Toloveる 発明大好きなお姫様には弟がいました。 作:きょうこつ
様々な組が出し物を決めている中、ギル達のいる教室から下の階にあるとある教室にて。
3人の女生徒が窓際に集まっていた。
「調査によりますと、1年組でのアニマル喫茶が話題となっており、今年の文化祭の注目の的になるかと」
「ありがとう凛。それにしても、やはり人気はララという小娘なの?まったく…美しいものは私だけでいいのに…」
脚を組み優雅に座りながら報告を受ける少女の名は『天条院 沙姫』天条院財閥の娘すなわちお嬢様である。
そして目の前に立つ二人の少女。一人は一般の男子よりも背が高く清楚な髪をポニーテールにしていた。名は『九条 凛』天条院家にて代々使える従者の娘である。
もう一人は特にこれといった特徴のない文学少女の様な印象を受ける眼鏡をかけた生徒『藤崎 綾』
彼女達は天条院指示でララ達のクラスを偵察していたのだ。
「沙姫さま。それについて一つ面白い情報を入手しました」
綾という少女は懐から一枚の写真を取り出し天条院に向けて差し出した。
「これは…?」
「一年A組に所属している結城リトといい、どうやらララの婚約者らしいです」
「ここ…婚約者!?この美しい私を差し置いて…!?」
渡された写真に写っていたのは、何と机で頬杖をつくリトであった。その写真を見た天条院は意味不明の驚きの声を上げた。
だが、それと同時にある考えが彼女の頭をよぎった。
「は…!でも考え直すと…この男を私の美貌で虜にしてしまえば…あの娘が慌てふためく筈…!!これよ!これだわ!」
オ〜ホッホッホッ!!!
◇◇◇◇◇◇
「ん?」
「どうしたギル?」
「いや、何か下の階から声が聞こえて、うるさいからペットボトル投げつけようかなって」
「やめろ!」
昼休みが終わり、午後の授業がない特別日課となった事でギル達1年A組は早速文化祭の準備に取り掛かる事となった。
「さて、それじゃ準備するか」
ギルは髪を結びブレザーを脱ぎ捨て袖を二の腕まで捲り上げると皆と同じように準備に取り掛かる。
「ギルル〜ン!こっちにそれ持ってきて〜!」
「分かりました」
ギルは男で力も人一倍ある為に他の男子達と共にイスのセッティングを行なっていた。
「ギルルンは本当に力持ちだね〜♪」
「頼りになるわ〜♪」
「は…はぁ…」
リサミオコンビはそう言いながら机を持ち上げて運ぶギルの頭を撫でる。それに対してギルは不満な表情を浮かべていた。
そんな時だった。喫茶店の内装を準備していた1人の女子が声を上げた。
「あ、ギル君!ガムテープが切れちゃったから買ってきてくれない!?」
「分かりました」
「あ!私もいく〜!」
「姉貴はここにいろ。まだ作業の途中だろ」
「えぇ〜」
女子からの頼みにギルは頷くと作業を中断して学校から近くにあるコンビニへと向かう。因みに、リトも同じタイミングで機材を買いに行く模様で、同行する事となった。
そんな時だった。 廊下で蠢く影が…
◇◇◇◇◇◇
ギル達が所属する1年A組の前では3人の女生徒が立っていた。
「うふふ。どうやらここのようね」
「はい。見る限り今まさに準備に取り掛かっている様ですね」
「丁度いいわ。ここで彼を私の虜にしてしまいララに大恥を掻かせると共に思い知らせてあげるわ。この学校の【女王】が誰なのかを…!」
すると 教室のドアが開き、リトともう1人のピンク色の髪の毛を縛った生徒が出てきた。その姿を見た九条が天条院に耳打ちする。
「きました!…丁度 彼女も一緒です…あれ…でも何で男子の制服を…」
「何はともあれ好都合ですことよ…!」
天条院は咄嗟に前に立ち塞がった。
「一年A組の結城リト!2年B組の天井院 沙姫があなたとお付き合いしてあげてもよろしくってよ!」
仁王立ちをしながら胸に手を当て、廊下に響きながらも凛とした声で言い放つ。
「………あら?」
いつまで経っても返事がこない。もしや、突然の告白に現実を受け入れられていないのだろうか…?そう思った天条院は心の中で高笑いすると、その表情を拝むべく目を向けた。
「……あれ?」
そこにはもう誰もいなかった。見れば仲良く並びながら校舎外へと歩いていく姿が…。
「む…無視…!?」
だが、彼女は諦めなかった。まるでやり遂げるまでやめないかの様に瞳には燃え盛る炎が写っていたのだった。
◇◇◇◇◇◇
「しっかし、お前ってララと違って適応が早いな」
「そうか?」
コンビニにて頼まれた品を購入したリトは隣で袋からココアを取り出すギルに向けて言う。それに対してギルは首を傾げた。
「だってララの様にデビルーク星の服は着ないし尻尾は隠してるし言葉使いも丁寧だし」
ウィィン…
「強盗だ!動くな__ぐぼぇ…!?」
「まぁ、郷に入れば郷に従えって教えられたからな。アイツはハッチャケすぎなんだよ」
銃を構えた男の顔を蹴り飛ばしながらギルは答えるとココアを口にする。
「思ったんだけどよ。何でお前は王族を継がないんだ?」
「ん?」
「あ〜ん!突然の風が!見えてはいけないものが見えてしまっ__きやぁあ!?」
リトの質問に対してギルはココアの蓋を閉めると前から突然現れたクルクル髪の女子生徒を横に投げ捨てながら答えた。
「継がないというより、継げないんだよ。嫁がいないからな。ウチは確か夫婦揃って継いで外交とか統治をしなきゃいけねぇ。俺だってララの様に何度も見合いをした。けど、どいつもコイツも権力や金目的でつまらない奴ばっかだったから全部断ってるんだ」
「へぇ…大変なんだな」
「あぁ。そんで断られたって理由だけで攻めてくるめんどくさい奴もいてな。まぁ星ごと滅ぼして高値で異星人に売り飛ばしてやったけどな」
「…は!?」
そんな話をしながら2人は学校に到着すると作業の続きに取り掛かった。
◇◇◇◇◇◇
それからギルは作業に戻ると指示を受けながら次々と飾りを作っていった。一方でリトは猿山の粋な計らいにより、西蓮寺と共に楽しく作業を進めている様だ。
「よし…!できた!」
「ありがとう!」
西蓮寺へ手を貸し器用な作業を終えたリトは額に浮かんだ汗を腕で拭き取った。
すると
バン!
教室のドアが勢いよく開かれると共に胸を押さえた女子生徒が入ってきた。
「誰か…誰か助けて…!」
「「!?」」
突然と胸を押さえながら入ってきた女生徒にリトと西蓮寺は作業を中断すると駆け寄った。
「あれって2年の天条院先輩…!」
「えぇ!?ちょ…大丈夫ですか!?」
西蓮寺と共にリトが駆け寄り手を伸ばすと天条院は頬を赤らめ震える瞳を向けながらその手を掴んだ。
そしてその手を自身の胸へと無理やり押し付ける。
「助けて…胸が…胸が苦しいの…!」
「うぇ!?ちょ…むね!?」
手に感じる柔らかな感触と向けられる瞳にリトは仰天すると共に顔を真っ赤に染め上げた。
そしてそれは後ろから見守っていた西蓮寺も同じである。
その時だった。
「おい。んな茶番やってないで早く作業進めるぞ」
背後から工具を肩に掛けながらギルがやってきた。すぐ隣に立っていた西蓮寺は顔を赤く染めながらも現状を話した。
「いや…何か胸が苦しいって…」
「じゃあ縛り上げて保健室に投げ込むまでです。一々、構ってたんじゃ病状が悪化するだけでしょう」
「そうだけど………え!?し…縛り上げる…!?」
西蓮寺がギルの言葉に顔を青くさせながら驚く中、ギルは教室から縄を持ってくる。
「取り敢えず暴れない様に全身が青くなるまで縛りあげましょうか」
「それ縛り上げるどころか締め上げてるから!保健室に向かう前に天国に向かっちゃうから!」
「うぇぇ!?ちょ…ちょっとぉ!?何をする気ですの!?」
今にも縄を掛けようとするギルを西蓮寺が止める中、その様子を見てようやく正気を取り戻した天条院は全身を震え上がらせると、蜘蛛のようにリトから離れ、ギルを指さした。
「あ…あなた!いくら何でも病人を縛り上げるなんて非常識にも程がありましてよ!?」
「人様の前で男に胸掴ませてるテメェに言われたくねぇんだよ。公然猥褻罪でしょっ引かれてぇのか」
「きぃぃぃ!!!その乱暴な言葉遣いをした事を後悔させてあげますわ!覚えてなさいララ・サタリン・デビルーク!」
「なんだ元気じゃん」
「「沙姫さま!?」」
立ち上がった天条院はそのまま捨て台詞を吐きながら走り去っていき、その後ろから追いかける様に2人の女性も続いていった。
その際にギルは背の高いポニーテールの女生徒と目が合うものの、あまり気には留めなかった。
「というか、俺ララじゃねぇんだけど。…そんなに似てますか?」
西蓮寺・リト「「う…うん…凄く似てる…」」
それから作業は進み、準備が整い始めていったのであった。
因みに天条院お嬢様をヒロインにする気はないです。