真・恋姫†夢想~双魔の狩人~   作:D-ケンタ

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闘気、一撃

「たああっ!」

 

楽進の飛び蹴りがキリンへと命中する。ズムッと皮膚にめり込む感触がするが、まるで効いていないのかキリンが身震いするように体を振ると簡単に弾き飛ばされてしまった。

 

「くっ!?」

 

飛ばされながらも空中で姿勢を整えて着地する。その隙を補うようにザイユが前に出てキリンへと大剣を振り下ろした。

 

「フンッ!」

 

首へと叩きつけられた大剣はキリンの皮膚によって阻まれるものの、その一撃の重さにキリンの体勢が揺らぐ。続けて大剣を真横に薙ぐが、キリンがバックステップで躱したことによって空を切る。

 

「ブルル……」

「っ!?避けろ!」

 

キリンの角が発光したのを見たザイユの警告を聞き、楽進がその場を飛び退いた瞬間、彼女が立っていた場所を落雷が穿った。その光景を見て、楽進は背中がひやりと冷たくなった様に感じた。

もし一瞬でも遅ければ消し炭になっていただろう。

しかし、頭を振って嫌な想像を振り払うと、再び鋭い視線をキリンへと向ける。

 

「すまないザイユ殿。助かりました」

「礼はいい。攻めるぞ」

「はい!」

 

短く言葉を交わした二人だが、その直後キリンが二人目掛けて突進してきた。

ザイユは楽進の前に出ると大剣の腹を盾にして構える。

 

「ぐぅぅっ!?」

 

突進を受け止めたものの、キリンの勢いに押されてしまう。比較的小型とはいえキリンの脚力は並大抵ではなく、大剣を構えるザイユの腕が嫌な音を立てる。

本来であれば態と弾かれるように受け身を取ることでダメージを逃すのだが、ザイユは敢えて真正面から受け止めた。

 

「今だっ!」

「ハァァアッ!」

 

ザイユが合図を送ると、楽進が横からキリンへと接近して顎を蹴り上げた。そのまま肘打ち、後ろ回し蹴りで更に追い打ちする。

胴体ではなく、比較的攻撃の通りやすい頭部に攻撃を食らったことでさしものキリンもたたらを踏む。

その好機を逃さず、ザイユも大剣を横薙ぎに振り回し、キリンへと叩きつける。

斬撃というよりも殴打といった方が正しいその攻撃によりキリンは弾き飛ばされ、大きく隙を晒してしまう。

 

「セイ、ヤァァアッ!!」

 

更に畳み掛けるように楽進が追撃の打撃を叩き込む。胴体では効果が薄いと察したのか、多少危険であっても頭部を的確に攻めており、その狙いは正しいのかキリンが苦悶の呻き声を上げている。

 

「ブルルッ!」

 

流石にうっとおしくなったのか、楽進めがけて突き上げるように角を振るうが、彼女は角を掴むとその勢いを利用し、軽い身のこなしでキリンの首へと飛び乗った。

 

「フンッ!」

 

そして角を掴んで首の上に跨り、しっかりと足で挟んで身体を固定すると角の根元へと肘を落とす。

ゴッとキリンの頭蓋骨を激しく叩く音が響く。当然キリンは嫌がり楽進を振り落とそうと暴れるが、彼女の身体はしっかりと固定されており中々振り落とせずにいる。

その隙にザイユはキリンから距離を取り、ポーチから砥石を取り出して大剣を研ぎ始めた。これまでの攻撃と防御でただでさえ悪い切れ味が更に落ちてしまっていたためだ。

 

「……よし」

 

磨いた刀身を確認してから納刀し、ザイユは再びキリンへと視線を戻す。丁度その瞬間、キリンに振り落とされた楽進が空中で体勢を整えながらザイユの傍へと着地してきた。

 

「大丈夫か?」

「はい!まだやれます!」

「ならいい。このまま攻めるぞ」

 

ザイユはそう言い放つと、返事を聞く前にキリンへと向かって駆け出した。

やや出遅れて楽進もキリンへと向かう。先に接近したザイユは迎撃するキリンの角を転がって回避すると、抜刀した勢いで大剣をキリンの胴体へと叩きつける。

しかし、研いで斬れ味が増したとはいえ元が低いクーネエムカム。当然キリンの皮膚を斬り裂くことはない。

だが、それを補って余りある威力によって負わされたダメージに、キリンは体勢を崩して低く呻き声を上げる。

 

「たあぁっ!!」

 

更に畳み掛けるように楽進が飛びかかり、連続した打撃を叩き込む。

キリンは角を振り回して振り払うが、その隙をついてザイユが横薙ぎに大剣を振り、キリンの足を斬りつける。

 

「ヒヒィィィンッ!!」

 

キリンがけたたましく嘶き前足を上げる。角が発光しているのを確認した二人は咄嗟にその場から飛び退く。直後に雷が落ちるが、既に二人はその範囲外へと退避していた。

 

「中々、しぶといな……」

「古龍だからな。だが、奴も消耗している。見ろ」

 

促されてキリンを注視すると、明らかに呼吸が荒くなっている様子が見える。ザイユの言う通り消耗しているのだろう。

 

「だが、それはこちらも同じ。一撃叩き込む隙が作れれば……」

「……一つだけ、策があります。通用するかはわかりませんが」

「分かった、頼む」

 

あまりにもあっさり了承したことに驚きながらザイユの方に振り向くが、彼は既に再びキリンへと向かっていった。

 

「ふんっ!」

 

抜刀と同時に振り抜くが、キリンはそれを軽く横に躱すとクルリと向きを変え、後ろ脚でザイユに蹴りを放つが、それは転がって避ける。

すかさず楽進が跳躍しつつ回転蹴りを放つが、キリンは身を屈めて躱すと自身の首を楽進へと叩きつけて反撃した。

楽進の身体が飛び、地面を跳ねるが受け身は取れたようですぐに立ち上がって構えを取る。

その様子に安堵する暇もなく、ザイユへ向かってキリンが突進してきた。

咄嗟に大剣の腹を盾にして受けるが、接触した瞬間にキリンが角を振り上げザイユを弾き飛ばす。

 

「くっ!?」

 

何とかバランスをとり大剣を構えなおす。幸いに楽進が気を引いてくれていたお陰でキリンの追撃はなかったが、一息ついている暇はない。

直ぐ様接近し大剣を下からキリンの腹部目掛け振り上げる。一度跳ね上げられたのを覚えていたのかキリンはその場を飛び退いてザイユの斬り上げを躱す。

ザイユも深追いはせず、大剣を抜いたまま後方へ転がりキリンから距離を取る。

 

「ブルルッ……」

 

低く唸り声を上げながらキリンが前足で地面を掻く。それに合わせてザイユも大剣を振りかぶって力を溜める。

一瞬、楽進へと視線を向けると彼女と目が合った。頷く彼女を見て、ザイユは視線をキリンへと戻し集中する。

直後キリンがザイユ目掛けて突進する。ザイユは大剣を振り上げたまま動かない。

一人と一頭の距離が近づいていく。キリンの驚異の脚力から繰り出される速度は生半可ではなく、このままではザイユはキリンに跳ね飛ばされてしまうだろう。

だが、構えていたのはザイユだけではない。

 

「はぁぁぁ……っ!」

 

いつの間にかザイユとキリンの間に位置取った楽進が構えを取りながらその両手に力を込める。

すると、彼女の両手の間に光球が生成された。

内心驚くザイユをよそに、楽進はカッと目を見開くと、接近するキリンにその光球を放った!

 

「闘氣弾っ!!」

 

掛け声とともに放たれた光球はキリンの頭部へと命中し爆発を起こす。

当然、その程度でキリンの突進は止まることはない。だが、僅かだが速度が緩み、ザイユにとって十分すぎる隙を彼女は作り出した。

 

「頼みます!」

「ああ」

 

後をザイユに託し、キリンの進路上から退避した楽進に短く答え

、大剣を握る手に更に力を込める。

大剣の刀身が開き、マグマの如き三本のラインが露わになる。

そして、キリンが射程に入った瞬間、弦を切ったように大剣をキリンめがけ振り下ろす。

刹那、二つの閃が交差した。走り抜けたキリンは体勢を崩しながらも静止し、振り抜いたザイユは地面にめり込んだ大剣に体を預け、何とか倒れず踏みとどまる。

その様子を少し離れたところで見ていた楽進の足元に何かが突き刺さった。

 

「これは……!?」

 

それは、折れたキリンの角であった。その事に気づいた彼女は反射的にキリンの方を見る。

角を折られた痛みによるものか、キリンは悶えるように頭を振っている。

視線をザイユに移せば、彼は既に得物の大剣を地面から引き抜き、その鋒をキリンへと向けていた。

 

「……」

 

やがて落ち着きを取り戻したキリンは、まるで睨むようにその眼をザイユへと向ける。

彼らの間に走る緊張感により空気が重くなる。

楽進はゴクリ、と自身が固唾を呑む音が酷く大きく聞こえるように感じた。

 

「ブルルッ」

「っ!?」

「……っ」

 

突然身震いするキリンに身構える二人。直後キリンの折られた角が青白く発光する。大きく嘶きながら頭を振ると雷がキリンの身体を覆い隠す様に降り注ぐ。

その光の強烈さに咄嗟に二人は目を覆う。

光が落ち着いた後、視界が開けた二人の目の前にキリンの姿は無かった。

 

「これは、一体……?」

「……」

 

困惑する楽進をよそに、ザイユは先程までキリンがいた場所を調べる。

 

「あの、ザイユ殿……?」

「……逃げたな」

 

ザイユが口にしたその結論を聞いた楽進はポカンとしていたが、やがて理解したのか力が抜けたようにその場へとへたり込んだ。

 

「す、すみません……急に力が……」

「無理もない。暫く休んでから戻るとしよう」

 

ザイユはそう言うと自身も楽進の近くへと座り、ポーチから回復薬を二本取り出すと一本を楽進へと渡す。

彼女が受け取るとザイユは回復薬を一気に飲み干し、続いて楽進も回復薬を飲む。

身体のダメージが抜けたことで更に気が抜けたのか、彼女は地面に横になる。

ザイユは一息つきつつも気は抜かずにいるが、彼女の様子にヘルムの奥で口元を緩めていた。

 

――――――幻獣キリン、撃退。クエスト成功。

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