ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「衣装も曲もダンスも、全部まだ私たちにはないけど、ここがスタートなんだ。……できるとかできないとかじゃないよね。不安でも仕方がないよね。千歌、進んじゃうから。手、伸ばしちゃうよ。絶対、輝いてみせる。だからみんな見ててください。私を。私たちを。……よろしくおねがいします!」
遅れた恵風がオレンジ色の髪をなびかせ、近場の情景を含み、煌びやかな人を見せた。それは隣に隣に連鎖して、あるはずもないシステムと施設を思い起こし、油断なく豊かさを感じさせたのだった。それは唯一であるかのように、この会場をただ、包んでいった。
ここに辿り着いたのは、少々早いとは言えない中途半端な時間だった。ただ突っ立って待つには長く思えるし、何処かへ飲み物を買いに行くには時間が足りない。これは呑気な平和だった。ある意味で時間を持て余していると、数メートル先から彼女の呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、そこには制服を着た彼女と同じように制服を着た女性が二人、そしてメガネの白代が手を振っていた。
白代「まさか来てたなんて」
近づくと直ぐに白代が言った。
十勝「誘われたんだ」
千歌「そう、私が誘ったんだ〜」
白代「そうなんだ。妙なつながりだね」
千歌「ふっふっふ。千歌はね。十勝君が転校してくる前から知ってるんだよ〜」
曜「千歌ちゃんってエスパー!?」
十勝「違う。前にも説明したはずだけど」
曜「忘れたであります!」
一度、海岸で練習していた二人にあったはずであったが、まるでパズルの一つがすぽっと抜けたように渡辺は忘れていた。それはどうだろうと言う目線で渡辺を見ていた髪の長い女性と目が合い、軽く会釈した。
曜「あっ久しぶり〜」
白代「適当すぎるフリだね」
曜「日々物凄いスピードで成長してるから、脳みそは置いていかれちゃうの。えへへ」
千歌「曜ちゃんは凄いんだよ」
十勝「ヘタクソな援助」
千歌「なにさ〜」
白代「じゃあ俺も年齢とか追い抜かされちゃうかも」
曜「ビューン! であります!!」
指定席も定位置もない、気ままな会場を見渡せる後方側に白代と二人で場所を取った。取ると言うほどの希少価値はないが、盛り上がれば前方へと、気に入らなければ後方へと、そんな単純明快な参加型のシステムは妙な緊張感を生まない気楽なものだと感じた。恐らくステージとなる場所に目を送る。そのステージの熱気を強く感じられる一番前には園児達と先生がブルーシートの上に座り、思い想いに言葉を交わしていた。少し離れた場所でそれを微笑ましく眺めている女性は、きっと園長先生だろう。あの子どもと先生達とステージで踊る小さかった元園児達と、これから起こる全ての雰囲気を見守る慈愛に満ちた目は、そう断定させるには充分だった。一度ブルーシートの園児達に視線を戻し、その後ろに視線を動かした。ステージを見られるちょうど真ん中辺りになるのだろうか。ビデオカメラを持った赤髪の女の子がいた。撮影するのだろうか。疑問を持っていると、その子はこちらの視線に気がついたのか、振り向き「ぴぎ」と小さな悲鳴をあげた後、その隣にいた柔らかい雰囲気の子の後ろに隠れた。
白代「気にしなくて大丈夫。男性が苦手なんだよ、昔から。だから十勝のせいじゃないよ」
何かをしてしまったのかと、少し狼狽えていると白代はそう言った。
十勝「良かった……詳しいのな」
白代「まぁ、いろいろ縁があって」
白代が手を振ると、柔らかい雰囲気の子はペコリとお辞儀をした。赤髪の女の子はこちらの様子を伺い、危険を及ぼさない存在だと認識したのか、そそくさと定位置に戻ってカメラのレンズを眺めた。そしてそれが合図のように、子ども達の歓声が上がった。
千歌「みんな、今日は来てくれてありがとう! これから私たちの、初めてのライブをします!」
彼女がそう言うと、子ども達は「やったー」「千歌ちゃーん」「わぁー!」「楽しみ」「ピアノのおねいちゃん!」「曜ちゃんだ!」など場を盛り上げていった。
千歌「どうもどうも。えっと、今日披露するのは二曲です。どちらも私が大好きなアイドルの曲なんだけど……すっごくワクワクするような曲で、キラキラしてて、みんなもきっと好きになると思うんだ。だから精一杯楽しんでね」
子どもたち「はーい!!」
千歌「ありがとう! じゃあ早速一曲目! 聴いてください。"START:DASH!!"」
煌びやかなステージではなく砂利の混ざった運動場の上、音質は音楽ホールや視聴覚室を包むスピーカーではなくCDラジカセ、お客さんは運動場を斑に埋める園児と先生ら、そして衣装は見慣れた浦の星女学院の制服。自分がいつか見たスクールアイドルのLIVEとは大違いだった。しかし何故か、この不器用で手作り感がある子ども達への祭りを、気に入ってしまう自分がいた。不可思議な期待がふつふつと湧き上がっていて、目を離すとか焼きつけるとか設定された基準を考えることすらなかった。
これは不思議な魅了だった。
ここまで閲覧していただき、有難うございます。
感謝の意を伝える為に、この後書きにて少々筆を執りました。
短い言葉ですが、受け取ってくださると嬉しいです。
さて、私の中で一つのひと段落。
第一章の完結を迎えました。
短くぱっぱっと書き上げていくつもりでしたが、
思いの外、長くなってしまって驚いています。
完結するまでにいったい、
どれほどの時間が必要になるのでしょうか(笑)
これからも時間が許す限り、
彼らや彼女らを書いていきたいと思います。
それでは、
また誰かの幸福を祈って。