シスターズ・ウォー最終局面です!原作とそこまで大筋変更はないですが…ちょいちょいオリジナル要素足しての、最終話です!
それでは、どうぞ!
…話は映画村に着いたところにまで遡る。風太郎や三玖たちがガイドの説明を聞いてる最中、柱の傍から彼らを見守る一つの影があった。
「…あとは頼むよ?」
『『『………』』』
その言葉と共に、何かが彼の傍から飛び出していったところから、見守る側の話は始まった。
「…っ!三玖!止まっ…」
「えっ…あっ!」
三玖が風太郎から逃げようとした場面…逃げようとした三玖を制止するかのようにぶつかった人物がいたことを覚えているだろうか。実はこれ…
(三玖…逃げちゃだめだよ…)
風太郎の謝罪も聞かずに、そのまま駆けていき、木々の中にかくれたところで、視線を上げたのは…なんと一花だった。実は、三玖にコースを入れ替えてもらったのだが、結局心配になって、追いかけてきたのだ。
「(三玖…こんなことで罪滅ぼしに…許されるなんて思ってもないけど…)あ、また逃げようとしてる」
それでも、自分が台無しにしてしまった機会を少しでも補填できればと、木々の間から風太郎たちの動向を見守っていた。だが、心配が当たったのか、三玖がまたしても逃げようとしており、
「えっと…何か三玖の興味の引けそうなものは……あれだ!」
時間がない中、周りに何か利用できるものはないかと視線を張り巡らせ、目に留まったものをそのままに叫ぶと…
「「戦国武将の着付け体験いかがですかー?」」
揃った声が響き、聞こえた三玖が動きを止める。しかし、一花は一花で驚いていた。何故か自分とは別の人物が同じ言葉を発したことにだ。しかも凄い近い距離で、聞き覚えのある声で…まさかと思い、目線を向けると…
「い、一花…なんで…?!」
「に、二乃こそ…どうして…!」
自身と同じ格好である着物である二乃の登場に一花は驚いていたが、それは二乃も同じだった。そして、一花の存在を認識した二乃は疑いのまなざしを浮かべ、
「私は三玖のことが心配で…というか、上杉の奴が鈍感だから、せめて見守るだけでもしようと思って仮病を使って…って、私のことはいいのよ!一花、あんた、まさか、またあの子の邪魔をしに…!」
「ち、違う!私も腹痛で抜けてきたの!?…って言っても信じてもらえないと思うけど…私のしたことが許されないとしても、最終日が終わる前に少しでも罪滅ぼしをさせてほしいんだ…だって…きっと、これが私たちの最後の旅行だから」
「…!」
一瞬疑ったものの、一花の言葉を…いや、彼女の雰囲気が前日は異なるものであることを悟った二乃は警戒心を解いた。それと同時に一花の真意に勘づき、
「…一花、あんた、まさか…」
「あれ!一花と二乃もいる!」
「…結局、皆、Eコースに集まってしまいましたね」
「四葉に五月…あんたたちまで。全く…誰もルールを守ってないじゃない」
二乃が確かめようとした時に、背後から聞こえてきた声に振り替えると…そこには、四葉と五月がすぐ近くにやってきていた。どうやら、二人も三玖のことが気がかりでEコースに来てしまったらしい。まさしく五つ子らしいという状況に、二乃はもう苦笑いするしかなく、溜息と共にそんな言葉を零していた。
「あ、三玖たちが移動するみたいだよ」
「はぁ…ともかく付いていきましょう」
「はい!」
「よーし、皆で三玖をサポートしよう!」
五分の四の姉妹が揃ったところで、四葉の声に従い、見守りながら三玖をサポートしていくべく、一同は三玖たちを追いかけていくのだった。
「着付け…でしょうか?」
「まぁ、いいチョイスね。普段着ないものだから、あの馬鹿もちょっとは反応するじゃない?」
「二乃、上杉さんには変わらず辛辣だね」
「認めてはいるけど、それとこれとは話が別よ。まぁ、上杉と会った初日の時から、あいつのことを気にしてる一花と似たようなもんよ」
「えっ…そうだったんですか、一花?」
「…はは、気のせいだよ(だって…あれを思い出したのは、あの日の夜だから…)」
風太郎へのあたりが(会った当初と比べれば、かなりマシにはなったのだが)キツイ二乃に、四葉が苦笑いしていたのだが、その話のついでに一花の様子のことを口にしていた。
その言葉に反応したのは意外なことに五月だった。一方の一花は…動揺を隠して平然なフリをしていた。表に出してないよね?と思いつつ、内心であの時のことを思い返していた。
そんな一花の反応に気付かず、二乃がじっと風太郎たちを見つめていた。
「………」
「二乃、どうかしましたか?」
「やっぱ、あの男二人が邪魔ね。ちょっと私が何とかしてくるわ」
「え…」「なんとかって…」
「ということで、折角だし一花は三玖に着付けさせるように仕向けなさい」
「えっ…いや、仕掛けるってどうやって…?」
「そりゃもう…得意になったでしょ?三玖の変装」
「……いじわる」
容赦なく男子二人の排除を画策していく二乃についていけない四葉と五月。そんな二人に構わず、二乃は一花も巻き込んで話を進めていく。ここ数日の出来事を引き合いに出され、思わず一花が頬を膨らませるも、二乃の指示に従う方が確かによいということになり、
「すみません、やっぱり私も着付けお願いしていいですか?」
一花が三玖の変装をして、係の人に着付けの依頼をした。これにより、本物の三玖が着付けられることになったわけだ。一方で、
「お連れ様は先に幽霊屋敷に行かれましたよー」
という言葉で、先に出てきた武田と前田を『史上最恐のお化け屋敷』へと二乃は連れ込んで、離脱させることに成功した。ちなみに、史上最恐ということもあってか、
「上杉君、本当にここにいるのかい…ヒィイイイィィィィィ!!」
という、とても分かりやすい悲鳴が響き渡ったとか。
「さてと、誘導は成功と」
一丁上がりとばかりに手を払う二乃。すると、ちょうと二人で歩き出した風太郎と三玖が向こうへと歩き出したのが見えた。
(…一花も上手くやったようね。ったく、世話が焼けるんだから)
そのまま良い感じで村の中を散策している風太郎と三玖…確かにいい感じなのだが…ここで二乃に余計な思考が出てしまう。
(それにしても、じれったいわね。もうちょっとだけ助けてやりますか)
「あっ、フータロー、写真撮って!引っ込んじゃう!」
「ったく…しゃーねーな」
(全く…世話が焼けるのよ、あんたらは)
謎の恐竜が池の中から出てくる場所で、チャンスと思った二乃は駆け出し…そのままの勢いで、風太郎にタックルをかました。が、タイミングと威力がマズかった。不意打ちかつ池の近くであったことと、三玖に袖を引っ張られていたところに、思った以上に勢いがついてしまった二乃のタックルは、二人をドミノ倒しにするには十分すぎた。
「うぉ!?」「あっ…」
「あ…」
「えっ、何が起きたのですが?」
「よく分かんないんだけど、誰かが池に落ちたみたい…もしかして、三玖?」
(今、走っていったのって二乃だよね?…やりすぎというか、また暴走機関車が発動したのかな)
二乃がやらかしたらしいと悟った一花の横で、四葉と五月が池の方へと視線を向けていた。
「やっぱり…落ちたのは三玖みたいですね」
「あんなに濡れて昨日の私たちみたい…下着、どうするんだろう?」
「「…!?」」
四葉が純粋に思ったことを口にした言葉に、一花と五月は確かにと思い、思わず反応した。あの状態からして、下着もやられてしまった可能性が高いだろう。
「こ、このままじゃ三玖がノーパンデートだよ!」
「ここって、下着とか売ってるんでしょうか?!」
「ふ、ふんどしとか…?」
「よし、四葉の俊足でお店見てきて!」
「で、でも…ふんどしは流石に…」
「最悪、隠せたらなんでもいいよ!」
大混乱の一同…このままでは、三玖が恥ずかし死しかねないとあーだこーだと言い続ける中、五月が覚悟を決めたように口を開いた。
「あ、あの…!その…私…変な話ですが、何かあるといけないと思って……下着を1セット持っています」
(………なぜ?)
そんな五月のカミングアウトに、一瞬思考が飛び、一周回って純粋な疑問が頭に浮かんだ四葉だったが、それしか現状打開策がないので、五月が三玖の下へとこっそり下着を届けにいったのだ。
そう、あのスケスケ下着の持ち主は五月だったのだ。もっとも、彼女の名誉のために補足しておくと、
『五月さん!これはいくらなんでもアダルトすぎるよ!』
『こ、こ、こ、高校生ですからね!これくらい普通です!』
修学旅行前の買い物で、らいはに大人っぽいところを見せようとして、見栄を張ったせいである。決してやましい理由ではなく、ただの自爆である。あのらいはでさえ、やりすぎというのだから、三玖があんな状態になるのも無理ない話であった。
「よっこいしょ…これでよし」
「一花」
「二乃、遅かったね」
「…まぁ、ちょっと色々とね。それで、今どうなってるの?」
「多分いい感じだよ」
そんな下着事件があったが、風太郎と三玖が二人っきりで椅子に座っている中、邪魔が入らないように立入禁止の看板を移動させる一花のところへと二乃が戻ってきた(よいこの皆は、勝手に施設の器具を移動させないようにしよう!)。
二乃が風太郎たちを突き飛ばしたところは敢えて触れず、一花は四葉と五月のところへと合流しに行った。
ということで、四葉と五月がどこにいるかというと…実は風太郎と三玖が座っていた椅子の後ろにある小屋の中に潜んでいたのだ。
「四葉…これからどうしましょう…」
「うーん…あ、そうだ」
いい感じの二人を見守りながら、これからどうしようかと相談する五月に、四葉はあることを思い出し、それを取り出そうとして…
「…?って、あれ…あっ!三玖のパン、拾ったのにホテルに忘れてきちゃった!」
「ええっ!ぱ、パン?!」
ここでこそ例の手作りパンの出番かと思い、自身の荷物を探る四葉だったが…鞄の中に見当たらず、それを忘れてきてしまったことに気付いた。どうしたものかと思っていると…
「大丈夫だよ…これを三玖に渡せばいいだよね?」
合流してきた一花が手にしていたのは、四葉が探していた三玖のパンだった。実は、四葉が忘れていたことを一花が気付き、持ってきていたのだ。そして、そのまま気付かれないように、一花が三玖の隣にパンが入っている小包を置いた…というのが、事の真相だった。
「あのパンって…三玖が作ったんでしょ?」
「うん…修学旅行初日に上杉さんのために…ずっと佐桐さんに習ってたみたいなんだ。私も何回も味見役をやってて…あんなことがなければ……あっ、ご、ゴメン!一花を責めてるじゃなくって…」
唯一、三玖の事情のほとんどを把握している四葉が一花の問い掛けに答える。そのまま余計なことまで口にしてしまい、慌てて一花に謝罪していた。一花の方も四葉に悪意がないことは分かっていたので、苦笑しつつ受け流していた…メンタルにダメージは入ったが。
「…とにかくゴメン」
「「「…?」」」
「私、全員が幸せになってほしくて…いつも消極的になってる子を応援してたのかも…こうなるって少しは考えたら分かる筈なのに…だから、一花の本当に気持ちに気付いてあげられなかった…だから、ゴメン」
「……‥」
その言葉は、ある意味で一花に一番刺さった。罪悪感というか、本当は…
「…私、謝られてばっかだ。一番謝る必要があるのは、私なのに…」
自然とそんな言葉が一花の口から零れていた。本当は心のどこかで分かっていたのだ…今、自分がしていることがどれだけ最低なことかを…それでも…
「私のことも全部知ってほしい」
「「「「…!!」」」」
そんな中、三玖と風太郎の動向も大きな動きを見せていた。三玖から出た言葉に、三人の意識が傾く中、一花は三玖と風太郎の会話を黙って聞き続けていた。
(三玖、ごめんね…ずっと邪魔してごめん…
フータロー君、嘘ついてばかりでごめんなさい
だけど、あのことは…あのことだけは…)
「好き」
『わ、私たち…六年前にあってるんだよ』
三玖が本心を告げた瞬間、昨日、雨の中で自身が風太郎に告げた言葉が蘇った…それは、
(ほんの少しの…僅かな間だったけど…きっとあの時間があったから、君を好きになったんだ……フータロー君はもう信じてくれないんだろうけど、あれだけは…
…あの思い出だけは嘘じゃないんだよ…)
嘘の中の真実…一花が告げた事実は全てが嘘ではなかった。
彼女の思い出の中に…その記憶に、確かに風太郎と過ごした僅か時間だったが、事実としてはあったのだ。
なんとか堪えようとしていたが…もう限界だった。あの時のことを思い出したせいで…一花の目から涙が零れていた。三玖に…姉妹たちに酷いことをしてきた自分が泣いていいわけがないと分かっていても…もう堪えることはできなかった。
「…一花、これ使いなさい」
「…二乃?」
「私もゴメン…少し言い過ぎた。あんたが…あんな手を使ってまで本気だって分かっていた筈なのに…まぁ、やったことは最低だけど」
姉の…一花のそんな姿を見て、二乃が自身のハンカチを差し出す。二乃は二乃なりに、一花の気持ちが理解できていた。あの姉が、あそこまでやるほどに…それほどまでに本気であったことは分かっていたが…だが、やってはいけないことだと、怒りが勝ってしまったのだ。
一花の気持ちが分かる一方で、三玖の想いも分かるのだ…だからこそ、一花がやりすぎたことに二乃はキレたのだ。一花は一花のいいところがあるのに…卑怯な手を使ったことが、二乃は許せなかったのだ。
「三玖の邪魔をしておいて、自分の首を絞めてるんだもの…あんた、馬鹿よ。本当に……でも、あんたの気持ちも理解できるわ。私が同じ立場だったら…立場やタイミングが一緒だったら、同じことをしてたかもしれないから…だから、偉そうなことを言ってゴメン」
「…そんな、こと……そんなことない、よ…!」
「…ありがと。でも、同時に自分の情けないところにも気づいたわ。こういう感情的になるところが私の駄目なところね…あんたも気づいたんじゃないの、駄目なところ」
「…うん」
「…それとね、三玖は最後まで…一花は悪くない、って言ってたわよ。あの子の駄目なところね」
「…うん、そうだね…」
どこか怒ったように、同時に呆れたように、そして、困ったように笑ってそう告げる二乃に、一花も同じように涙を拭きながら応える。
「抜け駆け、足の引っ張り合い…この争いには何の意味もない。私たちは敵じゃないんだね」
「ようやく理解した?ったく、本当に世話が焼けるんだから…これが最後だなんて言わないで、ちゃんと三玖に謝りなさい。そうしたら、今度はきっと前より仲良くなれるわ。五つ子にしては珍しく、同じものを話せるだから」
次女が長女に姉らしい言葉を告げ、それを聞いていた四葉と五月も笑みを浮かべていた。この数日、色々とあったが…どうやら元の鞘に納まったようで、安心したところで、再び風太郎と三玖の会話へと視線を向けると、
「やっぱり、私は家族の皆が好き」
「えっ」「ええっ?!」
いつの間にか話が進んでいると思った矢先、風太郎に向けられていた筈の指先が、その後ろ…自分たちがいる小屋へと向けられていて、しかも三玖の視線までもがこっちに向いていて、思わず二乃が声を上げてしまった!
…どういうことか、ほんの少しだけは話は遡る。
「好き」
「ああ、知ってるぞ」
一花と二乃が和解している最中、自分の好きな物を告げていった後、最後に風太郎を指差し、三玖がそう告げた。風太郎も予想していたこともあり、そう返したところで…
「…だが「やっぱり私は家族の皆が好き」…えっ」
「ええっ?!」
予想していなかった言葉が三玖の口から紡がれ、風太郎から驚きの声が出た。と思っていたら、背後からも声が聞こえてきて…
「…えええ!?」「…あ」
誰だと思い振り返ると、やってしまったという表情を浮かべていた二乃と視線があった。二乃だけではない、一花、四葉、五月までいたことに、ようやく風太郎は気付いた。
「お、お前ら…なぜここに…?」
「三玖、気づいてたの?」
「一体いつから…?」
呆然としつつも風太郎が問い掛けるも、それをスルーしつつ四葉と五月も驚きながら、三玖へと問い掛けていた。
「やっぱり…一花と二乃の声が聞こえた時からおかしいと思ってた」
「「…あ」」
三玖から告げられた言葉に、姉二人が確かにという顔で硬直していた。どうやら序盤の段階からバレていたらしい。
「…待て待て、整理しよう。ということは、今の「好き」ってのは…」
「そこに隠れてた皆を指してだけど」
「…なぁ…!」
信じたくない、そんな馬鹿なと思いつつ、恐る恐ると三玖に確認する風太郎だが、返ってきたのは、予想しつつも一番返してほしくない言葉で…
「ん?もしかして……自意識過剰くん?」
「っ…(カァァァァァ…!)…ば、馬鹿にしやがって!」
まさしく、してやったりという顔と共に三玖に告げられた言葉で、風太郎の顔が一気に赤くなる。羞恥心9割怒り1割の感情で、その場に居続けることができなくなり、捨て台詞と共に、風太郎はその場を去ってしまった。
「三玖、いいの?せっかく伝えたのに、あんな感じに誤魔化して…」
「うん、大丈夫。私は誰かさんみたいに、負けることを恐れずに猪突猛進の如く特攻するほど、馬鹿じゃないから」
「悪かったわね、負けを恐れない性格で…それと馬鹿は余計よ」
本当にあんな形で終わらせてよかったのかと心配する四葉に、三玖は問題ないとしっかりと答えた。引き合いに出された二乃からツッコミが入ったが。
(……やっぱり…あれって、そういうことだよな…)
「それに…フータローも思ってるほど鈍くはないから」
あんなことを言いつつも、風太郎も実は理解していた。そして、それを三玖も察していた…今は、気持ちだけ伝わればいい…それもまた三玖の本心だった。
「だから、四葉…パンをありがとう」
「ししし、一時はどうなるかと思ったよ」
「五月…多分、下着を差し出してくれたの、五月だよね?ありがと…ちなみに、普段からあんなのを…?」
「すみません…あと、誤解です!偶然、旅行に持ってきていただけですから?!」
「二乃」
「…いいわよ、照れくさい。大したことはしてないわ」
「それでも、ありがとう。そして、一……っ!」
去っていく風太郎の背中を見送りながら、助力してくれた姉妹たちにお礼を告げていく三玖。そして、最後に一花にもお礼を言おうとした三玖だったが、その言葉は遮られた…一花が三玖に抱き着いたからだ。
「…一花?」
「ごめん…ごめんね、三玖っ…!」
「…!……いいよ」
一花にとってはようやく言えた言葉だった。言わないといけないと分かっていても…言えずにいた言葉は涙混じりのものだった。対する三玖も…一花の気持ちが痛い程に理解できていたからこそ…彼女の謝罪を受け入れていた。
一花を恨んだ覚えはない…と言えば、嘘になる。だけど、一花もまた同じように辛い気持ちを抱えていた筈だと…三玖は分かっていた。
「恋って、こんなに辛いんだね……ありがとう、一花」
その言葉と共に、三玖も限界がきてしまい、そのまま一花と一緒に泣き始めてしまった。そんな二人を前に、二乃はやれやれといった感じで笑い、四葉と五月が慌て始めるのを…風太郎は遠くから見守っていた。
(…ったく。世話に焼けるな、あいつら)
「おおー!上杉君、こんなところにいたのかい」
「やっと見つけたぞ、コラ…!…ん?あれって…中野の五つ子全員いるじゃねーか!これはチャン…ぐえぇ?!」
「今はいいだろう、ほら、残った時間は男三人で回ろうぜ」
その時、ようやく風太郎を見つけた武田と前田がこちらへとやってきていた。そして、前田が五つ子たちにも気づいたところで、水を差させまいと風太郎が前田の首へと腕をかけ、そのまま武田と一緒に反対方向へと連れていった。
「そうだ、お化け屋敷とかどうだ?つーか、連絡先交換しようぜ?」
「またかよ!」「色々急だなぁ」
そんな会話をしながら、風太郎たちはその場から去っていった。
それから集合時間までの間、五つ子たちが何をして、何を話したのか…それは五つ子たち以外は知る由がなかった。風太郎も…そして、
「…どうやら、雨降って地固まる、という結果になったみたいだね?」
「…なら、盗み見るのもこれで終わりだな」
『『『『(…ピコピコ!)』』』』
「みんなもありがとう。お疲れ」
風太郎たちとはまた別の…離れた場所からずっと全員の動きを見守っていた人物…普段の服装に戻っていたフィリップとそれに付き合い、一花を追ってEコースへと来ていた照井がそんな会話をしていた。
そんな彼らの下に、彼らの目となって五つ子たちを見守っていたメモリガジェット…スタッグフォン、バットショット、スパイダーショック、ビートルフォンが戻ってきていた。
最初は自身が介入しようと思っていたフィリップだったが…一花や二乃が動き出してから、その動きを見守ることにしたのだ。
自身が何かをするよりも、三玖のことを一番知っている彼女らに任せるほうがいいと思ったのだ。
(翔太が一番好きそうな解決方法かな…背中が少しむず痒いけど、よしとしようか)
そう思いながら、フィリップはスタッグフォンを手元にしまい、スパイダーショックを腕に装着し直したのだった。
「そういえば、照井竜。無断でこっちに来てるんだろうけど、大丈夫なのかい?」
「くだらん質問をするな、フィリップ」
そして、時間は過ぎていき…もう間もなく映画村の滞在時間も終わりとなる頃、
「フータロー君…!」
「…!一花?」
それぞれがお土産を吟味している中、一人となった風太郎に一花が声をかけていた。その内容は邪なものではなく、謝罪のためだった。
「フータロー君にも迷惑かけちゃったね…ごめんね」
「……この映画村…Eコースはお前たちがバラバラに選ぶ可能性も含めて選んだ」
「…えっ?」
謝った筈が、全く関係のない答えが風太郎から返ってきて、一花から変な声が出た。どういうことかと風太郎の次なる言葉を待っていると、
「一花、お前ならここに来ると思ってな。まぁ、お前が受有だからって安直な考えだが…」
「な…なんで、私なの…?」
「…それは……その、昨日は俺も言い過ぎた…お前の言い分も聞かずに一方的に…反省してる」
「……!」
風太郎のその言葉に…風太郎はまだ信じようとしてくれているのだと一花は…理解してしまった。何か裏があったのだと…まだ自分の言葉を、嘘だけじゃないと信じようとしてくれているのだと知り、
「全くその通りだよ」
「えっ…?」
「女子にあんな目を向けるなんて最低」
「ぐぅ…すまん」
「私、すっごく悲しかったんだよ。すっごい傷ついたし」
「…すまんって…」
誤魔化すために、容赦なく風太郎を罵倒し始めた。ためらいのない罵倒の嵐を、風太郎は謝罪しながら受け入れるしかなかったが…
「…なーんてね」
「えっ…?」
いきなりの切替しに、風太郎が呆然としている間に、急接近した一花が風太郎の頬へと…
「…全部って…お前…」
「…全部は全部、だよ…」
頬に触れたやわらかい感触に驚きつつも、一花の告げた言葉の真意を確かめようと問い掛けるも…一花はそれだけしか言わず、そのまま去っていってしまった。残された風太郎は、一花の告げた言葉の意味を考えるしかなく…
(全部とは…)
「そうだ、上杉君。聞いたかい?例の盗聴騒動」
帰りのバスの中まで考えていたが、その答えは出なかった。そんな中、武田から盗聴騒動の話が振られたのだが、
「悪りぃ、上杉…ミスった」
「……やっぱりお前か」
風太郎と武田の背後の席から、バツの悪そうな表情を浮かべた前田が声をかけてきていた。それに対して驚かず風太郎が応える。
「全く、空気を読みたまえ」
「いや、つい気合を入れすぎちまった。それと、照井にもバレた…理由もゲロちまった」
「…まぁ、あいつなら大丈夫だろう。悪かったな、俺が頼んだせいで」
前田の謝罪に対し、怒った様子はなく、風太郎はそのまま前だからカメラを受け取った。そう、実は盗撮班の一人は前田で、それを依頼したのは風太郎だったのだ。その理由は、
(土砂降りの雨は止んだ…きっと雨が上がった後の土はより固くなるはずだ)
「…ったく、油断だらけの寝顔だな。まぁ、こっちとしてはありがたいが…はい、チーズ」
…カシャ!
風太郎がシャッターを切ったその先には…最後尾で、疲れ果てたことで、仲良く五人で寝そべりあう五つ子たちの姿があった。
そして、もう一つの影もそれをまた撮っていて…
…カシャン!
『頼む、フィリップ!上杉からの依頼で、あいつの写真撮影を手伝ってやってくないか?』
(全く…君は本当にお節介だね、翔太)
バットショットがこっそりと五つ子たちを撮影している風太郎の写真を撮っている時に、別ルートで京都駅へと向かっているフィリップがタクシーの中でそんなことを思っていた。
実は…この旅行中、相棒の代理人として、フィリップがバットショットを使って、別アングルにて、五つ子たちの写真を撮影していたのだ。もっとも、それだけはもったいないということで、風太郎の写真もおまけで取っていたのだが。
(…まぁ、映画村で照井竜のビートルフォンに邪魔されたのは予想外だったけど)
さらに言うなら、風太郎と三玖の道中の写真も途中までは撮っていたのだが…最後の告白の場面にて、空気を察した照井がビートルフォンに指示して、バットショットを妨害したため、そのシーンに関しては撮影ができていなかったのだが…修学旅行中の大部分は撮れていたので、よしとしようと思っていた。
(これで、こっちの依頼も完了かな)
そう思い、フィリップはバットショットをそのまま潜伏させ、スタッグフォンで翔太へとメールを送るのだった。
『依頼達成』
ということで、色々とあった修学旅行は終わり、継風へと戻ってきた一同。その後日談として…
「これ、渡しておいてくれ」
例の公園にて、風太郎はその人物へと一冊のノートを渡していた。
「え、何これ…」
「誕生日のお返しだ」
いきなり渡されたノートが何かと尋ねると、風太郎が理由を告げたため、その人物はゆっくりとノートを開く。そこには、
「…!アルバム…」
「俺、金ねぇし、五人分もお返しを用意できないんだ。ってことで、それを作らせてもらった。武田と前田と…あと、超強力な助っ人にも頼んで完成した。お前たち五人の思い出の記録だ」
そこには、修学旅行での五つ子たちの様々な場面が映った写真が貼られていた。ある意味で、世界に一つの、オリジナルの思い出…風太郎なりに最大限できることとして頑張った一品だった。
「そういえば…色々なことがあって、五人で写真撮ってなかったかも…」
アルバムを見ていき、そういえばと思ったことを、少女は口にする。中には、どうやって撮ったんだという角度の写真もあるが…いわずもがな、探偵が保有する便利ガジェットによる写真である。
「ありがとう、風太郎君。皆に渡しておくね」
「てっきりお前も京都で何か仕掛けてくると思ったんだが…」
「わ、私なりに仕掛けてはいたんだけどな~…」
お礼を言われたところで、予想していたことが外れたという風太郎の指摘に、少女は自身の策が空回っていたことを遠回しに告げるも、風太郎には通じなかった。だが、
「…零奈。お前には感謝してる」
「…!」
風太郎が告げた言葉に、少女は……零奈と名乗っている少女は息を呑んだ。
「あの日、お前に会わなければ、俺はずっと一人だったかもしれない、お前のお陰で今の俺がある。六年ぶりの京都だったが…あっという間に終わっちまったが、将来的には良い思い出になると信じて、このアルバムを作ったんだ…だから、ありがとな」
「………」
その言葉を、少女は何も返すことができず、ただ聞き入れていた。風太郎も渡したいものは渡し、言いたいことは告げたため、その場を去っていた。そして、残された少女は…
「…五月」
「…!勝手な真似をして、ごめんなさい。ですが、上杉君は、おそらく気付いてます…私たちの中に、六年前に会った子が私たちの中にいることを。だから…彼に打ち明けるべきではありませんか…六年前のその子が…あなただってことを…
「…四葉」
「…ううん、これでいいんだよ」
少女に声をかけた人物…四葉に対し、零奈としての変装を解きながら、五月がそう告げた。だが、四葉は五月の問い掛けに、何もしないという意思を返していた。そして…
(四葉が……上杉と会った女の子、だって…!?)
五月に呼び出される形で、一部始終を見ていた翔太が衝撃を受ける中、新しい物語のページが開かれようとしていた。
次回の『仮面ライダーW/Kの花嫁』
『…その日、この街は眠った。吹いていた風すらも』
「これが…このドーパントの能力なのか」
「さて…この実験はどうなるか…楽しみですねぇ」
「いくよ、翔太!変身!!」
『Fang!』『 !』
「『さぁ、お前の罪を数えろ!!』」
「Rの間/そして、街は眠る」
これで決まりだ!
実は盗撮犯は二人いたわけです(笑)。
シャッター音が二種類あったので、気づいている人はいたかと思います。もう一人の犯人は探偵でした(笑)。バットショット便利…
というわけで、原作に沿っての展開でした。まぁ、二乃がフィリップとくっついてるので、思惑や一花・三玖への接し方がアレンジしてありましたが、二乃ならこうするだろうなと思って書くのは意外と楽しかったです。
実は、風太郎と三玖が池に落ちるシーン、ファングメモリに蹴っ飛ばさせるというのも考えていたのですが、流石に不自然かと思ってボツになりました(なので、フィリップと照井が見守る立ち場になったわけです。照井はちょっとストーカーになりかかってますが…)
ということで、次回は間章ということで、1話のオリジナルストーリーです。まぁ、次章に繋ぐためのバトル回でもあります。
お楽しみに!