真・恋姫†夢想~双魔の狩人~   作:D-ケンタ

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かなり間が空いてしまい、申し訳ございません!
それにめちゃくちゃあっさりした回で、本当にどれだけ待たせるのか、と。
文句や不満は受け付けますので、とりあえず読んでください!!


第二章 因縁、動き出す時代
黄巾党


曹操の元で世話になってから暫く経った。その間近くの沛国というところの相が謁見に来たり、賊の討伐に出陣したり、新しい仲間が増えたりしていたが、ザイユはいつも通り過ごしていた。曹洪や、新しく陣営に加わった荀彧からは厳しい目を向けられたが、モンスター以外は相手にできないので、仕方がない。

そんなある日の夜。曹操に呼び出されたザイユは、ある事について質問を受けていた。

 

「コウキントウ?最近よく聞くが、なんだそれは?」

「簡単に言えば、大規模な賊の集まりよ。黄色い布を身に付けていることから、黄巾党と呼ばれているわ」

「ほう」

 

なんでもこの度、朝廷から黄巾党討伐の命が下り、曹操達のところからも軍を出すことになったそうだ。

要するに自分達の手に負えないから丸投げする、という事だ。

そんなことはどうでもいい。ザイユの一番の疑問は別にある。

 

「話はなんとなく分かったが、それの会議に何故俺が呼ばれたんだ?」

「今回の件、あなたにも手伝ってもらおうと思ってね」

 

益々訳がわからなかった。確かにザイユは曹操のところに世話になっているが、配下になったわけではない。そもそも以前、モンスターしか相手にしないと言った筈だ。

 

「前にも言ったが、俺が狩るのはモンスターだけだ。人間相手にする仕事ならお断りだ」

「分かっているわ、ここからが本題よ。あなた、確かここに来る前に旅芸人と一緒だったって言ってたわよね」

「ああ。僅かな時間だったが、彼女たちには大変世話になった。元気にしてるだろうか気になるが、それと何が関係が?」

 

この地域に流れ着いて、右も左も分からない頃にザイユは彼女たちに助けてもらった。

ロクなお礼もできずに別れてしまったため、ある程度稼げている今、ちゃんとしたお礼をしたいと考えていた。

しかし、その彼女たちが今の話に関係あるのだろうか。ザイユは疑問に思った。

 

「彼女たちの名前は何といったかしら?」

「天……張角、張宝、張梁の三姉妹だが……」

 

うっかり真名の方を言いそうになったザイユだが、すぐに修正した為か、特に突っ込まれることはなかった。

だが、彼女達の名前を聞いた曹操はやっぱりといった様子で軽くため息を吐き、周囲の人達もざわめきだした。

 

「……?」

「実はなザイユ殿、その黄巾党の首魁の名前が……」

 

ついていけず頭に疑問符を浮かべるザイユに、曹操に代わって近くにいた夏侯淵が答える。

 

「張角というらしいのだ」

「……何だと」

 

これには流石のザイユも驚き、すぐには言葉が出なかった。

 

「何かの間違いではないのか?アイツらがそんな大それたことをすると思えないんだが」

「こちらとしても、そこはなんとも言えん。捕らえた賊を尋問しても、誰一人として口を割らなかったからな」

 

腕を組んで頭を捻るザイユだが、やはり彼女達が賊の首魁になるなどありえないと言う結論になった。

 

「なら、同一人物ではないという可能性もある、か」

「確かにそうね。でも最近の調査で、黄巾の蜂起があった村の大半で、三人組の旅芸人が目撃されていたという報告が上がっているわ」

 

嘘だろ、といった表情で曹操の話を聞く。といっても、ヘルムを被っているせいで表情はよく分からないのだが。

 

「だとしてもだ。彼女達がそんな事をしている目的は何だ?」

「それが分からないのよね。いっその事、大陸制覇の野望でも持っていてくれれば、遠慮なく叩き潰せるのだけれど……そうなれば、あなたが黙ってないでしょう?」

「当然だ。彼女達には恩があるからな」

 

それを聞き、ハァと溜め息を吐く曹操。現状を考えれば、曹操の言う事が正しいのだろうが、流石に恩がある彼女達がそうされるのを見過ごすほどザイユは冷血漢ではない。

 

「それに、下手な潰し方をすれば、余計に手が付けられない事態になりかねないわ。そこで貴方に手伝ってもらいたいのよ」

「やっと本題か。何だ?」

 

曹操は一度、フゥ、と息を吐いてから続けた。

 

「ザイユ、貴方には使者として張角のもとに出向き、投降するよう説得してもらいたいのよ」

「……構わんが、いいのか?」

 

何というトンデモな提案か!しかしザイユは顔色一つ、声色一つ変えずに答える。

 

「ええ。さっきも言ったとおり、下手なことをすれば後々面倒なことになるかもしれない。だったら面識のあるあなたに行ってもらえば、穏便に解決できると思ってね」

「……なる程な。分かった、できる限りはやってみよう」

 

そう簡単に行くとは思えないが、それで余計な血が流れないのであれば、とザイユはその提案を了承する。

 

「引き受けてくれて助かるわ。首魁さえ何とかすれば、あとの処理はだいぶ楽になるからね」

「そういうものか」

 

どう処理するのか少し気になったザイユだが、彼女達が助かるのなら、まあいいかと、これ以上は深く考えないことにした。

 

「それで、彼女達は今どこにいるんだ?」

「それが、未だ掴めていないんです。今まで現れた黄巾党は散発的でしたから」

「……成程。地道に探すしかない、か」

 

代わって説明した曹純の言葉に、ザイユは軽くため息を漏らした。これでは解決するのはいつになる事やら……。

 

「華琳姉ぇ、大変っすー!」

 

と、ザイユ達が頭を捻っているところに、曹仁が飛び込んできた。

 

「どうしたの、華侖」

「ええっと、陳留の隣の都で、また黄色い布の人が出てきたって報告が届いたっす!それも、たくさん!」

 

曹仁の話を聞いた、広間にいた面々は今までにない事態にざわめきだし、すぐさま軍議が始まった。

結論として、徐晃とこれまた最近仲間になった許緒の二人が、夏侯淵と曹純の隊を率いて先遣隊として向かうことになった。

 

「……」

 

話の流れから一人とり残されたザイユは、対人戦では俺の出る幕はないな、邪魔しては悪いと、広間の出入り口に向かい歩こうとした。

しかしその時、ある単語がザイユの耳に止まった。

 

「雷には気を付けるっすよ柳琳」

(……雷?)

 

普段であれば、特段気にならないのだが、この時だけは何故か耳に残った。

ザイユは足を止め、彼女達の話に耳を傾ける。

 

「あの噂の事ね。大丈夫よ姉さん、今は晴れてて、雲一つないもの」

「でもでも!噂では雲がなくても落ちてきたらしいっすよ!それも人めがけて」

「何かの見間違いだろう。それに雷なぞ、そう人に当たるものではない」

 

何やら興奮気味の曹仁を、曹純と夏侯淵の二人が宥めてるようだが、それよりもその話の内容がザイユは気になった。

 

(雷……まさか)

 

考え込むザイユをよそに、軍議は終わり、全員がその場から姿を消した。

残っているのはザイユと曹操のみ。

 

「どうしたの、ザイユ?」

「……なあ曹操」

 

何やら考え込んでいるザイユを不思議に思ったのか、曹操がザイユに声をかける。

丁度いい、とザイユは先程聞こえた話について、曹操に尋ねた。

 

「ああ。最近、民の間で雲もないのに雷が落ちてくる、なんて噂が立っていてね」

「もう少し詳しい内容は分からないか?」

「そうねえ、たしかそれの目撃者は、馬を見たって聞いたわね」

「ウマ?」

 

確か……と、少し思い出すような素振りを見せてから、曹操は更に続ける。

 

「普通の馬の倍近い白い巨躯に、白い鬣を靡かせていたらしいわ。民衆の間では、神の使い、だなんて呼ばれているとか」

 

話を聞いて、ザイユはあるモンスターを思い浮かべていた。しかし、これだけで断定するにはまだ早い。

しかし、続く曹操の言葉で、ザイユの疑問は確信へと変わった。

 

「ああそれと、額には一本の角が生えていたらしいわ」

「……何だと」

 

ザイユは確信した。曹操の話を聞いて、そのモンスターの存在を確信した。

 

「何人かが目撃したらしいけど、雷と共にその姿を消したのだとか」

「……曹操」

 

それまで聞きに徹していたザイユが、曹操に向けて口を開いた。

 

「今回の出撃、俺も行かせてもらおう」

 

その提案に、曹操は少し驚いたふうに、目を丸くした。

 

「どういう風の吹き回し?まさか、この噂を真に受けた訳じゃないわよね」

「そのまさかだ。曹操、もしその噂が本当であれば、彼女達が危ない」

「……どういう事」

 

空気が少し重くなった。

真剣な面持ちのザイユの発言に、曹操もまた、何かを感じ取ったようだ。

 

「その噂の正体、恐らく俺の知るモンスターだ」

「何ですって?」

「もしそのモンスターに遭遇したら、いくら夏侯淵達とはいえ、全滅する可能性がある」

 

その発言に曹操の視線が鋭くなるのを感じたが、ザイユは構わず続ける。

 

「ヤツの力は強力だ。それに非常に気性が荒い。遭遇したらまず戦闘は避けられない」

「……貴方がそこまで言うなんて、その化け物は一体」

 

ザイユは曹操に視線を合わせ、曹操の問いに答えた。

 

「幻獣キリン。雷を自在に操る、オオナズチと同じ古龍種のモンスターだ」

 

 


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