仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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向こうの小説は休むと言ったけど、こっちの小説を更新しないとは言ってない…(黒笑)

というわけで、オリジナルストーリーへとお話は入っていきます。
風都探偵のアニメに感化されて、もう執筆心がマシマシ…と、調子に乗ってキリのいいところまで書いたら、長くなりました。

ガッツリバトル回ですが、あのエピソードをオマージュした感じしたお話なので、その行方は…
オリジナルドーパントも今回は結構シンプルなものです…まぁ、出した目的が目的ですので…

あと、一部キャラにとんでもないことをさせてますので…とりあえず、先に謝っておきます、すみませんでした!?

それでは、どうぞ!

追記 本話からガイアメモリの表記を全て大文字にしていきます。過去のお話もそのうち修正していく予定です。
 
あと、さり気なくUA10万超えました。読者の皆様のお陰です!


第85話 「Gを吹き飛ばせ!/それは天災という名の化物」

「…追加キーワード…『集団汚染』……」

 

呟いた言葉が、眼前に電子的な装飾を施された緑の文字で出現する…これで三つ目のキーワードとなるのだが、フィリップの表情はあまり芳しくなかった。

 

そんな彼がいるのは真っ白な空間に、数十の本棚が並ぶ空間だった。これでもかなりの数を減らした方なのだ。初期状態であれば、この白い空間を埋め尽くすほどの本棚と、そこに詰められた無限に等しい本が立ち並んでいるのだから。

 

「…駄目だね…ヒットしたのが283件。やはりあやふやなキーワードでは対象を絞り切れない」

 

『そうか……錯乱、精神、集団汚染じゃ流石に範囲が広すぎるか…』

 

適当に棚から本を取り捲っていくフィリップ…百を超える本を全て閲覧していくのは、流石の彼であっても、相当の時間を要する。それは理想的な手段ではなかった。

 

眉を顰めるフィリップに声を掛ける人物がいるも、その場にはフィリップ以外の誰かがいるわけではない。しかし、気にせずフィリップは会話をしていく。

 

「精神関係のガイアメモリだけでも数百がヒットする…生物や無機物とは異なり、表現が曖昧な部分が多すぎる。特にメモリの名前と記憶が能力と似るとも限らないのが、ガイアメモリのやっかいなところだね」

 

『…対策が分からずとも、正体の片鱗さえ分かれば対処に向かおうと先回りでもなんでもできるんだが…』

 

「そうだね…再来週には君も修学旅行だろう?君や照井竜がいない間に何かあった場合、ファングジョーカー一択での戦いになる。できるなら、ハーフチェンジができる方が何か有利になりそうな相手なんだけどね」

 

『…仕方ねぇ。とりあえず今は情報収集に徹するしかないってことか』

 

これ以上検索を続けても意味がない…相棒と同じ結論だったフィリップは意識をこの空間と切り離す。

 

すると、瞬間的に真っ白な空間…フィリップが持っている特異的な能力『地球の本棚』から意識を離脱させたのだった。

 

「……ふぅ」

 

「お疲れさん、フィリップ…」

 

「ああ、ありがとう、翔太」

 

目を開けるのに意識が戻ったフィリップを出迎えたのは相棒…翔太の声だった。『地球の本棚』において検索する際、集中するために取るポーズ…両腕を左右に大きく広げるものから、体勢を楽なものにし、相棒が渡してきたミネラルウォーターを受け取る。

 

「…まぁ、丁度良かったよ…お前が『京都』に関しての検索を丁度終えたばかりで」

 

「まぁね…京都に関しての検索結果は全て閲覧が完了したよ。今となっては特に興味はない…あぁ、ただお土産に関しては是非とも八つ橋なるものを買ってくれたまえ!京都に関するあらゆる知識を検索していたところ、抹茶と並ぶ土産物の定番だと知った!君が旅行に行っている間に検索しておくから、その答え合わせを是非ともしたい!!」

 

「…お、おう…分かった、分かった」

 

久々に知識馬鹿が発動したな…そんな感想を、目を輝かせて次の検索対象へとその矛先を向ける相棒に抱きながら、翔太は秘密のガレージで溜息を吐いていた。

 

マルオとの会談(と言っていいのかは分からないが…)を終え、五つ子たちの家庭教師も延期となった当日、翔太はフィリップに昼間に聞いた集団錯乱事件に関して『地球の本棚』で検索をしてもらっていたのだ。

 

…まぁ、結果は見ての通り、空振りに終わってしまったのだが…

 

「こうなったら、風都イレギュラーズのみんなに手伝ってもらうしかないんじゃないかい?」

 

「そうしたいんだが…精神系のドーパントの仕業だっていうのなら、あいつらを巻き込む可能性もあるし…こうなったら、俺独自で動くしかないか」

 

「…一応提案しておくけど、照井竜に協力を頼むっていうのはどうたい?」

 

「お前…あいつがこんな不確定要素のことで動いてくれると思うか?」

 

「思わないね…だから、一応って言ったのさ」

 

まだ出会って短いものの、二つの事件を共に解決したライダーである照井に協力を仰ぐのはどうかという提案に、翔太は顔を顰める。まぁ、フィリップの方も冗談半分で言ったようなものだったので、やれやれといった様子だった。

 

「あいつらの家庭教師もまた再開するのになぁ…まぁ、試験が終わったばっかりだから、多少は融通利かせられそうだけど…」

 

「…まぁ、事情を知っているからね。君がいないとなると、ドーパント関連だって勘付かれるだろうね」

 

「そうなんだよな…あぁー、こんな時に限って色々重なるんだよな…!?」

 

「……相変わらずのハーフボイルドだね。そこは『やることが多いのは、暇な時間が続くよりもよっぽど有意義だ』とでも、真のハードボイルドなら言うところじゃないのかい?」

 

「…ぐぅ…」

 

遠慮のないフィリップの発言に翔太は胸元を抑える…まさしく半熟者だと指摘された相棒の狼狽える姿に、フィリップは慣れた様子で呆れるのだった。

 

 

 

「…あー…」

 

「疲れてるな、佐桐…えっと……大丈夫か?」

 

「なんとかぁ…ちょっと昨日、街を駆け巡り過ぎて…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

二日後…土曜の午前、五つ子のアパートのリビングにて、机に突っ伏している翔太の惨状に、流石に心配になって隣に座っていた風太郎が声を掛けるという光景がそこにはあった。

 

買い出しに出ている二乃と五月を除いた面々もその光景に少し引いており、遠巻きに翔太が疲労しているのを察していた。

 

全員が揃ってから勉強会をする予定だったので、それまで談笑したり、先に勉強で分からい部分を風太郎に聞いたりしていたのだが、ちょっと気を抜いた翔太がそんな様子になっていたので、代表して風太郎が声を掛けたのだ。

 

…まぁ、返ってきた答えが、昨日家庭教師を休んだ用事が街を駆け巡っていた、というものだったので絶句してしまったわけだが。

 

「街を回っていたって…事件か何かですか?」

 

「……いや、見回りだよ。再来週から修学旅行だろう?その間、継風にはフィリップだけがいる状態だから、できるだけ事件の芽は摘んでおきたいと思ってな」

 

「大変…珈琲でも飲む?」

 

「悪い、三玖…頼むわ」

 

何かあったのかと、興味心も半分混じった四葉の問い掛けに、一心逡巡するも半分嘘を交えた真実を話す翔太…事件を探ってという意味では嘘を吐いていない。

 

仮面ライダーはやはり大変なのだと一同が同情する中、眠気覚ましの意味もあって飲み物を用意しに三玖は台所へと向かった。

 

「…でも、そんな生活をもう二年以上も続けているんでしょ?凄いよね、ショータ君…最初からそんな感じだったの?」

 

「いや、最初から上手くいってたわけじゃない…というか、最初にダブルに変身した時なんか…思い出すのが恥ずかしいぐらい酷いものだったからな。マスターとも全然協力を仰げる立場でもなかったからな」

 

「…そういえば、そこら辺の話ってあんまり聞いたことないよな。お前らが仮面ライダーになった経緯とかはあの夜に聞いたけど…」

 

「あー……まぁ、話す機会がなかったってのもあるが、半分ぐらいは依頼人のプライバシーに関わってくることもあったりする案件だから、話し辛いっていうのもあるんだよ…多分、フィリップも二乃にはそういう話はしてないんじゃないか?」

 

「(…そういえば、フィリップさんと二乃って仲いいもんなぁ~)へぇ~…いつか聞いてみたいと思っていたんですけど、そういう事情なら難しそうですね」

 

「…まぁ、機会があったら話すよ。別に全部が全部話せないってわけじゃないし…初めてファングジョーカーに変身した時みたいな話なら大丈夫だろうからな…一応、フィリップの許可を取らないといけないけど…」

 

一花と風太郎からそんな疑問をぶつけられ、顔をようやく上げて答える翔太の顔には苦笑いが浮かんでいた。翔太的には自身の未熟な部分を晒すこともあって、あまり乗り気ではなかったのだ。

 

流石の四葉も安易に聞いてはいけなかったかと反省するも、ヒーローの活躍にちょっと興味が会ったこともあり、残念そうにしていた。

 

それを見た翔太も少し罪悪感が湧き、また何かの機会に簡単に話すのはありかと考えていた。まぁ、後々どこかでできればということで、その話題に関する話は終わりとなったのだった。

 

「…にしても、二乃と五月の奴め…一体どこにまで買い物に行ってるんだよ」

 

「土曜の朝で、特売しているところも多いだろうから混んでるんだろう…まぁ、もう少し気長に待とうぜ、上杉」

 

話が一段落ついたこともあり、そろそろ勉強会を始めたいと思っていた風太郎は痺れを切らして、そんなことをぼやいていた。一方で、もうしばし気長に待とうと宥める翔太の構図が成り立っていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「おっ、三玖…珈琲を持ってきて……三玖?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

飲み物を用意しに行っていたわりには、かなりの時間が掛かっていた三玖が戻ってきた。飲み物を受け取ろうとした翔太だったが…その様子が変なことに翔太は少し遅れて気付いた。

 

飲み物を用意しに行った筈なのに、その手には何も持っていない三玖がそこにはいたのだ。全員分でないとしても、翔太個人のためのコップか何かを持っていないのは変だ。

 

珈琲が切れていたのか…だとしても、代わりの飲み物のリクエストを聞くならば、リビングと併設している台所から聞けば距離的にも問題はない筈…沈黙のまま、佇む三玖に眉を顰める翔太、そして、遅れて三玖の異変に気付いた風太郎が振り返ろうとした時、

 

「…っ!?危ねぇ、上杉!」「なぁ……うぉ?!」

 

後ろ手に隠していた三玖の右腕が前に出た最中、嫌な予感を覚えていた翔太はその正体を目にし、すぐさま隣に座っていた風太郎を突き飛ばしたのだ!

 

いきなりの翔太の行動に、理解できる間もなく壁に激突する形で吹っ飛んだ風太郎。一体何をするんだという文句を言おうとする前に、嫌な音がリビングに響いた。

 

…ガァン…!?

 

吹っ飛んだ風太郎と、突き飛ばした反動で咄嗟に後ろに下がった翔太…彼らが元いた場所に、隠し持っていた包丁を三玖が振り下ろした凶行が音の正体だった。

 

突然の凶行に流石の翔太も一瞬呆然としてしまう。場慣れしている翔太でさえそうなのだ…一般人の感覚である風太郎と一花、四葉は困惑し、完全に反応することができなくなってしまっていた。

 

しかし、そんな状況なお構いなしに三玖は振り下ろした包丁を床から抜き、だらりとした姿勢で獲物を探すかのように周囲を見渡す…その姿はゲームや映画でよく見る、操られた人と呼ぶにふさわしい奇行だった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「っ…?!止めろ、三玖!」

 

虚ろな目をした三玖の姿に、正常ではない…三玖自身の考えで行っている動きではないと判断した翔太がいち早く我に返った。

 

何も映していないであろう虚目で風太郎の姿を捉えた三玖が、再び凶行に走ろうと風太郎に近づこうとしていた。不味いと察した翔太が背後から羽交い絞めにして止めに掛かるも、抵抗する三玖の力はいつもの弱弱しいものとは異なり、全力でなければ拘束を解かれそうな程に強力なものだった。

 

なんとか動きを封じることはできたもののどうしたものかと思考を巡らせる翔太。しかし、先に邪魔者を排除すべきだと判断したのか…一瞬、力を弱めることで拘束を緩めた三玖。その隙間を拭い、左ひじを翔太の脇腹に食らわせたのだ。

 

まさかの反撃に虚を突かれた翔太が怯む…その隙に拘束を解かれた三玖が包丁を水平に振るう!咄嗟にしゃがむことで躱すも、乱暴に振り回してくるその凶器に翔太は回避せざるを得なかった。

 

ようやく現実が理解できた他の三人だが、三女の変貌ぶりにどうすればいいか分からず、状況を見守ることしかできずにいた。素人が何か余計なことをして、危険なことをするよりはかなりマシな選択肢だっただろう。

 

現に、翔太は三人が余計なことをしないでいてくれていることに内心感謝していた。しかし、いつまでもこうしているわけにもいかない…素人とはいえ、凶器を持っている相手にこんな狭い空間でやり合うのは自分にとっても他者にとっても危険すぎる。

 

包丁が頬を掠めたことで、もう躊躇などしていられないと悟った翔太が動いた!

 

「悪く思うなよ、三玖!?」

 

飛び出してきた自分を狙い、顔目掛けて突き出してきた包丁を、しゃがみ込むことで躱すの同時に左手で包丁を持っている右手首を逸らし、その勢いをも込めた右拳を三玖の腹部に叩き込んだ!

 

「…うっ!?…あ……」

 

死闘を幾度も潜ってきた翔太が放った拳は、的確に三玖の溝内に入り、一撃でその意識を奪った。女性を殴るのはどうかと思うが、状況が状況だったのだ…少しは多めに見て欲しいと思いつつ、意識を失くしたことで倒れ込みそうになった三玖の身体を支える翔太。

 

握っていた包丁も金属音を鳴らしながら地面に落ち、凶行が収まったことを確認した翔太はひとまず息を吐いた。

 

騒動が収まり、ともかく二人を手伝ったり、落ちた包丁を回収しようと、一花と風太郎が動いたのだが、

 

「触るな、上杉!一花!」

 

「「っ!?」」

 

包丁を拾おうとした風太郎、三玖を支えるのを手伝おうとした一花を、翔太が叫ぶように制止し、その声に驚いた二人の動きがピタリと止まる。

 

三玖の突然の凶行…それで思い起こされたのは、一昨日にマルオから相談を受けた集団錯乱事件のことだった。まさか三玖がその対象になったことに、翔太は焦りつつも、思考を巡らせる。

 

三玖本人に何か能力が掛けられたのか、それとも握っていた包丁に仕掛けが…何があっても不思議ではないのがガイアメモリやドーパントの力だ。少なくとも、風太郎たちに安易に触らせていいものではなかった。

 

(三玖は…普通に気を失っているだけか。パッと見た感じはどこも異変はない…包丁も……どこも変なところはないか。それとも、肉眼では視認できないだけか…?ともかく、フィリップに連絡を…)

 

支えていた三玖を地面に寝かせ、一目見て異変がないかを探る…しかし、外見は特におかしな部分は見受けられず、持っていた包丁も観察するも、何の変哲もない包丁であり、翔太は舌打ちをしたい気分に駆られた。

 

これ以上は自分だけでは判断できないと思い、デンデンセンサーをも所有しているフィリップに相談すべきだと、スタッグフォンを取り出そうと…

 

「…佐桐!?」

 

「っ…がぁああぁ!?」

 

焦った風太郎の声が聞こえるも、フィリップに電話しようと気を取られていた翔太は、飛び掛かってきた影に反応するのが遅れてしまった!持っていたスタッグフォンが地面を滑っていき、押し倒された翔太。

 

突然の奇襲と背中を打った衝撃で一瞬の隙を突かれた翔太の首が、その人物の両腕によって締められる。咄嗟に完全に掴まれることは阻止したものの、呼吸が制限されてしまい、苦しむ翔太はその正体を目に捉えた。

 

「今度は…よ、つば、か…!?がぁ……く、やめ…ろ、四葉…!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「止めて、四葉!?…ダメ、凄い力!」「このやろう…!」

 

先程の三玖と同じように…虚ろな目をした四葉が、自身を手に掛けようとしていた。なんとか抵抗しようとするも、呼吸がどんどんと苦しくなってくる現状、逆に翔太の抵抗が段々と弱弱しくなってきていた。

 

このままではマズイと、一花と風太郎が四葉を引き剥がそうとするも…いつもの四葉以上の力に、二人掛かりでもその身体を引き剥がすことができずにいた。

 

どうすればと段々と視界が狭まっていく中、打開策を巡る翔太…そんな彼の息の根を止めんといわんばかりに、四葉が首を絞める両腕の力を更に込めようと、

 

『Bat』

 

…キィィィィィィィィィィィィィィンン…!!!

 

「…!?ああぁ…あああああああああぁぁぁ?!」

 

「「「っ!?」」」

 

「…うううぅぅ……あぁ…」

 

「ゴホ‥ゴホォ?!カハァ…!た、助かった…でも、どうして…」

 

「どうやら危機一髪のところに来れたみたいだね?」

 

「…フィリップ!?」「…フィリップ君!?」

 

耳を塞ぎたくなる奇怪な音が部屋に鳴り響き、頭を押さえ苦しみ出した四葉…すると、次の瞬間、意識を失くし翔太の胸元に倒れ込んだ。

 

気道を解放されたことで新鮮な空気を吸い込めた翔太が少し咳込むも、どうして四葉が意識を失ったのか首を傾げる中、玄関から声が聞こえ、その人物…フィリップに気付いた風太郎と一花が驚いた。

 

そんなフィリップの傍らには、アクティブモードになっているバットショットが飛び回っていた。相棒とメモリガジェットがいることに、どうして四葉が気を失ったのか、理解ができた翔太が駆け寄る。

 

「助かったぜ、フィリップ…それにしても、昨日頼んだばかりだったのにもう調整ができたのか?」

 

「まぁね…それで急いで君に届けに来たんだが……まさかこうも早く使うことになるとは、流石の僕も予想外だったけどね」

 

「さ、佐桐…悪いんだが、説明してくれるか?」

 

「ああ、悪い、二人とも………こうなったら、話すしかないか。四葉がいきなり意識を失ったのは、バットショットに新たに搭載したガイアメモリ特有のエネルギーを遮断する特殊な超音波を発生させたからなんだ。

まぁ、どういう原理かと言われたら、俺たちが使ってるダブルドライバーの感覚共有であるガイアリレーションっていう、俺も理解ができない分野の話になるんだが…ともかく、こいつが近くにいれば、さっきの三玖や四葉みたいにはならずに済むってことだ」

 

「…ま、まぁ…難しい専門用語は置いておいて…それじゃ、三玖と四葉がいきなり暴れ出したのって…またガイアメモリの仕業なの?」

 

「…ああ、おそらくな。それを俺たちは調べようと…「これは驚きましたね…」…っ!?」

 

「あの声は…!?」

 

今回の対策にと、精神干渉をしてくることを見越して、短時間ではあるがその能力を妨害できる機能をバットショットに搭載するように、翔太とフィリップは昨日の段階で相談していたのだ。

 

まさか来ていきなりの実用にフィリップも苦笑するも、事態があまり悠長出来ないものだと察した一花が事情を尋ねるも、説明しようとした翔太の声を遮り、フィリップが開けていた玄関…外から聞こえてきた賞賛とも取れる声に、ダブルの二人が身構える。

 

聞き覚えのある…二人からすれば、忘れることなどできないその声に、すぐさま翔太とフィリップは飛び出した。それに続き、一花と風太郎も表に出ると、

 

「…お久しぶりですね、お二人さん」

 

「まさか…お前があの白いドーパントの正体…!」

 

「…ドクター…」

 

紳士服にハット帽…それをわざとらしく、軽く持ち上げた挨拶する仕草に紳士らしさを覚えるも、ねっとりとした声にダブルの二人は自分たちの記憶と違わない声だと確認し、警戒心を最大限に引き上げる。

 

そして、その傍らには…

 

「…ドーパント…だよね?」

 

紳士らしき人物のすぐ後ろ…人型ではあるが、人ではないその人物の姿に、確認するように一花が呟いた。

 

確かにそれは人の形はしていた…しかし、その外見は明らかに異常だった。全身ビニールのような黒素体、そこに頭・両肩・両手・両膝・両足首に連動しない形で不規則な点滅をする発光体らしき水晶が着いていたのだ。

 

頭部から青、右肩は緑、左肩は赤、右腕は黒、左腕は黄色、右膝は茶色、左膝は灰色。右足首は銀、左足は金…楕円の形をした水晶が鈍い光を点滅させるその姿は異常であり、ドーパントとしてはどこもおかしくはなかった。

 

「そういえば、変身前の姿をお見せするのはこれが初めてでしたね…改めてお見知りおきを。そして、これが最後のあいさつになるかと…」

 

「なんだと…?」

 

「それにしても…これは少しばかり驚きましたよ。まさか、このドーパントの精神干渉を相殺する機能を開発するとは…メモリの正体が分かっていないのに、流石は『地球の本棚』を持っているだけのことはありますね」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

平然と自己紹介をするその様があまりにも不気味過ぎて、翔太とフィリップだけでなく、初めて対峙する一花と風太郎でさえも、気味の悪さを覚えていた。

 

一方で、ドクターとしてもこの展開は予想外だったらしく、素直に能力に対する対策を講じてきたフィリップを賞賛していた。自分のことを把握しているドクターの発言に、フィリップは口を閉じていた。

 

…敵は自分の過去を知っている…自分が持っている特異性までもを。だからこそ、下手に口を開くのは危険かと感じていた。

 

「本当ならば、五つ子たち全員を操って、最後に貴方たちのどちらかと操って、信頼を失わせた上で疑心暗鬼にさせてやろう…みたいな、茶番を考えていたのですが、そう上手くはいかないのが現実ですね」

 

「…三玖や四葉をおかしくさせたのは、そのドーパントの仕業か…!」

 

「ええ…そして、実験によって街の人々を暴走させていたのも、ね」

 

「「っ…!?」」

 

予想の斜め上…まさか、ここまであっさりと目的を…いや、してきたことを自白したドクターに、流石の二人も息を呑む。

 

狙いがなんであれ、そこまで目論見を話していいのかと、告げられた事実が嘘なのではと疑いそうになる程にだ…だが、ドクターは態度を変えることなく、平然と話していく。

 

「別に話しても問題はありませんよ…話したところで、私たちの真の目的を察することはできないでしょうから…」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

話しても構わない内容だけを話していたらしく、その目的とやらを聞き出してやりたいところではあったが、まずは眼前にいるドーパントをなんとかしなければならない。

 

だが…随伴しているドクターが手を出してくるのではという疑念もダブルにはあった。もしそうだとすれば…一花はまだしも、中で意識を失っている三玖や四葉がとても危険であった。

 

しかし、その心を読んだかのようにドクターは笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「ご安心を…今日の目的は彼女たちではなく、君たち仮面ライダーですから」

 

「っ…なんだと…?」

 

「そのために、このドーパントを実験と併せて連れてきたのですから…そう、君たちだけでは絶対に倒せないこのドーパントを、ね」

 

「…上等だ!何を考えてるかは知らねぇが、くだらねぇ企みごとここで止めてやるよ!いくぜ、フィリップ!」

 

「ああ!上杉風太郎、僕の身体を頼むよ」

 

『CYCLONE!』『JOKER!』

「「変身!」」

 

『CYCLONE! JOKER!』

 

挑発を買う形で、ダブルドライバーを取り出した翔太と同意したフィリップ…互いのメモリを起動させ、ドライバーに装填した後、意識が転送されたフィリップの身体が倒れ込むのと同時に、翔太の姿がダブル サイクロンジョーカーへと変わった。

 

ファングジョーカーでの変身を見たことはあった一花は耐性があったものの、初めて目の前でダブルの変身を見た風太郎は驚きつつも、倒れ込みそうになっていたフィリップの身体をギリギリで受け止めることに成功した

 

「うおっとと……なんて危なっかしい変身方法なんだよ」

 

『一応、倒れ慣れてはいるんだけどね…あとは頼んだよ』

 

「『はぁ!』」

 

正直な感想…というよりも、皮肉を風太郎に言われたフィリップの声がダブルの右複眼の点滅と共に零れる。しかし、軽口はそこまでであり、意識を眼下にいドーパントに切り換えた二人は素早くアパートの二階から飛び降り、敵に飛び掛かった。

 

できるだけ戦場を遠ざけるべきだと判断したらしく、ドーパントに飛び掛かったまま、ダブルはアパートから距離を取るように離れていった。

 

対するドクターも、まだ手出しをするつもりはないらしく、不敵な笑みを浮かべたまま、二人を追っていく。

 

「…本当に佐桐とフィリップが合体してるんだな」

 

「流石のフータロー君も驚いたみたいだね…」

 

「あれを見て驚かない奴がいたら、そいつの顔を見てみたいくらいだぜ…正直、お前らが五つ子だって知った時と同じくらい驚いたわ」

 

「…私たちと同等っていうのも、ちょっとどうなんだろう…」

 

「……ぅう。何が……うっ、お腹痛い…」「…頭がクラクラするぅ…」

 

「…!三玖、四葉……良かった、目が覚めたんだね!」

 

「「…えっと…?」」

 

置いてけぼりにされたことで、何とも言えない空気の中、会話する風太郎と一花…そんな中、気を失っていた三玖と四葉が目を覚ましたらしく。状況が呑み込めずに首を傾げていた。

 

ともかく事情を説明しようと、一花は先程起こった出来事について説明していくことにした。

 

『HEAT!』

『HEAT! JOKER!』

 

「はあああああああぁぁぁ!」

 

日中、ほとんど人気が無い高架下へと移動してきたダブルとドーパント…ダブルはともかく、ドーパントの方もダブルと闘う気だったらしく、先程までのおとなしさが鳴りを潜め、ダブルに猛然と迫って来ていた。

 

それを迎え撃とうと、ヒートジョーカーにチェンジし、炎と切り札の拳を左右で連続して放つダブル…だが、ドーパントもタダではやられるつもりがないらしく、ダブルの猛攻を受け止め、時には反撃してくる強者であった。

 

『くっ…有効打が見出せない。ただの精神干渉系メモリじゃないみたいだ…』

 

「それでもだ…!このまま放置なんてできるわけがねぇ!?」

 

『ならば…正攻法ではなく、搦め手で攻めよう』

 

右手の炎拳が左手で逸らされ、互いの右足によるハイキックが胴体にクリーンヒットしたことで、ダブルとドーパントの距離が少しばかり離れる。

 

地面に転がった身体を素早く起こすダブルに対し、ドーパントの方も大したダメージを負っていないようでピンピンとしていた。

 

このままではジリ貧になると判断したフィリップの提案に、翔太も相棒の意図を察し、メモリを取り出す。

 

『BLIZZARD!』『TRIGGER!』

『BLIZZARD! TRIGGER!』

 

淡い青と濃紺の青…二種類の青を半身ずつに色として宿したダブル ブリザードトリガーが左胸元に出現したトリガーマグナムを手に取り構える。

 

ダブルがハーフチェンジしたことに一瞬身構えるドーパント…その隙を突き、チェンジした瞬間に、早撃ちによってマグナムの引き金をダブルは引いた。

 

銃口から硝煙と見間違うような白煙が噴き出し、弾丸が放たれる…不意打ちでのこれは避けれないと判断したらしく、ドーパントが両腕を前方に交差してその弾丸を受け止める。

 

「…!?」

 

「…おっと。どうやら、受け止めた弾丸が普通じゃないって、ようやく気付いたようだな」

 

ダメージのないその攻撃に首を傾げるドーパントだったが、その直後、防御に使った両腕に違和感を覚え、その重みに釣られるように体勢を崩しそうになってしまった。

 

引っ掛かったなと言わんばかりに軽口を叩く翔太が、トリガーマグナムを肩に掛けながらドーパントを見ていた。

 

ブリザードトリガーの能力により、凍結弾と化した弾は威力がほとんど無くなっている代わりに、対象を氷結させる力を持っていたのだ。それにより、弾丸が直撃した両腕を覆い尽くすサイズの氷が形成されていた。

 

『こちらの動きについてくる仕草…それなりに戦闘慣れしている者が変身しているとみて、仕掛けさせてもらった…闘い慣れているが故に直感的に防いでしまう…僕の相棒も時折やってしまう癖だからね』

 

「そんで、ちょっと時間を稼げるなら…こっちの策を更に仕掛けられるわけでな!」

 

これが人間相手であれば勝負はついただろうが、精神系がメインとはいっても相手はドーパント…両腕の氷も10秒と少しあれば、砕いてしまうことだろう…だからこそ、ダブルは僅かに生まれた時間を活用すべく、次の行動に移る。

 

ドーパントの足元を拘束しようと再びトリガーマグナムで凍結弾を放つ。流石に二度も喰らってなるものかと、その場で跳躍して回避するドーパントだが、その回避方法は不正解だった。

 

弾丸を避けたことで脚が凍結するのは防げたが、外れた凍結弾は地面を凍らせた。そのため、着地した際に足元を取られ、見事に体勢を崩して地面に倒れこんでしまったのだ。

 

そして、更なる大きな隙を生み出したことで、ダブルが更なる行動に出る。

 

『SPIDER』

『TRIGGER! Maximum Drive!』

 

呼び寄せておいたスパイダーショックをマグナムに合体・トリガーメモリを装填して、銃口下部に折りたたまれる形で位置する外装を合わせることでマキシマムモードに変形させる。

 

「『トリガースパイダーカバード!!』」

 

エネルギー充填音が最大限に高まったところで、トリガーマグナムの引き金を連続して引くダブル。その銃口はドーパントを…狙うことなく、周囲一帯に乱雑に放たれた。凍白の色を宿した網状の弾丸が地面や高架底に当たり、そこから瞬間的に人間を少し超えるサイズの氷塊が出現していく。

 

『NINJA!』

『BLIZZARD! NINJA!』

 

強引ではあるが、劇的に戦場を変化させたダブル…下準備を終えたことでお役御免となったトリガーメモリをドライバーから抜き、代わりに左側のスロットにニンジャメモリを装填し、ドライバーを開く。

 

左側の青が中央部分から塗りつぶされるように変わり、シアンとパープルの二色にセパレートされたブリザードニンジャへとハーフチェンジが完了した。そのまま後腰部に出現したニンジャブレイドを左手で構えたダブルだが、

 

「……!?」

 

ダブルが戦場を整えている間に、自身を纏っていた両腕の氷を砕いたドーパントが体勢を立て直していた。そのまま突っ込んでくるダブルを迎撃しようとするも、突如として迫っていたダブルが眼前から姿を消し、その動きが止まる。

 

突然の消失に困惑し、周囲を見渡すドーパントだが、ダブルの姿はどこにも見られない。警戒しようと気を張ろうとした瞬間、真横から気配が迫る!

 

「おらぁぁ!」

 

「…ぎゃぁ?!」

 

自身の左斜め前に位置する氷塊の前に現れたダブルが振るう忍びの刃が、ドーパントの左肩から胴体にかけて火花を散らせた。直撃によりダメージを負い、よろめくドーパントに追撃の右膝蹴りがそのまま入り、更にその身体を後退させる。

 

ダブルを視界に捉え直したドーパントは、反撃として大ぶりな右拳を振るうも、ダブルはそれを読んでおり、ニンジャブレイドから射出していたワイヤーの引き上げをも加え、上空へと素早く跳躍して回避する。

 

攻撃が空振りに終わり、ダブルが逃げた先を追って見上げたドーパントだが…またしても奴の姿が消えてしまっており、どういうことかと狼狽する。また奇襲を仕掛けてくるのではと警戒していると…

 

再び上空からダブルが出現し、重力に引っ張られながら降下してくる勢いに合わせて刃を振り下ろしてきた!流石に二度目となると反応できたものの、左腕で防御せざるを得ず、刃によって左腕に火花が走る。

 

「…!?………!」

 

もう逃がさないと、至近距離にまで迫っていたダブルを捕まえようとドーパントが手を伸ばす。だが、その手がダブルを捕まえることはなかった。

 

捕まえようとした瞬間、ダブルが地面に沈み込んでいったからだ…いや、正確には凍結した地面…氷へとその身を潜航させたからだ。

 

ようやく先程までの奇襲のカラクリを目のあたりにしたドーパントもそこで気が付いた。ダブルが消えたのは、地面や高架底に出現している氷塊に、能力によって身を隠していたのだと。

 

ならば、今度もまた氷の床から出てくるに違いないと、その場から少し後退り氷の床が見渡せるように視界を確保する。これで奇襲はもう通用しない、いつでも反撃できると身構えるドーパント。

 

…しかし、その右肩にポンポンと手を叩く者が現れ、驚きと共にドーパントが振り返った視線の先には、

 

「よぉ、お前の探し人はここだぜ?」

 

戦闘中とは思えないフランクな言葉を放つダブルの姿があった…『なぜ、どうして?』という疑問を体言するかのように驚くドーパントだが、その隙を見逃してくれるわけもなく、ダブルが青の光を点滅し続けている顔面へと右拳を叩き込む!

 

完全に虚を突かれたことで怯んだところに、ニンジャブレイドによる高速3連撃の斬撃が決まり、コンボのフィニッシュに左回し蹴りがそのボディに刺さった!

 

「しゃ!…はああああああぁぁぁぁ!!」

 

そして、止めと言わんばかりに後方に吹き飛びそうになっていたその身体をワイヤーで拘束し、引き寄せたドーパントをすれ違いざまに、右の逆手で持ち換えたニンジャブレイドで一閃した。

 

この猛攻に流石のドーパントもダウンしたらしく、すぐには立ち直れず、地面にて身悶えていた。

 

「確かに動きはいいが、本能的な動きに振り回されてるだけじゃ、俺たちには勝てないぜ?なんせ、こっちにはとっても頭が切れる相棒がいるんでな」

 

ドーパントの予測は確かに正解であった…ブリザードニンジャは氷や鏡といった物体に潜ることで身を隠せるフォームである。一度目・二度目の奇襲は確かに氷塊から飛び出してきたものである。

 

しかし、三回目となる攻撃はなぜ見張っていた氷の床から出た様子が見受けられなかったのか…答えは簡単である。地面の氷を伝い繋がっていたドーパント背後の氷塊へと移動していたからである。

 

そこに隠形に優れたニンジャメモリの効力が加わったのだ…初見のドーパントが背後を取られるのも無理はない話だが、翔太は、ここまでの流れを計算してブリザードトリガーのマキシマムドライブを使ったフィリップの頭の切れに感心の声を上げていた。

 

『…メモリと変身者の相性が良くないんだろう。あまり理性がないようだ…精神系メモリだから、戦闘力も尚更高くないのだろう』

 

「…まぁ、バットショットに追加した機能のお陰でもあるか」

 

『急ごしらえにつき、発動時間が短いのがネックだけどね…さぁ、バットショットのバッテリーが切れる前に決着をつけよう』

 

ダブルが戦場を引き離したもう一つの理由…それはこのドーパントの能力によって操られる人物をいなくさせるためでもあった。

 

随伴していたドクターの言葉からして、翔太たちも操られるだけでなく、一般市民までも暴徒として操られては、ダブルからしては堪ったものではなかった。

 

ならば、バットショットの緩和能力により一応は能力を無効化できる自分たちだけがいる戦場に持ち込むべきだと判断しての行動だった。

 

しかし、そのバットショットも急場しのぎの突貫装備であったため、緩和機能を使っていると30分しかバッテリーが持たないのだ。それが切れれば、ダブルさえも操られてしまう可能性があるため、早急にけりを付ける必要があった。

 

『NINJA! Maximum Drive!』

 

「『…すぅぅ……はああああああぁぁぁ…!!』」

 

これで決める…その意気込みを込め、ドライバーから抜いたニンジャメモリをブレイドのマキシマムスロットに装填する!和風にアレンジされたエネルギー音が高まり、刃を持つ手とは逆の右手に冷気が集結されていく。

 

ブリザードニンジャのマキシマムドライブ『ニンジャミラージュ』…複数の氷柱を出現させ、それらを飛び交いながら斬撃を与えていく技を繰り出すもので、その準備にダブルは入っていた。

 

数秒後にはドーパントをメモリブレイクできる筈だと思うダブルが氷柱を出現させるべく、冷気が集結し切った右手を地面に振り下ろそうとした時だった…見悶えていたドーパントが突如右手をダブル目掛けて突き出したのだ!

 

…グワァーーーーーーーーーーーン…

 

日常ではまず聞くことのない音…言葉にするならば、時空が捻じ曲がるかのような効果音というのが一番近いのだろうか…不協和音とも捉えられる音がその場に響き渡る。

 

ドーパントの最後の悪あがきかと思ったダブルは、警戒しつつも必殺の技を放とうと動きを止めずに発動させようと…

 

「…な、なに…!?」

『これは…?!』

 

しかし、その場に響いたのはダブルの驚いた声だけだった。地面に着けたシアンカラーの右手を伝って氷柱が現れる音はせず、それどころか、集まっていた凍気さえも霧散してしまっていたのだ。異変はそれどころではなく、マキシマムドライブ特有のメモリのエネルギーが高まる効果音さえもいつの間にか消えてしまっていたのだ。

 

「どういうことだ!?なんで、マキシマムが発動しないんだ…!」

 

『メモリの故障…?いや、それならダブルの変身自体が解除される筈だ……マキシマムドライブ自体が無効化された…?』

 

何が起こったのか把握できず、こんな土壇場でニンジャブレイドが壊れたのかと思い、叩こうとする翔太の右手を、自身の意思によってなんとか抑えながら考察するフィリップ。

 

…叩いて直すという相棒の暴挙に呆れる間もなく、ドーパントが何かをしたと推測し、ブレイドに刺さっていたニンジャメモリを抜く。『NINJA!』…起動スイッチを押すと、いつものようにガイアウィスパーは鳴り、メモリが故障したわけではないと判断し、マキシマムドライブだけが無効化されたと考えた。

 

「どういうことだよ、フィリップ…マキシマムドライブだけが無効化されるなんて…そんな能力あんのかよ!」

 

『……確かめてみよう』

 

未だに状況が呑み込めていない翔太に、フィリップはそう呟き、メモリを切り替えようとする。ドライバーに残っていたブリザードメモリをも抜き、二つのメモリを起動させる。

 

『LUNA!』『TRIGER!』

『LUNA! TRIGER!』

 

変幻自在の銃撃士ルナトリガー…金と青の装甲へと変わったダブルは、再び具現化したトリガーマグナムにトリガーメモリを装填し、マキシマムモードに変形させた銃口を構える。

 

「『…トリガーフルバースト!!』」

 

ダブルの意志で自由自在に軌道を描ける無数の弾丸を放つべく、エネルギー収束音の高まりに合わせて引き金を引こうとするも、それよりも先にドーパントがまたしても右手を突き出すと、

 

…グワァーーーーーーーーーーーン…

 

あの奇妙な音が響き渡り、それに遅れて引き金を引いたダブルだが…先程の技と同様、銃口からエネルギー弾は出ず、空撃ちに終わってしまう。さっきまでやかましい音を出していたトリガーマグナムも沈黙してしまっていた。

 

『…これは…なんて厄介なメモリなんだ…!』

 

「フィリップ、何が分かったんだ?!」

 

一度ならず二度目となれば、翔太もこれが只事ではないと察して取り乱すことはなかったが、それでも現状が理解できずにいたのは変わらない。

 

一方で、自分の予想通りの状態にフィリップは思わず唇を噛んでいた。相棒が何かに気付いたのを尋ねるも、完全に体勢を立て直したドーパントが襲い掛かってきたのに対処する翔太。

 

引き金を引くと普通のエネルギー弾は撃てたため、迎撃を図るも、ドーパントはダメージを負いながらもダブルへと掴みかかってきた。

 

『メモリの名称は分からないが、奴はメモリの負の波長を操れるんだ!さっき、右腕を突き出したあのモーションは、マキシマムを発動させようとしたメモリに干渉して、メモリを鎮静化させたんだ!』

 

「なぁ…ぐおぉ、こいつ、離れやがれ!…それじゃ、このドーパントをメモリブレイクするのは…!」

 

『…できない……単体のマキシマムではこのドーパントを倒せない…!』

 

「…っ!?」

 

首元を絞められかけ、その強腕に掴まれたダブル…距離を取ろうと、なんとか左足での蹴りを喰らわせ離れる。

 

その最中、マキシマムドライブが使えないというまさかの事実に、翔太もようやく事態が呑み込めた。

 

原則…ドーパントはメモリを破壊しなければ倒せない。そして、マキシマムドライブによってメモリの毒素を中和しなければ、変身者は命を失う…つまりはこのドーパントを倒すには、変身者を見捨てなければならないことを意味していた。

 

フィリップも…そして、翔太は特にそんなことができるわけがなかった。変身者の正体は分からず、おそらくパンドラのメンバーだとしても、例え敵であっても、人を見殺しにできるわけがない…それが佐桐翔太の美点であり、弱点でもあった。

 

「くぅぅ…!?一体どうすればいいんだよ…!」

 

『奴を殺さずに倒すには方法は一つ…複数のメモリを使ってのマキシマムドライブしかない…いくら干渉力が強いといっても、二つ以上のメモリを鎮静化させることは難しい筈だ…!』

 

完全に躊躇してしまい、動きが鈍ったダブルにドーパントは容赦なく拳を振るっていく。両腕を構え、その猛攻を耐え忍ぶダブルが策を考えると、躊躇いがちな声でフィリップが意見を出す…絶対に使ってはならない手段を…

 

「…そうか、ツインマキシマム…それなら…!」

 

『駄目だ、ツインマキシマムは不可能だ!?二人掛かりでの安定運用こそが相当なことなのに、同時にメモリの力を最大発動させるなんてできるわけがない!?それに、君の身体がどうなるか…!』

 

「じゃあ、このまま黙ってやられろっていうのかよ…!?」

 

防戦一方の現状、反撃の手立てはないのかと相棒に食って掛かる翔太。このまま殴られる的になり続けるしかないのかという声に、フィリップも思考を巡らせるも、打開策はなく…

 

少しでも時間を稼ごうと、暴行の合間を拭い、ドーパントの身体を拘束するダブル。不完全ながらも、頭を抱え込む形のプロレスに近い技を披露しているのは翔太の技術あってなのだろう。

 

ドーパントの方も武力という面では大したものは持っていないが、ダブルの方も決め技を封じられるという事態に、戦況は完全に硬直状態と化していた…だったのだが、

 

…ブルルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥン…!

 

「えっ……嘘だろう!?」

 

耳に聞こえてきたバイク音に気付き、顔を上げるダブル…その音の発生源がこちらに向かってきているのに気付くのと同時に、全く止まる気がないその速さに悪態を吐きたい気分になりつつ、慌ててドーパントから離れる。

 

その一秒後…赤のカラーリングが特徴的なバイク「ディアブロッサ」がものの見事にドーパントを背後から跳ね飛ばしていた。以前にも似たようなことをされたこともあり、当時のことを思い出したダブル…翔太は思わずそのバイクの運転手に文句を言ってしまう。

 

「てめぇ、照井!?あの時も今回も、なんで突っ込んでくるだよ!俺たちが気づいてなかったら、どうするつもりだ!」

 

「…あれぐらい気付かないようならどうしようもないと割り切って一緒に跳ね飛ばすだけだ。そもそも、たかが一体のドーパントに何をてこずっている?」

 

「っ~~!?こっちの事情も知らないで!色々あんだよ、色々と!」

 

『…だが、ナイスタイミングだ、照井竜。正直、ダブルだけでは手に負えない事態になっていてね。是非とも、アクセルの力を借りたいところだったんだ』

 

急停止し、ヘルメットを外しながらバイクから降りた照井に駆け寄りながら抗議する翔太。照井曰く、ダブルが避けると信じての行動だが、言い方的には避けない方が悪いととられかねない発言に加え、ありのままの現状をそのままに指摘され、ムカッとした翔太が言い返すも、フィリップがそれを遮るように共闘を持ち掛けた。

 

「…どうした、フィリップ?珍しく弱気じゃないか」

 

『勘違いしないでくれたまえ…ダブルだけではあのドーパントの変身者を助けられない。君と僕たちがいれば、それができる…解決策を実行するための提案だよ』

 

「まぁ、いい…さっさとケリをつけるぞ」

 

バイクに轢き飛ばされたドーパントが体勢を立て直そうとする中、珍しく下手な態度のフィリップに照井が少し棘のある言い方をするも、フィリップも負けじと反論する。

 

相も変わらず、この二人は仲が良くないらしい…そんな相棒と照井のやりとりに溜息を吐きたい翔太を横に、照井も参戦しようとアクセルドライバーを…

 

「ようやく現れましたか…もう一人の仮面ライダー君」

 

「『「っ…!?」』」

 

装着し、アクセルメモリを起動させようとした瞬間、それを邪魔するかのように割り込んできた声に三人の意識が集中する。その人物は、ドーパントに随伴し、ここまで静観していたドクターだった。

 

ドーパントも、その声に…いや、主の動向を邪魔すべきではないと考えたのか、控えるようにその場で待機していた。

 

「…はぁ…はぁ…追いついた…!っ…照井君…?」

 

「…なんで、あいつがここに…?」

 

ダブルが心配になって様子を見に来た一花、三玖、四葉、風太郎も現場に到着したが、その場の空気が変なことに気付き、高架下の柱に隠れて事態を見守っていた。

 

そして、ダブルや悪者以外…事情を知っている一花以外だと、ここにいる理由が分からない照井がいることに気付き、三人を代表するように風太郎が疑問の声を上げる。

 

「つくづくご活躍の君たちが少々目障りになってきましたね…これ以上、実験の邪魔をされると、私たちの本懐を妨害する障壁になりかねないと判断したのですよ。なので…君たちには今日で死んでもらうことにしました」

 

「…なるほどな。貴様がガイアメモリを流通させている主犯格の一人か…ならば、逆にここで仕留めてやるだけだ」

 

「随分と自信たっぷりな方ですねぇ…そして、私のことをかなり見くびってもらっているようですが…これは死ぬ前に、お灸を据えてあげる必要がありそうですね」

 

異質な気配と話し方…紳士的な言葉遣いのくせに、狂喜を孕ませた声色と言動に、照井もドクターが正常な人間ではないと判断していた。

 

しかし、敵であるならば屠るのみだと戸惑わない照井…その反応すらも、どこか楽しそうに受け止めている男の姿と笑みは、マッド・ドクターと呼ぶにふさわしいものだった。

 

そんなドクターが胸ポケットから取り出したのは、高ランクを表わす銀の色取りが施された『W』のイニシャル…日光・雨・雷・竜巻の絵によって形成された文字のメモリだった。

 

『WEATHER』

 

天候の記憶…ウェザーメモリを起動させたドクターはそれを右こめかみに突き刺した…メモリ挿入の独特の音が響き、ドクターの身体が変貌していく。

 

嵐とも形容すべき、凶暴な突風がその身を包み、その余波がダブルと照井を身構えさせる。隠れて見守る一花たちも顔を腕で庇う程の突風が吹き荒れ、その風が収まった時には、

 

「フフフッ…フハハハハハハハ!!」

 

白を基調とした人間に近い形状、しかし、後頭部から出ている髷と肩から首周りにかけて風袋を身に着けたその姿は、風神・雷神を思わせる異形な姿であり、人型のドーパントだと判断できるものだった。

 

…しかし、何よりも問題だったのは…

 

「白い…ドーパント…!?」

 

「『っ…!?』」

 

思わず呟く照井の表情には、ほとんど表情を崩すことがない彼が驚いている様を映していた。ダブルの二人もこの可能性に懸念していたのだが、いつかは対面する時がくるとは分かっていても、照井の反応する様を見て嫌な予感を覚えていた。

 

「…答えろ……去年の四月の末…4件の連続凍結殺人を引き起こしたのは…貴様、なのか…?」

 

「去年………あー…あの実験のことですか…」

 

「実験、だと…?」

 

怒りを堪え…いや、溜めるかのように問い掛ける照井の言葉に、ドクター…ウェザー・ドーパントは記憶を辿るように考え…呆れたように思い出して答えた…そんなこともあったかのような軽い態度で。

 

その一言が…照井の怒りを更に燃やす。だが、ウェザーは自然な態度で悠長に語り出す。

 

「ウェザーメモリの拡張…アップデートを終えたばかりの時ですね。いやはや、お恥ずかしい話ですよ。本来であれば、証拠も残さずに人を殺せるかどうかを試していたのですが…残った欠片から殺人だと断定されてしまいまして…

オーロラメモリやアブソーブメモリといったものも試そうと思ったのですが、前者はなかなか作成することができず、後者に至っては実験で使う予定以外のものが入手できなかったもので…

 

…そうか、今、完全に思い出しましたよ…最後に殺した照井家。照井竜…なるほど、君はあの家族の遺族でしたか…」

 

「…やはり…貴様が……貴様が俺の家族をォォ!?」

 

「良い憎悪の色ですね…怒りに燃える目、憎しみが籠った声、私を殺さんと震える体…その全てが素晴らしい!…しかし、全くもって無意味であり、無価値…悲しいですね」

 

「…最後に一つだけ聞かせろ…なぜ俺の家族を狙った…どうして殺した!」

 

「…言ったでしょ?ただの実験ですよ…正直に言えば、誰でも良かったんですよ?それが偶然にも貴方のご家族だっただけですよ…私という名の災害に遭ってしまっただけ…ただそれだけのことです」

 

「…そうか…そうだったのか…………貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「っ!待て、照井!?落ち着け!」

 

自白どころか、実験の結果を淡々と語るウェザーの態度と言動…その全てが照井の怒りを爆発させるには充分過ぎた。

 

眼前にやっと探してきた仇が、たかが実験と語ったウェザーをここで倒すのだと…憎悪の叫びと共にアクセルメモリを構えた照井…このままではマズイと翔太が制止するも…

 

「…邪魔をするなぁぁぁぁぁ!?」

 

「がぁ…!?」

 

完全に憎悪と怒りに呑み込まれた照井に、翔太の言葉は届かない…邪魔する者全てが敵だと言わんばかりにダブルを殴り倒した照井はメモリを起動させる。

 

『ACCEL!』

 

「…変身!!」

 

『ACCEL!』

 

怒りを体現するかのようにメモリをアクセルドライバーへと装填した照井の姿がアクセルへと変わる。その光景を見守っていた(一花を除く)風太郎たちがアクセルの正体に驚くも、それ以前に照井が放つ憎悪と怒りに何も言えなくなってしまっていた。

 

「…はあああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「くそぉ!照井の奴、突っ走りやがって!?フィリップ、俺たちも行くぜ!」

 

『…ああ!』

 

『SPARK!』

『SPARK! TRIGER!』

 

一人で突貫するアクセルを援護すべく、体勢を立て直したダブルもスパークトリガーへとメモリをチェンジする。だが、アクセルの目にはウェザーしか映っていないらしく、

 

「はぁぁ!だぁぁ!!」

 

「フフフ…その程度、ですかぁ!」

 

エンジンブレードの剛撃を容易く躱し、カウンターの拳をアクセルへと叩き込むウェザー…その一撃は見た目から想像できない程に重く、重厚な装甲を持つアクセルを一発ごとに怯ませる!

 

ダブルも援護しようにもアクセルが接近し過ぎているせいで、迂闊にマグナムの引き金を引けずにいた。

 

「照井、一旦引け!」

 

「ぐぅぅ…うああああああああぁぁ!!」

 

「っ…こうなりゃ!」

 

憎しみをぶつけるかのようにエンジンブレ―ドを振るい、拳や蹴りを放つアクセルだが、それら全てがいなされ、受け止められ…ウェザーは余裕でアクセルを手玉に取っていた。

 

明らかに弄ばれている現状に、ダブルも前に出るしかないと考え、カウンターキックをまともに受けたアクセルと入れ替わる形で前衛になる。

 

「『はあぁぁ!!』」

 

「おっと…それは危ないですね」

 

電磁加速したレールガンの直撃は流石に危険だと判断したらしく、回避に徹するウェザー…ほとんど距離がない中でのレールガンの回避に、ウェザー・ドーパントの性能だけでなく、ドクター自身の能力も高いことが伺える。

 

「ダブル!俺の邪魔をするな!?」

 

「うおぉ…!この…何しやがる!?」

 

『奴は只者じゃない!協力して対処するべきだ!?』

 

「邪魔をするなと言った筈だ!?これは俺の復讐だ!」

 

「『ぐああぁ!?』」

 

手を出すなと言わんばかりにダブルの肩を掴み、後ろに下がらせようとするアクセル…そんなことを言ってる場合ではないと反論するも、聞く耳を持たないアクセルは…なんとエンジンブレードで、ダブルを斬り飛ばした!

 

「お仲間割れですか…そんなことをしていて、私に勝てるのですか?」

 

「貴様を殺すのは…俺一人で十分だぁぁ!?」

 

嘲笑うと共に挑発するウェザーに、アクセルが懲りずに特攻を続ける!アクセルの暴走ぶりに、ダブルも舌打ちをしたくなるのを抑え、強引にでも戦闘に参加するしかないと思い、メモリを変える。

 

『CYCLONE!』『NINJA!』

『CYCLONE! NINJA!』

 

一人掛かりの攻撃が駄目なら、背後からの挟み撃ちしかない…ウェザーに斬り掛かるアクセルの背後を疾風によって強化された跳躍力で飛び越し、アクセルの攻撃を捌いているウェザーにニンジャブレイドの刃を振るおうと…

 

「…はぁぁ…その程度ですか」

 

「なぁ…!」『くぅ…!?』「っ…!」

 

本当に残念だと言わんばかりの声が漏れた時には、全員の動きが止まっていた。いや、ライダーたちに関しては止められていたと言うべきだろう。

 

エンジンブレードとニンジャブレイド、両者の刃がウェザーの手によってそれぞれ受け止められていたからだ。

 

自分の期待していた以下だと判断し、ウェザーはその力の一端を解放した!

 

「はあああああああああぁぁぁ!!」

 

「ぬああああぁぁ!?」「ぐあああああああぁ!?」

 

二つの刃を押し返すのと同時に、掌から発生させた竜巻がライダーたちを吹き飛ばし、その装甲を削ることで火花を散らせる。

 

「…ふん!」

 

「『「っ!?」』」

 

まだまだと追撃に絶対零度の吹雪が飛んできたため、ダブルとアクセルはそれぞれ防御へと回る。

 

『HEAT! CRUSHER!』『ENGINE! STEAM!』

 

攻撃にすぐに移れるようにある程度の防御力を持つヒートクラッシャー、エンジンメモリで活性化させたエンジンブレードから高温水蒸気で冷気を相殺していくライダー。

 

ある程度の冷気を相殺したところで、ダブルが反撃へと転じようとクラッシャーメモリを武器へと装填する!

 

『CRUSHER! Maximum Drive!』

 

「『クラッシャーバンカー!!』」

 

「フッ……はあああああああああああああああぁぁぁ!!!」

 

「何!?ぐあぁぁ?!」

 

クラッシャースレッジの先端に生み出した火球を撃ち出すも、そんな技など通用しないとばかりに笑みを零したウェザーは、背後から更なる冷気を出現させ、クラッシャーバンカーを消失させ、おまけに突風でダブルの体勢を大きく崩してみせた!

 

「そんな…こいつにも単独のマキシマムが通用しないのか!?」

 

『なんて強力かつ多彩な能力を持つメモリなんだ…まさしく気候の天災と呼ぶべき相手か…!』

 

それなりに威力のある方のマキシマムドライブを容易く無効化されたことに、流石のダブルの二人も驚きを隠せないでいた。しかし、驚くのはこれからだと言わんばかりに、ウェザーは更なら能力を披露しようとしていた。

 

「天災ですか…ならば、今度は厄災の雷をプレゼントしてあげましょう!」

 

空へと左手を掲げたウェザー…すると、その周辺の空間が歪み、そこから複数の赤き稲妻がダブルとアクセルに目掛けて襲い掛かった!

 

『ELECTRIC!』『EARTH! METAL!』

 

エンジンブレードのモードを切り替え電気の防御膜を張るアクセル、アースメタルにハーフチェンジし防御を固め電流を地面へと逃がすダブル…防戦することしかできず、やっとの思いでしか対処できていない現状に、ライダーたちは苦しさを覚えて始めていた。

 

「ここまでは序の口…太陽に焼かれたことはありますか?」

 

その言葉と共に、両腕を上げたウェザーの上空に疑似的な太陽が出現する…そこから乱雑に放たれた超高温のレーザーが、対処に遅れたライダーたちの装甲を焼き貫く!

 

「ぐうぅぅぅぅ……?!」「ぐあああああああああああああ?!」

 

アースメタルにチェンジしていたダブルはなんとか耐えられたが、見事に装甲を焼かれたアクセルは地面に膝を突いてしまっていた。

 

「おやおや…復讐鬼君はもうリタイアですか。では、まずは君から止めを刺してあげましょう」

 

「っ…そんなこと、させるかよぉ!?」

 

焼かれた装甲が煙を上げながらも、思い通りにさせるかと翔太が体を立て直し、ダイナソーメモリを起動する。多少の反動は覚悟しつつ、メモリをドライバーに装填する。

 

『EARTH! DINOSAUR!』

 

ダイナソーメモリの効果でアドレナリンが一気に加速して体を駆け巡る翔太は痛みを一時的に緩和させ、アクセルに迫りよるウェザーへと背後から襲い掛かった。

 

「むぅ!アースダイナソーですか…いいでしょう、この機会に味あわせてもらいましょうか!」

 

「冗談!二度と味わえないように、ここでしっかりと叩き込んでやるよ!」

 

奇襲に気付き防御を図ったウェザーだが、アースダイナソーのパワーを見誤ったらしく、振り下ろされた左鍵爪を受けた両腕にダメージを受け、少しばかり後退る。

 

以前、宣言していたようにその力を試させてもらうとアースダイナソーに対峙するウェザー…ダイナソーならば、ウェザーに攻撃が通ると判断したダブルも腰を据えて構える。

 

「…うおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」

 

しかし、パワーで太刀打ちできたとしても、ウェザーは一枚も二枚も上手だった。少しばかり攻撃を受けただけで、ダイナソーの動きを見切ったらしく、全ての攻撃をいなし、瞬間的にカウンターを叩き込んできていた。

 

「ぐぅぅ……はぁ…はぁ…!」

 

「なるほど、確かに素晴らしい力のようですが…恐竜系メモリの悪いところとして、強大なパワーを人の身で体現しようとして、無駄な動きが出てしまっているようです、ね!!」

 

「がはぁ!?」

 

絶大なパワーをコントロールするためと、有効打を放てずにいることに、無駄にパワーを消耗してしまったダブルが荒い息を零す…冷静に分析を終えたウェザーはダイナソーの欠点を指摘するという余裕までもを見せ、完全に隙を突いてダブルの首元を掴んだ。

 

「恐竜は隕石の衝突や、それに伴い発生した氷河期で絶滅したと言われていますね…貴方も少し冬眠していてもらいましょうか?」

 

「ぐぅ…があああああぁぁぁぁぁぁ!?」『ううぅ…うわああああああぁぁ!?』

 

放つよりも、直接掴むことでその真価をより発揮できるウェザーは抵抗するダブルの攻撃をものともせず、掴んだ手から絶対零度の凍気を発生させ、その身体を凍らせていく。

 

このままでは全身が氷漬けにされてしまう…だが、そうなる前に、ダブルに意識を集中させていたウェザーに、

 

「ウェザァアアアアアアアアアアアアアアアァ!!」

 

バイクフォームによって突貫を図ったアクセルが迫っていたのだ…だが、それすらも自分には効かないと、半分ほど氷漬けにしていたダブルを後方へと投げ捨て、自身を轢き殺そうとするアクセルの前輪を受け止めていた。

 

「君もしつこいな…ならば、天に巻かれて、地へと落ちるがいい!」

 

「ぐううううぅぅ…ああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ?!」

 

バイクフォームの重量をものともせず、上空へとアッパーによって打ち上げたウェザーはそのまま巨大な竜巻を発生させ、空にいたアクセルを更に上昇させ、その勢いをも加え地面へと叩き落とした!

 

この大技に、遂にアクセルも限界を迎え、変身が解けてしまう…ドライバーから強制排出されたアクセルメモリを一目し、ウェザーは呆れてしまっていた。

 

「はぁ…こんな純粋過ぎるメモリを使っていては私に勝てないのは当然です。ガイアメモリはその毒素さえも受け入れ、完全に克服して使用するからこそ真の力を発揮するのです!ドライバーという安全装置を使っている時点で、君たちが私に勝つ可能性など、ゼロに等しいと言っていいでしょう」

 

「ぐぅぅ…ううぅ…!」

 

「もう気が済んだでしょう?それでは、そろそろ家族と同じ場所に送ってあげましょう。安心なさい…君の家族のように苦しむのではなく、一瞬であの世に送ってあげますから」

 

大ダメージを受けた照井は完全に地面に背をつけてしまっており、意志に反して立ち上がることができずにいた。そんな瀕死の照井に今度こそ止めを刺さんと、ウェザーは先程の倍の大きさのある太陽を模した火球を生み出そうとしていた。

 

「ぐっ……照、井…!」

 

「…くそ……くそぉぉぉ…!!奴が…家族の仇が目の前にいるのに…!?…俺は……ああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!?」

 

「っ………照井…」

 

身体の半分の割合で至る部分が凍結し、身動きが取れないダブル…このままでは照井が、と焦る翔太が目にしたのは…慟哭する仲間の姿だった。

 

仇が目の前にいるのに力が及ばない自分に、

 

何もできないままやられるという現実に、

 

実験だと命を軽々しく扱う敵に敵わないことに、

 

悔しさと、虚しさと、絶望の色を含んだ叫びと共に、照井が涙を流していた。

 

その姿が…照井の流す涙を見た翔太の心を動かした。

 

「ううううぅ…動けぇ……動きやがれェェェェェ!?」

 

全身の至る所が凍結してしまい、動きが極端に阻害されてしまっているダブル…それでも、今すぐに動かなければならないのだと、翔太は肉体が悲鳴を上げるにも関わらず、無理矢理右腕を動かした!

 

その甲斐あって、なんとか動いた右腕でメモリチェンジに成功できた!

 

『HEAT!』

『HEAT! DINOSAUR!』

 

「これで終わりにしてあげましょう!!」

「間に合えェェェェェェェ!?」

 

『DINOSAUR! Maximum Drive!』

 

ヒートダイナソーにハーフチェンジし、すぐさまマキシマムスロットにダイナソーメモリを装填したことで、マキシマムドライブを発動させる!全身から一気に噴き出した獄炎が、ウェザーに凍結させられた部分をあっという間に溶かし尽くした!

 

そして、今すぐに照井に向けようとしていた火球を阻止すべく、全力でその場から駆け出した!

 

ダイナソーの馬鹿力もあって、サイクロンやスパークを使っていないにも関わらず、高速移動に等しいスピードでウェザーと照井の間に割り込んだダブル…その直後、放たれた巨大な火球がダブルへと直撃した!

 

「ぐぅぅぅぅ…!?」

 

「ほう、これを耐えますか…しかし、耐えるのが精いっぱいといったところのようですね。そのままだと、後ろの少年が焼き死ぬのを待つだけでしょうね…まぁ、その前に楽にしてあげますがね!」

 

左鍵爪を軸に、ウェザーの放った火球をなんとか受け止めるダブル。しかし、その場から動けず、耐えるのがやっとの状態をウェザーは関心しつつも嘲笑っていた。そんな努力は無駄だ、終わりにしようとばかりに火球を押し込むように更なる熱線を送り込む。

 

例えダブルが耐えられたとしても、ウェザーの指摘通り、このままでは照井が蒸し焼きになってしまうのも時間の問題だった。

 

…だからこそ…そんなことを良しとしない翔太は、一切迷うことなくその選択を強行した…それがどんな結果になるからも覚悟の上で、躊躇なくその選択をした。

 

マキシマムスロットに刺さっていたダイナソーメモリを右手で強引に抜き、なんとヒートメモリを正面のソウルサイドスロットから抜いたのだ。

 

『…っ?!待て、翔太!何をする気だ!?ツインマキシマムは不可能だって、さっきも言った筈だ!?』

 

相棒の突然の行動に、嫌な予感を覚えたフィリップが意識を介入させ、右手の意志を阻害する。二人の意志が混濁した右手は奇妙な動きをするも、それを強引に押し動かす翔太の意志は固く、ヒートメモリを手放すどころか、フィリップの意志さえも跳ね除けてしまった。

 

「…もう、これしか手がねぇんだよ!!」

 

『やめろ……駄目だ!その技だけは…!?……やめてくれぇぇぇぇ!?!?』

 

相棒の行動を止めることができず、最後の嘆願を叫ぶフィリップだが…その願いは届かなかった。翔太が動かす右手は強引にマキシマムスロットにヒートメモリを装填してしまった。

 

『HEAT! Maximum Drive!』

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

「「っ!?」」

 

既に体に纏っていたヒートダイナソーの獄炎が一段と大きく…いや、数倍に至るまで大きく広がり、受け止めていた火球を容易く吸収してみせた。そして、それに留まらず、火球を押し込もうとしていた熱線までもをその身に吸収してみせた。

 

一気に増加したその膨大な熱量に比例するかのように、翔太の雄たけびが響き渡る…だが、その時点で既に異変が起こっていた。ダブルの全身から放たれる炎が留まることを知らず、更にその異常を知らせる象徴としてダブルドライバーも普段とは異なる状態と化していた。

 

『Ma, Ma, Ma………Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!?』

 

普段であれば、マキシマムスロットのボタンを押さなければ鳴り響かないガイアウィスパーが壊れたように何度も…今のダブルのように暴走しているかのように何度も何度も鳴り響き続けているのだ。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

…まさしく「地獄の豪炎」と化したダブル…それは命を削るかのように、爆発的に全てを焼き尽くそうとする暴走した姿と言えるものだった。

 

 

 

次回 仮面ライダーダブル/Kの花嫁

「Gを吹き飛ばせ!/禁断のツインマキシマム」

 

これで決まりだ!

 




というわけで、遂に…というかようやく正体はっきりしました某お医者様そっくりの方、ドクターことウェザー・ドーパント!

まぁ、前々章でメモリのイニシャル『W』だと明言してましたので、読者の皆様も「知ってたよ」と思っているかとは思われますが(苦笑)
改めてW本編見返しながら書いてましたが、やっぱりウェザーもですが、それを十二分に使いこなしていた井坂先生も凄かったんだなと…

…そして、これまた皆さんの予想通り、ツインマキシマムを使ってしまった翔太…果たして、その結末は…!
今の感じですと、多分本章はあと4話ほどの構成になるかと思います…内容が滅茶滅茶濃いものになるので…
今回のオチといいますか、闘いの結末は既に考えております…何を言ってもネタバレにしかならないので、全然明言はできないのですが、とりあえず皆さんの予想を裏切り、期待に応えられるものをお届けできればと思ってます。

それでは、次回でお会いしましょう!

P.S. 横浜でやってる風都探偵のイベント、時間ある時に行けたらなと画策しているのですが、それが10月になりそうという…発狂しそう(笑)
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