真・恋姫†夢想~双魔の狩人~   作:D-ケンタ

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宣言した三が日からギリギリアウトですが、許してください!


曹操

「ザイユ。この曹孟徳に仕えなさい」

「……」

 

何故だ。ザイユの心境はこの状況に陥った疑問で一杯であった。

本当に、何故このような展開になったのか。時は暫く前に遡る。

 

 

夏侯惇との手合わせを止めた少女に夏侯淵が説明を終えると、少女は何故かザイユの近くに来て、観察するようにザイユを見た。

 

「成程、確かに中々の強者のようね」

 

触れもせず、動きを全部見た訳ではないのに少女はザイユにそう言い放った。その際、何故か夏侯惇に睨まれたが、ザイユは気付かず、ただ眼前の少女に視線を向けていた。

髪の毛は金色で、両サイドをロールで纏めている。背丈は小さいものの、そのオーラはまさしく上に立つものの風格を現し、対格差のあるザイユに対しても物怖じしていない。

 

「あなた、狩猟の許可が欲しいんですってね」

「ああ」

「いいわ。許可してあげる」

 

あっさり。目の前の少女はそうあっさりと言い放つ。その言葉にザイユだけでなく、夏侯淵、夏侯惇の二人も驚いている。

 

「ただし条件があるわ」

 

そううまい話など転がってはいない。しかし、これをこなせばハンターとして活動できるのだ。G級まで進んだザイユにとって、こう言った条件の有無など関係ない。

 

「……分かった。で、条件とは?」

「そうね……ここじゃなんだし、場所を移しましょう。二人も付いてきなさい」

「「はっ!」」

 

そう言って歩き出した少女に続き、ザイユもその場を離れる。

暫くすると、ドンドルマの大老殿のようなところに到着した。奥には流石に人間サイズなものの、玉座があり、先程の少女が座しており、傍らには夏侯淵、夏侯惇の二人が立っている。

 

(結構偉い人物だったのか……)

 

人は見かけによらないというが、これはよらなすぎだろう。ザイユは心の中でツッコんだ。

 

「さてザイユとやら、狩猟の許可を得たいということは、それなりに腕に自信があるのかしら?」

「まあな」

 

先も言ったが、ザイユはG級ハンターと呼ばれる、ハンターズギルドが定める最高ランクのハンターであり、その実力は確かなもので疑う余地はない。

 

「なら、まずはその腕を見せてもらおうかしら」

 

そう言って、彼女は夏侯淵へと目配せすると、代わって夏侯淵が語りだした。

 

「近頃当家の領内で、旅の商人が襲われ、積荷を奪われるという事件が多発している。被害に遭った者の話では、いつの間にか濃い霧に包まれ、霧が晴れると積み荷がなくなり、辺りを探してみると、まるで化け物が通ったような痕跡が見つかったらしい」

(……霧?それに化け物だと?)

 

その言葉に、ザイユは何か引っ掛かりを感じた。ザイユ自身、この街に来る途中の森で霧に包まれ、食糧などを盗まれている。

その際辺りを散策したところ、同じように巨大なモンスターの痕跡を発見したのだ。

 

「真偽はともかく、我々も部隊を派遣したのだが、成果はあげられず、逆に荷物を盗まれる始末……その際、隊員たちが化け物の姿を見たというが、霧の中であったため、どこまで本当か」

「いや、あれは紛れもなく化け物だ!」

 

突如夏侯惇が声をあげた。夏侯淵が制止しようとするも、構わず続ける。

 

「あの時、私は確かに見た……霧の中で蠢く、巨大な化け物の姿を。頭に生えた一本の角、ギョロリと突き出た目玉、背中には大きな翼が生え、その体表は毒々しい紫色をしていた。霧の中に浮き出た奴の眼に睨まれた時、情けない話だが私は体が竦み、斬り付けることはおろか、逃げることもできなかった。しかし、奴は私を一瞥しただけで、再びその姿を霧の中へと溶け込ませて消えていった……」

 

夏侯惇が語ったその化け物の特徴に、ザイユは憶えがあった。かつて、自身も何度も煮え湯を飲まされた、古の龍に属するモンスター……確実とは言えないが、ほぼ間違いないと確信していた。

 

「しかし、次に相まみえた時は、必ずやこの夏侯惇元譲が討ち取ってみせ―――」

「やめておけ」

 

夏侯惇の口上を遮ったザイユの一言に場は騒然となり、みるみると夏侯惇の顔が怒気を帯びていく。

 

「貴様、どういう意味だ」

「そのままの意味だ。お前の装備では、死にに行くようなものだ。ましてや相手がアレならな」

「何だと―――っ!」

 

ザイユの物言いは夏侯惇の逆鱗に触れたようで、彼女の怒りは沸点に達したが、玉座に座っている少女がそれを止めた。

 

「待ちなさい春蘭。ザイユ、その言い方から察するに、もしかして化け物の正体を知っているのかしら?」

「ああ。推測だが、話を聞くにその化け物とやらは、俺がいた地方で古龍と呼ばれている種のモンスターだ」

「古龍……?」

 

聞きなれない単語に彼女たちは全員首をかしげるが、ザイユは更に続ける。

 

「古き龍と書いて古龍。生態系の頂点に君臨し、その力は自然災害そのもの。ある学者は、古龍とは自然の脅威であり、自然の一部であり、自然そのものだと言っている」

「そんな存在が……まるで神ね……」

 

自分たちの想像を越えた存在がいたことに言葉を失う少女たち。

 

「今回出たのは、その中でも面倒な能力をもつ古龍だ」

 

一呼吸を置いて、ザイユはその古龍の名を、彼女たちに告げる。

 

「霞龍オオナズチ。擬態能力を持ち、その姿を自由自在に消せる、厄介な古龍だ」

 

霞龍。ザイユのいた地方でも、目撃例が少なく、古龍の中でも研究が進んでない個体である。一説では霧を自在に操るとも、擬態ではなく透明化しているとも言われている。

 

「だが、オオナズチは古龍種の中でも温厚な性格でな、此方から手を出さない限り襲われることはない」

「だからといって、このまま放置しておくわけにもいかないわ」

 

少女の言うとおりである。確かに今は旅の商人の積み荷が盗られているだけだが、いつオオナズチが気紛れを起こし、街へと襲撃してくるか分からない。そうなれば、碌な防衛設備のないこの街では一堪りもない。

 

「しかしお主、その古龍について随分詳しいが、もしや戦ったことがあるのか?」

 

不意に夏侯淵が、ザイユに向かってそう尋ねた。夏侯淵自身、訊いててありないと内心では思っている。ザイユの話が本当であれば、それほどの化け物に立ち向かうことなど考えられることではない。

 

「ああ。撃退しただけだがな」

 

しかしザイユは何の気なしにそう言い放った。

 

「き、貴様!デタラメを言うな!」

「待ちなさい春蘭。ザイユ、今言ったことは本当かしら?」

「ああ」

 

ザイユの言葉に信じられないといった表情の夏侯惇。それもその筈、自惚れでなく、自分の武勇に自信がある自分でさえあの化け物―――霞龍を前にしたとき、本能が恐れを抱き、まるで蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなかったのだ。それなのにこの男、ザイユは過去に霞龍と戦い、あまつさえ撃退したというのだ。彼女からしてみてみれば、到底信じられることではないのだろう。

 

「その時はどうやって撃退したか、詳しく教えてもらえる?」

「そう難しい話ではない。動きをよく観察し、道具を使い、コイツを叩き込む。何度もな」

 

そう言ってザイユは背中の大剣を指す。確かにそれほどの大剣であれば、叩き込めばダメージを与えることはできるだろう。しかし、それには相応の危険が付きまとう。そのうえ高重量の装備をしていては動きも制限されてしまう。ザイユは簡単に言ったが、それがいかに大変なことか。

 

「それだけ?他に策はないの?罠を使うとか」

「古龍種に罠は効かない。奴らの知能はモンスターとは思えないほど高いからな、罠を張ればすぐに感づかれる」

 

バッサリと言う。閃光玉であれば効果はあるのだが、シビレ罠は体質なのか効果がなく、落とし穴は見破られて回避される。故にハンターはその動きを観察し、隙を見つけて少しずつダメージを与えていくしか方法が無いのである。

その情報に少女がさらに考え込んでいると、ザイユが不意に少女に尋ねた。

 

「そういえば、条件というのは何だったんだ?……まあ、想像はつくが」

「……ええ。あなたが考えてる通りよ。その古龍とやらを討伐させようと思っていたのだけれど、まさかそれほどの化け物だったなんてね……」

「……そうか」

 

そう言うとザイユは踵を返し、部屋の出入り口へと向かう。少女はどこへ行くのかを問うが、ザイユは何気なく、当然であるかのように言い放つ。

 

「オオナズチを撃退すればいいんだろう」

「まさか、一人で行くつもりか!?」

「安心しろ、こういうのは慣れている」

 

夏侯淵が驚愕しながら訊くものの、ザイユはまたも何の気なしにそう答えた。あの化け物、古龍相手に一人で挑むという自殺行為としか思えない行動に、全員が信じられないと言った表情をする。

 

「ま、待て!」

「何だ?」

「私も同行する。貴様一人に行かせては、この夏侯惇元譲の名折れ……華琳様、是非とも私に行かせてください!」

 

少女に向かい頭を下げ懇願する夏侯惇だが、正直に言って少女は迷っていた。先程のザイユの話が本当なら、ここで夏侯惇に許可を出すということは、彼女を死地へと向かわせることとなる。チラっとザイユに視線を向けるが、彼も首を横に振っている。

 

「さっきも言ったが、止めておけ。古龍が相手では、俺も守りながら戦う様な余裕はない」

「貴様に守ってもらうつもりはない!それに、これは私の誇りの問題だ!」

 

誇り。そう言われては、ザイユも強くは言えない。本来なら、誇りよりも命を大事にしろと言いたいが、ハンターの中にも誇りを大事にする者もいる為、その気持ちは十分に理解していた。

これ以上は言っても無駄と思い、ザイユは少女の方を向き、今度は縦に首を振る。

 

「……分かったわ。春蘭、ザイユとともに、その古龍とやらを撃退しなさい」

「華琳様……!」

「ただし……どんなに無様でも、必ず生きて帰ってきなさい……いいわね」

「はいっ!この夏侯惇元譲、必ずやご期待に添えてみせます!!」

 

少女の言葉に、夏侯惇は跪いて応える。少女はザイユに向け、申し訳なさそうな視線を向けるが、ザイユは気にするなと片手をあげて返す。

 

「華琳様、私にも同行の許可を。いざという時、姉者を止める者がいなくてはなりませんから」

「秋蘭、流石の私も引き際くらいは弁えて―――」

「そうね。お願いできるかしら」

「華琳様っ!?」

 

夏侯淵も参加することになったが、夏侯惇の時と比べ、ザイユは逆に安心していた。というのも、夏侯惇は熱くなりやすい性格らしく、狩りで大事な引き際を見誤いかねん。しかし、冷静な夏侯淵ならその辺を見誤うことはないだろうと考えた。それに、どうやら夏侯淵の得物は弓矢らしく、その辺もザイユにとっては後方からの援護があるという点で安心できる要因となった。

 

「ではザイユ、改めて曹操孟徳が命じるわ。我が領内を荒らす、古龍とやらを撃退しなさい。見事成し遂げた暁には、領内での狩猟を許可するわ」

「……了解した。安心しろ、依頼はこなす」

「……頼むわね」

 

その言葉には、ただ古龍の撃退ではなく、同行する二人を無事に返して欲しいという願いも込められていることを、ザイユは感じていた。

G級へと上り詰めたハンターが、流れ着いた土地で最初に挑むは霧の如く姿を消す古龍、霞龍オオナズチ。決してたやすい相手ではなく、油断は即時に死を招く。

同行するは魏の"猛将"夏侯惇と"知将"夏侯淵。優れた武を誇る二人だが、果たして古の龍に通じるのか。

これは、外史と呼ばれる世界に迷い込んだ一人の狩人と、乱世を生きる少女たちとの出会い、そして……因縁の物語である。




うーん。古龍の脅威の理解度とか、やっぱりご都合主義な感じがするけど、現在ならいざ知らず、三国志の時代だったら意外にすぐ受け入れらそうだし、大丈夫ですよね!?

次回はとりあえず狩りの準備とか、かな?素材があるか分かりませんけど。

ともかく、次回もよろしくお願いします!
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