Toloveる 発明大好きなお姫様には弟がいました。 作:きょうこつ
クリスマスが明け早くも数日が経過した。ギル達の通う彩南高校はクリスマスとなる前の時期から冬季休校つまり冬休みへと入っており、皆はそれぞれの日常を過ごしていた。
そんなある日の午後。
「ララ様。ギル様。今月のお小遣いです。無駄遣いのないように」
「は〜い!」
「ん」
ギルとララはザスティンからそれぞれ一つずつ札束の入った封筒を渡された。
「バイト代だけじゃ少し苦しかったからありがたく使わせてもらう…そういえばリトは?」
ザスティンからお小遣いをもらったギルは財布に入れると部屋を見回した。いつも見えるリトの姿が見えなかったのだ。
「リトならリトパパから画材の買い出し頼まれて行ってるところだよ!」
「そうか。近くのスーパーでセールやってるからリト探して行ってくるよ」
ララから教えてもらうとギルは立ち上がりロングコートを纏うと靴を履き外に出た。
「ギル様〜!くれぐれも無駄遣いをしないように〜!」
「行ってらっしゃ〜い!」
「オッケーオッケー」
見送るザスティンとララに向けて手を振りながらギルはリトを探しに向かった。
◇◇◇◇◇◇
ところ変わり街の中。機材の買い出しを終えたリトは父の手伝いをしてくれているザスティン達へのお土産として出店のたい焼き店へと立ち寄っていた。
「へいお待ち!あんこ入り10個ね!」
沢山のたい焼きが入った袋を渡され、そのうちの一つを口に運ぶ。
「んん…うまい」
口の中に広がる甘みを堪能しながらリトは無意識に目を前に向けた。
「…ん?」
その時 リトはたい焼きを咀嚼する口を止めた。
「…」
目の前には異様な黒い衣服を纏う謎の少女が立っていたのだ。髪は美しい金色でララよりも長く、身長はギルとほぼ同じぐらい。その少女はたい焼きを食べている自身をジーっと見つめていた。
「……(まさか…これ食べたいのかな…?)」
そう考えたリトは口に含んでいたたい焼きを飲み込むと袋の中からもう一つたい焼きを取り出し少女へ差し出した。
「これ…いる…?」
「…」
恐る恐る尋ねてみると、その少女はたい焼きを見つめながら受け取りパクっと口に入れた。
「……地球の食べ物は変わっていますね…」
「そりゃあ地球の食べ物は結構個性があって___えぇ!?」
不意に彼女の口から出た言葉にリトは思わず後ろに下がってしまう。その言葉は地球人ならばまず出る事はない。
その上、彼女はまるで初めて見たかの様にたい焼きを丁寧に食べていた。そうなると彼女もララと同じ異星人という事になる。
「ごちそうさまでした…さて…結城 リト…」
「…へ!?」
その瞬間
彼女の右腕の5本の指が変形し3本のナイフと化し、その腕が振われた。
「…!?」
それを腰を抜かす形でリトは避ける。見れば掠ったと思わしき腹の部分の服の一部分が綺麗に切られていた。
「外しましたか。次はそうはいきませんよ」
刃を振るった少女の髪の毛が唸りだすと変形し、指先と同じように数本の刃となった。
「私は“金色の闇”。結城リト…貴方に恨みはありませんが、ここで死んでもらいます」
「な…」
その少女の風貌と殺気から、リトは驚き即座に立ち上がると駆け出した。
「何で俺が…!?俺が何やったっていうんだよぉぉぉ!!!」
そう苦言を漏らしながら走るも、後ろからは彼女が凄まじい速度で追いかけてきた。
「逃しませんよ」
その言葉と共に髪の毛が伸びると数本の刃の切先がリトに向けて放たれた。
「うわぁぁぁ!!!」
その刃がリトの背中へ向けて突き刺さろうとした時だった。
「ふんッ!!!」
突然 黒い影がリトと金色の闇の合間に飛び出すと向かってくる刃を蹴り上げた。
「…!!」
突然の乱入者に金色の闇はリトを追い掛ける脚を止めて飛び出してきた黒い影を睨む。
「何者で___ぐ!?」
金色の闇が飛び出した黒い影を睨んだ直後。その黒い影が一瞬にして目の前の刃の間を潜り抜けながら迫り金色の闇の首を掴むと近くの壁へと叩きつけた。
「がはぁ…!!」
巨大な衝撃音と共に壁の破片が砕け散ると金色の闇は叩きつけられた衝撃によって口から胃液を吐き出す。それによってリトに向かって行った刃が元の金色の髪へと戻っていく。
「…まさか…こんなところで【修羅の王子】に遭遇するとは…」
叩きつけられた金色の闇は自身を壁に叩きつけた黒い影へゆっくりと目を向ける。
すると 煙が晴れその黒い影の正体が顕となった。
「ギル・ベルフェ・デビルーク…!!」
「よぅ。お前が金色の闇か。随分とひ弱な身体してやがるな」
黒い影の正体は何とギルであった。金色の闇を壁へと叩きつけたギルはその鋭い目線を向ける。
「なぜ…邪魔をするのですか…?」
「アイツは俺の姉貴の婚約者だ。度胸も覚悟も他の奴らとは違う。だから守るのは当たり前だろ?」
「成る程。ですが残念な事にその他の婚約者から依頼が来ているのです。プリンセスをそそのかしデビルーク星を乗っ取ろうとしている…と。邪魔立てするならば____
_____貴方も殺します」
「…!!」
その言葉と同時に金色の闇の髪の毛が収縮すると4又に分かれ龍の顔を形成する。
それを見たギルは即座に金色の闇から離れる。形成された龍の頭は離れたギルを追いかけ迫り来ると、ギルの四肢に噛み付いた。
「ギル!!」
リトが叫ぶ中、噛みつかれたギルは金色の闇に向けて眉間に皺を寄せる。
「こんな小細工…!」
「…!!」
その言葉と同時にギルは身体を回転させた。それによって噛み付いていた龍の頭はその回転に巻き込まれると共に金色の闇の身体も引き寄せられる。
引き寄せられたその瞬間 ギルは笑みを浮かべた。
「そらぁ!!!」
「ぐぅ!?」
引き寄せられた金色の闇に向けてギルは脚を振り上げ、水平に蹴りを放つ。それに対して金色の闇は即座に左腕を前に出し防御を取り防ぐ。
だが、ギルの脅威的な筋力とデビルーク特有の超パワーによる蹴りの威力が完全に殺す事ができずそのまま壁に向けて吹き飛ばされた。
「へぇ。案外頑丈だな」
吹き飛ばされた金色の闇は瓦礫と埃を払うと何事もなかったかの様に立ち上がる。ダメージが殺しきれなかったとしても彼女に取ってはそれ程までのダメージにはならなかったのだ。
その体型に見合わないタフネスにギルは驚く。
「えぇ。ですが、少し効きました。自分の血を見るのは久方ぶりです」
そう言う金色の闇の腕には切り傷のようなモノができておりそこから血が滲み出ていた。
「そうか。それは俺も同じだ」
そしてそれに同調するかの様にギルの腕からも同じく傷ができており血が滲み出ていた。
「まぁそれよりも、リト」
「え!?」
腕の出血から目を離すとギルは後ろで立ちすくんでいるリトへ目を向ける。
「ここから離れろ。巻き添え食うぞ」
「わ…分かった!すぐにザスティン呼んでくるから気をつけろよ!」
そう言いながらリトは家に続く方向へと走り去って行った。
「標的を逃すとは…随分と嫌な真似をしてくれますね。貴方を先に片付けた方がよさそうです」
手から滲み出る血を拭うと金色の闇は再び髪を変形させ今度は6本の刃を形成させた。
それに対してギルは腕の血を舐めとると両手を構え尻尾の鋭い切先を向ける。
「巻き添え食って死んだら姉が悲しむからな」
◇◇◇◇◇◇
ギル達の場所から走り去っていったリトは先程いた場所から数百メートル離れた地点にいた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
分からなかった。なぜ、彼女は自身を狙っているのか。彼女は自身をデビルーク星を狙っていると言っていたものの、そんな気など毛頭ない。
「何なんだよ…一体…」
そんな時であった。
「リト〜!!」
「むごぉ!?ララ!?」
空からララの声が聞こえると共にリトに向けて飛来し抱きついた。抱きついてきたララは心配していたのか、次々と頬擦りする。
「大丈夫!?殺し屋になんかされてない!?」
「殺し屋……そうだ!」
ララの言葉にリトは忘れかけていた事を思い出し、ララに全て話した。
「大変なんだ!金色の闇とかいう殺し屋が俺を狙ってきてギルが今___
その瞬間
リトの話を遮るかの様に後方から巨大な爆発音が響いた。
「「…!!」」
その音を聞いたリトとララは即座にその音が聞こえた方向へと目を向けた。見ると聳え立つ建物が黒煙を巻き上げながら破壊されていた。
すると その黒煙の中から二つの影が飛び出した。
「はぁぁ!!!」
「ははっ!」
飛び出してきた影のうち、一つは金色の闇。そしてもう一つはギルであった。飛び出した金色の闇は手を巨大なナイフへと変形させるとギルに向けて振るう。
それをギルは笑いながら空気を蹴り更に高く飛び上がる形で回避すると即座に金色の闇の背後へと降下しその身体に向けて拳を放つ。
「…ふん…!!」
その拳を金色の闇は後ろ髪で模造した拳で受け止めた。
「…ほぅ。髪だけでこんなに硬くさせることができるのか。面白い……ッ!!」
「褒めても嬉しくありませんね…ッ!!」
そのまま2人は重力に従いながら落下し、一軒の民家の屋根に着地すると次々と拳や突きを放っていく。
無言のまま繰り出される金色の闇の四肢と髪の毛で模造した4つの拳の超連撃をギルは四肢で全て捌いていく。
「く…!?」
「どうした?手数で勝ってるのに全然当たらねぇぞ?」
いくら攻撃を放ってもダメージを与えられない事により、金色の闇は悔しさのあまり歯を食い縛る。だが、その際に少し焦ってしまったせいで先程まで繊細な流れであった拳の雨にムラ…即ち隙が生じてしまった。
「…ッ!!!」
その隙をギルは決して見逃さなかった。迫り来る拳の連撃の隙を見つけたギルは目を細めると金色の闇を顎から蹴り飛ばすべく脚を振り上げた。
「…!」
振り上げられたその脚に気づいた金色の闇は紙一重で避けるとすぐさま後方に高く飛びギルから距離を取る。
距離を取った金色の闇はそのまま屋根の瓦を粉々に粉砕する程まで脚を踏み込むとギルに向けて拳を構えながら飛び出す。
「は…っ!!」
それとほぼ同時に蹴り上げた脚と共に身体を一回転させたギルも着地すると足元にある瓦を粉々にするまで踏み込み金色の闇に向けて拳を構えながら飛び出した。
互いに飛び出した2人は音速を超え空気を突き抜けながら向かって行った。
そして
2人の拳が互いに掠ると共に重なり合いそれぞれの頬へと撃ち込まれた。
「「ぐぅ…ッ!!!」」
頬へと伝わる重い衝撃と反動によって2人の身体は磁石の様に引き剥がされた。
「……思ったよりやる様ですね…流石は【修羅の王子】」
「へぇ。俺の事をよく知ってるんだな」
「勿論です…。幼い年にも関わらず銀河統一戦争においてその身一つで敵戦艦に乗り込みその身が血に染まるまで暴れ回り敵勢力を恐怖のどん底に叩き落とした話は有名ですからね。その鬼の如き強さで戦う姿から『血塗れプリンス』『修羅』『鬼の子』『デビルークの若き雷槍』と呼ばれるように。私が以前いた惑星ではあだ名を口にするだけでも不吉と言われていました」
「随分と懐かしいな」
金色の闇の口から明かされた己の過去を久々に聞いた事であの日の自身を思い出した。
それと共に内に秘められたデビルーク星人の中でも一際凶暴な者にしか見られない闘争本能が湧き上がってくる。
「ならお前にとくと見せてやるよ…【修羅】の力をな…ッ!!!」
久々に心を躍らせる闘いによってギドから受け継がれた巨大な闘争本能が再び甦ると共に額や腕からは筋が湧き立った。
その瞬間 ギルの姿が一瞬にして消えた。その速度は金色の闇でさえも認識する事ができなかった。
「な…!!」
突如として視界から消えたギルに驚いた金色の闇は辺りを警戒する。
刹那
「がはぁ…!!」
腹に凄まじい衝撃が走る。見れば一瞬にして姿を消したギルが現れ金色の闇の腹へと拳を打ち込んでいたのだ。
「(速度が…変わった…!?)」
「ほら…まだまだいくぞ…ッ!!」
その言葉とともにギルは四肢から次々と金色の闇の全身に向けて拳や突きを放っていった。金色の闇自身も髪を6本に変形させると共に四肢を用いて迫り来る拳や蹴りを防ぐも追いつく事ができなかった。
「そらぁ!!!」
そんな中 ギルの右手が突き出される。辛うじて金色の闇はその突きを避けるものの肩に擦り服を裂いた。
「く…!!!」
先程とは全く違う速度に金色の闇は歯を食い縛る。その一方で、速度を上げたギルは脚を振り上げた。
「そらぁ!!!」
「ゴハァ…!?」
その振り上げられた脚は金色の闇の腹へと直撃すると彼女の身体を上空へと蹴り上げた。身体に走る痛みに金色の闇は肺の中の空気を吐き出す。
そしてギルは上空へと飛び出した金色の闇の吹き飛ぶ先へと即座に移動すると回転し、金色の闇の身体に向けて脚を振り回した。
「ぐ!?」
その回し蹴りを受けた金色の闇は辛うじて防御を取るも勢いを完全に殺しきれずその場から近くにある神社の境内へと叩き落とされていった。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
「はぁ…はぁ…はぁ…」
神社の境内へと叩き落とされた金色の闇。全身に傷を負いながらも立ち上がれるそのタフネスは流石という他ないだろう。
すると
「おい。こんなものか?もっと楽しませろよ」
「…!!」
自身の目の前にギルが降り立つ。その目は先程よりも鋭く血走っていた。全身から溢れ出る殺気は神社の境内に到達した途端に辺りに生える木々に止まる鳥達を刺激しすぐに飛び立たせていった。
「まさかもう終わりか?」
「……」
金色の闇は呼吸を整えながら反撃の隙を見出そうとする。
だが、やけに妙であった。拳の威力が最初とあまり変化が無かったのだ。変わったのは速度だけである。
「貴方…なぜそんな真似を…?」
「どういう事だ?」
金色の闇の質問にギルが首を傾げた時だった。
『こらぁぁ!!!何やってるんだもん!!金色の闇!』
上空からエコーを効かせた声と共に謎の宇宙船が現れた。
「…ラコスポ」
「…!!」
不意に金色の闇の口から漏らされた名前にギルは先程よりも目を血走らせると共に拳や頬から筋を沸き上がらせる。
「アイツが依頼主か…」
戦闘シーンの時はとりあえず『晴れの日に傘さす奴には御用心』でも流しながら読んでみてください。