真・恋姫†夢想~双魔の狩人~   作:D-ケンタ

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ザイユの弁明

激闘の疲れからか、暫し休息していたザイユと楽進。彼らが腰を上げ、街へと戻ったときには既に戦闘は終わっていた。

兵士達が事後処理のためか慌ただしくしているが、気にせず歩を進めるとこちらに気づいた兵士が駆け寄ってきた。

 

「ザイユ殿でしたか。今までどちらに?」

「野暮用でな。夏侯淵はどこだ?」

「少々お待ちください」

 

そう言って兵士は足早にこの場から離れていった。暫し待つと、報告を受けたのか夏侯淵がこちらの方に走ってくるのが見えた。

 

「ザイユ殿!無事でよかった…」

「ああ」

 

ほっとした様子の夏侯淵に、端的に返事を返すザイユ。

 

「楽進か……ザイユ殿と一緒ということは、そういう事なのだろう」

 

夏侯淵の刺すような視線に、バツが悪そうな表情を浮かべる楽進。その様子に夏侯淵は一つ溜息を吐くと、やれやれといった感じの笑みを浮かべた。

 

「……まず二人に謝ってこい、話はそれからだ。……心配していたぞ」

「っはい!」

 

そう勢いよく返答し、楽進は人混みの中へと飛び込んでいった。その背中を見送った夏侯淵は、続いてザイユへと横目で視線を向ける。

 

「……それで、どうだった?」

 

短いその問い掛けに、ザイユは若干視線を伏せながら答えた。

 

「逃げられた。だが深傷を負った筈だ」

「……それを聞いて流石というべきか、それとも無茶が過ぎるというべきか」

 

逃げられた、ということは言い換えれば撃退したという事だ。直接目にはしていないものの、雷を操るというだけでキリンがどれほど危険かは夏侯淵にも想像がつく。

だというのにザイユはそれを申し訳無さそうに言ったのだ。これにはザイユのことを多少なりとも知っている夏侯淵もこめかみに手を当てて顔を顰めた。

 

「……はぁ、まあいい。華琳様へと報告をするのなら、もう少し後の方が良い」

「分かった」

 

事後処理で忙しいのだろう。それを理解しているからか、ザイユは一言だけ返し、夏侯淵の指示を受けた兵士の案内で街の中へと向かった。

道中、夏侯惇や曹仁達からも心配していたと声をかけられたが、それはまた別の話。

 

 

キリン狩猟の疲れを癒すため、とある空き小屋で休んでいたザイユは、暫くして夏侯淵に呼ばれ曹操の前へと連れてこられた。周囲には夏侯淵をはじめとした臣下らの他に、楽進に李典、于禁ら三人の姿もある。こころなしか、その表情は強張っているように見える。

曹操は真剣な表情のまま、ザイユへと声を掛ける。

 

「ザイユ、一先ずご苦労だったわ」

「依頼だからな」

 

不遜な言い方に楽進達の顔色が青くなるが、それ以外の面々はいつものことかといった様子で苦笑いを浮かべたりため息を吐いていた。

 

「相変わらずね……まぁいいわ。すぐにでも報告を聞きたいところだけど、その前に」

 

そう言って曹操は視線をザイユから楽進達の方へと移した。ザイユが彼女達の方を見ると、三人共顔に脂汗を流しながら全身を強張らせていた。

何故そうなっているのかザイユが疑問に思っていると、視線で曹操から指示を受けた夏侯淵が話し始めた。

 

「先の戦いにおいて、彼女ら義勇軍の活躍のおかげもあり襲撃してきた黄巾党の軍勢はほぼ壊滅させられ、被害も最小限に抑えられた。まさに文句無しの戦果だ……だが」

「だが?」

 

言葉を詰まらせた夏侯淵に代わり、曹純が続きを話し始める。

 

「戦の最中、そこの楽進さんが戦場を離れたとの報告が上げられ、そのまま戦が終わるまで姿が見えなかったのですが……ザイユさん、あなたと一緒にいたとの目撃証言がありまして」

「成る程……」

 

彼女の説明に得心がいったザイユはチラリと楽進の方を見る。

 

「本来なら、戦場を離れるなんて許されないことなのだけど、一応あなたからも話を聞いておきたくてね」

「そうか。はじめに謝っておく、すまなかった」

 

謝罪とともに頭を下げるザイユ。驚く周囲を気にせずさらに話を続けた。

 

「キリンが相手とはいえ、無断で彼女の手を借りたのは俺の落ち度だ。契約違反と言うなら、甘んじて受けよう」

 

楽進を擁護するような内容の台詞に、当の楽進が面食らったような表情を浮かべていた。

 

「要するに、彼女の行動の責任は全てあなたにある。そう言いたいのね?」

「ああ」

 

即答したザイユに、曹操は息を少し吐いてから続けて問い掛ける。

 

「あなたの言い分は分かったわ。報告がてら詳しく聞かせてもらえないかしら?」

「分かった。キリンと遭遇したのは、ここから離れた位置にある森の中だ……」

 

それからザイユは今回のキリンの狩猟について細かいところは省きつつ彼女達に説明した。

その内容に彼女達は様々な反応を示しており、単純に驚く者、感嘆する者、はたまた疑念の視線を送る者。

 

「……話は以上だ。彼女のおかげで、無事キリンを撃退できた」

 

ザイユの話を聞いていた曹操は、目を閉じたまま口を閉ざしている。おそらく話の内容から色々吟味しているのだろう。

 

「……なるほどね。ザイユ、一応聞くけど今の話に、彼女を庇うために嘘偽りを混ぜてはないわよね?」

「当然だ。そんな事する意味もない」

 

それを聞くと曹操はフゥと息を吐き、ザイユと楽進に視線を巡らせてから再び口を開いた。

 

「なら、私からはこれ以上何も言うことはないわ。楽進とやら、ザイユの手伝いご苦労だったわね」

「……はっ!?い、いえ、とんでもございません!」

 

曹操からのまさかの労いの言葉に楽進は一瞬呆けたものの、我に返るとすぐに頭を下げる。

そして曹操はその様子に軽く微笑を浮かべると、今度はザイユの方に視線を向ける。その目はどことなく鋭く見える。

 

「そしてザイユ。次からはちゃんと一言報告なさい」

「分かった」

 

端的に答えたザイユに曹操はため息を吐く。反省してるのかどうか、ヘルム越しでは表情も読めない。しかし普段の行いから反省していると判断した曹操はそれ以上詰めはしなかった。

 

「ならいいわ。もう行っていいわよ」

「そうか。なら失礼する」

 

そう言ってザイユは踵を返しこの場を去ろうとしたが、ふと立ち止まると楽進の方へと近寄った。

 

「そうだ。忘れるところだった」

「?」

 

困惑している楽進をよそにザイユはポーチを漁ると何かを取り出し楽進へと渡した。

 

「これは……!?」

「な、何やそれ?」

「何かの角?それに何か、光っているみたいなの」

 

李典と于禁が何かと覗き込んでくる。楽進は覚えがあるのか目を見開いて驚いており、その様子に曹操達も興味の視線を向けている。

 

「キリンの角だ。これを折れたのはお前のおかげだ。お礼としては安いだろうが、報酬代わりとして受け取ってくれ」

「はっ、えっ?わ、私にですか?!」

 

ザイユの発言に周囲がざわつく。だが当の本人はそれを全く気にせず用は済んだとばかりに再び踵を返し、この場を去るため歩を進める。

彼が去った後、何か一悶着あったような声が聞こえたが、我関せずとザイユは先ほどまで休んでいた小屋へと向かった。

先ほどの行為がどう影響するのか、彼はそう遠くないうちに知ることになる。

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