Toloveる 発明大好きなお姫様には弟がいました。 作:きょうこつ
金色の闇との騒動から数週間が経過した。闇ことヤミはそれ以来、彩南高校の図書室に出入りし本を読み漁っているようだ。彼女曰く読書は嫌いではないとの事。
だが、彼女はこの高校の学生ではない。明らかな部外者である。それを古手川は見過ごさなかった。
「……」
いつものように中庭に設置されているベンチに腰を掛けながら読書をしているヤミを見ていた古手川は頭を悩ませる。
「う〜ん…あの子の事もそうだけど…もっと心配なのは…もし校長に見つかったら…」
「その心配はないようですよ」
「え?」
同伴していたギルの声に古手川がもう一度目を向けるとそこにはヤミにボコボコにされている校長の姿があった。
「ほら」
「た…確かに…」
そんな時であった。
「…ん?」
遠くの影から御門がひょこっと顔を出し、何やら手招きをしていた。その様子を見たギルは軽く舌打ちする。
「古手川さん。俺は少し用事を思い出したのでこれで失礼します」
「え?えぇ…今日もありがとね」
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古手川と別れたギルは手招きした御門の元へと向かう。
「お邪魔だったかしら?」
「別に。それよりもなんだ?たい焼き女の事か?」
「違うわ。近々、貴方やララさんにお客さんが来るらしいの」
御門が首を振り、要件に答えるとギルは首を傾げる。
「客だぁ?俺に客なんて殺し屋か犯罪集団ぐれ__」
その時であった。
ドガァァァァンッ!!!
「「!?」」
付近のテニスコートから巨大な破壊音が響き渡った。更にその余波によって保健室の窓ガラスも割れ周囲に破片が飛び散る。
それと同時に御門とギルはとてつもなく巨大な殺気を感じ取った。
「この気配…まさか…!!」
「えぇまさかよ。……行くのかしら?」
「勿論だ…!!!」
周囲に破損した器具やガラスの破片が飛び散る中、ギルの表情は今までに無いほど歓喜に満ち溢れていた。
そして ギルはその場から駆け出すと一気にテニスコートまで駆け出す。
見ればそこには直立しながら気絶している顧問とそれを心配している女子部員達がいた。
いや、それだけではない。その光景を見つめながら高笑いする小さな子供の姿があった。
その子供はやや釣り上がった目に加えて耳元には複数のピアスをつけていた。
「…!!」
その風貌を目にした瞬間 ギルの体内に流れるデビルーク星人の闘争本能が呼び覚まされ、血が湧き上がる。
「久しぶりだなぁぁ!!!」
「ほぅ?その声は…」
ギルが叫びながら全身から黒色のオーラを纏い叫ぶと、その少年は振り返り、ギルと同じ満面の笑みを浮かべると共にオーラを放ち始める。
そして
「親父ぃいいい!!!!」
「よぅバカ息子ぉおお!!!!」
二つのオーラがその場で重なり合い、一瞬にして空へと飛び上がると彩南町から消え去った。
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上空へと飛び上がったギルと、彼の父親『ギド・ルシオン・デビルーク』は太平洋のど真ん中へと移動し、互いに拳を打ちつけ合っていた。
「よぅ元気そうじゃねぇかぁ!!相変わらず血の気が多い奴だ!更に強くなってくれてパパは嬉しいぜぇ!!!」
「親父も相変わらずだなぁ!!女と酒混んでっから鈍ってんじゃねぇかと思って心配してたんだぜ!!」
互いに言い合いながら二人の拳は次々とぶつかり合い、周囲の海を消し飛ばすだけでなく空気を振動させていき、周囲に次々と衝撃音が鳴り響いていった。
「そらぁぁぁぁあ!!!!」
「うらぁぁぁぁあ!!!!」
次々と2人の拳が激闘する。その激しい力がぶつかった瞬間 強烈な風が発生し、辺りに被害をもたらす。
拳をぶつけた2人は、その場から後退すると、オーラを纏い、螺旋状の軌跡を描きながら次々と激突する。
「ヴォオオオオオ!!!!!」
「ハッハァァッ!!!」
獣のような雄叫びを上げながら連続の乱舞を叩き込むギル。それに対し、ギドも笑いながら両腕で次々と拳を放つ。
互いの拳と拳がぶつかり合い、次々と発生するその衝撃はもはや空気のみならず、大気をも揺らし周囲を振動させていった。
そんな中であった。
「いきなりだが、パパから愛する息子へのアドバイスだ」
ギルの放った拳を突然とギドは避け、彼の懐へと一瞬にして入り込んだ。
「な!?」
「俺の心配をするなんざ〜……」
一撃を避けられたギルは咄嗟に拳を戻そうとするが、既に遅く、ギドの拳が放たれていた。
「百年はえぇんだよぉおおお!!!!青二才がぁああ!!!!」
____!!!!
その言葉と共にギドの拳がギルの腹へと深く突き刺さると共にその場に鈍い音が鳴り響く。
「がぁ…!!」
「ヘッ。テメェもまだまだだな」
その痛みに耐えきれずギルが胃液を吐き出す中、ギドは笑みを浮かべたのであった。
その時であった。
ガシッ
「うぉ!?」
突如としてその突き出されていた拳をギルの腕が掴む。
「久しぶりの痛みだぁ…!!!」
その言葉と同時にギルの全身からドス黒い血の様なオーラが溢れ出し、目玉は黒く、そして虹彩は真っ赤に染まっていった。
それを見たギドは額から冷や汗を流す。
「おいおい…コイツは予想外だぜ…!!」
ギドが驚嘆する中、黒色のオーラを纏ったギルはもう一方の拳を握り締めると、ギドへと向けて放った。
「喰らえ…ッ!!!!」
その瞬間______
_________周囲一帯が閃光に包まれたと同時に大爆発を起こすのであった。
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ギドとギルが飛び立つと先程まであった重い空気が嘘のように晴れた。
その後、ザスティンから知らされたのかリトもようやくテニスコートにいた子供がララとギルの父親である事を知った。
そして、そのギドから通信が入り、屋上へと指示された事でリトやララは勿論だが、彼らを心配した西蓮寺と御門も同行し、その場に向かった。
屋上へと着き、彼らが戻ってくるのを待っている中、リトは先程、ギドへと向かっていったギルのことを思い出しララに尋ねる。
「なぁララ…ギルって毎日、デビルーク王と喧嘩してたのか?」
「うん。仲は悪くないんだけど…その喧嘩が凄すぎてね。喧嘩だけで星が一個滅んじゃった時があったの」
「嘘だろ!?喧嘩だけで!?」
「あれ如きで喧嘩なんて笑わせんな」
リトが驚きの声を上げた直後であった。先ほどの威圧感が再びこの場に満ちる。
それを感じた一同が上空を見上げると、そこにはボロボロになったギルを掴んでいるギドの姿があった。
「ギル!!」
「ったく。親の手を煩わせやがって」
リトが叫ぶ中、ギドはギルをその場に立っていた御門へと投げ渡す。
「ほらよ。バカ息子がいつも世話になってるぜ」
「どうも。随分と手厚いしつけだったのご様子ね?」
「まぁな」
投げ渡されたギルを抱き止めた御門は、やはり警戒しているのか、いつもの優し気な笑みが消え去り、冷や汗が滴る神妙な顔つきとなっていた。
そんな中で、ギドはララへと目を向けた。
「ザスティンから聞いてるはずだぜ。なぜ俺がここへ来たのかを」
「…!!」
その言葉にララは驚き、ギド自身もその表情からララも理解しているのか、目的を口にした。
「俺の後継者…つまりお前の結婚相手が決まったからだ!」
そう言い彼の目が彼女の横に立っているリトへと向けられた。
「相手はお前『結城リト』だ」
「俺!?なんでいきなりそんな!?」
突如として指名されたリトは驚きのあまりギドへと尋ねる。尋ねられたギドは答えた。
「いきなりじゃねぇだろ。ザスティンからお前に関する報告は定期的に受けていた。それを考えてだ。軟弱な地球人に任せるのは気が引けるが、まぁララの意見を尊重したんだ。そういうわけで頼むぜ?後継者」
「えぇ!?ち…ちょっと待って!!俺は…」
ギドから指名されたリトは思わず頭の中で、自身の想い人である西蓮寺の事を思い浮かべた。
ララと結婚すれば宇宙の帝王となるが、そうなれば西蓮寺とは会えなくなる。だが、ここで断れば彼の気に触れることとなり、間違いなく地球が終わる。
世界の命運を背負っていたために、その選択はまだ精神が幼いリトにとっては険しく、簡単に出せる答えではなかったのだ。
だが、ギドにそんな甘え…否、異議申し立てなどは通じない。
「まさか嫌だってぇのかぁ…?れ
その瞬間 彼を中心にコンクリートの床に亀裂が走り、全身に稲妻が迸る。
「前に言ったよなぁ…?俺の期待を裏切ったら地球ごと潰すってよぅ…!!今は抑えてるが、力を解放すりゃあこんな星なんざ簡単に壊せるんだぜぇ…?」
「う…ぅ…」
ギドの言葉と共に空が揺れ始める。迫り来る選択にリトの表情はだんだんと青く染まっていくのであった。
その時だ。
「パパ!」
今まで黙っていたララがリトを庇う様に前に立った。
「私は_______
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その後、ララの説得を受け、ギドは話を保留にし地球を去ったのであった。
そして、ギドとの戦闘で気絶していたギルはギドが去ってから数時間後の放課後にようやく目を覚ました。
「…ん?」
「あら、目が覚めた?」
目を覚まし、保健室の天井が映り込んでくると同時にすぐ側から御門の声が聞こえると、ギルは布団から身体を起こし周囲を見渡した。
「保健室…か。俺は…」
「デビルーク王と戦って負けて気絶してたのよ。
「そうか…なぜ俺はここに?」
「“私が”運んであげたのよ。わ・た・し・が」
「いちいち強調してんじゃねぇよ。どんくらい眠ってた?」
「4時間。その間にデビルーク王は帰っていったわ」
そう言い御門はベッドに座ると、額に手を当てたり聴診器を胸元に当てたりなどして、体調を検査した。
「…うん。異常はないわね」
ギルの身体の診察を終えると、保健室に置かれている冷蔵庫からエネルギーゼリーを取り出した。
「はい。これしか出せないけど飲んでいきなさい」
「…あぁ恩に切る…」
渡されたゼリーをギルはお礼を言いながら受け取った。
「それと…」
「ん?」
すると 御門はギルの背中に手を回し優しく抱き締めた。
「もう無茶はやめなさい」
そう言い彼女の手がギルの頭を優しく撫でる。その感触にギルは何の反応も見せる事なく、ただゆっくりと頷いた。
「あぁ…」
「貴方がいないと危険な星の薬草が手に入らないから」
「やっぱそういう事かテメェ」
その後、ギルは保健室を後にし、帰宅したのであった。