キリがいいところで切ろうかと考え短くなるかと思ってら、全然そんなことはなかったです(苦笑)(最後のが余計だった…!?)
色々と原作とは変わっているところもあったり…それでは、どうぞ!
「…一花……なんで、私の変装してるの…?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
意図せず対峙することになった一花と三玖…そして、三玖と同行していた四葉も言葉を失っていた。
そんな中、沈黙を破ったのは思わず…いや、当然の疑問を口にした三玖だった。彼女の性格からして、その問い掛けに悪意はなかった。自分と同じ格好をしているとはいえ、姉妹の誰が変装をしているかを見破るなど同じ五つ子からすれば容易いことであり、それを口にしたのは姉がどうして自分と同じ恰好をしているのかという疑問からだった。
だが、それを察する余裕など今の一花にあるわけもなく、絶望を表情に露わにしたまま茫然としてしまっていた。いつもとは全く異なる姉の様子に、流石に違和感を覚えた三玖が心配になって声を掛ける。
「…一花?何か理由があるのなら…「なんで…」…四葉…?」
それを言い終える前に、隣にいた四葉の声が遮った。その言葉通り、困惑と…そして、信じたくないといった感情が四葉の顔に浮かんでいた。
「一花……私、そんなつもりであの時、言ったんじゃないよ…それが本当に一花のしたかったことなの…?」
「したかったこと…?四葉、どういうこと?」
春先の家族旅行…二人っきりで話をした時のことを持ち出す四葉の言葉に一花は応えない…応えることができないでいた。それは彼女が頭のどこかでは本当は分かっていたからだろう。
もちろん、その時のことを知らない三玖からすれば何の話だとなるわけで…
「一花は邪魔しようとしてる…」
「邪魔って…何の…?」
「それは…」
四葉にとっても予想外の出来事だったわけで聞かれるままに三玖の疑問に答えようとしていた。だが、彼女たちにとって更に予想外のことが起ころうとしていた。
「っ…!?四葉、待って!?」
三玖と四葉の死角…彼女たちが登ってきた階段から見えたその姿に、気づいたことで正気になった一花が叫んで制止しようとするが、僅かに遅かった。
「三玖から上杉さんの告白だよ!」「ぜぇ…!よし、一番乗り!」
四葉の発言と、その到達宣言が僅かにズレてその場に響く。そこに姿を現したのは、ある意味では一番の当事者でもある人物…上杉風太郎その人であった。
「っ…?!(マズい…!)」「…!?」「…あっ…!」
三者三様…今の恰好を見られるのはマズいと咄嗟に変装用のウィッグとヘッドフォンを外して後ろ手に隠す一花、驚きのあまり振り返ることもできず硬直する三玖、そして、一番聞かれてはならない人物にそのことをばらしてしまった四葉が振り返り、突然登場した風太郎の姿を目視していた。
一方で、息を切らせながら頂上へと到着した風太郎にも、先程の四葉の言葉はしっかりと聞こえてしまっていたわけで…
「はぁ…はぁ……い、今…何て…?」
聞き間違えたのだろうかと…自分の聞いたことが信じられないこともあり、思わず誰に対して問い掛けたのか分からない感じのまま、風太郎が口を開く。
今さっきやってきた風太郎からすれば、状況が理解できないのは当然のことであり…聞こえた四葉の言葉の内容も衝撃を受けるのはまた当然のことだった。
「う、上杉さん…もしかして、今の聞こえて…」
「…っ!?」
一番知られたくなかった人物に自分の想いを知られてしまった…引っ込み思案な一面がある三玖からすればそれは致命的なことだった。四葉がしまったと思いつつ、どう答えるべきかと迷っている最中、完全に頭が真っ白になった三玖は…
「……!」
「三玖、待って!?」
風太郎を一度も見ることなく、その場から駆け出してしまった。突然のことに、四葉も動くことができず、呼び止める声に反応しない三玖を見送ってしまった。
思わず逃げ出した三玖の進行方向は、一花が登ってきたルート…もちろん、その先には…
「フィリップ君、急いで!?早くしないと…!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……うん?あれは、中野三玖じゃないかい…?」
「えっ…?三玖!…って、ちょっと待ってください、どこに行くのですか!?」
一花に置いてけぼりを喰らった二乃と、息を切らしてその背中を押されるフィリップと、疲労の色が見える五月がいたわけで…
いきなり階段を駆け下りてきた三玖にフィリップが気付くも、三玖の方はそんな三人の姿に目もくれず、そのまま階段を下りて行ってしまった。
流石にただ事ではない三玖の様子に、慌てて五月があとを追い始める。そして、残された二乃とフィリップは三玖が下りてきた頂上の方へと視線を向けると、
「…!あんた、まさか…!?」
「二乃ちゃん…?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二乃たちの方から見れば、一花が後ろ手に隠した変装道具は丸見えだった。三玖の髪と同じウィッグに彼女がお気に入りの青いヘッドフォン…それを見た二乃は姉がしでかしたことを即座に理解した。
彼女たちの変装を目にしたことがなかったフィリップはどういうことかと眉を顰めていたが、そんな彼に構わず…構うことができないほどの怒りが二乃には沸き上がっていた。
「一花、あんたやったのね!?いい加減にしなさいよ!それで、あの子を泣かせて満足?!」
悪巧みにしてはあまりにも度を越した…妹の想いを踏みにじる行為に、流石の二乃も我慢の限界だった。烈火の如く、怒りをそのままに一花の胸元を掴みかかっていた。
「二乃ちゃん!?少し落ち着い「フィリップ君は口を挟まないで!?これは私たち姉妹の問題よ!」…っ!」
「ま、待って、二乃!今のは私が…!?」
「…四葉、いいから」
流石にやりすぎではと思い、状況が呑み込めずとも二乃を制止しようとフィリップが割り込もうとするも、二乃のあまりの気迫に逆に押しとどめられてしまう。ならばと、一連の出来事を知らない二乃に説明しようと四葉が止めようとするも…それを遮ったのは責められていた一花だった。
左手でそれ以上は言わなくていいとジェスチャーしたあと、一花は二乃へと言葉を返す…だが、その視線は伏せた顔に合わせられ、誰へも向けられていなかった。
「結果はどうであれ…私がしようとしたのはこういうことだから」
「っ…あんた、どこまで…!」
「…二乃には分からないよ…」
「…っ?!」
認めてほしくなかった…普段の言動はどうあれ、一花の口からやったことが真実だと告げられ、ショックを隠し切れないでいた二乃。だが、次に放たれた言葉はその衝撃を更に上回るものだった。
「私と二乃は違う…違い過ぎるの…私は二乃みたいにフィリップ君の立場を思いやることも、三玖みたいにフータロー君に好かれるようになろうとすることも…どっちもできなかった!?
私は自分ができることで…やれる範囲でフータロー君に好かれようとして、全部空回って…!だったら、もう誰かを蹴落としてでもそうするしかないじゃない!?フータロー君が私だけを見てくれるようにするしかないじゃない?!
フィリップ君と距離を縮められた二乃には分からないよ!?私はどうしたらよかったのよ……どうすればよかったのか…教えてよ…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それはきっと悲鳴だったのだろう…いつもの飄々とした一花の姿から考えられない素の心の声に、二乃も言葉を失くしていた。
自分とフィリップの関係までもが、彼女を苦しめていたのだと…彼女もまた悩んだ末で、取ってしまった行動だったのだとそこで察したものの、それでも、彼女がしたことが三玖を傷つけたのもまた同義で…
「上杉、あんたは今すぐに三玖を追いかけなさい」
「なぁ…だが、お前らが「うるさい!あんたがここにいて話に絡んでくると余計にややこしくなるのよ!?さっさと行け!」…わ、分かった、分かった?!」
「フィリップ君…悪いんだけど、上杉と一緒に行ってくれない?私はまだ一花と話すことがあるから…」
「…分かった」
「あっ…!わ、私もついていきます!?」
ともかく、三玖の方もなんとかしなければならない…ここにいては邪魔にしからならない風太郎と、状況を黙って見守っていたフィリップに三玖のことを任せるため、指示を出す二乃。四葉も責任を感じ、そんな二人のあとを追っていく。
「…前に言ったわよね。あんたのしていることに迷いはないかって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あんたがあのバカのことをどこまで好きか…今回の一件で、嫌という程に思い知らされたわ。私の想像を遥かに超えるほどにね」
二人残された中、未だに怒りが込められた言葉を放つ二乃に、一花は応えない。だが、妹が言わんとしていることは分かっていた。
「でも、こうも言ったわ…あんたが三玖の想いを踏みにじるようなことをしたら、一生許さないって……なんでか分かる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私にとって、三玖と同時にあんたのことも大事な家族だったからよ」
「っ…!?」
「なんで家族で…姉妹同士で傷つけあわないといけないのよ!?私はあんたにそんな真似をしてほしくなかった?!そんな姿を見たくなかった!?いつも……いっつも長女らしいことをしようとして、どこか空振り気味なあんたの姿が好きだったのよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それが!妹を泣かせて…自分も傷ついて…私も辛くて…!例え、どんな結果になろうとも…あのバカを一生認められなかったとしても…あのバカがあんたか三玖のどっちかを選んだとしても……それでも、私は素直に祝福したかった…!だって……
フィリップ君との絆と同じくらいに…私たち五人の絆だって大事だって想ってたから…!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それが二乃の本音だった。
言い方はきつくても、大事な人ができた今でも…二乃にとって五つ子との絆は変わらず、大事なものの一つだったからだ。
彼女が怒っているのは、一花が三玖の想いを踏みにじったことだけではない…一花のそのような姿を目にしたくなかったのもあったのだ。
だからこそ、『自分と二乃は違う』という言葉はもっとも聞きたくない言葉だった。それを言わせてしまった要因が自分にもあることが…一番辛かった。
「……二乃、私は「おいおい何だ…喧嘩か?」「学生が揉めてるみたいだが…」…っ!」
「何を言おうとしたかは知らないけど…謝罪は今は受け付けないから。ほら、私たちも下りるわよ」
三玖に酷いことをしただけでなく、二乃にまで…ほぼ八つ当たりに近い形に言葉をぶつけたというのに、それでも、自分の為に涙を流す二乃の言葉に一花の心に何かが蘇る…それに導かれるままに言葉を口にしようとしたが…
三玖たちが走っていた方から他の観光客が来て、騒ぎに気づいた。このまま、この場にいるのはマズいと判断し、一花が何を言おうとしたのかを察したのもあり、釘を刺してから下に下りることを二乃は提案した。
特段反対する理由もなく、そして、できる立場でもなかった一花は素直に頷き、二人して階段を下りていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「な、なぁ…いつまでもこの状態でいるんだ?」
「照井君に聞いてくれたまえ。上杉君と一緒に先に行っていると思っていたら、さっきからこっちに来るなってジェスチャーをしてきてるんだから」
「…なら、俺はいつまでお前に背負われていればいいだよ!?」
「それは動ける者が言う言葉だよ、前田君。僕が止めたのに、お昼ご飯をあんなに大量に食べるからだよ」
そんな一部始終を、風太郎とほぼ同着で頂上手前の階段にまで辿り着いた照井がこっそりと聞いていて、そんな彼に来るなとジェスチャーによって、騒ぎが聞こえない位置で待たされている武田と前田が不思議そうに見ているのだった。
ちなみに、余談だが…三玖と四葉が風太郎たち一行を追い抜けたのは、二手に分かれた場所にあった食事処で昼食を取っていたからだ。まぁ、そこで食べ過ぎたせいで動けなくなった前田が現在進行形で武田に背負われているわけだが。
…カシャ!カシャ!
「…?」
その時、シャッター音らしきものを聞いた照井がふと顔を上げる。どこか聞き覚えのある音なのだが、それらしき正体は見つからなかった。
気になりはしたが、今はそれどころではないと判断し、武田と前田に断りを入れてから、元来た道を引き返す形で一足先に下へと降りていくのだった。
「くそっ、もう三玖はいないか…」
「あっという間に駆けていったからね…こんなことになるんだったら、スパイダーショックの発信機をつけておくべきだった」
風太郎についていく形で入場口にまで戻ってきたフィリップ…手分けして三玖を探すも、修学旅行生だけでなく、観光客までいることもあり多少の時間を要してしまった。
行方が分からないことに翔太から借用してきたスパイダーショックをあの時使えておけばと、フィリップは後悔していた。こうなれば、多少目立つことになる『地球の本棚』を使って居場所を検索しようかとまで考えていた時、
「上杉さん、フィリップさん!五月と電話が繋がりました!三玖と一緒にバスに乗ってるそうです!」
「そ、そうか…なら、まずは一安心だな」
「はい…まっすぐホテルに戻っているらしく…でも、五月も離れた席に座っているみたいで……どうしましょうか?」
「なら、君たちはすぐに次のバスで彼女たちを追いたまえ。制服とはいえ、僕が一緒に行くと手間を掛けるだろうからね。別ルートで行くよ」
「分かった…行くぞ、四葉」
「は、はい!」
あの騒動の際、すぐに三玖を追いかけていった五月がもしかしたら一緒なのでは…そう思った四葉がスマホで連絡を取ったところ、その読みは見事に当たった。
無事に連絡が取れ、三玖の行く先も分かったことに安堵する風太郎。一方で、状況は相変わらず芳しくないのもあり、どうするかという四葉に、フィリップは追うべきだと告げる。
流石にこのまま同行するわけにもいかず、後から追い掛けるというフィリップの言葉に、風太郎と四葉もバス乗り場へと向かうのだった。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
バス置き場に着くと、すぐに宿泊予定のホテル方面へのバスが来た。他に乗る乗客もおらず、最後尾に仲良く座る風太郎と四葉だったが、二人の間には気まずい空気が漂っていた。
当然といえば当然だ…風太郎に至っては今回の騒動の原因であり、四葉は騒動を生み出してしまったきっかけである立場…何を話せばいいのか困るのは当然だった。
「…その…フィリップさんが来ていたこと…知ってたんですか?」
「まぁな…もともと、佐桐とは同じ班を組もうって話は持ち掛けられてたし、万が一を心配してフィリップを派遣するって教えてもらっていたんだ。照井も知ってる筈だが…お前らと行動を共にしてるのは予想外だった。こっそりあとをつける予定って聞いてたからな…」
「…そ、そうなんですね」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
何かを話さなければ…そう思い、フィリップがいたことに風太郎が驚いていなかったことを思い出し、確認を兼ねての問い掛けをする四葉だったが、風太郎が答えるとまたしても沈黙が漂ってしまった。
だが、四葉にはどうしても確認しなければならないこともあるわけで…覚悟を決めた四葉は、その話題に踏み込むことにした。
「さっきの……屋上でのことですけど…上杉さん、私が言ったこと……その、聞こえてましたよね?」
「………………聞こえてねーよ」
「あー!何ですか、その妙な間と分かりやすい反応は!?絶対聞こえてましたよね!」
先程の屋上で仕出かした爆弾発言…そのことを四葉に問われた風太郎は……視線を窓から見える景色に移し、たっぷりと間を込めて答えたわけで。あの四葉ですら分かりやすい嘘の吐き方だった。
「だから、聞こえてなかったって…そういうことでいいだろ」
「そ、それは…そういうことにしてもらえるのが確かに有難いですけど…とはいっても、やっぱり私の不用意な発言で三玖を傷つけてしまったのは事実です」
あくまでも聞こえなかったと主張する風太郎に同調する四葉だが、やはり罪悪感はどうしてもあるわけで…口から零れたのは懺悔と後悔の言葉だった。
「ずっと…ずっと三玖は頑張ってきたんです。佐桐さんに料理を習って、朝早くや夜遅くまで一生懸命頑張って…それに、一花も…家族旅行の時に私が余計なことを言ったせいで…」
「……そうだな、お前のせいだ。あんなこと、もっと周りを見てから言え」
「うっ…やっぱり聞こえてたんじゃないですか…!」
自分が把握していなかったことを知る形で四葉から聞かされる風太郎だったが、その返しはドストレートな容赦のないものだった。
もっとも、口下手な彼にとって、余計な慰めは意味がないと思っての返事だった。証拠に、責めるというよりも、注意するに近い物言いだった…まぁ、聞こえていなかったという嘘を取り繕っているのを失念していたようだが。
「…まぁ、知ってたがな」
「え?知ってた…えっ、何をですか…?」
「だから、その……あれだよ…………」
さらっと口にした風太郎だったが、あまりに目的語がないその言葉に、四葉が疑問に思ったことをそのまま尋ねると、何度か言い淀んでから意を決した風太郎は赤くなった顔を右手で隠し…
「み、三玖が俺に…好意を抱いてくれてたことだ」
「………………………聞き間違いでしょうか、もう一回」
「やめろ!もうぜってぇ二度と言わねー!」
風太郎が放ったその言葉を理解するのに多少の時間を要した四葉…別に勉強ができるできないの問題ではなく、普段の風太郎から出る筈のない言葉が出たのに対し、受け入れるのに時間が掛かったのだ。
そして、受け入れたとしても、そんな馬鹿なと思った四葉が驚きのあまりもう一度言ってくれと頼むも、恥ずかしさが勝った風太郎は断固拒否するわけで。
「だ、だって…あの鈍感系代表とも言える上杉さんが……信じられませんよ」
「…まぁ、色々あったからな。それに、周りにそれを意識させてくるカップルがいたからな」
「えっ…?もしかして…」
「ああ、そうだよ…二乃とフィリップ「五月と佐桐さんのことですか!?」…えっ?「えっ?」…」
家族旅行の一件…五月のフリをした三玖との対峙した時から、風太郎は三玖の想いに少しずつではあるが、気づいていたのだ。まぁ、それは二乃がフィリップに告白したのを偶然ながら盗み聞きしていたこともあり、気づかない方が無理あるわけで…
そういうわけで、話の流れ的に自然とその二人のことを告げようとしたのだが、四葉の口から出たのは違う二人だった。
まさかのすれ違いが怒っていたわけだが…二乃とフィリップが付き合っているのを知っているのは、風太郎と翔太以外では、一花と三玖だけであり…それを知らなかった四葉は、よく夫婦漫才に近い喧嘩のやりとりをしていた翔太と五月のことを指していると思ったわけだ。
家族旅行のあと、色々バタバタしていたこともあって、二乃が風太郎に口止めするのを忘れていたのと、フィリップと二乃が表ではイチャイチャしないのが大きな要因だったわけで…本題とは違う暴露が起こり、目線を合わせたまま風太郎と四葉は硬直してしまっていた。
「…ま、まぁ…そういうわけで…俺も色々と思う機会があったわけだ」
「誤魔化さないでください!?今、とんでもないこと言いましたよね!」
「と・も・か・く…そういうことだ!」
強引に話を打ち切ろうとする風太郎に食い下がる四葉…だが、風太郎の言う通り、今はそんなことを話している場合ではなく、不本意ながらそれ以上の追及を諦めた…まぁ、後々二乃に激怒される案件が発生したわけだが、今は置いておこう。
「…だからだろうな。あの三玖から『応援してる』と言われた時には頭が混乱した。それと同時に、あの三玖はあいつじゃねー…そう思ったのは間違ってなかっただな」
「…?あの時…?」
そして、風太郎はあの時…武田との勝負の舞台となった模試の少し前に、三玖のフリをした一花が告げた際、あれが三玖本人ではなかったことを見抜いていたのが間違いではなかったと改めて確信していた。
風太郎の言っていることがイマイチ理解できず、首を傾げる四葉だが…それに応えることなく、風太郎は話を続ける。
「だから、お前は気にすんな。というか、お前は人に気を遣い過ぎだ…ハッキリ言って、お前のそれは度が過ぎている」
「あ、はは…」
気にするなと告げ、むしろ四葉の遠慮さ加減へと諫言するほどだ。流石の四葉も自覚があったのか、返す言葉もなく空笑いを浮かべていた。
「それはいいんです…前の学校で落第した私に、皆が付いてきてくれた話は前にしましたよね。私が…私のせいで皆を不幸に巻き込んじゃったんです…それは簡単に取り返せるものではありません…
…姉妹の皆が私よりも幸せになるのは当然です…」
「…そんなもんかね」
その答えは、どこか達観したような…それが当然だといったような言い方だった。そんな四葉に風太郎は思うところはありつつも、上手く言葉を返すことができず…ぶっきらぼうな言い方しかできなかった。
「だから、この旅行も皆には楽しんでほしかったのに…ねぇ、上杉さん…皆が幸せになる方法ってないんでしょうか…?」
「…………あるぞ」
「…っ!?」
四葉がふと口にした純粋な疑問…願いといってもいいその問いに、風太郎は静かに答えた。
「人と比較なんてせず、個人ごとに幸せと感じられる…もしそんなことができたら、それはお前の望む世界…理想郷って奴なんだろうな」
「そ、そうですよね!それだったら「…だが」…っ!?」
「それはあくまでお前にとっての望みで理想だ。現実的には…誰かの幸せによって別の誰かが不幸になるなんてことも珍しくない話だ。競い合い、奪い合い…そうやって勝ち取る幸せもあるだろうし、そんな中でしか生きられない人間がいるのもまた事実だ」
「……そんなこと言ったら、私のできることなんて…」
「何もない…それもまた現実だ」
四葉の期待を裏切る形で、風太郎は淡々とそう告げる。それはどこか自分に言い聞かせているようにも思えた。
「人にはできることの限度があるんだ…烏滸がましいことなんじゃねーの?全てを得ようなんてな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何かを選ぶときは、何かを選ばない時だ…いつかは決めなくちゃいけない日がくる……いつかはな。
そういうことが分かった上で、少しでも足掻こうとする人間はある意味で傲慢で、でも、だからこそ誰かの為に動けるんだろうな。佐桐みたいに……俺にはできなかった生き方だけどな」
その日はきっと遠くない日にやってくる…どこかそんなことを思っていた風太郎と、何も言うことができなくなった四葉を乗せたバスは、ホテルへの道を走っていくのだった。
「はくっしょん…!」
「うわぁ!?なに、翔ちゃん…風邪?あっ、翔ちゃんは馬鹿だから風邪を引くわけないから、誰かに噂されるのかなぁ?」
「えっ!翔太を噂するとか…もしかして、噂の赤毛の彼女?!」
「やかましい!?サンタちゃんもエリザベスも詮索するんじゃねぇよ!」
そんな真剣な話題で噂されているとは知らず、病室のベッドで盛大なくしゃみをする翔太。その姿に、イレギュラーズを代表して集めた情報を持ってきていたサンタちゃんとエリザベスに揶揄われていた。
「まぁ、ドーパントらしき事件の情報は今のところないよ。珍しく平和だよ」
「むしろ、嵐の前の静けさって感じだよねぇー」
「不吉なことを言わないでくれ…で、もう一つの情報はどうだ?」
翔太が動けず、フィリップと照井の両名が継風を離れてる今、できるだけ目を見張らせようと情報収集を風都イレギュラーズに依頼していたのだが、平和ということで空振りに終わったことに安堵しつつ、エリザベスの例えに苦笑いする翔太。
一方で、もう一つの情報…スタッグフォンから一斉送信でイレギュラーズメンバ―へと送った画像の件になったわけで。
「残念ながら、足取りは掴めずじまいだね。正体に関しては…正直に言って、もう少し時間が欲しいところだね。そっちはウォッチャマンがメインだけど、どうにもここ最近の情報にはヒットなし…かなり昔にまで情報を遡らないといけないようだ」
「そっちは領域外だからね…私たちの方は、引き続き足取り調査の方に専念するわー」
「…了解だ、引き続き頼む」
手掛かりなし…あとはウォッチャマンの調査が完了するのを待つだけだと…今もネットを探索し続けているであろう彼の伝言を代弁するサンタちゃんと、自分たちの担当に専念するというエリザベスの回答に、翔太は頷きながら応える。
「(…コン)そろそろ面会時間の終わりです。退出をお願いできますか?」
「おっと、もうそんな時間か…俺もバイトに行かないと。それじゃ、翔ちゃん、またな!」
「ちゃんとおとなしくしとけよー」
ノックしてから、面会時間終了が迫っていることを告げながら入室してきたマルオ。そんな彼と入れ替わる形で、別れの挨拶を告げながらサンタちゃんとエリザベスは病室を後にしていった。
「…彼らが情報屋の知り合いかい?若い女性はともかく……あれは、サンタ?」
「あの恰好が気に入っているんだそうです。それに、あの恰好だと親しみが持たれるということで、結構情報収集にも役立っているんだそうですよ…あと、バイトの恰好があれらしいです」
「…そうか…うん、その写真は…」
協力者である風都イレギュラーズ…話には聞いていたものの、彼らを初めて見たこともあり、珍しく少し戸惑いの様子を見せたマルオに、翔太は肩を竦めながら答える。癖は強いが、全員が優秀な情報屋なのだ…ダブルもその情報には幾度となく助けられてきた。
…まぁ、繰り返すようだが、常人からするとやはり思うところが多々あるわけで…深く詮索するのを諦めたマルオは診察を始めようとしたのだが…その視線があるものを捉えた。
それは、翔太が急いでベッドテーブルを片付けようとした中…拡大された一枚の写真だった。
「ああ、それは……この前、この病院に襲撃をしかけようとした連中の一人です。そして…ガイアメモリを流通させている組織の幹部ですよ」
一瞬迷ったが、事情を知っているマルオには話しても問題ないと判断し、翔太は写真(この前の戦闘時、バットショットに自動撮影させていた)に写っている人物…ウェザー・ドーパントの変身者であるドクターのことを告げた。すると、マルオは珍しく目を丸くして、その写真を手に取り、
「………この人物は…」
「っ…?!知ってるんですか…!」
「いや、そんなことは……ちょっと待っていなさい」
何か慌てた様子で記憶を辿るように呟くマルオ…その珍しい様子に、そして、ドクターの正体に検討があるような姿に、翔太はいてもたってもいられず尋ねる。すると、マルオは少し考え、一旦病室を後にした。
そして、帰ってきたマルオは一冊のアルバムらしくものを抱えていて…
「…どうやら、記憶違いではなかったようだ…最悪な意味でね」
「っ…!それは…どういう意味ですか?」
「15年前に失踪した医者がいたんだ…当時はガイアメモリによる超常事件がまだ表立っては認識されておらず、人の失踪など珍しいことじゃなかったから、そこまで話題にはならなかったんだがね…問題だったのは、その医者が提唱したある論文のことさ」
「…論文?」
「そうだ…彼の名は井坂深紅郎。彼の論文は人の道理を到底無視した禁断のテーマとして、当時は口にすることさえもタブーとされたものだった…見たまえ」
「……なぁ!?これって…!」
そこまで説明したところで、マルオは持ってきたアルバムを開き、ある一ページを見せた。そこには、マルオが口にした井坂深紅郎…ドクターと瓜二つの男の写真が写っていた。ほとんど違いのない容姿…違いがあるとすれば、目に僅かなら生気があるといったところか。
いや、翔太が何よりも驚いたのは15年前後経っているにも関わらず、対峙したドクターと写真とに違いが存在しないことだった。あの時、ウェザーとして対峙した時の井坂は全く老いた様子は見えなかった。
「…中野さん…この井坂って医者がテーマにした論文って…一体何なんですか?」
「……そのテーマは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そして、実は彼は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「っ…?!」
マルオから語られた事実…それは、翔太の想像を超えるとんでもない事実であり、これまで謎となっていた出来事と深く関わりのある繋がりのことだった。
そんな驚きに襲われていた翔太は気づかずにいた…相棒から一日目に関する報告を纏めたメールがスタッグフォンに届いていたことを…そして、修学旅行でとんでもないことが起きていることに気づくのが遅れたのだった。
あっ、風太郎がやらかしました…そういうわけで、四葉にも二乃とフィリップの関係がバレたわけで(今はそんなことを言ってる場合じゃない)
どうしても一花を悪女にしきれず、二乃が原作とは大きく乖離しているのもあって、開き直りというよりも、葛藤の末の行動という感じに…次回がさらに地獄と化すわけですが…
…そして、行動原理が謎のままの照井はどう動くのか…
さらりと、翔太とマルオも登場してましたが…後々のためのフラグです(黒笑)これは以前感想にてコメント頂いたのを使わせて頂きました!
本章も折り返しですね…次回もお楽しみに!