禁断のツインマキシマムの結果は…!?
ライダーパートとしては、珍しく風太郎たちも絡むお話になります。
それでは、どうぞ!
『Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!? Maximum Drive!? !? Maximum Drive!?』
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
落ちる炎が地面を融解する…常人が纏えば、すぐに灰と化すレベルの豪炎を放つダブル ヒートダイナソー。
その異常さは纏う豪炎だけでなく、壊れ狂ったようにシステム音声が鳴り響き続けるドライバーまでもが体現していた。
火球を呑み込み、自身の予想を超える動きを見せたダブルにドクターは驚愕していた…しかし、それは恐れからくるものでなく、歓喜と好奇心からくるものだった。
「…素晴らしい……実に素晴らしいぃ!!」
ダブルの執念にも近い強行にドクターは身体を震わせながら感心の声が漏れてしまっていた。
自分の理念とは全く異なるガイアメモリの運用方法でありながら、ウェザーメモリに匹敵する…いや、その力までをも還元したであろうヒートダイナソーの底力に、研究者としてどうしても心揺さぶられるものが存在したのだろう。
そして、それと同時に頭に浮かんだのは『その力がどれほどのものになるのか』という、自身の安否さえも軽視したマッドサイエンティストならではの欲望だった。
「さぁ、見せてください!君たちのその命さえも賭けた決死の一撃を!?」
しかし、流石のドクターもまともに喰らえばただでは済まないと判断できる理性はあったらしく、ウェザーの気候操作能力によって自身の周囲に強力な冷気と雷を纏わせた水蒸気のバリアを発生させていた。
ウェザーメモリの出力をもってすれば、多少のダメージを受けようとも、ツインマキシマム&自身のエネルギーの吸収によって膨れ上がったダブルの必殺によってメモリをブレイクされることはないだろうと…ドクターはそう高を括っていた。
「ぐうううううううううぅぅぅぅ…がああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
その挑発に乗ったように、気合と悲鳴が入り混じった翔太の叫びと共に、ダブルがマキシマムスロットのスイッチを押し、そのエネルギーを解き放とうとした!
腕を大きく広げ、闘牛のように構えたヒートダイナソーが持てる力の限りで駆け出す!フェイントや小細工などは一切存在しない…一直線にウェザー目掛けて、纏うエネルギーをぶつけようと迫る!
対するウェザーも接近してきたダブルが抱える熱量の高さに、更なる好奇心を刺激され、その歪んだ笑みが更に深くなる。そして、もうあと一秒もあれば激突するとなった…が、
「…!なに……一体どこに……」
自身に向かってきていたと思われたダブルが、その身を咄嗟に避けて横を通り過ぎて行ってしまったのだ。完全に予想を裏切られたウェザーもこれにはあっけを取られ、結局は強大になり過ぎたパワーに振り回せてコントロールを失ったのかと失望し掛けたのだが、
「っ…!?き、貴様ぁぁぁぁぁ!?」
ダブルの進行方向を見たウェザーはすぐさま彼らの真の狙いに気が付き、自身が一杯食わされたのだと知り、激昂の声を上げた。
「…鼻っからてめぇは狙ってねぇんだよ!!!」
ヒートダイナソーが突貫しようとしていた先…そこには、ウェザーの命に従い待機していたあのドーパントがいたのだ!
翔太の狙いはウェザー・ドーパントではなかった…最初からツインマキシマムでなければ倒せない精神を操る能力を持つドーパントのメモリブレイクこそが本命だったのだ。
待機していたドーパントも狙いが自分だと気づき、慌ててメモリの鎮静化を図ろうと右手を突き出すも、
不快な音が鳴っても、ヒートダイナソーの豪炎…いや、獄炎は全く鎮静化しない。ツインマキシマムによる不安定かつ大出力のエネルギーが放出され、それが共振による不協和音を引き起こしているせいで、もうドーパントの能力では無効化できないレベルと化していたのだ。
ツインマキシマムを使う以前に、ヒートダイナソーのマキシマムドライブを使えば、自分がどうなるかなど翔太は理解できていた。だからこそ、自分がどうなってもいいように、せめて単独でのマキシマムドライブを封じるドーパントだけは倒すべきだと、冷静に状況を分析していたのだ!
これなら…この技ならドーパントをメモリブレイクできる…そう確信した翔太は、朦朧とする意識を踏ん張り、纏っている獄炎をドーパントにぶつけようと、
「そう目論見通りにさせてたまるか!?」
その寸前、咄嗟にウェザーの能力によってダブルとドーパントの間に割って入ったドクターがその特攻を受け止めた!獄炎によって、受け止めた両腕が焼き尽くされるような激痛を味わいつつも、ダブルの特攻を押し返していく!
「ぐがぁぁぁ……うおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」
しかし、ダブルもこのチャンスを逃してなるものかと、押し返された分までを盛り返し、ドーパントに特攻しようと最後の力を振り絞る!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!!」
獄炎と極寒…相反する異常なエネルギーが、変身者の意志に応えるかの如く、その勢いを更に増していく。だが、強靭なエネルギー同士がぶつかっていれば、いずれ限界が訪れるのも必然であり、
…逃げ場を失ったエネルギーの暴発が起こった瞬間、その周辺に突風が爆炎と共に巻き起こった!?
「くっ…!?」
「「「「…っ?!」」」」
咄嗟に腕で爆発から身を守ろうとする照井。そんな防御では防げるわけがないと分かりつつも、本能でなんとか身を守ろうとしての行動だったが、爆発が到達する直前、彼の前に何かが出現した。
一方、高架の支柱に身を隠していたことが幸いした風太郎や一花たちは、咄嗟に柱を盾にすることができたため、爆発を受け流すことに成功していた。
獄炎に超低温の水蒸気がぶつかったことによる水蒸気爆発…原理は知っていても、目の前で、知識で知るそれを超えるレベルの爆発が起こったことに、始めて本格的な仮面ライダーの死闘を見た風太郎と四葉は愕然としていた。
一度は見たことがある三玖も二人と同じ状態になっており、多少巻き込まれている回数が多い一花でさえ、ここまでのレベルのものには言葉が出ない状態となっていた。
だが、そんな四人の理解を待つことなく、状況は進んでいく。
…未だに爆煙が漂う中、何かの影が飛び出したのだ!
それは、自身の意志で飛び出したのでなく、反動によって空に投げ出されたようで、重力に引っ張られるまま、地面に落下した。
「…ぐぁ…があぁ…!」
全身から危険だと見て分かるレベルで煙をあげるその人物…赤とカーキの生体装甲は色を失くすほどに全身焦げており、立つことすらもままならない状態のダブルが地面に伏していた。
いや、限界など既に超えていたのだろう…装甲が風に散るように砕け、ダブルから翔太へと姿が戻ってしまった。そして、その全身のあらゆる箇所が異常なまでに膨れ上がった獄炎を身に纏った代償として、身体を蝕んでいた。
「…佐桐…」
呆然と翔太の名を呼んだのは、爆炎から無事に逃れられていた照井だった。爆炎が直撃する直前、突如としてガンナーAが割って入り、照井の盾となったのだ。
…もちろん、誰が差し向けたかなど言うまでもないだろう。
それはさておき…うめき声を上げ、瀕死な状態で倒れる翔太の姿に、流石の照井も我に返っていた。目の前の惨状が、誰が原因で起こったのか…問うまでもないことだった。
思わず、自身を庇い重傷を負った翔太に照井が駆け寄ろうとした時だった。
「…嘘……そんな…!」
「…!っ…!?」
何かを見て驚く一花の声に反応した照井がその原因へと視線を移した。そして、思わず息を呑んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そこには、何事もなかったかのように立ち尽くすウェザー・ドーパントの姿があったからだ。禁断の大技を使った反動で倒れているダブルに対し、それを喰らったウェザーが平然としている姿に、一花たちだけでなく、照井までが一瞬絶望感を覚えたほどだ。
…だが、その絶望がまやかしだと知ることになるのはすぐのことだった。
「がはぁ…!?」
その悲鳴と共に崩れ落ちたのはウェザーだった…先程まで仮面ライダー二人を圧倒していた強者の姿は消え、大ダメージを受けたことですぐに立ち直れない状態を隠せないでいた。
「ぐぅぅ…やってくれるじゃありませんか!?ウェザーメモリの力を最大限にして防御したというのに…このダメージ!?一瞬、本気でメモリをブレイクされたかと錯覚しましたよ!?」
…そう、ダブルの決死のツインマキシマムは確かにその傷跡を残していたのだ。ヒートメモリという火力特化に、その記憶を昇華するダイナソーメモリ、そして、ウェザーメモリの力までも吸収したツインマキシマムは、ウェザーを追い詰める一歩手前まで大打撃を与えていたのだ。
その証拠に、ウェザー・ドーパントの全身からも煙が立ち続けているだけでなく、ダメージの余波でマキシマムドライブの残留エネルギーが全身を駆け巡っており、膝をついた状態から動けずじまいだった。
「背後のシンクロ・ドーパントを庇いさえしなければ…もっとまともな防御ができたのでしょうが…やはり欲張るのは良くないですね。私の悪い所が出てしまったようで…」
(シンクロ…それが、あのドーパントのメモリの正体か…!)
ダブルドライバーを通し、現場の状況を理解していたフィリップ…変身が解け、意識が戻った彼は、身体が放置されていたアパートから全速力で現場へと向かいながら、やり取りを聞いていた。
ウェザーが庇ったとはいえ、その強大なガイアエネルギーのぶつかりの余波を受けたもう一体のドーパント…シンクロ・ドーパントは完全に地面に伏していた。
全身が痙攣している様子から、尋常ではないダメージを負ったことは明確だったが、一歩届かなかったようで、ツインマキシマムによるメモリブレイクはできなかったようだ。
「…ぐぅ!?これは…これ以上の深追いは危険ですね…私はともかく、シンクロメモリの方がこのままでは使い物にならなくなる……いいでしょう。今回は見逃してあげましょう…しかし、次は確実に君たちを終わらせてあげますから…今は死ぬのが先送りになったことを噛みしめておきなさい」
「っ…待てぇ、ウェザー!?」
状況は芳しくない…仮面ライダーを一人瀕死にできたとはいえ、自分たちももう戦える状態ではないと判断したウェザーはあっさりと撤退することを告げた。
しかし、負けを認めたわけではない…死刑が先送りになっただけだという皮肉を告げ、多少は回復した身体を起こしたウェザーが右手を天へと掲げた。
逃げるなと叫ぶ照井だが、その声など聞こえないとばかりに、自身の周囲へと雷を落としたウェザー。煙が晴れた頃には、シンクロ・ドーパントと共にその姿が消えてしまっていた。
「…ぅぅぅ……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!?!?」
誰に向けていいのか分からない感情を爆発させるように、照井の叫びがその場に、しかし、静かに響き渡った。
「ショータ君!?」
ウェザー・ドーパントたちが撤退したことで、安全になったと判断した一花たちは、すぐさま瀕死で倒れ伏した翔太へと駆け寄った。慟哭していた照井も再び現実へと意識が戻り、フラフラと翔太の傍に歩み寄った。
「佐桐!しっかりしろ、佐桐!?一花、救急車だ!早く!?」
「う、うん…!すぐに呼ぶね!?」
「四葉!急いで、ドラッグストアか何かに行って、冷たい飲み物とかタオルとか、冷やせるあらゆるもの、それとブランケットやタオルといった包めるものとか買ってこい!金はこれを使え!?」
「わ、分かりました!?」
「フータロー…私は何をすれば…!」
「救急車が来た時に、すぐに佐桐を運べるように場所を移すのを手伝ってくれ。俺一人だと、抱えるのがちょっときつそうだからな」
「わ、分かった…」
意識がない翔太の身体を仰向けにし、その状態を確かめる風太郎。全身のあらゆる箇所が火傷に近い状態と侵されている翔太の姿に一瞬息を呑むも、自分が動揺していてはいけないと、冷静に頭を働かせ、混乱している他の三人に指示を出していく。
まず翔太の呼吸が比較的落ち着いていることを確認し、自分自身を安堵させた後、一番冷静に状況が伝えられる一花に連絡役を、五つ子随一の身体能力を持つ四葉に自身の財布(とうどマルオから家庭教師再開の報酬を貰った直後なのが幸いした)までもを預けて買い物に行かせ、残った三玖には自身のフォローを頼む。
そして、一花が呼んだ救急車が駆けつけるまで、道路へと移った一同は、四葉が買ってきた水やタオルを使って、翔太の応急処置をしていた。
「…フータロー君…そんなことまでできたんだ」
「いや、読んだ本の通りにやってるだけだ。たまたまそれ系の本に目を通す機会があってな」
具体的な指示がなかったことが災いして、とりあえず冷やせるものや体を清潔に包めるものを纏めて四葉が買ってきたのだが、氷でいきなり冷やそうとした一同を制し、常温のミネラルウォーターでタオルを濡らし、火傷の箇所を覆う様に風太郎は患部に当てていった。
その手際の良さに三人を代表して、感嘆の声が出た一花。それになんでもないと答える風太郎だったが、そこから出た言葉は真実ではなかった。
上杉風太郎は一言でいえばかなり勉強ができる人間である。もちろん、その成果は、寝る時間や食事の時間までもを惜しんでの努力の賜物だが…それ以外の雑学などにも精通していたりもする。
例えば、無人島に行っても食べられるものの分別や釣りなどの知識といったものにも意外なことに精通している。自宅にテレビがあれば、おそらくエンタメ関係のものも多少は触れる機会があったと思えば残念なことだが…
言うなれば知識の鬼と言っても過言ではないだろう…しかし、そんな彼でも応急処置などいった分野の話は授業で習うレベルのものの知識しか以前は持っていなかった。
…助っ人として共に様々なことをやり遂げてきた翔太が、仮面ライダーダブルとして戦っていることを知るまでは…
妹のらいはまでもが襲われそうになったのだと知った風太郎の心情は計り知れないものだっただろう。それと同時に、助っ人だけでなく、自分までもを守ってくれる翔太に何か力になれないか…そんな考えが風太郎の中でいつしか浮かんでいたのだ。
力のない自分ができること…自分ができることで、少しでも翔太の力になれないかと思っていた時に、何かが起こった際に備えてできることを増やそうと思い、医療関係の本を勉強の合間に読むようにしていたのだ。
『…お兄ちゃん…もしかして、将来お医者様になる気なの!?』
兄が急に医療関係の本を読み始めたことにとんでもない勘違いをした妹らいはの誤解を解くというトラブルもあったが、その知識が今、役に立っていた。
…だが、その光景を一人呆然と見つめる者がいた…
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
眼前の光景を作り出してしまった照井だった。意識が朦朧とする翔太に、彼を介助しようと必死な風太郎と不安そうに見守る一花たち…その光景が、自身が目にした家族の最期とダブって見えてしまった。
『…少しは周りを見ろ!お前がしようとすることで、誰かが傷つくかもしれないことを…少しは考えろよぉ!?』
それと同時に脳裏を横切ったのは、先日殴り飛ばされたのと同時に掛けられた翔太の言葉だった。言い表せない感情が照井の中で渦巻き、黙ってその光景を見つめることしかできずにいた。
「…ぅう…!」
「…!佐桐…!」
「…う、えすぎ……あのドーパントたちは…?」
応急処置が功を為したのか、意識がある反応を示した翔太に、風太郎が呼び掛ける。今にもまた消えそうな意識をなんとか振り絞り、翔太はあの後がどうなったのかを尋ねた。
「あいつらは……撤退した。待ってろ!もうすぐ救急車が来る!」
「……よぉ、照井…無事で、何より、だ…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
闘いの顛末を聞き、少し安堵した翔太は続けて視線を動かし、照井の姿を捉えた。重症にも関わらず、苦笑交じりでホッとした様子の翔太に、照井は更に困窮する。
「…何故だ…何故あんな無茶をした…!俺など放っておけばよかっただろう!?」
「…かもな…けど、考えるよりも先に身体が動いちまったんだよ…お前を見捨てるなんて選択肢なんか最初からなかったし…それに……仲間のお前を助けるのなんて、当たり前の、こと、だろぅ……っ!?」
「…佐桐……お前は…」
「…あとは頼んだぜ、照井……町を守る仮面ライダーとして…みんなを……こいつらを…………」
それだけは伝えたかったのか、高熱と激痛によって翔太は再び意識を失ってしまった。翔太の意志を聞いた照井は思うところがあったのか、何も言えなくなっていたようだ。
「…照井竜!?」
「…フ…っ…!?」
すると、背後から駆け足の音が聞こえ、一同が視線を向けると、アパートから急いで走ってきたであろうフィリップの姿が見えた。
その表情は焦りと悲しみと…そして、怒りの色が入り混じった険しいものと化しており、駆けてきた勢いそのままに、振り返った照井に拳を放った!
「君が!君の勝手な行動が翔太をこんな目に遭わせたんだ!?君が協力してくれさえいれば、翔太が負傷することはなかった筈だ!!僕は…僕は君を絶対に許さない!!…君に仮面ライダーの名を語る資格はない!?」
いつもの冷静さをかなぐり捨て、ブチギレたフィリップは照井の胸倉を掴み、その怒りを爆発させた。これまで照井に思うところがあっても、実力行使に出ることは(未遂はあったが)なかったフィリップだが、今回のこの一件だけはどうしても許すことができなかった。
照井もフィリップの怒りに反論はせず、黙ってそれを受け入れていた。その反応自体もフィリップにとっては、罪悪感がないのだと誤解してしまうものであったらしく、怒りの感情のままに更に拳を振り下ろそうとしていた。
流石にそのままやらせるのはマズいと判断し、一花と三玖、四葉が止めに入った程だ…不幸中の幸いだったのは、四葉の方がフィリップよりもフィジカルが強く、羽交い絞めにして拘束できたことだろうか…しかし、殴られた照井はやはり反応を示すことなく、救急車が来るまでに姿を消してしまった。
一花たちもフィリップの様子からして、照井を呼び止めるのを躊躇してしまい、行かせることしかできなかった…その後、到着した救急車で翔太と付き添いの上杉は病院に運ばれていった。
「上杉!」
「二乃、五月…もうちょっと声を抑えろ。一応、病院だぞ」
連絡を受け、買い物から帰ってきて誰もアパートにいない事情を知った二乃と五月も病院に駆け付けた。以前、自身も世話になったⅤIP専用病室の前にいた風太郎は、二乃に注意をする。
一花たちもタクシーで後を追って合流したものの、未だに処置中の翔太のことを思ってか、その顔色はあまり良くないものだった。
そんな中、慌て過ぎて取り乱していた二乃も注意を受けたことで声を潜め、翔太がどうなったのかを尋ねる。
「今、診てもらってるところだ…だが、かなり酷い状態だとも思う。病院に運ばれるまで、ほとんど意識がなかったからな…」
「病院に運ばれるって…前にやられたドーパントみたいに、敵が強かったってことなの?」
「それもそうなんだが……敵にやられたっていうのとはまた違うというか…」
「えっ…それはどういう…」
病室内で手当てを受けている状態だと説明する風太郎だが、二乃の問いになんと答えるべきかと言葉を迷わせていた。言い淀む風太郎の反応に、五月がイマイチ理解できないでいたが、
「翔太が負傷したのは、ダブルの禁じ手であるツインマキシマムを使ったからだ」
「ツイン…マキシマム…?」
「メモリを二つ同時に必殺技に使ったんだ…そうしたら、異常な炎の量が仮面ライダーに変身していた翔太の身体から発せられて……」
「「…!?」」
口調に怒気が少しばかり混じったフィリップが代わりに答えるも、聞き慣れない単語に五月は更に首を傾げることになった。だが、直接その状況を目撃した風太郎の証言に、ようやく翔太の身に何が起こったのかを察した二人は息を呑んだ。
「な、なんで…そんな危ない技だと佐桐だって分かっていた筈でしょ?!なのに…」
「ああ、そうさ!?ツインマキシマムは使ってはならないものだったんだ!なのに、照井竜が勝手なことをしたせいで、翔太がツインマキシマムを使ってしまったんだ!?」
「…フ、フィリップ君…?」
「っ…!…すまない、大きな声が出てしまった…」
「…できることなら、大声は控えてもらえると有難いね。他の患者さんの迷惑にならないためにも」
「「「「「「「……っ!」」」」」」」
先程もそうだが、珍しく声を荒げるフィリップの異変に、流石のニ乃も驚く。思わず、苛立ちに流されるままに怒鳴ってしまったフィリップが我に返って謝るも、そこに介入してきた声に一同はビクリとする。
それまで病室にて翔太の処置を施していたマルオが、ドアから姿を見せていたからだ。
「…お父さん…」
「安心したまえ、五月君…ひとまず、彼は無事だ」
「「「「「「「…!」」」」」」」
「彼が日頃から鍛えていたのか、それとも日々闘ってきた賜物か…普通の人間なら、まず危険な状態になっていたとしてもおかしくなかっただろう。それと、施されていた応急処置も良かったよ。
だが、楽観視できないのもまた事実だ。意識がまだ回復していない上に、全身のあらゆる箇所が火傷に近い損傷を受けている状態だ…今は鎮静剤を打ったことで落ち着いているが…意識がはっきりとするまでは絶対安静だろう」
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」
マルオが医師としての見解を述べると、その場にいた全員が何も言えない状態となってしまっていた。
「これが単なる火傷であれば、まだ対処の仕様があるが…ガイアメモリに関するものであるなら、佐桐君自身の自己治癒力を補助できるよう対症療法を施すのが、僕にできる唯一の治療だ」
「…えっ…お、お父さん…どうして、そのことを…!」
「…五月君のその反応を見るに、上杉君を含め君たちも佐桐君の正体を知っているようだね。まぁ、僕も彼の正体を聞かされたのは、ほんの少し前…彼が入院した時のことだがね」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
まさかマルオまでもがダブルの正体を知っているとは思ってもみなかったこともあり、閉口する風太郎と五つ子たち。そんな彼らを置き去りに、マルオはフィリップのすぐ近くにまで歩み寄り、
「そして、君が佐桐君の協力者といったところかな?先日の家族旅行の際に顔合わせはしたが、挨拶はまだだったね…どうも、うちの娘たち…特にニ乃君と仲良くしてくれているみたいじゃないか?」
「…初めてお会いした時は、娘さんをバイクで攫って行くという失礼な態度を取ってしまい、失礼しました…僕はフィリップ。そして、訂正させて頂きますが、僕は協力者ではなく、翔太の相棒です。僕たち二人で探偵であり、仮面ライダーダブルです…そこだけは間違えないようにしていただきたい」
「…ほう」
色々な意味や感情が籠った結果、普段の数倍低い声が出たマルオ…だが、そんな態度など吹く風のように効かず、堂々と言い返してきただけでなく、ダブルであり翔太の相棒であることに誇りを持っていることを主張するフィリップの態度に、それらの感情を差し置いても感嘆の声が漏れた。
自他共に圧があると評価をされることが多い自身の話し方に、ほぼ初対面でありながら、臆しないフィリップの態度は珍しいタイプであり、娘の親としてはゼロをぶっちぎり、マイナスのイメージしかなかったそれを少しだけアップさせていた。
…まぁ、フィリップからすれば、過去の出来事を淡々と語っただけなのと、そもそも対人関係においての感性がちょっと欠けている部分があって、マルオの話し方を気にしていなかったこと…そこに、二人で一人の探偵であり仮面ライダーとしてのプライドが加わっただけだったりするのだが…
(…き、気まずいわね…!?)
当事者である二乃からすれば、父親と彼氏の修羅場を眼前で見せつけられているわけで、顔を赤くしながら、居心地の悪さを覚えていた。まぁ、それは二人の事情を知る風太郎・一花・三玖もそうだったのだが。
知らない四葉と五月も二人の仲が良くないことは察したものの、その理由が分からないせいで困惑しながらビビっていたが…
「…ともかく、佐桐君の容態に関してはそういうことだ。意識が戻るまでは絶対安静…仮面ライダーとして戦うなんて、絶対に認められない」
だが、マルオとてこんな緊急の場合にまで親バカを拗らせたり、自身の考えに固執するほど頭が硬いわけでもなく、その場で追及するということはせず、家出中の事情も無視して面々に提案をした。
「今日は全員病院に泊まっていきなさい。ちょうど使ってない病室があったから、ベットさえ入れれば大丈夫だろう。上杉君、君もだ…少なくとも、あのアパートや君の自宅よりはセキュリティは遥かに上だろう」
「…で、でも…」
「…家出中かどうかは今は関係ないだろう。そもそも、君たちがマンションを出て行ったのは、上杉君が家庭教師へ復帰できないのを受け入れられなかったからだろう?だが、彼は今は僕にその実力を認めさせ、見事に家庭教師に復帰した…ならば、別に遠慮する必要はないだろう…」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
「二乃の言う通り、君たちがあの生活を気に入っているのなら無理強いはしないが…こういう時ぐらいは父親の言うことを聞きなさい。上杉君…大変不本意ではあるが、君を雇っている僕としては、君の身の安全を保障する責任がある…一応ね。迷惑など気にせずに、今日は病院で宿泊していくといい」
「…分かりました。では、お言葉に甘えさせて頂きます。お前らも…今日、あのアパートに戻るのは止めとけ」
マルオの言い分はもっともであり、あれこれ理由は付けているが、ようは娘の五つ子たちが心配なのだと察した風太郎…そのついでという形ではあるが、自分のことも一応気遣ってくれているマルオの提案におとなしく従うことにし、五つ子たちへも賛同を求めた。
一花が代表して反論しようとするも、マルオの言葉と風太郎の説得を受け、その案を全員が受け入れることにしたのだった。
「もちろん、君たちと娘たちの部屋は別々だ…まさか、病院でそんな大それたことはしないとは思うけどね。そうだろう、上杉君?フィリップ君?」
「…も、もちろんです!?はい!」
「…?そういうこと…?それはどういう「も、もちろんよ、パパ!そうよね、フィリップ君!?」あ、ああ…?」
しっかり釘を差すことを忘れないマルオの親バカからくるプレッシャーに、風太郎は思わず背筋を伸ばしながら答える。一方、フィリップは意図が把握できずに尋ねようとしたのは、慌ててニ乃が制止していた。
「まぁ、僕は結構です…敵のメモリの正体が分かった今、次こそは倒せるように準備をしないといけませんから」
「…倒せるのかい?」
疑問は残りつつも、自分にはやることがあると宿泊を断ったフィリップの言葉に、マルオは病室の方を一瞬見てそう尋ねた。
『ここまで苦しめられ、佐桐が重症を負った中、ドーパントを倒すことができるのか?』…その意図が込められた問いかけに、フィリップは、
「倒せるのか、ではなく、倒せるようにしないといけないんです…翔太が倒れている今、仮面ライダーとして戦えるのは僕だけですから」
「……そうかい。健闘を祈るよ」
覚悟の籠ったその答えに、マルオはそれ以上尋ねることはしなかった。
「…あっ!アパートの戸締り…せずに出てきちゃったんじゃ…!?」
「…それも僕がやっておくよ。鍵を預かってもいいかな?」
早速、秘密のガレージに戻ろうとしたフィリップだが、四葉の懸念に五つ子たちが『あー…』という反応を見せたのに、ずっこけて苦笑しつつも戸締りをも引き受けたのだった。
暗雲漂い過ぎな空気となってしまいました。
まぁ、原作もそうでしたが、フィリップがブチギレるのも当然なのかと…そういうわけで、本章のメインとなるのは照井だけでなく、フィリップもだったりします。翔太にはおとなしくしてもらっていようかと…多分素直にしてくれるとは思いませんが(苦笑)
完全に決別し掛けてるフィリップと照井…そんな二人を気遣う彼女らがメインとなってくるのが次回のお話です。えっ、末っ子はって?…まぁ、その…今回は彼女もおとなしくしてもらっていようかと(前半でスポットあたることも多かったですし)
それでは、また!