ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「地上に舞い戻ったわ」
ホームルームまでの時間。朝のチャイムが鳴るまでの時間。皆んな私の失敗を嘲笑っていると考えてしまう。密閉された教室の中で不穏な会話が続いている。そんな暗い妄想が頭を離れない。堕天使のくせに、弱々しい。認めたくはないけどこんな私がよくもまぁ、あんな大胆な事ができたなと思う。慣れとか気の緩みから生じた闊歩な発言。新学期って事もあって浮かれてしまったのかもしれない。私はあの時、やってしまったと思った。一年の初めにもやってしまって、たった数秒の沈黙に耐えきれなくなって、教室を逃げ出したりした。思えば確かに初対面で天界とか言われたら、そりゃハテナマークを浮かべるでしょうね。それが普通。それが人間。そして人間と堕天使は相容れない関係。紀元前の頃から決められていた運命。私は末裔として忘れてはいなかったはずなのに。
この廊下を歩いている。私はため息を一つついてみては学校に来なかった一ヶ月を思い出す。あれやこれや……何してたっけ? 何か色々な事をしていたような気がするけれど、あまり印象にないのか思い出せない。これじゃあまるで無駄な時間だったみたいじゃない。窓から差し込む日差しが木目調の床を照らす。私はドキドキと鳴り始める胸に弱腰になった。自分だけに聞こえるように、また一つため息をつく。
「あれあれ、善子じゃん」
呑気に声をかけられた。
「久しぶりー」
私は驚いてしまって目を背けたまま「おはよう」と挨拶した。むつは気にせず私に提案する。
「さっさ、そんなところに居ないで行こう」
ドアをガラッと開けて、「善子が来たよー!」なんてクラスのみんなに報告して、私の手を引いて無理やり教室に引っ張って、こんなんじゃ気持ちの整理も準備も出来ずテンパっちゃうじゃない。だからまた「おはよう」なんて同じセリフ。まるで語彙力が貧しいみたい。でもみんなは「元気してた?」とか「心配してたんだよ〜」とか「よっ! 美人の登場」とか、ごく当然のように話しかけてくる。
今日一回目のチャイムが鳴れば、それはホームルームの合図。みんなが席についた代わりに茸田先生が教卓に立った。後ろで結ばれたポニーテールがふわっと揺れて、視線が動くのがわかる。私を見つけた。そして先生は私に向かって笑顔をくれた。それがなんだかくすぐったくて、恥ずかしくって、スカートをぎゅっと握った。きっと今の私は、頬が緩んでいるはず。にへへなんて生意気な笑顔を浮かべながら。