

相棒の言葉に、下を見下ろす翔太…その複眼には、ガンナーAとの連結を解除したアクセルを取り囲む警察とマスコミや野次馬の輪が出来上がっていた。

 

この中に降りていかなければならないのかと…思わずため息が漏れ、そして、どこか諦めた翔太は、ともかく置き去りにしてきた本松を回収しにタービュラーを動かした。

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

「え~っと…刃さ…ゴホン…刑事さんたち。こいつらがさっきの雪の化け物と、その協力者だぜ。他にも余罪があるみたいだから、後はあんたたちに任せていいよな?」

 

本松を回収し、アクセルの横に着陸したダブルは、自分たちに集まる視線を見返し、思わず一瞬下を向いてしまった。しかし、今はやることを早く終わらせて一秒でも早く撤退しようと、意識を集中させた。

 

一方の警察も、こうして仮面ライダーとまともに話すのは初めてのこともあって、どう動けばいいか分からず硬直していた。そんな中、やり玉に挙げられたのが刃野と真倉であり…恐る恐ると、近づいてくるダブルへと歩み寄っていく。

 

そんなビビり腰の二人に、いつもの姿を知っている翔太は仮面の下で苦笑しながら、気を失っている本松と鴨井の身柄を引き渡そうとしていた。

 

対する二人も、思っていた以上にフランクなダブルの対応に警戒心を解き、刃野が後ろに控えていた警官たちを呼び寄せる。真倉と数人の警官がその身体を運んでいくのを見届けたところで、刃野はダブルへとようやく言葉を掛けることができた。

 

「…いや~!こうしてゆっくりとお話するのは初めてですね!ご活躍は色々と…ちょっと前はすいませんでした、強盗の犯人だって疑っちゃって!」

 

『刃野刑事、お気になさらないで下さい。これが僕たちの仕事ですから。後の事はお任せします。これからも、この街のために頑張りましょう』

 

「ええ、もちろんですとも!仮面ライダー…えっと、ダブルさんでしたっけ?それで、そちらの彼は…?」

 

「…俺に質問するな」

 

「…へぇ…?」

 

「悪い、刑事さん。あいつ、質問されるのが嫌いなんだよ。あいつはアクセル…あいつもこの街を守る仮面ライダーだよ」

 

「おい…俺とお前たちを一緒にするな!」

 

「うん?お前たち…?」

 

「っ…と、ともかく!犯人たちは引き渡したからな!それじゃ、俺たちはこれで!?」

 

フォローしようとした矢先に、アクセルの失言で変な空気になり、慌てたダブルが颯爽と立ち去ろうとした。しかし、そんな彼らを見逃してくれない人たちがいて、

 

「今だ!噂の仮面ライダーがいるんだ!独占インタビューのチャンスだ!?」

「待って、街のヒーロー!サインちょうだい!」

 

警察が引き下がったことで、今度は自分たちの番だとマスコミと人々がダブルとアクセルを取り囲もうと殺到したのだ。

 

こうなることを予測していたライダーたちは、そんなことなど構っていられるかと撤退しようと素早く動き出す。しかし、戦闘を終えて安堵したアクセルはそうはいかなかった。

 

戦闘の熱気とアドレナリンで麻痺していたダメージがぶり返し、その場に崩れ落ちそうになった…が、

 

「ったく…相当無理しやがったな、お前」

 

「…俺に質問するなと何度も言ってる筈だぞ、佐桐」

 

「はいはい…強がりを言うのはいいけど、暴れるなよ。一緒にこの場から離脱するぞ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

崩れ落ちそうになったアクセルを左手で支えたダブル。いつものやりとりからして元気そうに見えるが、体重のほとんどを自分に預けているアクセルの様子からして、相当のダメージを負っていると判断したダブルは、返しを受け流しながら、先程からこっそりと操作していたスタッグフォンをしまう。

 

すると、遠隔操作によって信号を受信したハードタービュラーが上昇を開始する。その際に発生した空気圧で殺到しようとしていた人々の脚が止められる。

 

「よっと…!」

 

その一瞬の間に、上昇し続けるハードタービュラーへとルナジョーカーの右腕を伸ばして追い縋るダブル。

 

『…Dun?Duun!!』

 

それに続くように沈黙していたガンナーAが動き出し、どこかへと勝手に移動し始めたことに驚いた人々の視線がそちらへと集まっている間に、ダブルとアクセルはハードタービュラーへ登場し終えていた。

 

そして、このまま立ち去ろうとした時だった。

 

「仮面ライダー!」

 

「『「…!」』」

 

三人に聞き覚えのある声が聞こえ、思わずそちらへと視線を向ける。

 

「テレビ局を…みんなを守ってくれて、ありがとう!」

 

その場に響き渡る声で叫んだのは一花だった…その言葉には、自分を守ってくれてという意味も含まれていたのだろう。それと同時に、自分にマスコミの意識を集中させる目的もあって、わざと目立つことをしたのだ。

 

(…あとは任せて!)

 

「…サンキュー、一花」

 

口パクでそう告げる一花…流石のライダーたちもその口の動きまでは見て取れなかったが、言いことは雰囲気で理解できたため、代表するように翔太が小さく呟き、ハードタービュラーのハンドルを握り占める。

 

主の操縦に従ったタービュラーは全速力でその場を離脱した。目を少し離した隙に、仮面ライダーたちに逃げられたマスコミやカメラマンに落胆の色が映った…かと思えば、その目線が、今度は一花へと向く。

 

いきなり大勢の視線が…獲物を狙ったかのようなギラリとした目線に、流石の一花も思わずドキっとしてしまい、そして、冷や汗を流し始める。

 

(…思わず勢いでやっちゃったけど…もしかして、とんでもないことになりそうな予感が…)

 

…そんな彼女の予想はこの数秒後にあたることになるのだった。

 

 




・トリガーフレイムスフィア
ヒートメモリをトリガーマグナムに装填して発動するマキシマムドライブ。本来はヒートトリガーでの必殺技。トリガーエクスプロージョンが火力を集中させた火炎放射に対し、巨大な火球を放つ持続ダメージを与えることに特化した技。

ガンナーAの初登場…!そして、ハードタービュラーも本作初登場でした!(あとはハードスプラッシャーだけですね…出せるのか?)


そして、まさかのシュラウドさん登場!?本話が原作の『還ってきたT』をオマージュしたものでもありましたので…照井が殺されかかった時点で大体察していた方も多かったかと…(苦笑)

トリガーメモリが使用不可能という布石は前話より仕込んでおいたんですよね…なので、ルナメタルが活躍したわけでして…ルナメモリ使い勝手が良すぎんですよね。

そんなわけで、次回は後日談とごじょじょ原作に話が戻ります。あと数話で本章も終われそうかと…

それでは、また!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。