Toloveる 発明大好きなお姫様には弟がいました。 作:きょうこつ
それから数週間が経つと、初めての行事の時間が近づいてくる。
ギルやリト達の通う彩南高校には一年生は校長が同伴の元、一泊2日の臨海学習に行く事がカリキュラムに含まれていた。
その晩の家にて。
「フンフンフ〜ン♪」
ララはウキウキな様子で明日の臨海学習の準備を始めていた。それはリトも同じだ。
様子を見にきたギルは美柑からもらったアイスを口に咥えながらララの荷物を見てジト目を向ける。
「荷物多すぎるだろ…」
「ほぇ?」
ギルの意見にララは首を傾げる。ギルの意見はごもっともだ。ララの持っていくバッグには着替えのみならず、発明品に加えてゲームなどが入っていた。
「そんな沢山の荷物入るわけねぇだろ。少しは減らせ」
「えぇ〜」
「ギルさんの荷物は?」
美柑がギルに聞くと、ギルは軽めのバッグを取り出す。
「俺の荷物は携帯、筆箱、ノート1冊、財布、水着、2日間の下着の6点だけだ。どうせあの校長の事だ。女子の水着や旅館の女将目的で計画したんだろ。因みに今日見かけた時なんか浮かれてたぞ?」
そう言われたリトと美柑は頭の中に顔を真っ赤にしながら『ブワァッハッハッハ!』と興奮する校長の姿を思い浮かべる。
「「大体想像がつく…」」
ギルの考察にリトは勿論、町内で校長の変態行為が有名なのか小学生である美柑も頷く。
そんな中でギルはアイスを咥えながら手帳を取り出すと美柑に目を向けた。
「美柑は何かお土産で欲しいものあるか?」
「え?」
首を傾げた美柑はしおりをパラパラとめくる。
「でもしおりじゃ帰りは何処にも休憩しないって…」
「校長脅すかバス細工して故障させるかして何処かのサービスエリアで無理矢理休憩取らせるから」
「え、なに…サラッととんでもないこと言ってるよこの人」
無表情で手帳に色々と書き込みながら物騒な事を言うギルに美柑は若干だが引き気味。
◇◇◇◇◇
それから、当日を迎える事となった。前日は嵐で、危うく中止になるところだったが、ララが行きたいが為に大声を上げた事で嵐が去り、見事な快晴で出立ができる様になった。
学校に集合した皆は次々とバスに乗り込む。
席は事前に決めてられており、リトは猿山の隣で、ララは西蓮寺の隣であった。原則として男子は男子、女子は女子となっている。
一方でギルは男子として一人余ったので仕方なく女子と隣になる。だが、このバスは既に満員であり、別の組が乗るバスへと乗る事になってしまったのだ。
「はぁ…めんどくせ。…んん?おい。何ジロジロ見てんだよ」
『…!!』
バスの席へと向かう中、辺りから向けられる視線にギルは頭に来ると鋭い目線を向ける。こういった様に至近距離からジロジロと見られる事がギルにとっては癪に触るようなモノであった。
一方でその視線に目を向けていた生徒達は即座に目を逸らした。
「えぇと…俺の席は…と。ここか」
しおりを見て確認しながら席を探し見つけると既にそこには隣に座る生徒が座っていた。
「…貴方は…」
彼女は『古手川 唯』初めて校舎に来たギルを注意した風紀員だ。
「隣になりました。どうぞよろしく」
「え…あ…はい」
ギルは硬く挨拶する。それに対して古手川はあの時と全く違う雰囲気を漂わせている故に一瞬ながら焦るも即座に気を持ち直し頷く。
バスが出発すると皆は次々と話し出した。B組もB組で結構賑やかであった。
そんな中、古手川が横に目を向けると
「ZZZ…」
ギルは寝ていた。いつもはキリッとしていたギルだが、睡眠の時は警戒心が最も薄れる時であり、バスの揺れもあってか、ギルはぐっすりと眠っていた。その寝顔はララと酷似していた。
「…男子…なのよね…?」
だんだん興味を惹かれた古手川は指でギルの顔をツンツンとつつく。
「くか…」
「!?」
つつく度にギルは寝息を立てており、その動作が女子特有の母性本能をくすぐった。
「(だ…騙されてはだめ!彼は男、彼は男…!!」
呪詛のように次々と心に言い聞かせる。が、それでも耐えられない。
すると
ガタンッ!
「きゃ!?」
突然バスが段差を超え車内が揺れる。その拍子に古手川の横で寝ていたギルの身体は古手川の方へと倒れた。
その結果、ギルの頭が古手川の膝に倒れ、膝枕状態となる。
「!?」
咄嗟に古手川は反射神経で赤面してギルの肩に手を掛けて持ち上げる形で引き剥がした。
「ぐかぁ…」
「これでも目を覚まさないなんて…」
ギルの寝付きの良さが規格外のために古手川は驚きを通り越して呆れてしまう。
そんな形でバスは目的地へと着いた。
「あ…あの…着いたよ…?」
「…ん?」
小手川がギルの身体をゆするとギルは目を開けてゆっくりと目を覚ました。
「ふわぁ…よく寝た」
ギルはそのまま背伸びをすると、古手川に何も声を掛けることなく、横を通り過ぎていき元のクラスへと戻っていった。
ーーーーー
「あ!お帰りギル!」
「よぅ…」
ララやリトに迎えられたギルは手を振りながらバスから荷物を取り出す。
そして、皆は旅館の入り口まで歩いていった。既に旅館の前では女将らしき女性を筆頭に何人ものスタッフが出迎えていた。
「彩南高校の皆さん。ようこそおいでくださいました〜」
とても気丈な振る舞いで出迎えた女将は清楚な和風美人であり、殆どの男子生徒達は鼻の下を伸ばしていた。
そんな中…
「高美ちゃ〜ん!久しぶ……ぶひゃあ!?」
校長が抱き着こうとしたがその女将は鉄拳を放ち校長を鎮めた。
「あ…相変わらず釣れないなぁ…」
その光景を見ていたリトは前日のギルの言っていたことが見事に的中していた事に驚く。
「お前すげぇな…」
「だろ」
ーーーーーーーーー
その後、皆はそれぞれの部屋へと入り、肝試しまで休憩となった。ギルはリトや猿山達と同じ部屋であり、着物に着替えると食事の為に大広間へと向かった。
既に食事が運ばれており、白飯とアサリの味噌汁を傍に魚やサザエ、などといった豪華な海の幸が添えられていた。
「わぁぁ!美味しそ〜!!」
「はしゃぎすぎだバカ姉貴…じゅる…」
「涎 垂らしてるお前が言えるのか!?」
ララは初めて見る海の幸に目を輝かせており、横ではギルがやれやれと言いながらも彼も満更ではないのか涎を垂らしながらサザエを凝視していた。
それから皆はそれぞれの席について食事となった。
だが、食事をし始めて約数分。ギルの周辺にいる者達は食べる手を止めてていた。
バリバリバリ
辺りに響く硬い物を砕くかのような咀嚼音。
見ると出された料理の内の魚をギルは身だけでなく、内臓、皮や頭、遂には骨まで食べていたのだ。横にいた西蓮寺はギルの野生味が溢れた食べ方に若干引いていた。
「ギ…ギルさん骨まで食べるんだ…」
「えぇ。残さず食べるのが基本ですから」
「だとしても骨まで!?」
ギルは次々と食材を口に入れる。流石にサザエなどの貝類の貝は食べなかった。更に驚いたのが、ギルは女子から次々と食べられない分の食べ物をもらっており、それでもなお食べ切った後に『おかわり欲しい…』と呟いたらしい。
ーーーーーーーーーーー
それから食事が終わると、皆はそれぞれの部屋に戻り入浴の準備をする。彩南高校の生徒が使える時間が肝試し前なのだ。
「「ぐへへ…!!」」
準備をする中、思春期真っ盛りの男子達のゲスな笑みが浮かび上がる。
「さてリトよ。そしてギルも行こうじゃないか?」
「「ん?なにが?」」
疑問に思ったリトとギルは首を傾げながら尋ねると猿山は更にゲスい表情を浮かべながら答えた。
「覗きだよ…!!」
「はぁ!?」
「訴訟されちまえ」
2人は覗きを拒否する。それでもどのみちお風呂に入らなければならない為に猿山達と共にリトやギルも風呂場へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
「なんだよ。あんまりいねぇな」
「猿山…俺らが早く来たんだよ。だって夕食直後だぞ?」
男湯の暖簾をくぐると、そこにはリトの言う通り数人だけ男子達がいた。皆は次々と衣服を脱いで大浴場へと入っていく。
「さて…さっさと入るか」
ギルも浴衣を脱ぎ着物に手を掛ける。
___だが、なぜか猿山やリトはそれを凝視していた。
「あ?何見てんだ?」
「い…いや…色っぽいなって…。なぁ皆?」
「「うんうん」」
猿山にリト以外の皆は頷く。元々ギルの顔のパーツは目以外ほぼララに似ている為に皆はララがいるかのように見えて目が離せなかったのだ。
それに対してギルは溜息をつくと着物に手を掛け全身を見せた。
「なんなら堂々と見ればいいだろ?」
「「「!?」」」
その姿を見た全員はこの世のモノとは思えないモノを見たかの様に絶句してしまった。
一瞬にして着物を脱ぎトランクス一丁となったギル。いつもは丁寧に着用した制服によって隠され、可憐な顔が輝くその身体は______
____細身ながらも分厚い筋肉が敷き詰められた強靭な肉体であった。
『『『首から下 別人じゃねぇかぁぁ!!!』』』
「だって俺 男だし」
「だとしてもアンバランスすぎるだろ!?俺らよりムキムキじゃねぇか!」
猿山が指摘するとギルは「そうか?」と言い身体を見回す。肩幅はララとほぼ同じ程でありながらも腹筋が6つにしっかりと割れており胸筋も顔を出していた。スキマのない細身の筋肉質な体型に皆は希望が崩れ去ったかの様に赤く染めていた顔が一転し暗くなっていた。
「おいおい…マジかよ…あんなゴツい身体だったなんて信じられねぇよ…」
「顔はララちゃん…身体はマッチョ…」
「カッコいいけど何か…何か違う…というかよくよく思い出せばコイツ結構体格 よかったな…」
「細身でスラッとしてる奴かと思ってたのか?ったく」
皆があまりの衝撃にOTZ状態に陥っている中、トランクスを脱ぎ捨て腰にタオルを巻きつけたギルは呆れながら大浴場へと向かった。
因みに湯船に浸かった際に尻尾について問われるも、ギルはアクセサリーだと言い誤魔化したらしい。
◇◇◇◇◇◇
その後風呂からあがると肝試しとなる。女将の高美にボコボコにされたのか顔面が割れたサングラスで血だらけの校長がマイクを持ちながら相変わらずのマイペースな気持ちで司会をする。
因みにペアの決め方は至ってシンプルだ。1年生で男女に分かれてそれぞれクジを引き同じ番号となったものがペアとなる。
皆が次々と引く中、ギルはめんどくさがりながらもくじに手を伸ばす。
「俺は…10番か…」
ギルは辺りを見回してペアを探す。すると、
「あ、えぇと…貴方が10番…?」
「ん?」
そこにはバスの席で隣であった古手川が立っており手元には10番と書かれたくじが握られていた。
「よ…よろしく」
「どうも」
因みにリトはララと同じ番号であった。
ーーーーーーーーー
「……」
ギル・古手川ペアは無言を貫きながら次々と道を進んでいた。
「あの…貴方…ララさんの弟なのよね?」
「そうですが、何か?」
「いや…その…姿は似てるのに性格が全く似てなくて…」
「まぁ確かに。アイツは頭のネジ100本外れてると言われてもおかしくないですからね」
「いやそこまでじゃないわよ!?」
互いに談笑し合う中、古手川はふとギルを見つめると切り出した。
「ねぇギルさん…。もしよかったら…風紀委員に入らない?貴方のような真面目な人を探していたんだけど」
委員会という言葉にギルは首を傾げる。この星には小学校高学年から委員会というものに所属して校内でそれぞれ割り振れられた活動を行うらしい。
風紀委員会となると、文字通り校内の風紀を取り締まると考えていいだろう。
「…いや、興味ないからいいです」
「あ…そう。分かったわ」
ギルはアッサリと突っぱねた。そのアッサリとした性格はやはり似ているのかと古手川は目を点にしながら驚いていた。
すると
「わぁっ!!!」
「ひぃぃ!?」
突然と草村から現れた落武者のコスプレをしたお化けに古手川は驚きギルに身を寄せるが、ギルは…
「…ん?」
首を傾げていた。元々デビルーク星はお化けの文化に疎い故にギルはお化けという物がどういう形なのか分からない為に驚くことが出来なかった。
「何で驚いてるんですか?ただの頭に矢が刺さってる人じゃないですか」
「それが怖いの!!」
そう言い古手川は自身よりも身長が低いギルの手にしがみつく。その際に古手川の高校生にしては大きすぎる胸がギルの腕に押し付けられた。大抵の男子はこれで鼻の下を伸ばすのだが、ギルは伸ばすどころか嫌な顔をする。
「マジでうるせぇな…この女。一旦黙らそうかな…」
「…え?」
「あ、すいません冗談です」
「ちょっと待って…お化けよりもっと怖いんですけど…」
ガタガタ震える古手川を連れながらギルは次々と先に進んだ。
その時だ。
___グォオオ!!
突然 草むらから熊の声が響き静寂な空間に響き渡った。
「きゃぁぁ!!!」
突然と響き渡った猛獣の声に古手川は悲鳴を上げながらその場に尻餅をつく。
一方でギルは音声からCDである事を見抜いている上にこの声に慣れているのか平然としていた。
「ただのCD音源ですよ。驚きすぎです」
「だ…だっていきなりこんな声なんか出されたら驚くでしょ!?」
「いや別に」
「なんで!?」
ギルは背伸びをすると、前に進むべく尻餅をついた古手川に手を差し出した。
「立てますか?」
「だ…大丈夫…1人で立てるから……て、あれ?」
差し出された手を掴まず自身で立ち上がろうとするが、あまりにも熊の声に驚きすぎたのか腰が引けしまっていた。
「こ…腰が…」
「はぁ…。しょうがない」
ギルはため息をつくと辺りの景色に目を向けて声を出す。
「すいませ〜ん。お化け役のスタッフ。腰抜けた奴が出たからゴールまでおぶってくれませんか〜」
「なんでここでお化け呼ぶの!?というかスタッフって言うのやめて!!雰囲気ぶち壊しだから!」
すると、草むらからジョジョ立ちのミイラ男が現れた。
「お呼びで?BOY&GIRL」
「お呼びじゃない!!!」
◇◇◇◇
「どうしよ…ずっとここにいるのも怖いし…」
そう言う古手川の目には少しばかりか涙が出ていた。古手川はこういうモノが苦手なようだ。それに対してギルは欠伸をし彼女の答えを待っていた。
すると
ドガァァァン!!!
「「!?」」
突然 後方から爆発音が響いた。その音に古手川はもちろん、ギルも驚いた。爆発と共に凄まじい風と共に爆風が迫ってくる。
「なに!?なに!?」
「知らん!取り敢えず急ぐぞ!!」
「ふぇ!?」
ギルは予想外の事態な為に素の口調に戻ると共に古手川の身体を肩に担ぎ走り出す。
ビュォオオオオ!!!
「ぎゃぁぁあ!!!速い速い!下ろして!!!」
「叫ぶな!舌噛むぞ!」
ギルの凄まじい速度によって担がれた古手川は涙を流しながら絶叫していた。
すると
「うぉおおお!!!!」
「あぁ!?リト!?」
走るギルの横を凄まじい速さで叫びながらリトが走り抜こうとしていた。その両手にはララと西蓮寺が繋がれていた。
「おいリト!あの爆発はなんだ!?」
「ララの機械が爆発しちまったんだよ!」
「はぁ!?またとんでもねぇガラクタ作りやがったなこのバカ姉貴が!」
「違うよ〜。春菜がリトを振り回したか__」
ララの言葉が最後まで出る前にリトが加速していき、前へと駆け抜けていった。
「ちゃんと捕まってろよ…!!」
「…!」
神社に続く階段が見えてくると、ギルは古手川に注意を促すと共に脚に力を入れ、一気に跳躍した。
「〜!!!」
長い階段が遠ざかっていくと共に共に身体が浮いていく感覚に古手川は目を回す。
そして
「よっと…」
一段も足階段を踏む事なく境内へと到達した。
「おめでと〜!!第二着目〜!!」
到着すると校長達の到着を祝う声が聞こえてくる。第一位はリト達のようだ。なんでも一位になったペアは恋人関係になれると言われているが、3人の場合はどうなるのだろうか…。
「さて、着きましたよ。あれ?」
ギルは担いでいた古手川に到達した事を伝える。
だが、
「こひゅ〜…」
あまりにもの奇想天外な出来事に古手川は頭の処理が追いつかず気絶していた。
「