仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

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短めですが、エピローグと次章へと繋がるプロローグ的なお話です。
まさかの事実が次々と出ますが…それでは、どうぞ!


第89話 「Gを吹き飛ばせ!/報告書と秘密の打ち明け」

(…ドクターこと、ウェザー・ドーパントを撃退して数日。あれから、奴がリベンジに来る気配などは一向になく、俺も少しばかり力の入っていた肩の荷を降ろせそうだと感じていた。

フィリップ曰く、トライマキシマムでの攻撃はウェザー・ドーパントに直撃したとのことだったので、メモリブレイクとまではいかなくても何かしらの損傷を与え、その修理が完了するまではまた襲ってくることはないだろうとのことだった。

…といっても、奴のメモリをブレイクできていないことには変わりないため、その時に備えて準備をしておくべきだとは分かっているが…今は少しばかり、この余暇を味あわせてもらいたいものだ…)

 

いつもの報告書に慣れて手つきで万年筆を操る翔太…3日前の出来事を振り返り、モノローグで語るその姿は、ⅤⅠP専用の病室のベットの上にあった。

 

あのウェザー・ドーパントとの激闘のあと、意識不明の状態から這いあがった直後に戦闘に参加したあと、再び昏倒した翔太は、照井たちの手によって病院に連れ戻され、一日眠り続けた後、目を覚ましたのだ。

 

…まぁ、もちろん…重傷だったにも関わらず、勝手に病院を抜け出したせいで、大変お怒りになった方が一人いるわけで…

 

(…今でも思い出すぜ…マルオさんのあの冷え切った目と有無を言わせない威圧。人間、言葉を放たなくても、恐怖を与えることってできるんだなって実感するとは…)

 

目を覚ました後、翔太を待っていたのは感情を殺したマルオの診察と無言のお説教だった。

 

『君は死にたいのか?』という怒りがにじみ出ている目と、『ライダーとしての責務を果たすのは分かるが、それとこれとは別』という全く容赦ない雰囲気を纏ったマルオは、診察後、翔太が無理をしないように、半日以上そばで見張り続けていたのだ…一切の言葉を放つことなく。

 

翔太自身も、一応ウェザーを撃退したことから当分は無理をするつもりはなかったのだが、一度やらかしたことで、その辺りの信用を失っているせいでまさかの見張られるという事態に発展したのだ。

 

あの張り詰めた空気には、流石の翔太もかなり堪えるものとなり、ようやく解放された際には思わず深い息が出たほどだった。まぁ、その去り際に更にとんでもないことを言われて、ちょっと落胆もしたのだが…

 

(…まぁ、人命的に大きな被害がなかったことが今回の唯一の救いだろう。ウェザーの奴も、俺たち仮面ライダーの抹殺が目的で、他にはあまり目をくれていなかったようだし…そう考えれば、この負傷も痛くはないと思うべきなのだろう)

 

嫌なことを思い出したのもあって、少し気分が沈む翔太だったが、それを割り切るように、今回の一件を振り返ることに再度意識を向けた。

 

(刃さん曰く、街の被害は大きいが、死傷者はゼロ…どんだけあいつがこっちを舐めてたかが分かるが、それに助けられたのもまた事実だ。

それと、シンクロ・ドーパントに変身していた人物…それは、なんと俺たちを苦しめたアームズ・ドーパント、そして、そこから進化したジェノサイド・ドーパントに変身していたあいつ…ジェノサイドだった。

どうやら、その時の失敗で組織から使い捨てとして、シンクロメモリの変身者に選ばれたのではないかというのが、フィリップの推測だった。

その証拠に、この病院に担ぎ込まれたあいつは完全な昏睡状態…脳波がかなり微弱な状態で、意思疎通を図るのは完全に不可能。マルオさん曰く、目覚める確率はほとんどないとのことだった)

 

そう…三人が打ち倒したシンクロ・ドーパントの変身者は、かつてダブルの二人が一度は敗北したジェノサイドだった。組織の一員ということで、情報を聞き出せるかもという希望は上記のようになかったため、翔太は落胆…することもなく、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

(まぁ、収穫がなかったわけじゃないしな)

 

昨日、マルオへと被害の報告と怪我人の受け入れをしてくれたことへの御礼を告げに来た刃野に、入院していることをマルオに暴露されたせいで、またしても心配されることとなったものの、翔太は代わりに被害の状況をも聞けれたので、想定していたよりも酷くなかったことに安堵していた。

 

そして、何よりも翔太にとって…いや、自分たちにとって大きな収穫となることもがあったわけで…

 

『…五つ子たちの連絡先を教えろ。お前が退院するまでは、代わりは俺が担おう』

 

高級フルーツ片手に、見舞いに訪れた照井の第一声に翔太は思わず目を丸くしたことを思い出し、思わず笑みが零れた。

 

ほとんど干渉することはないとばかりの態度だった照井の態度が…いや、雰囲気そのものが大きく変わっていたのだ。

 

いつものクールな態度は変わらないが、わざわざそんなことを提案してくるところで、翔太は照井に起こった変化に気付いていた。

 

(フィリップの奴も、照井に対して何かしら思うところがあったみたいだし…まだ完全に仲良くなったというわけじゃないが、前みたいないきなり突っかかるような態度にならずに済んだのを喜ぶべきなんだろう…まぁ、一つ気に食わないことがあるとすれば、俺が意識を失っている間に、二人が互いに納得するような出来事があったのだろうということだ。なんとなく、フィリップの奴が成長したなって思う反面、ちょっと寂しく思えてしまうのは、俺が照井にちょっと嫉妬したからだろうか?

…そんなことを口に出せば、相変わらずハーフボイルドって言われそうだが…)

 

報告というよりも、感想文になりつつある報告書を書く手を一旦止め、翔太は息を吐く。昨日、フィリップに頼んで報告書の原本と万年筆を持ってきてもらったのだが…早くも報告書は終わりが見え、このままではまた手持ち無沙汰になってしまいそうだったので、一旦筆を置いたのだ。

 

VIP用の個室ということで、携帯電話なども使えるは使えるが…基本、翔太が持っているスタッグフォンは探偵用としての機能に特化させているのもあって、あまり娯楽に使えるようなものではない。

 

まぁ、例えスマホを持っていたとしても、あまり翔太は動画やテレビなどを見るタイプでもなかったりするので、意味はなかったりするのだが…こんなことになるのなら、珈琲を挽く道具一式を持ってきてもらえばよかったと後悔していた時だった。

 

…コンコン…

 

「どうぞー」

 

控えめなノックに、曇りガラス越しに見える赤毛とアホ毛…それで誰かを察した翔太が、迷うことなく応えると、

 

「…元気そうですね、佐桐君」

 

「まぁな…暇すぎて死にそうにはなってるぐらいにはな」

 

「なんですか、それ…はい、これ。先生から預かってきた書類です」

 

扉を開け、思っていたよりも元気そうな翔太の姿に安堵した五月の姿がそこにはあった。翔太もジョークを交えた返しをし、今日やってきた理由である書類を、ベットの机へと置く。

 

「悪いな…というか、思っていた以上に結構な量があるな、おい…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「キョロキョロしてるところ悪いが、今日は見舞いの品はないからな?」

 

「なぁ…そ、それに期待してたわけではありませんよ!?」

 

手で掴めそうなほどのぶ厚みのある書類の束に辟易している翔太だが、何かを探すように首を動かす五月に、ジト目と共にツッコミを入れる。

 

ちょっとだけあるかもと期待していた五月が慌てて誤魔化すのも無理ない…昨日、見舞いに来た照井と入れ替わる形で来て、置いていった高級フルーツを翔太と一緒に食べたのだ。

 

翔太としては一人で食べきれない量だったので、お裾分け程度の気持ちで五月と一緒に食べたのだが…まさか7割も食べられるとは思ってもみなかったのだ。で、その後、フィリップがやってきたわけなのだが…

 

昨日の見舞いと異なり、五月が今日やってきた理由はその書類の山を翔太に届けるためであり、それを思い出して五月の表情が曇る。

 

「でも…まさか修学旅行に行けないなんて…いくら佐桐君が無茶をしたからって、これはあんまりでは…」

 

「…まぁ、仕方ないだろう。お前さんの親父に来週まで絶対安静だって言われちまったからな」

 

そう…マルオが翔太に告げた内容とは、来週の半ばから行く京都への修学旅行には行けないという、医師としての診察結果だった。

 

自然治癒でしか回復が望めないガイアメモリのダメージを、ツインマキシマムによって二重に受けた翔太は、鎮痛剤なしでは身体を起こすのもほとんどできないレベルのダメージを負っていたのだ。

 

今はリクライニングによって上半身を起こしてはいるが、それでも結構辛い状態だったりするのだ。五月たちを不安にさせないように男の意地で気張っているようなものだった。

 

そんな状態の人間を旅行に行かせるわけにはいかない…そういう意味で、マルオの告知は至極真っ当なものであり、翔太自身も特に反対することなく、それを受け入れたのだ。

 

そして、それを五月を通して学校に伝えた翔太の元に届いたのが、修学旅行に行けない代わりに出された課題だったわけだ。

 

「行けないものは仕方ないさ…別にこれで二度と行けなくなるわけじゃない。またなんかの機会に行くさ」

 

「そう、ですか…まぁ、佐桐君自身が割り切っているのならいいですが…」

 

「それよりも、お前はどこに行くとか旅程はもう決めたのか?班決めは…確か明日の予定だったよな?やっぱりお前たちは五つ子一班で回る感じなのか…?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…五月?」

 

翔太自身が受け入れている…それどころか、あんまり残念がっていないこともあり、五月もこれ以上他人の自分がどうこういうのも悪いと思い、それ以上どうこう言うのは止めにした。

 

ついでに出た話題だったため、翔太が明日決める予定だった修学旅行の班決めに関して尋ねる。翔太自身はもう既に誘われていたのもあり、(行けなくなって今となっては意味がなくなったが)別行動になりそうだと思っていたので、やはり五つ子同士で班を組むのかと五月に尋ねたのだが…

 

さっきまでとは別の意味で…主に困ったように顔を曇らせた五月の態度に、翔太はどうしたのと首を傾げる。

 

「えっと…そうですね、一応はそうなりました」

 

「一応は…?なんだよ、その含みを持たせるような言い方は…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…何があった」

 

春休みの旅行と同じ空気…そんな悩みを抱え込んだ様子の五月に、翔太はただ事ではないと気付き、真面目な態度で尋ねる。

 

「今日、その修学旅行の班決めに関して、勉強会で話題に挙がったのですが…そこで色々とありまして……佐桐君。おそらく、この修学旅行は無事には終わらないかもしれません」

 

「それは……そこまで言い切るってことは、お前はその原因を知っているってことなんだな?」

 

「……ええ。貴方と…そして、上杉君が知らない…私と…私たちが隠してきた秘密も大きく関わっていることです」

 

「…秘密…それはこの前言ってた隠し事のことか?」

 

「…(コクッ)…本当なら、こうなる前に話すべきだったんじゃないかって…今でも思います。でも、あの子がそれを望んでいなかったんです…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「少し長い話になりますが……聞いてくれますか?6年前…あの子と上杉君が出会った、京都の話を…」

 

覚悟を決めた五月の口が言葉を紡ぎ出した…過去のことを、五月が秘密にしていたという真実を…

 

それを聞いた翔太は…予想を大きく上回る真実に驚くことしかできなかった…そして、五月がどうしてその秘密をここまで守ってきたのが、嫌という程に理解できてしまった。

 

…過去と現在を繋ぐ京都での物語が幕を明けようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……フフフッ……フハハハハハハハハハハ…!?まさか…まさか、この私がメモリをブレイクされかけるとは…!?……いいでしょう!君たちが悉く私たちの邪魔をしようというのなら……君たちに相応しい悲劇という名のストーリーを用意してあげましょう!そのための実験はもう完了したのですから……楽しみにしておいてくださいよ…仮面ライダー…」

 

そして…辛うじて致命傷を避けたとはいえ、深手を負ったドクターはボロボロになった黒の紳士服のことなど気にすることなく、闇で笑っていた。

 

…水面下で、物語は大きな転換期を迎えようとしていた…

 

 

次回 仮面ライだーダブル/Kの花嫁

『古都のL』 これで決まりだ!

 

 

 




オリジナルドーパント解説
シンクロ・ドーパント 『SYNCHRO』
 『同期』の記憶が込められたブロンズランクに属するガイアメモリ。
周囲の人間の脳に特殊な波長(フィリップ曰く、ダブルドライバーシステムに搭載されているガイアリレーションの仕組みに似ているとのこと)で干渉し、意識を乗っ取り操ることができる能力を持つ。これにより、劇中で一般市民に乱闘を起こさせたり、三玖と四葉を操って翔太たちを襲わせたりもした。
 上記の能力はフィリップが対処療法として改良したバットショットの中和音波によって限定的にはあるが無効化したものの、このシンクロ・ドーパントの厄介なところは、マキシマムドライブによって活性化したメモリの力をマイナスのエネルギー波長によって相殺=単体でのマキシマムドライブではメモリをブレイクできない点である。これとウェザー・ドーパントの介入もあって、連携を乱されたライダーたちは大いに苦戦を強いられることになった。
 一方で、素の戦闘能力は変身者に委ねられる部分が多く、変身者が闘い慣れていたのもあって、ヒートジョーカーのダブルともそれなりにやり合うなどの善戦ぶりも見られたが、メモリチェンジコンボには翻弄される形となった。
 ダブル ヒートダイナソーのツインドライブでメモリブレイクされかけるも、ウェザーの介入もあって難を逃れ、回復した後にウェザーに連れられる形で襲撃。ウェザーの指示に従う形で、アクセルとの闘いでは傍観していたが、フィリップ=サイクロンの介入と、奇跡的に意識を取り戻した翔太=ジョーカーの奇襲に対応しきれず、二人の息ピッタリの連携によるダブルライダーキックを受け、メモリをブレイクされた。
 変身者はアームズメモリと強化アダプターによってジェノサイド・ドーパントに変身していたジェノサイドその人。但し、脳に干渉するメモリを使っていた影響か、ブレイク後、昏睡状態に陥り、情報を引き出せる状態ではなくなってしまった(マルオ曰く、回復する可能性はゼロに等しいと)


悲報…佐桐翔太、修学旅行 留守番決定…!?

はい、翔太君は修学旅行には行けなくなりました!(ちゃんと出番はあります!遠隔での登場にはなりますが…)そういうわけで、五月からいち早くあの真実について告げられることになったわけで…

物語の性質上、翔太がいてもいなくても話が成立するので、ちょっとお留守番をしてもらうことに…まぁ、意外にも出番はそれなりに多かったりもするのですが…(苦笑)

ちなみに、最後の最後で不気味な高笑いをしていたドクターさんは次章出ないです(なんか次章でとんでもないこと仕出かしそうな雰囲気を出してましたが、それはもう少し先のお話ですので)

ということで、次章からシスターズウォーこと修学旅行編『古都のL』をお届けしていこうと思います!

今回のサブタイ『G』が示していたのは『逆境』・『Gimimick(企み)』を吹き飛ばせ!という意味合いでした。
前章の『E』はもちろん『Editor(編集者)』を意味するものとなります。

それでは、また!
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