Toloveる 発明大好きなお姫様には弟がいました。 作:きょうこつ
それからというもの、レンはリトに自身の方が上であると証明するばかりに次々と突っかかっていた。
たとえば授業では…、
先生「では、この問題分かる人」
教師が黒板に記載した問題の答えについて尋ねると即座にレンは立ち上がり回答した。
「はい!結城くんより早く答えます!答えはX=√2+3です!!」
「違ぇよ。範囲も書けや。答えはX≦√2+3だ」
先生「せ…正解です…」
まぁ間違っていた為にギルに訂正されていたが。
体育の時間では…
「やったぁぁ!!!結城くんよりも100メートルを早く完走したぞ!!」
昼休みでは…
「ぐもも!!(どうだ!?君よりも食べるのも早いぞ!)」
マジでもう『ウザったい』と言われるくらいまで絡んでいた。
その様子を遠目から見ていたギルはそのレンに付き纏われるリトに同情してしまい、憐れみの視線を送った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふわぁ…リトの奴 今頃 ウンザリしてるだろうな〜…」
公衆便所へと向かうべく廊下に出たギルは屈伸しながら欠伸をする。レンの鬱陶しさなら一番よく知っているので、どうしても同情してしまうのだ。
その時だ。目の前の廊下をやや大柄な男子生徒数人が塞ぐ様にして座っていた。その気迫に辺りの生徒達はその通路を通らず、避ける様にして別の通路を通っていた。
見れば男子生徒は髪を金髪や茶髪に染め上げ、本来ならば学生ズボンに入れるはずのワイシャツを外に出している上に胸元を見せる様に曝け出していた。更に耳にはピアスを装着していた。
ギルが歩いているのは2年生の教室のある階だ。だが、同年代の者がタムロしているというのに、辺りの生徒達が注意をしないとならば、彼らは3年である可能性が高い。
だが、ギルにとってはそんなものはどうでも良い事だ。
「おい。通行人の邪魔だろ。どけ」
「あぁ?」
ギルがそう言うとその中の一人の大柄な男子生徒が首をこちらに向けてきた。その顔は正に悪人ヅラであり、髪もリーゼントに固めていた。
その男はギルを見ると眉間に皺を寄せる。
「何だよお前。何か文句でもあんのかぁ?」
「大有りだよデカブツ。サッサと退けっつってんだろぅが。それになんだ?その制服の着こなし…ダせぇな。カッコいいと思ってんのかよ?」
「あぁ!?」
ギルのその一言にその男子生徒だけでなく、その他数人の男子生徒も刺激された。
「舐めた口聞いてんじゃねぇぞゴラァ!!」
「こんのチビがぁ…!!俺らの怖さ思い知らせてやろうか!?あ"ぁ!?」
次々と図太い声で怒声を放ちながらギルへと迫っていく。その声に辺りから次々と生徒達が集まって来た。
ギャラリーがざわつき始める中、ギルは男子生徒の足元に目を向けた。
「…おい。お前の踏んづけてるやつ…食べ物じゃねぇのか?」
「あぁ?」
そう言われた金髪ロングヘアの男子生徒は脚元を見る。そこには食べていたポテトチップスらしき菓子が袋ごと踏み潰されており、中から溢れ出たポテトチップスがバラバラに割れて散らばっていた。
「んなもんまた買えばいいだけの話だろうがよぉ。んなことよりテメェ俺らに向かって『タメ口』とはいい度胸じゃねぇか」
「口の聞き方も教えなきゃならねぇな♪」
二人の男子生徒はそう言いながらポテトチップスの袋を更に踏み潰すと拳の骨を鳴らした。
だが、
その行いによって誰よりも食を愛するギルを刺激してしまった。
「…また買えばいい…だと?」
___その瞬間
ギルの脚が振り上げられると共に男子生徒の顔面を掴むようにして一瞬で床へと叩きつけた。
「がへぇ!?」
『『『!?』』』
地面へとその顔が叩きつけられた瞬間 皆は認識すると共に固まってしまう。
「“食い物を粗末にするな”母親から教えてもらっただろ?」
男子生徒の足元に散らばった菓子を見ながらギルはそう言い放った。すると、それによって、残りの男子生徒も刺激された。
「テメェェエエ!!!よくも俺のダチをぉおお!!!」
そう叫びながら男子生徒は拳を胸の前に構える様にして向かってきた。
「ほぅ?」
それを見たギルは男子生徒の足元にてポテトチップスを食べる際に使用していたと思わしき箸を拾う。
「ボクシング部 主将の力ァ!思い知らせてやらぁぁぁあ!!!!
向かってくる男子生徒の叫び声と共に右拳がマグナムの如き超速度で放たれた。
「はいキャッチ」
「…!?」
聞こえたその一言によって男子生徒は一瞬にして勢いを失った。
「う…腕が!?」
見れば突き出された拳がギルの掴んでいた箸によって挟まれ受け止められていたのだ。
「それと踏み込みと拳の突き出しが遅い」
その言葉とともにギルは放り投げる様にして掴んでいた箸から腕を離すとよろける男子生徒の懐に一瞬に入り込み、その鳩尾目掛けて箸を数回突き付けた。
その瞬間
「ゴフ…!?」
箸を突きつけられた男子生徒は白目を剥き、その場に倒れた。
「す…すげぇ…アイツ箸でキャプテンを気絶させたぞ…!?」
「しかもさっきの蹴り技…全然見えなかった…」
一瞬にして二人の大柄な男子生徒を地に伏せたギルに辺りからは驚きの声が上がっていた。
その一方でギルは残りの男子生徒へと目を向ける。
「さて、残るはテメェだ」
「…!!」
残された男子生徒は汗を流すと、すぐ横にある教室に入り込み、掃除用のロッカーの中から箒を取り出し、構えた。
「ほぅ?俗に言う“剣道”というやつか。なら、おい。俺にもよこせ」
「は…はい!」
ギルは近くの教室の窓から見ていた女子に指示を出すと、その女子生徒から同じく箒を受け取った。
「一瞬で終わらせてやる」
ギルは受け取った箒をまるでペンを回すかの様に器用に指だけで回転させると、その箒の棒部分を掴み、相手に向けた。
「ぐぅ…!!」
男子生徒はギルの器用な扱いを見て若干ながらも冷や汗を流す。だが、自身は元主将という肩書きを思い浮かべる事でその恐れを軽減させた。
「俺は元剣道部主将だ…!!舐めんじゃ__「遅い」 がべぇ!?」
何かをハタく音と共に喋り終える前に 男子生徒の頭にギルの箒が振り下ろされ、一瞬でその頭を床へと叩きつけた。
「闘う時に喋るなんざ“殺してください”って言ってるようなもんだぞ?」
「あ…ぁ…ぁ…」
そう言いながらギルは肩に箒をトントンと担ぎながら倒れる男子生徒に吐き捨てた。一方で、地面へと叩きつけられた男子生徒達は意識はあるものの、あまりにも奇想天外な出来事に現実を受け入れられず手脚をピクピクしていた。
「ったく。この学校は変な生き物ばっかだな。さてそろそろトイレに…
__ん?」
その時だった。背後から微かな殺気を感じ取り、ギルは手に持っていた箒を後ろに向けた。
その直後__
___カァァン…ッ!!!
木と木がぶつかり合う音が響き渡る。ギルはゆっくりと目を向けた。
そこには自身に向けて木刀を振り下ろす長身の女生徒の姿があった。
「なんだお前は?」
「…!!」
ギルが声を掛けると木刀を振り下ろしていた女生徒は即座に後退した。すると、先程の殺気がまるで嘘であるかのように消え、女子生徒はギルに向けて頭を下げた。
「すまない…。殺気に反応してしまって遂…」
「…いえ。お気になさらず」
頭を下げられたギルは首を振りながらも内心は驚いていた。この女子生徒は殺気に反応したと言っているが、ギルが殺気を放ったのは男子生徒を叩きつけた時というほんの一瞬だ。
即ち、この女子生徒は一瞬だけ漏れた殺気を感じ取ったと言う事になるのだろう。
「(なかなか骨のある奴もいるんだな)…まぁいい」
ギルはその女子生徒に少し興味を抱きながらも即座に箒を肩に掛け、後ろで倒れている男子生徒達に目を向けた。
「おい。床に散らばった駄菓子 片付けろ。今すぐ」
「「「え!?」」」
ギルの命令に倒れされた男子生徒達は驚くと共に身体を震わせながら尋ねた。
「あの…どうやって…」
「簡単だろ。_____“喰え”」
◇◇◇◇◇
それからその場にはとんでもない光景が広がっていた。
「おら、そこにも残ってるだろ。拾って喰え」
「はぃぃい!!」
ギルに倒された男子生徒達は床に散らばった駄菓子を涙を流しながら次々と拾い口の中に運んでいった。埃が混じっていようと関係ない。
そしてそれを見張るかのように3人の前でギルは仁王立ちをしていた。
「ほら、そこにまだ欠片残ってるだろ?」
「すぐ片付けます!!」
先程の威勢はどこえやら。もう完全にギルに下剋上されており、下の存在へと成り下がっていた。
廊下で次々と駄菓子を拾いながら食べているその光景に2年の教室や辺りにはギャラリーが集まっていた。
そんな時だ。
「道を開けてください!」
多くの生徒の中を次々と掻き分けながら風紀委員の腕章を付けた女子生徒が現れた。
それはなんと古手川であった。
「すいません…通してくださ___ええええ!?ギルさん!?」
「ん?」
自身を呼ぶ声が耳に入るとギルは反応し、振り向いた。
「貴方ですか」
「な…何をやってるの!?」
「いや、なんか廊下でお菓子 散らかしてた上に突っかかってきたのでシバきついでに掃除を」
「掃除…」
古手川は床に手をつきながら次々とお菓子を口に運んでいる男子生徒達を見る。この男子生徒達は前々から何通も苦情が寄せられている対象であり、自身も何度か注意をしたがまったく相手にされなかったのだ。
3年であるが故にあまり強くも言えなかった為にずっと気にしていたものの、それが今では床に手をつき泣きながらお菓子の処理をしていた。
その様子を見た古手川は何がなんだか分からなくなってきた。
すると、辺りの生徒たちがざわめき始めた。
「お…おい…あの子…風紀委員と親しげに喋ってるぞ…!?」
「てことはあの子も風紀委員ってことか!?」
「まじかよ!?」
「え!?」
次々と上がる声に古手川は驚き、即座に訂正しようとするも、すでに手遅れであった。
「ひぃぃい!?コイツ風紀委員だったのかよ!?」
「嘘だろ!?こんな奴が委員にいたのかよ!」
床を掃除していた男子生徒達は次々と恐れる声をあげていき、それが古手川の訂正する声を打ち消して行った。
そんな中 驚く男子生徒達を恐れさせるかのようにギルは脚を一歩 踏み締めた。
「おい。まだ残ってるだろ?全部 処理しろ」
「「「はぃぃぃぃ!!!!」」」
それから男子生徒達は数分掛けて床に落ちた菓子を全て処理すると、全速力で逃げて行った。
「やっと綺麗になった。さて、ようやくトイレに…ん?」
本来の目的である手洗い場に行くべくギルは辺りに視線を向けた。見るとそこには自身を見つめる多くの生徒達がおり、全員 氷のように固まっていた。
「なんだよ?」
『…!!』
ギルに目を合わせてしまった生徒達は一瞬 身体を震わせるとそそくさと逃げるようにして退散していった。
「おいおい…嘘だろ?もう風紀委員に逆らえねぇじゃねぇか!?」
「バカ!声がデケェよ!殺されるぞ!?」
「俺が風紀委員?」
次々と聞こえてくる小さな陰口にギルは首を傾げると、事情を聞くべく、その声の主である二人の男子生徒に声を掛けた。
「お〜い。そこの二人。今のってどういう__「すいませんでしたぁぁあ!!!」
ギルが声を掛けた瞬間 その生徒達は身体を更に震わせると走り出して逃げていった。
それに釣られるかのように辺りの生徒達も早歩きで次々と教室へと戻って行った。
やがて足音が少なくなった中、残ったのはギルと古手川だけである。ギルは残った古手川に自身がいま、皆からどういう風に見られているのか、ゆっくりと尋ねた。
「えぇと…俺が風紀委員…という風に見られていたって事ですか?」
それに対して古手川は苦い表情を浮かべながらもゆっくりと頷いた。
「そのようね…」