ちょいちょい改変してますが、大まかな流れはごじょじょ原作と同じです。
更に、終わりには次章のお話を少しだけ予告させて頂きますので、是非最後まで目を通して頂ければと…
それでは、どうぞ!
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
全国模試前夜…夜中の三時を少し過ぎた頃、シャーペンを無言で動かす男の姿が二つあった。場所は佐桐家…片方は家主の翔太で、もう一人は、家庭教師の助っ人を頼んでいる側の風太郎だった。
『なぁ、上杉…お前、どうせ今日も徹夜で勉強するつもりだっただろう?もし良かったら、俺んちで一緒にやらないか?』
確実に無理をするに決まってると踏んだ翔太が、風太郎へと声を掛けたのがきっかけだ。地獄を見るのなら、共にやってやろうじゃないかと翔太が気を遣ったわけだ。
最初は遠慮して断ろうとしていた風太郎だったが、
『安心しろ…お前が寝そうになったら、スリッパで叩き起こしてやるから』
…今の自分のステータスを鑑みて、確かにその可能性もありそうだと思ったのと、妹のらいはの睡眠を妨害しなくて済むのではという餌まで持ち出されてしまっては、風太郎も何も言えなくなってしまったわけで…
「…コーヒーのお代わりはどうだい、二人とも?」
「「…頼む」」
ついでに、同居人であるフィリップも二人の勉強に付き合っていた。
余計な口出しはしない方針だが、多少のサポートはしていこうと二人の勉強会を見守っていたわけだ。
「…おい、上杉。頭回ってるか?」
「当然だ…そういうお前の方こそ大丈夫なのかよ」
「まぁな…ダブルの活動で夜通し街を駆け回っていることも珍しいことじゃないからな」
「…確かに一夜漬けの勉強と戦いとじゃ雲泥の差か」
軽口を叩きながらも、二人のペンは止まらない…しかし、そのスピードは明らかに違っていた。風太郎の方が次々と問題を解いていく中、翔太は自身のペースで解き続けていた。
無言のまま、フィリップが熱々のコーヒーを二人の傍に置いてまた離れる。自身の分のコーヒーを飲んで、勉強の風景を見守っていると、一段落…というか、一冊の問題集を終えた風太郎がふと呟いた。
「…なぁ、佐桐。勝てると思うか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
珍しく本音を零した風太郎に、翔太もペンを止めてしまった。どう答えるべきかと少し考えてから、ふと思い出した言葉を口に出した。
「…勝ち負けを最初から気にする者に勝機は訪れない。本当に勝利を掴める人間は、闘いの中で挑み続けることができる人間だ」
「…なんだよ、そのカッコいい言葉は…」
「俺の父さんの言葉だよ…まぁ、言い換えれば、負けるとか勝てないとか思ってたら、自分の力を完全には発揮できない、自分の力を信じて全力を尽くせってことだよ」
「…自分の実力か…」
「そうそう…100点の回答用紙を曝け出すことを恥ずかしがらず、一に勉強、二に勉強、三四も勉強、ガリ勉中のお前が」
「さ、佐桐…そこまで言われると堪えるものがあるんだが…」
「…ともかく、あらゆる意味で勉強に時間を費やしてきたお前の努力は本物だ。だったら、あとはそれを結果として示すだけだ。それが明日の…いや、もう今日か…今日の模試でやればいいだけだ。
武田との勝負とか、五月たちの親父との約束とか…そんなもん抜きでやればいいんだよ。お前の意地でやれることをやればいいんだよ」
「……俺のできることを、か……そうだな、弱気な俺なんて俺らしくないよな!」
いつもの風太郎の姿に戻ったことに安堵し、笑みを零す翔太…が、そんな二人のやりとりを見ていたフィリップは、
「…プッ……フハハハハ…!」
「フ、フィリップ…?」
いきなり笑い出したフィリップの挙動に、思わず首を傾げる風太郎…対する翔太は、しまったという表情で苦い表情を浮かべており、
「翔太…よくその言葉を持ち出せたね。子供スポーツ大会の決勝で惜敗した時に、大泣きしていた君を励ますために、佐桐壮吉が言った言葉だろう」
「佐桐が……大泣き…?」
「…ガキの頃の話だよ…フィリップ!?余計なことをバラしてんじゃねぇよ!!」
信じられないものを見るような目で見てくる風太郎に、バツの悪い顔で肯定して、黙ってろと抗議の声を相棒に上げる翔太。
フィリップの方は懲りる様子はなく、そんな二人のやりとりに緊張が良い意味で解けた風太郎は勉強を再開し始めた。
…そんな感じで、二人の追い込み勉強会は進んでいった…
「…こういう時に食べながら物事を覚えられる道具が欲しいぜ」
「いや、二十二世紀のお助けロボットかよ…というか、よく参考書を読みながら通学できるよな、お前」
食パンと参考書を両手にそれぞれ持って、思わずそんな言葉を零した風太郎に、翔太のツッコミが炸裂していた。
ギリのギリ…一秒も惜しいと言わんばかりに、食事中までも勉強し続けている風太郎。登校中にまえその姿勢を揺るがせないその姿に、翔太は呆れを通り越して感心していたほどだ。
…もっとも、翔太はともかく、連日徹夜状態の風太郎の容姿は大変恐ろしいものになっていたのは言うまでもないが…
「おはようございます」
「…おう、って…大丈夫か、お前ら?」
向こうの方から挨拶が聞こえてきたことで、翔太だけでなく、勉強し続けていた風太郎の意識もそちらに向いた…が、彼女らの姿に翔太は思わず尋ねてしまった。
「だ、大丈夫ですよ…!それよりも、いよいよ試験当日ですね!」
「頑張りましょー…!」
「…ってか、あんたたち、目の隈酷いわね」
「二乃…人のこと言えない」
「おはよう、二人とも…どう、フータロー君。全国十位は狙えそう?」
声を掛けた五つ子たち…が、翔太の心配通り、確かに大丈夫かと言われると、微妙な状態だった。
五月は大丈夫だと言いつつ疲労の色が濃く、天真爛漫がモットーの四葉でさえもいつもの元気が影を潜めているような感じだ。
家庭教師陣の目の隈が酷いことを指摘した二乃だが、三玖の言う通り、それは五つ子たちにも言えることであり…一人眠いの隠すことなく、欠伸を噛み殺しながらも尋ねてきた一花に、風太郎も笑みを作って答えようと、
「勿論…「ははははははははははははは!!」」
答えようとした風太郎の声を、無駄に自信満々で、やけに美声の笑い声が響き渡って遮った。声のした方を全員が向くと、
「上杉君!逃げずにここに来たことをひとまず褒めておこう!!」
「出た…」
その声の主…何故か学校のエントランスの上段…階段を登った先にいる武田が腕を組み、仁王立ちの姿で待ち構えていた。どこかうんざりした様子で呟く三玖に対し、翔太は知り合いの奇行に何とも言えない表情を浮かべていた。
(…お前、そんなキャラだったか、武田…)
そう思わずにいられないぐらいの行動だった…一体いつの時代のキャラクターだよと思ったりもしたとか。
「だが!しかし!君は後悔することになるだろう!あの時、逃げておけば良かったと!!」
「朝から五月蠅いわね…っていうか、高いところから見下ろしているのがまたムカつくわ」
「そんな勢いで言い負かそうとしても、上杉さんは負けません!」
「君たちには話していない!?」
「…あの人、こんな感じでしたっけ?」
「…さぁ?…まぁ、バカは高いところが好きってよく聞くけど…」
「三玖…寝てないせいか、口が悪くなってるぞ」
二乃と四葉の抗議など耳を傾ける気はないと拒絶する武田…別人ぶりに豹変したその態度に、五月が困惑し、三玖はイラっとしたのか悪態を吐いていた。流石の翔太もそれは言い過ぎだとツッコんでいた。
「上杉君!ここが僕と君との最終決戦だ!佐桐君!君には僕たちの闘いを見届ける立ち合い人だ!君たちと僕…三年になって初めて同じクラスになったことが始まりだったんだ!今度の今度こそ…一騎打ちで雌雄を決し…」
「…お前ら、行くぞ」
宣戦布告、自身の意気込みをこれでもかと熱く語る武田だが、さっきの意趣返しか…いや、正確には、そんなことなど関係ない、お構いなしとばかりに風太郎はその宣言をスルーし、武田の横を通り過ぎていた。
その視線に武田は映っておらず、その場の空気に置いていかれていた翔太と五つ子たちを先導するかのように言葉を掛けていた。
「急げよ…まだ試験開始まで時間がある。ここまで来たのなら、もう少しでもいいから、悪あがきしておくんだな」
「…そうだな。行くぞ、お前ら」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
風太郎の言葉に我に返った翔太が続き、五つ子たちも後を追っていく。ここまで相手にされなかったことが信じられなかったのか、武田は完全に硬直してしまっていた。
そんな武田に風太郎は静かに言葉を掛けた。
「さっき一騎打ちとか叫んでたが…悪いな、俺にとってはこの試験は一騎打ちじゃないんだ。こっちは7人いるんだ…全員でお前と闘いにきてんだよ」
「…ふふふ。七人…佐桐君はともかく、彼女らを見捨てられないその君の姿勢こそが…君の弱さだ」
「……かもな。が、それがどうした?それこそが、こいつらの家庭教師を自負する俺の意地なんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
昔の風太郎からは想像できない、とても重みのある雰囲気と言葉に、一瞬気圧された武田…静かに決戦の火蓋が切られ、一同は教室へと向かった。
「机の中を空にして着席してください…問題用紙は合図があるまで裏にして、お待ちください……それでは、全国統一模試を開始します」
午前8時50分…教師から模試に関する注意事項の説明がされ、問題用紙が全員に行き渡ったところで、開始時間と共に試験の開始が告げられた!
「「「「「・・・・・・・・・・・(むむむぅ…!?)」」」」」
「……(ねみぃ……最初の科目が国語っていうのは、眠たくなるだけキツイな……まずは現代文からか)」
なんとか問題を解こうと苦心する五つ子たち、徹夜に慣れているとはいえ、文章を大量に読む国語に苦笑しつつも問題を解き始めた翔太の姿があった。そして、風太郎はというと、
「……やるか…(俺ならできる……これまでやってきたこと、してきたことを活かすだけ…やってみせる!)」
極限状態のギリギリの集中力を振り絞り、問題に目を通し始め、ペンを走らせる。眠気と疲労が襲い掛かり、試験という静寂な環境と生徒の数のペン音が静かに響くという眠気を誘うも…風太郎は妙に自信を持っていた。
…そして、80分の試験時間はあっという間に過ぎていき…
「やっと一個終わったな」
「国語厳しいわー」
「…今回の古文マジむずくなかった…?!」
「フータロー君、大丈夫?顔青いよ?」
「き、気にすんな‥ちょっと見返す時間がなかったから、今、さっきの問題を振り返ってるだけだから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一科目を終え、生徒たちが騒ぐ中、どうだったかと様子を尋ねる一花が、あまり顔色の良くない風太郎を心配していた。そんな二人を…いや、風太郎を見ていた武田はどこか冷めた目をしていた。
「武田、さっきの国語どうだった?」
「やっぱ余裕あるわ」
「武田なら200点満点いったんじゃね?」
「…ははっ、どうだろうね?漢文に少しばかり時間を取られてね…一問くらい落としてもしまったかもしれない」
「いや、ワンミスでも十分スゲェよ」
「ってことは、今回も武田がこの学校のトップで決まりだな?」
「そうだよな!あの佐桐だって、武田には一度も勝てたことないもんな!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『俺はなってみせます…そいつに勝って、学年一位に……いや、全国模試一位に!!』
「……所詮猿山の大将か」
クラスメイトの賞賛の声に、武田は聞き流しながらも、執着している風太郎にだけ意識を向けていた…そんな風太郎の様子が芳しくないと分かり、自分の知っている好敵手はもういないのだと…失望と軽蔑の感情を持っていた。
「三問不正解…190点だ」
「…!?」
しかし、他人のことを見下している余裕は瞬く間に吹き飛ばされた。
武田の自信を瓦解させたのは彼の父親が告げた無情な事実だった。
30分の休憩時間の間、すぐに理事長室へと来るようにとメールで呼び出され武田…そこにいたのは、学校の理事長を務めている武田の父がデスクを挟んで静かに座っていた。
どうして呼び出されたのかと疑問に思っていた武田だったが、先程の国語の模試の回答を見て呼び出したと告げた父は、そのまま武田の点数を教えたのだ。
「そんなっ……それは…!?」
「こんな点数で中野委員長の期待に応えられるんだろうか?できるかとお前は思うか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
言い訳どころか、有無を言わせない父親の言圧に武田も黙ってしまう。そんな武田に慈悲などないとばかりに、父は言葉を掛けていく。
「小さい頃から母さんと同じ医者になると言っていたじゃないか?この模試の結果次第で、中野委員長との関係はよりつよいものとなる。そのためにも、お前はここで絶対に結果を出すんだ」
「…父さん…僕は……」
「祐輔」
「…!それは…」
お前の意志は関係ないとばかりに、一枚の封筒を差し出した父親に武田の身体が硬直する。そんな武田に、悪魔のような笑みと共に囁きが彼の耳に届いた。
「…あまり父さんを心配させないでくれ…」
「あ~っ、やっとお昼だぁ~!残り二科目だよ。頑張ろうね!」
「消費したエネルギーはしっかり補充しましょう!」
模試が半分終わったことで、気持ちが楽になったこともあって少し元気を取り戻した四葉の声と共に昼食を取りに食堂に来た五つ子たち…五月も食事ということで、とても元気を取り戻していた。
「フータロー、頭垂れてたけど大丈夫かな?」
「あいつのことだから大丈夫よ、私たちにあんだけ構うぐらいに精神的にはタフなんだから…それに、ちゃんと良い結果を出してくれないと…あんたたちが用意した折角のプレゼントも渡せないでしょ?」
「…あれ?そういえば、上杉さんはどこに?」
「ショータ君と話した後、どっかに行っちゃんだよね…そういうショータ君も食堂に来てないみたいだね」
逆に模試を終えていく度に疲弊し切っていく風太郎を心配する三玖に、二乃は信じるだけだとフォローの言葉を掛ける。そんな当事者たちはどうしたのかと四葉と一花が不思議がっていた。
「…上杉ならいないぞ」
「それは残念…もしかしたら、ここかなと思ったんだけどね」
用を足し終え、お手洗いから出ようとした翔太だったが…出入口で武田と遭遇することになった。誰かを探しているような感じだったので、お目当ての人物はいないと告げたものの、武田は全然残念がっていなかった。
「時間を無駄にしてていいのか?上杉に勝つつもりなら、復習の一つや二つ多くした方がいいじゃないのか?」
「復習…?ふっふ、そんな必要ないさ……これさえあればね」
「…なんだ、その封筒…?」
友人として一応の忠告というか、助言をする翔太…だが、不敵な笑みを浮かべた武田は一つの封筒を見せてきた。
「これはね……この模試の答えだよ。全ての科目の答えが、ここに全部書かれているんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その告白に、流石の翔太も見過ごすことができず、武田を思わず睨んでしまっていた。友人として、そんなことをする人物だとは思っていなかったこともあり…何よりも、風太郎の努力と苦労を知っているからこそ、そんな不正をやらせてたまるかと強引にでも答えを奪おうと、
「これさえあれば、確実に勝てる…上杉君の成績がどれほど良くてもね。そして、僕が全国一位をとることさえも余裕だ…これを使ったとしたらね…!」
…ビリィ!ビリィ!!…
「…なぁ……!」
奪おうと動こうとした瞬間、言葉とは裏腹に武田は回答の入っている封筒を破り始めたのだ。あまりに躊躇いもない、読解不能なレベルになるまで細かく破っていくその動きに、翔太も呆気に取られていた。
そして、とどめと言わんばかりに破り捨てた紙くずをトイレに流してしまった…『トイレットペーパー以外を流さないでください』という注意書きに反する、優等生らしくない武田の行動に、翔太は目でどういうことかと真意を尋ねていた。
「上杉君に伝えてくれ…僕は、僕自身の力だけで君に打ち勝ちたいとね。前半の科目でも、あの封筒は開けていない…僕の全てを賭けて誓おう」
「武田、お前…」
「佐桐君。僕はね………宇宙飛行士になりたいんだ」
「…ん?」
その清廉さこそが、自身の知っている武田だと安堵したのも束の間、いきなりのカミングアウト…というか、脈絡のない告白に翔太は一瞬聞き間違えたのかと思ったが…残念ながら、一言一句間違ってはいなかったわけで…
「分かるかい、佐桐君!地面も空も空気もないあの宇宙空間に憧れているんだ!全てがない!だからこそ、全てがある!それこそが宇宙の素晴らしき…」
「分かった、分かった!?お前がとんでもない夢を持っていることだけはよーく分かったから!?」
聞きたいのはそこではないと翔太がツッコむ!自分の知らなかった友人の一面に、翔太も笑みが引き攣るのを覚えていた。
「ずっと親に縛られてきた僕の人生で唯一見つけた道がそれなんだ…無論それは険しい道、宇宙に行けるのはこの地球で一握りの選ばれた者のみ…世界中の人間がライバルだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから、僕はこんな小さな国の小さな学校で負けるわけにはいかないんだ…叶えたい夢があるからこそね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「上杉君によく伝えておきたまえ!僕の真の実力で君を倒す!不正して得た結果なんて何の意味も持たない!自らの力で掴み取ることにこそ意味があるのだと!」
「…分かった。一言一句、しっかりと伝えておいてやるよ…っていうか、本人そこにいるんだけどな」
「…えっ!?」
「……いや、悪い。なんか出る間を逃してな」
武田の真の思いを受け取った翔太…だが、それを伝える必要はないと、武田の後方を指さしながら答えると、階段の影に隠れていた風太郎が気まずそうに姿を見せた。
翔太から、屋上で風に当たりながら休憩してきたらどうかと提案されていた風太郎だったが、試験の時間に間に合うように戻ってきたところで、二人が会話する現場に出くわしたわけだったのだ。
「…き、聞かれていたのなら仕方ない…上杉君!そういうことで、正々堂々と勝負だ!」
「…へいへい、お前の気持ちは分かったよ」
動揺から立ち直り、再び宣戦布告をした武田に、今朝と同じような態度で返した風太郎。しかし、
「…その勝負、受けて立ってやるよ……武田」
「…!!フッ…何を今更!当たり前さ、僕は永遠のライバルなのだからね!」
…初めて武田の名を呼び応えた風太郎の言葉に、武田も嬉しそうに笑みを浮かべて、その背中を追い掛けていった。
「…青春だな…なんか最後の方、空気になってたけど」
いつの間にか、和解どころか仲良さげになった二人に置いてけぼりにされた翔太がそんなことを呟き、二人に遅れる形で教室へと戻って行った。
「旦那様…先月、行われた全国模試の結果が届きました」
「ご苦労」
全国模試から一週間後…模試の答え合わせが完了し、受験者や関係者等がその結果を見られるようになった。各自に成績表が配られる中、リムジンで移動中のマルオもその結果をタブレットで確認していた。
お嬢様方は個人差はあれど、前年よりも大幅に成績を伸ばしております。家庭教師という選択は結果的に大成功と言えるでしょう…勿論、お嬢様方の努力あってのことでしょう」
「そうだろうね…彼女たちの努力が実を結んだと僕も思うよ」
自分たちの模試の結果を見て、互いに喜び合う五つ子たち…その姿は見えなくとも、娘たちの成長ぶりを内心で喜ぶマルオ…だが、彼の気になることはそれだけではなく…
「件の佐桐様も全国87位…校内でも5位に位置する好成績を取られておりますので、家庭教師の助っ人としては申し分ない実力を見せられたと考えられます。そして、本題の武田様と上杉様に関してですが……武田様は全国八位の快挙でございます。
それに対し、上杉様の成績は………惜しい事に全国二位でした…旦那様には残念な報告となりますが、彼の宣言通りとなりましたな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
翔太の成績に関しては正直どうでもいいといった感じだった…彼の本来の役目は娘たちのボディーガードであるからだ…しかし、マルオの予想を遥かに上回る形で、風太郎は武田に勝利してみせたことに、流石の彼も言葉を失くしていた。
結果を受け取った風太郎も自身の成績に驚いていたが…マルオは驚きながらも、疑問に感じられずにはいられない部分があった。
「それにしても、おかしな答案だね…前四科目はノーミスの満点、なのに、最後の科目のラスト二問は白紙で提出とは…」
「報告によれば、突然、気を失う様に寝てしまったと…試験勉強で根を詰めすぎていたのかもしれません……しかし、その二問を解き、それらも正解していたらとすると…」
『俺はなってみせます…そいつに勝って、学年一位に……いや、全国模試一位に!!』
「さてね…もしもの話を考えても仕方ないよ」
そう…風太郎は、最後の最後で力尽きてしまっていたのだ。気が抜けてしまった…その一言に尽きる。
『あと二問……この二問さえ解ければ、あいつらに……あいつら、の、ために………ぐぅぅ……!?』
『…っ…!?(う、上杉……嘘だろう!?起きろ、上杉ィィィィ?!)』
試験の途中で寝落ちした風太郎を目撃した翔太が心の中で念じるも、残念ながら風太郎の意識はそこで落ちてしまったのが真相だった。
しかし、江端の言葉通りの結末もあったのかも…同時に蘇った風太郎の宣言が一瞬脳裏を過ぎったマルオはそれを振り払うように否定しつつも、
「上杉風太郎…彼には悉く邪魔をされてばかりだ。彼と関わる度に僕の予定は狂わされる。全く…困ったものだよ………だが、その覚悟…見事だ」
認めざるを得ない…自分にここまで言わせるまでの結果を示した風太郎に、マルオはやれやれといった様子で言葉を零していた。
「それじゃ、準備はいいか?」
「フータロー君!」「上杉」「フータロー!」「上杉さん!」「上杉君!」
「「「「「「誕生日おめでとう!!」」」」」」
半月遅れになってしまったが…模試の快挙と併せ、翔太の掛け声に合わせて誕生日を祝う五つ子たちの言葉が、各自が用意したプレゼントと一緒に風太郎に贈られていた。
「…まさか…全ての問題を解いていないにも関わらず、負けるなんてね……流石は僕のライバルだ……おめでとう、上杉君」
そして、負けたにも関わらず、どこか晴れ晴れとした笑みで武田は独り上杉を賞賛していたのだった。
次回 仮面ライダーダブル 『Gを吹き飛ばせ!』
「そろそろ私の出番ですかね…」
「そうか…貴様がぁぁぁ!?」
『駄目だ!その技だけは…!?』
「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!?!?」
『Maximum Drive!? Maximum Drive!?!? Maximum Drive!? Maximum Drive!?!? Maximum Drive!? Maximum Drive!?!? Maximum Drive!? Maximum Drive!?!? Maximum Drive!? Maximum Drive!?!? Maximum Drive!? Maximum Drive!?!? Maximum Drive!? Maximum Drive!?!? Maximum Drive!?』
…これで決まりだ!
そういうことで、結構前に告知しておりましたが、次章は修学旅行前のオリジナルエピソードとなります。
…もうWファンの方々は察して頂いていると思いますが…あのエピソードのオマージュになります。といっても、闘いの流れはちょっと異なる感じにする予定です。
…もしかしたら、サブタイのアルファベットは変えるかもしれませんが、なるべく早めにお届けできるよう頑張りますので!
それでは、また。