ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜   作:カーテンと手袋

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同じく日 〜いくつか針を巻き戻して〜

「優しい香りでしょう。蘭の花のような、優美な、水墨画に写るような優しい香り」

 

対決もせずに平和的な解決が行われたことによって、私たちは貴重な練習時間を確保することが出来た。急な変更をものともしないスケジュール管理で、どんどん前へ進む千歌ちゃん。幼稚園にお手伝いに行った日、園長先生とすでに話を済ませていたなんて。たぶん、あの時は私が加入するとは考えていなかったのだろうけれど。それでも、まだまだ未熟なままで、人前で発表。その勇気はいったいどこから……小さい頃にピアノの発表会に出ていた私には絶対に無理だと思う。だって失敗したらどうしようってそればっかりが過ってしまうから。

 

生徒会室を後にした私たちは、すぐさま職員室へと向かった。曜ちゃんが廊下をピューと駆け抜けて行くのを、果南ちゃんと壁に貼られた「廊下は歩きましょう」の表示紙をチェックしながら見ていた。私が慌てていると「直線を見ると走りたくなっちゃうんだよ」って、果南ちゃんが教えてくれた。まるで陸上選手ーーそういう人がいるのかわからないけれどーーみたいだねと笑いながら。でも、「かけっこだー」って千歌ちゃんも一緒になってる……二人とも波長が似てて、目の前の楽しいことに飛び込んで行っちゃう。果南ちゃんは「体育祭の練習ってことで」と言い、追いかける為に走り出した。確かにそろそろ体育祭だけど、駄目な気がする……私は丁寧に歩きながら後を追いかけた。

 

「まぁ。面白そう。あまり時間を取られないならやっても良いけど」

担任の先生ーー茸田みのり先生ーーは千歌ちゃんの「よろしくお願いします」という言葉にすぐさま答えた。気を張っていた私は拍子抜けした。忙しいから駄目って言われると思っていたのに。茸田先生は千歌ちゃんから受け取った書類に目を通して「あ、黒澤さんもやるのね」と呟いた。「それは誤解なんです」と、口に出来なかった私を知らずに、曜ちゃんと千歌ちゃんが「そうなんです」と息巻いた。そして、茸田先生はとっても嬉しそうに判を押した。

 

私たちはその脚で理事長に書類を提出しようと考え、その扉をノックした。落ち着いた返事が小さく聞こえた後、扉は静かに開いた。フローカル理事長は軽く会釈し、私たちを招いた。懐かしい。ここに来るのは二度目になる。部屋の中央に目をやると、すでに紅茶が用意されていた。テーブルも椅子も。私は少し疑問に思ったけれど、空気中に溶け出した香りを嗅いでいたら気にならなくなった。

「待っていたわ。白代さんが顔を出してね。来るんじゃないかって。ふふふ、ビンゴ。お茶会の準備をしてて良かった。さぁ、座って。今日は祁門紅茶なの」

 

「ありがとうございました」「ご馳走様でした」と思い想いに御礼を述べた。そして私たちは、お祭りを開始する時の静かな高揚感を秘めながら、屋上へと駆け出した。皆んなの足の速さを実感しても必死について行った。初めて階段を一段飛ばしたりして。「梨子ちゃん速くー!」って言葉も耳にして。私はみんなのもとへ向かった。慌ただしく。いそいそと。練習着なんて今日は持ってきていないのに。みんなのもとへと向かった。はぁはぁと心地よいリズムで、髪が乱れることも気にせず、屋上へと向かった。

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