どちらかといえば、前者メインのお話です…ある意味、本章のために、登場からのお話を積み上げてきたような形でしたので…。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
秘密のガレージ…そこにあったのは、ずっと地球の本棚に潜りぱなっしのフィリップの姿だった。
シンクロ・ドーパントの検索を終え、ドクターが変身したウェザー・ドーパントと併せての対抗策を探っていたのだが…その結果はあまり芳しくなかった。
「…っ!…やはり駄目か。少なくとも、単独のマキシマムではやはりシンクロメモリはブレイクできない…!」
ありとあらゆる方法を模索するも、その全てが何かしらの要因において欠陥があり、成功率0%という予測に行きついてしまっていた。
シンクロメモリだけをブレイクするのであれば、そう難しい話ではない…だが、ウェザー・ドーパントを同時に相手取りながらそれをするとなると、難易度は比べ物にならないほどに跳ね上がるのだ。
せめて、翔太が負傷していなければ、まだ手段が一つだけあったのだが…当の本人は意識不明の重体…例え、奇跡的に意識が戻ったとしてもライダーとして闘うなどほとんど不可能に近い状態だった。
そんなフィリップに残された手段と言えば、他の誰かの力を借りるというのものだったが…その可能性を排除しているために、策が手詰まりとなってしまっていた。
(…やはり…照井竜の力を借りるしか…)
この事態を打破するには照井竜の…アクセルの力を借りるしかない。どう検索しても、その結論に達してしまうことに、フィリップの表情は曇り…そして、照井がしでかしたことが脳裏に浮かび、思わずガレージのホワイトボードへと拳を叩きつけていた!
(いや…!彼の力を借りるなんてできるわけがない…!?)
それはフィリップなりの意地であった…頼ることなどあってはならないと、ライダーとして認めたくないという意固地になった頭脳で考えてしまった結果だった。
その手段を除外し、なんとか可能性を見出そうとする…さっきからそれの繰り返しばかりだが…頭では分かっていても、気持ちがその答えを受け入れることができないでいた。
「……翔太。君なら…相棒である君は、そんなことなんて関係ないって言うだろうね…」
ここにはいない相棒のいつものハーフボイルドの在り方を、フィリップは今より羨んだことはなかっただろう。
自身のサイクロンメモリを見ながら、フィリップは答えの見えない迷路に迷い込んでしまっていた。
「…すぅ……すぅ…すぅ………すぅ…」
マルオの病院の一画…一般病室とは隔離された専用の病室にて、意識を未だに取り戻さない翔太の姿がそこにはあった。
夜も深まり、職員も最低限の数になった院内は静けさに染まっていた。そんな中、音を立てないように翔太の病室に近づく影があった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その影は翔太の病室に辿り着くと、少しだけ戸を開き、中の様子を伺っていた。暗く良く見えない中、少しでも視界を確保しようと身を乗り出そうとしていると、
「…照井君?」
「っ…!?」
そんな中、いきなり声を掛けられた影が慌てて振り返ると、そこには同じく驚いた様子の一花がすぐ近くにいた。
その影…照井も、声を掛けてきたのが一花だと知り、少し安堵しながらも、コソコソしているところを見られたこともあって、どこか気まずそうにしていた。
「…こんな夜中にどうして…というか、あの後、どこに行ってたの?消える前と変わらずボロボロだし…!お父さんに一緒に診てもらおうと思ってたら、いつのまにか消えてたし…!?」
「俺に質問するな…そういう中野長女こそ、こんな時間にまでなんで起きてる?」
「えっと…なんか眠れなくなっちゃって…ちょっと散歩でもって外に空気吸いに行こうとしたら…たまたまコソコソしてる照井君を見つけちゃって……もしかして、ショータ君の様子を見に…?」
「俺に質問するなと……まぁ、いい。そうだ…本当はシュラウドを見つけてきたかったんだが…」
どこか諦めた様子で、一花の問いに答え出した照井。消えた時と同じく、ウェザー・ドーパントから受けたダメージによる傷や衣服の損傷などそのままに何かをしていたらしく、
「シュラウド…?」
「俺の協力者だ…アクセルの変身道具やメモリを俺に授けた女だ。ダブルのメモリに関しても奴が関わっているらしい。それだけの知識があれば、負傷した佐桐に何かできないかと思ってな…音信不通がデフォルトのシュラウドを見つけるのは、やはり簡単な話じゃなかったがな…」
(それじゃ…あの後、姿が見えなくなったのはその人を探してて…自分の怪我も軽くはなかった筈なのに…)
いつもの孤高な態度が鳴りを潜め、珍しく語る照井の答えに、一花は納得しつつ、自分のことを二の次にしている姿に心配になる。
「意識が戻るまでは絶対安静だって…楽観視もあんまりできないってお父さんが言ってた」
「そうか……邪魔をしたな」
「…ちょ!?どこ行くの!」
「…別にどこかに行くわけじゃない。いつあいつがまた襲ってくるとも限らない。周囲を警戒しに行くだけだ」
「警戒って…そんなボロボロの状態なのに……もう!ちょっと待ってて!?」
「断る。別にこの程度「あー、もう!変なところで頑固なんだから!黙って、お姉さんの言うことを聞きなさい!」…むぅ」
言っても聞かなさそうな照井の態度に業を煮やした一花。その聞かん坊の手を無理矢理引っ張って休憩所のベンチに座らせたと思うと、どこかへと小走りで行ってしまった。
流石の照井も勢いに押され、為すがままに座らされたこともあり、仕方なく待とうかと思っていると、一花が戻って来て…
「はい!応急処置するから、服捲って!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何を持ってきたのかと思えば、消毒薬やガーゼや包帯といった医療道具。看護師から貰ったもの…ではなく、風太郎が四葉に応急手当の道具を買いに行かせた際に一纏めの形で一緒に買われて使われなかった道具たちだ。
本来なら病院にいるのだし、看護師に任せればいいのだろうが、照井にそんなことをさせようとすると、確実に治療を受けてくれないだろうという感じがして、一花は風太郎が余らせていた道具のことを思い出し、自分たちの病室から持ってきたのだ。
だが、照井からしてみれば、素人の一花にそんなことができるのかと懐疑的な視線を向けるのも当然であって、
「むぅ…なんか失礼な目線を感じる」
「お前にできるのか、それ…」
「失礼な…フータロー君がやってたの見てたし、ドラマでそういうお医者さん役をやってる先輩たちが実際にやっているのも見てたんだから」
ジト目だけでなく、雰囲気からも照井から疑いを持たれていることに気付き、一花は口を尖らせる。豪語するほどに自信を持っているらしく、道具を意気揚々と取り出す…まではよかったのだが、
「ちょっと待て」
ガーゼがあるにも関わらず、消毒液をそのままぶっかけようとして、照井に掛けようとした手を止められるは、
「包帯を絞め付け過ぎだ」
血を止めるかのような勢いで包帯を縛ろうとして、顔色を変えることなく突っ込まれるは、
「…悪いが、俺にやらせろ」
巻き方がなってないどころか、グルグルと無駄に厚く巻き続けてしまい、見ていられないと道具一式を取り上げられてしまい、
「………(チーン)」
さっきまでの自信は見事に吹き飛ばされ、消沈した一花が顔を伏せる横で、照井は全く介することなく腕や体に包帯を巻いていた。
…まさしく、言うは易し行うは難しというところだろうか…風太郎のあれは、自己研磨を続けたものによるもので、知識を実際に行動に起こせる風太郎の意外な器用さが結果と出たものであったわけで…ずぶの素人の一花にはやはり難しかったわけだ。
まぁ、それでも、一応は心配の上、手当をしてくれようとした一花に思うところがあったらしく、
「…礼を言う、助かった」
「…!うん…!」
赤の皮ジャンバーを再び羽織りながら礼を述べた照井に、ぶっきら棒ながらでも初めて聞いたお礼の言葉に、少しだけ一花のテンションも上がる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「……あのさ…!」
だからだろうか…もしくは、普段からは考えられない少し気落ちした照井の姿を見たからか…今度こそ去ろうとした照井に、一花は思わず声を掛けてしまった。
「…フィリップ君に…力を貸してあげてくれない…?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
唐突な一花の提案に、照井の足は止まる。だが、言葉を発して答える様子はない…いつものフレーズで断らないことからして、聞く気はあるようだが…照井の反応が鈍いことに戸惑いつつも、一花は言葉を投げる。
「ここにこっそりショータ君の様子を見に来たのも、そのシュラウドって人を探してたのも……照井君も本当は分かってるからじゃないの…自分がしたことがどういうことかって…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もしも…もしも君が少しでもその気持ちがあるのなら…フィリップ君に…」
「それはできない」
「っ…!?」
はっきりと断言されたことに、一花の言葉が途切れる。だが、その言葉と目には映っているのは怒りや憎悪に入り混じった…後悔の色だった。
「…佐桐が庇った時、俺は何もすることができなかった。あいつは俺が窮地に陥る時、自分のことなど二の次に助けてきた。そして…フィリップが俺に怒りをぶつけた時…あいつの言葉が頭を過ぎった……『誰かが傷つくかもしれないことを考えろ』、とな…
俺がしたことは…ドクターが俺の家族にしたことと何が変わらないのか…俺がしたことが…本当に正しかったのかどうか……分からなくなってきた」
「…あの白いドーパントが…照井君の仇、なんだよね」
「そうだ…これまでは奴を殺すことだけを考えて生きてきた。あいつに復讐できるなら…何でもできると思ってきた筈なのに……佐桐の言葉が頭を離れない…どうしてだ…なぜあいつはあんなになってまで、誰かを守ろうとできるんだ…」
照井の滅多に見せない弱音に一花は何も言わずに聞き続ける…照井がここに来た本当の理由は…迷いの答えを翔太に尋ねたかったからなのかもしれない。誰かに問い掛けるようなその言葉に応えたのは…一花だった。
「…五月ちゃんから聞いた話なんだけど…ショータ君は、お父さんがもういないんだって…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「敵の組織に挑んでそのまま……去年の年末、お父さんの偽物とも戦ったこともあったって…でも、ショータ君とフィリップ君たちがダブルを継承した時に、遺言としてこんな言葉があったんだって…『ライダーは強制することでもなければ、義務でもない』って。
ショータ君は…多分、目の前で困ってる人がいるのを放っておけないじゃないかな…それがどれだけ嫌い人でも、どんなに困ったことをする人でも…例え自分から死にに行くような人であっても…どうしようもなく放っておけないほどに、お人好しなんじゃないかな?」
「…ハーフボイルド、という奴か…」
「ショータ君はいつも嫌がってるけど……それがショータ君の長所なんだろうね」
苦笑交じりの照井に釣られ、一花も笑みも零す…短い付き合いながら、照井も理解していた。佐桐翔太という人間はどうしようもなく人情に溢れた男なのだと…
「ダブルが…佐桐がもっと自己中な男であれば、恨んでいるだけで良かった筈なのにな」
「恨む…?」
「俺が力を欲したのは…ウェザーに復讐するため。ダブルが防げなかった殺人を犯したあいつを倒すことが俺の目的だった。ある意味では…俺の家族を殺される前に、奴を突き止められなかったダブルが……憎かったのかもしれん」
「それが…照井君がフィリップ君と一緒に闘えない理由…?」
「…少なくとも、フィリップは俺との共闘を望んでいないだろう。ならば…俺一人で闘うしかないだろう……それが、倒れた佐桐のために俺ができる唯一のことだからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…無駄話が過ぎたな。お前は早く寝ろ」
きっとそれが照井の本音だったに違いない…照井だって本当は分かっている筈だ。一人では勝てないと…だが、彼から共闘を申し出ることはできないのだと…一花もフィリップのあの態度を見て分かってしまった。
話は終わりだと照井が立ち去った後、一花もこれ以上はどうにもできないと思い、病室に戻ろうと、
「こんな時間に何してんのよ」
「…!…二乃?」
通路の影から姿と共に声が聞こえ、それが二乃だと気付いた一花は驚き、そして、苦い笑みを浮かべていた。
「盗み聞きしてたの?お姉ちゃん、そんな悪いことを教えた覚えないけどなー…」
「なにいきなり長女ぶってんのよ…別に盗み聞きするつもりはなかったわよ。あんたが部屋を出ていったっきり戻ってこないから…心配になって様子を見に来ただけよ」
「ふーん…」
「…なによ、なんか分かったような顔をして…」
「ううん…お姉ちゃん思いな妹がいて、嬉しいなと思ってね」
「…気持ちわる」
「ちょっと…!流石の私も傷つくんだけど―!」
全くオブラートに包む気がない二乃の反応に、抗議の声を上げる一花。本気の反応では分かっていても、流石に少なくないダメージを喰らっていた。
「…知ってたのね、あいつが新しい仮面ライダーだって」
「二乃も知ってたんだ…まぁ、私の場合は偶然だけどね」
「ともかく、話が終わったのなら、さっさと寝なさい。いちいち動かれたら、いい安眠妨害だわ」
「…?そういう二乃は寝ないの?」
「私は……紅茶を飲んでから戻るわよ。ちょっと目が覚めちゃったし」
「紅茶飲んだら、もっと眠れなくなるんじゃない?」
「い・い・か・ら!あんたはさっさと戻りないよ…!」
「はいはい…二乃もあんまり遅くならないようにね?」
早く行けと言わんばかりに、一花に病室に戻るように促す二乃。多少強引の物言いに苦笑しつつ、一花は今度こそ病室へと戻って行った。姉の姿が完全に消えたところで、二乃は大きくため息を吐き、
「…もういいわよ。本当の盗み聞きの犯人さん」
「………いつから気付いていたんだい、二乃ちゃん」
そこにいるのを確信したように呟いた二乃の言葉に、観念したように出てきたのはフィリップだった。
「愛の力よ…と言いたいところだけど、偶然よ。私が二人の会話が聞こうと隠れた時に、角度的にフィリップ君が見えたから」
「それは参ったね…こういうのは翔太の方が得意だからね」
「それで……照井の言葉を聞いて、どうだったの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
寄り道をすることなく、確信を突いた二乃の言葉にフィリップは目線を逸らしてしまう。その表情が曇るのを見た二乃は…更に深いため息を吐いた。
「…ちょっと付き合いなさい」
「うわぁ…!に、二乃ちゃん…!?」
抵抗することもできず、物凄い力で二乃に引っ張られるフィリップ…そんな彼女らが向かった先は、病院の屋上だった。
「いいのかい?こういう場所って、基本立ち入り禁止だろう?」
「人に話を聞かれたくない場所としては尚更ふさわしい場所でしょ?」
「…確かにね」
風の当たる屋上の床に並んで座り、そんなことを話す二人だが、二乃は話を逸らすことを許さないでいた。
「…やっぱり駄目なの?フィリップ君の中じゃ、照井と一緒には闘えないの?」
「……できない。僕にはその選択肢だけは……どうしても選べない」
「でも…フィリップ君だけじゃどうしようもできない…それもまた事実でしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
事実を突きつけられても…未だに認められないフィリップは子供のように見えた。いつもの冷静な、そして、変わったところが見受けられるフィリップの態度からは考えられない、人らしい反応だと、ちょっと二乃が苦笑したのは余談だ。
「…僕は彼が嫌いだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「彼はいつも独断専行で、自分の復讐を優先とする。なのに、仮面ライダーとして……それで翔太があんなことになったんだ……そんな彼を受け入れろなんて…できるわけがない」
「そうね…確かに、そうフィリップ君が思うのも当然なのかもね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…だったら、それでいいんじゃない?」
「…えっ?」
感じていることをそのままに吐露したフィリップだったが、二乃から返ってきたのは肯定の言葉だったことに驚き、思わず目を丸くしてしまっていた。そんなフィリップの反応など構わず、立ち上がった二乃は歩きながら答える。
「だって、そうでしょ?全部の人と仲良くなれるわけじゃないでしょ…むしろ、気に食わないとか波長が合わない人間の方が多かったりするくらいじゃない」
「そう、なのかい…?」
「そうよ。だって、五つ子の私たちでさえ、そうだったりするんだから。甘いのが好きな姉もいれば、抹茶なんていう爺くさいものが好きな妹もいる…運動が得意な子もいれば、食べるのに人生掛けてそうな子もいる…それで喧嘩したりする時もあるんだから。
なのに…好きになる男の趣味だけは一緒だったりするし…そうよ、上杉が良い例えだわ。最初は、上杉のことが大嫌いだったわ」
「…そういえば、君は上杉風太郎を極端に嫌っていたね?」
「まぁ、上杉がっていうより、私たち姉妹の間に誰かが入ってくるのが…特にそれが男だっていうのが嫌だって極端になっていたのもあるんだけどね…家庭教師と生徒して結構な時間が過ぎて来たけど、好きかって言われると…凄い微妙なところね。教師であり…かろうじて友人と言ったところかしらね」
「そ、それは…彼が聞いたら、怒りそうだね…」
「でも、あいつの教師としての腕は信頼してるわ」
「…!」
二乃の風太郎に対する手厳しい評価に、流石のフィリップもたじろくも、次に出た『信頼』という言葉に反応した。
「あいつがどれだけ頑張ってるか、私たちのために必死になっていることを私は知ってる。だから、私はあいつが家庭教師であることを受け入れられたわ。そこから、嫌いという感情が薄れていったってところかしらね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だからね…別にフィリップ君が照井のことを嫌いだって思うのは別に悪いじゃないと思うの。でも、それを理由にあいつのことの全部を否定しちゃいけないって‥私は思うわ。昔、私がそれで間違っちゃったみたいにね…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「というより、佐桐の奴がおかしいのよ。あいつは人の懐に入り込むのが上手いというか…お人好しの極みといえば、あいつだって言っても過言じゃないじゃないかしら」
「…プッ…確かに、それはそうかもしれないね」
「でしょ…?だから、そういうことが得意なのは、あいつに任せておけばいいのよ。フィリップ君は、フィリップ君ができることを…譲れる範囲でのことをすればいいんじゃない?だって…二人で一人の仮面ライダーがあなたたちなんでしょ?」
「…っ!?………そうだ…そうだったね…」
いつもは自分たちが語っているであろうフレーズを使われ、そして、なんとなくではあるが、自分の中で答えが見えたような気がしたフィリップの顔に、少しだけ生気が戻ったような感じがした。
そんな彼の表情に、二乃も少しは力になれたかと笑みを浮かべる。
「でも、なんというか…フィリップ君も嫉妬をするのね?」
「嫉妬…?一体誰に…?」
「えっ…照井に。それもあって、照井のことが嫌いなんじゃないの?」
「…いやいやいや…照井竜は男だよ?翔太ならともかく、僕が彼に嫉妬するのはあり得ないよ」
「そうかしら…私はてっきり佐桐が照井のことを気に掛け過ぎているのが気に入らなくて、それも踏まえて嫌いなのかと思ってたわ…相棒を取られた、みたいな感覚で…」
「それは……そう言われると、ちょっと胸の部分がちょっとムカッとするような…」
「ほら!やっぱり嫉妬もしてたんじゃない…!?」
「僕が…照井竜に嫉妬している…?」
二乃の指摘をあり得ないと否定するも、思い当たる節があり、困惑するフィリップ。その様子にどこか嬉しそうにしていた二乃だったが…
「…まさか…男同士でも嫉妬の感情があるなんて……これは大変興味深い!ゾクゾクするね…!」
(あ、あれ……これって、マズいパターンなのでは…)
以前、クリスマスの時に秘密を打ち明けられた後に起こった出来事を、眼前のフィリップの反応からして連想した二乃。その予感が当たったかのように、フィリップを『地球の本棚』に入るかのように、両手を平行に広げて…
「さぁ、検索を「ちょ、ちょっと待ってー!?今始めないでぇ!??!」」
こんな非常時に検索に没頭させてたまるかと、屋上に二乃の制止の声が響いた…普段のフィリップに少しだけ戻ったと安堵する間もなく…この日、二乃が寝付くのは夜が明ける直前になってだった。
…そして…
「…さぁ、今度こそ終わりにしてあげましょう…仮面ライダー」
『WEATHER』
夜が明け、早朝を少し過ぎた頃…シンクロ・ドーパントを伴い、街中に突如として現れたドクターはウェザーメモリを起動させ、ウェザー・ドーパントに変身した彼はそう宣言した。
いきなり現れたドーパントたちに街の人たちが逃げ惑う中、ウェザーたちはそれに目をくれることもなく、まっすぐとある場所へと向かっていた。
それは翔太が入院し、五つ子たちと風太郎がいるマルオの病院だった…自身の計画を台無しに仕掛け、重症を負っている翔太をまず始末しようとウェザーは画策したのだ。
…天災という名の悪魔が、再びライダーたちへとその脅威の手を伸ばそうとしていた…!
どこかに消えてた照井の行方とその心情…そして、それを知ったフィリップの苦悩を描くお話となりました。後者に関してはオリジナルを交えての、風都探偵のネタもぶっこむという(笑)
ダブルに感化されつつあった一方で、ウェザーだけでなく、実はダブルの二人にも思うところがあった照井…実は初登場の章にもその名残は書かれてあったりしました。
だからこそ、二度も自身を庇った翔太の献身に、心を揺す振られた訳で…(そうでなかったら、原作のようにバカ呼ばわりしてたかと…)
そして、そんな照井の心情を知ったフィリップと二乃の会話…こちらも、原作とはまた異なる成長をした二乃だからこそ言える言葉だったのではないかと。肯定しつつも、自分の失敗を交えての指摘をする…本作、亜希子ポジが五つ子たちになるところも大きいので、一花と併せて本話で重要な立ち位置を担ってもらうことになりました。
…えっ、末っ子はどしたって?いや、今回はおとなしくしててもらおうかなと…次章で色々と大変な立ち位置になるわけですし…(苦笑)
そういうわけで、次回で本章も大詰めを迎えます!迫りくるウェザーたちに、ライダーたちは共闘できるのか、そして、勝てるのか…!
ご期待下さい!
それでは!