Toloveる 発明大好きなお姫様には弟がいました。 作:きょうこつ
ララやギル達がリトと出会ってから約一年。もう彼らは一年生ではなく、二年生へとなろうとしていた。
そんなある日の事。ギルは地球から遠く離れた星『デビルーク星』の王宮へと来ていた。
「…」
周囲には西洋を思わせる大理石で作られたかの様な豪華な柱やシャンデリア、そしてその近くのガラス張りの壁から見えるのは優雅に泳ぐ魚達の姿が見える大きな噴水である。
そして、その光景が見える大きなテーブル席の中でギルは手慣れた手つきでナイフとフォークを使用して料理を食べており、彼の目の前には、露出の多い服装をした妖艶な雰囲気を漂わさる女性が座っていた。
その場面を見たら誰でも分かるだろう。そう。これは『お見合い』である。
ギルは数ヶ月に一度、王位を継がずとも、正妻を得るためにこうしてお見合いに参加させられているのだ。ギルは男性としての魅力は微量だが、強大な力に加えてデビルークの王家の血筋を持つために、銀河中からの女性の人気は高い。
中でも今回の見合いの相手は宇宙でも5本の指に入る程の美しい容姿を持つ異星人『ビュティフル星人』の王族である。
だが、そんな美しい容姿にギルは唆るどころか、見向きもしなかった。
「(久々のデビルーク星の料理だが…何故か地球と似てるな…)」
そう言いギルは花より団子を体現するかの様に女性ではなく、久方ぶりに食べる料理をゆっくりと噛み締めていた。
すると
「さて、ギル様。私との婚約…どうかご一考いただけないかしら?」
向かい側の席に座る女性型の異星人が煌めく瞳を向けながら問いかけてきた。それに対してギルは首を横に振る。
「結婚か?断る」
「あら。噂通りお堅い人ね」
ギルが断ると女性は分かっていたのか、フォークを置いて頬杖をつき、見上げる様にしながら妖艶な目を向けた。
「私なら…貴方を満足させてあげられるわよ。朝も昼も…そして夜だって…♡」
そう言いその女性は豊満な谷間を強調するかの様に胸元の衣装を指で少し引っ張り、素肌を見せる。
その艶やかな唇に加えて妖艶な瞳、そして魅惑的な身体。男としての欲求だけでなく、女性からの憧れも詰まったその身体は誰もが目を奪われるものであり、普通ならば誰もがその容姿に心を許し、どんな要求でも受け入れてしまうだろう。
それこそがビュティフル星人の特徴であり、彼女はその特性を最も濃く残していた。
だが、そんな美女の誘惑を前にしていたギルの表情は_____
「さっきから肌をチラつかせやがって……舐めてんのか?」
____苛立ちを見せていた。
「!?」
その表情と、自身に向けられた殺気に女性は驚き、すぐさま手を引く。
その一方で、女性を威圧したギルは食べ進めていた手を止めると、その鋭い目を彼女へと向ける。
「俺はテメェの様な容姿だけが取り柄のやつなんざ興味ねぇ。増してや色目使ってくるアマなんざ死んでも御免なんだよ。どうせ俺の妻になりてぇのも地位も名誉が目当てなんだろ」
「あら…何を言って____」
「予想つくんだよ。なぜ俺を身体的魅力で落とそうとする?確かに性的欲求を湧き上がらせて落とすのは手の一つだが、お前のは露骨すぎるんだよ。さっきから足を組むわ唇を見せびらかすわ胸を見せるわ、重点的すぎて飽きるどころか腹が立つ。それに、ビュティフル星人には容姿を利用した詐欺師も多いからな」
「ぐ…ぬぬ……!!」
ギルがそう告げると婚約者である異星人は見事に見透かされていたのか、机を叩き立ち上がる。
「何よ!!この美しい私の目に掛かったんだから……ひぃ!?」
「テメェ…その考えになる時点で王族になるのがどういう事か分かってねぇようだな…?」
相手の女性が苦情を口にした瞬間 ギルは鋭い瞳で睨みつける。
「いいか?俺達王族が生きれてんのはそれを支える下っ端の奴らがいるからだ。支えてくれる奴らの面倒を見て動かす采配力と、もしも反逆してきた際に捻り潰す力がなけりゃ王国なんて成り立たねぇんだよ。そして王家の夫妻にはそれがいずれか必要になってくる。だから婚約者選びは大変なんだよ。だが、見るからにお前にはそれが見当たらない。政権握ってやりたい放題したいっつうのが予想できるんだよ。そんな奴に嫁に来て欲しいわけねぇだろ?」
そう言いギルは淡々と言い放つと、置かれていたコーヒーを口にし、最後の一言を放つ。
「女好きのクソ親父なら相手にされるかもしれねぇが…俺はそう簡単には行かねぇぞ…?身体的魅力しか無い奴に俺は全く興味がねぇ。というか交流も何もねぇやつと絶対結婚しねぇ」
「く…」
ギルからの指摘に女性は返す言葉もないのか、歯を食い縛ると、席を立った。
「じゃあいいわよ!!!アンタの様なチビ男なんか初めから興味なかったし終わって清々するわ!!」
そう言い女性は勢いよく立ち上がると同時に鼻を鳴らしながら部屋を出て行こうとした。
その時であった。
「おい…ッ!!!」
「!?」
突如としてその場に響いたギルの怒声と共にその場一体を超巨大な殺気が覆った。
それによって周囲の空間が揺れ始め、ゴトゴトと音を立てる。
そんな殺気の中心地に立っているギルの目の前に立っていた女性はあまりにも唐突すぎる殺気に驚き、その場に腰を抜かし涙を流していた。
「な…なによ…なんなのよ一体!私を殺そうっての!?」
「違ぇよ」
女性の訴えに首を横に振ったギルは目の前のテーブルに置かれている皿の上にある料理へと指を向けた。
「まだ料理残ってんだろ…?自分で頼んだなら…責任もって食え…ッ!!!」
「〜!!!」
その後、気まずい雰囲気の中、女性は涙を流しながらせっせと食事を食べ終えると、逃げるようにして帰っていったのであった。
こうしてギルのお見合いは幕を閉じた。
ーーーーーーーー
それからお見合いが終わるとギルは気だるそうにしながら宇宙船の発射場所へと向かっていた。
すると
「兄上〜!!!」
「お兄様〜!」
王宮の廊下の影から飛び出し、駆け寄ってくる二つの影があった。その影はすぐさま近づいてくると両手を広げながら抱きついてくる。
「あぁ、久しぶりだな」
抱きついてきた影を受け止めたギルは頭を撫でながら名前を口にする。
「ナナ、モモ」
そう言うと、長い髪を左右で結んだ吊り目の少女『ナナ・アスタ・デビルーク』は顔を真っ赤にし笑みを浮かべながら頬を擦り寄せる。
「兄上〜!やっと会えたな!心配してたんだぞ!」
「そうですよ!私はともかく…ナナったら毎晩毎晩 兄上兄上ってず〜っと泣いて__」
「う…うっせぇ!!泣いてねぇよ!!お前だってお兄様お兄様ってず〜っと言ってたじゃねぇか!!」
「な…何のことかしらねぇ〜?」
そう言い二人は取っ組み合いを始めてしまい、そんなやり取りを見ていたギルはやや笑みを浮かべた。
この二人のうち、ツインテールの少女を羽交締めにしているのが『モモ・ベリア・デビルーク』で、タップをしている少女『ナナ・アスタ・デビルーク』の双子の妹なのである。
「…変わらねぇな」
彼女らに会うのも久しぶりなためにギルはその様子を懐かしむかのように見つめていた。
すると
「そうねギル。あなたの言うとおり二人はまだまだ子供よね」
「ぎく!?」
背後から艶やかな声が囁くと共に両手が力強く肩に置かれ、今まで無表情であったギルの表情は一変し、額からは冷や汗を流すと共に身を震わせる。
「そ…その声は…」
震えた声を上げながら振り向くと、そこには
「か…母さん…」
この世のものとは思えないほど美しく、絶世の美女と呼ぶに相応しい女性が立っていた。
『セフィ・ミカエラ・デビルーク』
ララやナナ、モモ、そしてギルの母親でありギドの妻である。
ギルの肩へと手を置いたセフィはニッコリと笑みを浮かべながらギルを見下ろす。
「お父さんからず〜っと聞いていたわよ…?だけど連絡は通信と手紙だけ…ママがどれほど心配したか…分かっているのかしら…?」
「ひぃ…!!」
その声はとても低く、聞いた人全員がこの人は怒っていると確信出来る程のものであり、ギルは咄嗟に口を震わせながら頭を下げる。
「ご…ごごご…ごめんなさい…!」
「あら…?誰が謝罪なんて要求したかしら…?」
「い…いや…あの…」
顔の影を濃くしながら迫ってくるセフィの圧にギルは耐え切れないのか冷や汗を流しながら目を逸らす。
それからしばらくして__。
「………はぁ。やっぱりギルもあの人の子ね」
その様子にセフィはため息をつきながらも、優しく笑みを浮かべながらギルへと尋ねる。
「ララは元気?」
「う…うん…」
「そう。もう帰るの?」
「明日…学校だから…」
「はぁ…久しぶりに一緒に過ごしたかったけれど…しかたないわね」
ギルが頷くとセフィはやれやれと首を横に振りながらもギルを抱き締めた。
「時間が空いたらいつでもいいから帰ってきなさい。ララも連れてね?」
「…!!」
優しく包み込む抱擁と落ち着きのある声、そして久しぶりに感じる母の温かい温もりにギルは驚くと共に瞳を震わせながらセフィへと抱きつくようにして腕を回し身を寄せた。
「うん……母さん…」
その目からはいつもの鋭さが抜け、まるで母に甘える幼子のような目へと変わっていた。
「兄上は本当に母上が大好きだな〜!」
「う…うるせぇぞナナ!」
「でもそこが可愛いところなんですよね〜♪」
「お前も便乗すんじゃねぇモモ!!」
二人の揶揄う声に顔を真っ赤にさせながら返すギルにセフィは笑みを浮かべながら頭を撫でる。
「宇宙船の用意ができるまで教えてちょうだい。貴方やララの生活や…ララの婚約者のことを。色々と知りたいわ」
「あ!私も私も!」
「私も興味あります!」
「わ…わかったよ…」
それからギルは少しの間ばかりだが家族との時間を過ごすと、その後は皆に見送られながらデビルーク星を後にしたのであった。
その際にナナとモモが悪い表情を浮かべながら何か話し合っていたのはまた別の話である。