恐らく不自然、不十分なところがあるかと思いますが、そこはスルーしてください(-_-;)
ちなみに、今回の構想を考えようとして、PSPを引っ張り出してオオナズチ戦をやった結果、久しぶりすぎて毒食らいまくりました(笑)
突如出現したオオナズチにより、態勢を崩した夏侯惇に肩を借しながら、夏侯淵はオオナズチから距離を離すため森の中を進んでいた。
「ここまで来れば、一先ず安心だろう」
「―――秋蘭、離してくれ……一人で歩ける」
それは、普段の彼女の性格からは想像もつかないほど弱々しい声であった。
「そ、そうか。私は先にザイユ殿の支援に戻るが、姉者は無理せず、暫し休んでいてくれ」
そう言って夏侯淵は来た道を戻っていった。こうしている間にも、ザイユは一人オオナズチと対峙しているのだ。戦力になるかどうか分からないが、一人より二人の方が幾分戦いやすい筈である。
「……秋蘭、私は……」
夏侯惇は近くの木に寄り掛かると力無げに座り込み、夏侯淵が戦いに戻って行くのを、虚ろな眼で見つめていた。
◇
「フンッ!!」
渾身の力を込めて、大剣を振るう。後肢に命中したそれは、ガインッと音をたて、その表皮にめり込みはしたものの、切り裂くまでとはいかない。
「ギャァオッ!」
「くっ!?」
煩わしそうにオオナズチが前肢を振るうが、ザイユは転がるようにして避け、続けて横殴り気味に大剣を叩き込む。が、やはり致命的なダメージにはならず、オオナズチはその幅広の尾をザイユ目掛け叩き付ける。飛び込むようにして回避するも、その隙にオオナズチにバックジャンプをされ距離をとられてしまう。
「シュァッ!」
倒れたザイユ目掛け、オオナズチはその舌をムチのようにしならせて叩き付ける。
「うおっ!?」
地面を転がって躱しながら立ち上がるも、続いて横凪ぎに振るわれた舌は回避が間に合わず、大剣の腹を盾にして防ぐが、見た目以上にその威力は強く、大きく後退させられてしまう。
しかし、大きく距離が空いたことで、今度は逆にザイユの方に余裕ができ、その隙にザイユはポーチの中身を確認すると、ホッと溜め息をつく。
(危なかった……余分に焼いていてよかった)
戻ったオオナズチの舌先を見ると、こんがり肉がくっついており、オオナズチはそれを容易く飲み込む。
オオナズチは舌攻撃の際、アイテムを盗む習性がある。特に食料を盗む傾向があるため、ザイユは対策として昨晩肉を焼いた際に、多めに焼いておいたのだ。
ザイユは納刀し、オオナズチの側面に回り込むように駆け出す。しかしオオナズチは、その鎌首をもたげるとザイユ目掛けガス状のブレスを吐き出す。
「チイッ!?」
地面を転がって躱すが、起き上がった瞬間オオナズチが地面を這うようにして、その巨体に似合わぬスピードで突進してきた。
「ぬおっ!?」
咄嗟に大剣の腹で受けるものの、またも大きく撥ね飛ばされてしまう。
ザイユは素早く大剣を再び納刀して接近するが、次の瞬間オオナズチはその姿を消してしまった。
すぐさま抜刀して切りかかるが、手応えはなく、既にそこにオオナズチはいない。
「厄介な……」
周囲の気配を探るが、元々オオナズチの気配は察知しづらい上、森のざわめきや風の音に邪魔をされ、詳しい位置が分からない。足跡を辿ろうにも、この場所の土は踏み固められており、それも難しい。
「何処だ……?」
大剣を構えたまま周囲を警戒するザイユ。その背後の空間が揺らめき、オオナズチが姿を現した。しかし、ザイユはいまだそのことに気づいていない。悠々とオオナズチはザイユへと狙いを定め、その舌を伸ばした。
しかしその瞬間!オオナズチの眼前を一本の矢が通過し、それに驚いたオオナズチは舌を引っ込め、呻き声をあげながら僅かに後退した。
「ザイユ殿っ!無事かっ!?」
「夏侯淵か、助かった」
ザイユは夏侯淵の方を振り向かずに礼を言い、すぐさまオオナズチに向き直る。だがオオナズチは、視線を体ごと矢が来た方向―――夏侯淵に向けるとまたも姿を消す。
「フンッ!!」
しかし姿を消した瞬間、接近したザイユが振るった大剣が、オオナズチの体を打つ。だがやはり固い皮に阻まれ弾かれる。
それを意に介さず、オオナズチは、一瞬だけ姿を現すと夏侯淵に向けて口から、緑色の液体を吐き出した。
「くっ!?」
距離が開いていたため難なく回避するも、着弾した液体は周囲へと跳ね、その僅かな飛沫まではさしもの夏侯淵も避けきれずに当たってしまう。
「な、何―――?!」
「気を付けろ!喰らうと防具を溶かされる、その軽装では一溜まりもないぞ!」
事実、飛沫が当たった装束や胸当てなどの防具は若干であるが溶けており、その下の地肌があらわになる。幸いにも肌までは達していないようではあるが、これでは只でさえ低い防御力がさらに下がってしまい、下手したら掠っただけでも命取りになりかねない。
「くっ……厄介なっ!」
次にオオナズチは夏侯淵へ向かい、その巨体を突進させ、迎撃のため夏侯淵は矢を放つが、その硬い表皮に弾かれてしまう。更に意外にも俊敏なオオナズチの動きに危うく轢かれそうになり、飛び込むようにしてギリギリで回避する。
「どぉらあっ!」
追走したザイユが後肢に向かって大剣を振り下ろす。比較的皮の薄いところに当たり、食い込んだ刃は後肢の皮を破り、肉を裂いて鮮血が吹き出す。
が、しかしそれだけでは怯みもせず、オオナズチは前足ごと上体を起き上がらせる。その動作を見たザイユは夏侯淵へ向かって叫んだ。
「下がれっ!」
「っ!?」
直後オオナズチはその翼をはばたかせ、空中へと飛び上がると同時に周囲へと紫の色味がかった煙を噴射した。
「吸うなっ、毒ガスだ!」
オオナズチが出す毒は特殊な神経毒であり、吸い込んだ相手の五感を鈍らせる作用がある。寸前に夏侯淵は飛び退いて回避し、ザイユは大剣を盾にして防いだため無事であるが、もし吸い込めばその毒が二人の身体を蝕み、さらに厳しい戦いとなっただろう。
オオナズチは着地すると同時に姿を消し、夏侯淵が矢を放ち、ザイユが斬りかかるもすでにそこから動いており、見失ってしまう。
「くっ!?いったい何処に……」
そう呟いた夏侯淵の後ろ、一瞬空間が歪み前足を振り上げたオオナズチが出現、夏侯淵へと振り下ろすが間一髪割り込んだザイユが大剣で受け止める。
その後ろから夏侯淵がオオナズチの眼球目掛け矢を放つ。見上げるほどの巨体とはいえ、小さく、自在に動く眼球にあてるのは至難の技だが、そこは流石の腕前、放たれた矢は吸い込まれるようにオオナズチの右眼球に飛んでいく。
その矢はオオナズチが身を捩ったことで簡単に外てしまうが、夏侯淵は二射、三射と続けて矢を放つ。
流石に堪らないと感じたのか、オオナズチは後ろに大きく跳躍し、二人から距離をとる。
「すまない、当てられなかった」
「いや、いい腕だ。引き続き援護を頼む」
「ああ、任せろ!」
そのやり取りの後、再びザイユが駆け出した瞬間、オオナズチがまたもやブレスを放出した。
「また毒か?!」
「いや、これは……」
オオナズチが出したのは毒ではない。自身の擬態能力を向上させるため、体内の水分で作り出した、霧のブレスである。放出された霧はあっという間に広がり、ここら一帯を完全に覆ってしまった。
「しまった―――!?」
「これでは、オオナズチの位置が分からん……」
完全に消えてしまったオオナズチ。オオナズチが自ら霧を放出するのは、食事のため労せず獲物を取る時。そして、効率的に敵を排除するため。それは、まるで人間が虫を払うのと同じように、ザイユと夏侯淵の二人に対して敵意を見せなかったのが、ここからは"敵"として認識し、本気で排除しに来るということを意味していた。
二人は背中合わせの体勢になり、いつ襲ってくるとも知らないオオナズチを警戒する。
「集中しろ……起こりを見逃すな」
「分かっているさ……ザイユ殿、いざという時は、私が囮に」
「夏侯淵」
夏侯淵の提案を遮って、ザイユはさらに続ける。
「背中は任せた。無事に、街へ帰るぞ」
「……ああ、そうだな。ザイユ殿も、しっかりと私の背中を護ってくれよ?」
「当然だ」
顔を合わせぬまま、お互いを信頼する言葉を言いあう二人。しかし危機はすぐ側まで接近していた。
「カロロロ……」
怒りにより、口からガスを漏れ出させたオオナズチのギョロリと動く眼が狙いを定めたのは、果たしてどちらか。
まだ戦いは始まったばかり……。
はい、とりあえず戦いはまだまだ続きます。全部一気に書くと下手をすれば長く、グダりそうだったので。
あと一回か二回に分けますので、どうかお付き合いくださいm(__)m
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