ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「僕は気にしていませんよ」
「私は気にするの」
という心の中の不毛な会話。
「現実では起きないんじゃないかって思っていると、本当に起きてしまった時に行動が取れなくなる」
少々汗をかいて体操着の白に淡さが現れる頃、青春を謳歌している生徒たちとは違って、問題にぶち当たっている一組(二人)がいた。全校生徒が校庭の各場所に散らばって、練習や準備を行なっている。ぐるぐるとバットで三半規管を養う組や、玉入れの赤玉と白玉の数の確認をする者、クラウチングスタートのフォームを議論する者達、大縄の砂利を拭き取る教師。迫り始めた体育祭に向けて、各々が行うべき課題に取り組んでいた。全生徒が集まって行う入場や退場の行進は足早に終わった。人数が少ないのもあって、時間はあまりかからなかった。
ルビィ「本当に……ごめんなさい」
十勝「いやいや、大丈夫大丈夫。あのくらいすぐに出来るようになるよ」
木陰のもとでささやかな願いを込めていた二人は、まだ一組に成れずに話し合っていた。
ルビィ「もう、上手くいくイメージができません……」
十勝「……えっと、すごい進歩だと思うよ。ほら、まだ2メートルは離れてるけど……会話出来てるし、この調子ならさ。間に合う気がするんだ」
ルビィ「……」
十勝「だってさ。走って逃げることもなくなったじゃん。前半の一時間は何もできなかったし……」
ルビィ「今もまだ……練習……出来てない」
十勝「まぁ、そうだけども」
やすやすと紐を結び肩を組み「いっち、にぃ」と掛け声を合わす他の組を見ながら、二人はそんな会話を途切れ途切れに続けた。
ルビィ「やっぱりルビィ……今からでも、やめた方がいいですかね……」
果南「だーめ」
いつの間にかルビィの背後にいた果南は、頭にチョップをしながらそれを拒否した。「いたっ」と声を出してルビィは振り向き「でも〜」と愚痴をこぼした。
めぐ「あらあら」
目黒はルビィの頭を撫でる。
果南「あんなにやる気になってたルビィは、どこにいっちゃったのかな〜」
ルビィ「う〜ん。難しいのー」
めぐ「まだ怖い?」
ルビィ「少しは大丈夫……」
めぐ「そっか、あ! アイドル始めたんだっけ?」
ルビィ「うん」
めぐ「それで克服〜って感じなんだ」
ルビィ「うん、そうなの」
めぐ「勇気を出したんだね」
ルビィ「うん……」
目黒はルビィの頭を撫でながら慰めた。その傍らで十勝と果南は状況を話し合った。
十勝「間に合うかはギリギリ」
果南「それは良かった。体育祭の実行委員長として、ここが一番不安だったから」
十勝「あはは。まぁ、そうだよね」
果南「まさかルビィが二人三脚なんてねー しかも男子と」
十勝「驚くくらいのことなんだ」
果南「まぁね。ダイヤも驚いてたし」
何組かある中の顔を知る一組がこちらに掛けて来た。それも上手に「いっち、にぃ」という掛け声すらさせずに。
花丸「ルビィちゃーん」
小木「あれー 十勝休憩中?」
十勝から見て二人は最も息が合う一組だと感じていた。目線も掛け声もなく、いったい何を持って合図を作るのか。十勝は疑問に思った。二人の形姿は、その身長差からあまり似ているとは思えず、顔つきもさほど似ていない。しかし、まるで双子のような連帯感がそこにはあった。
花丸「ルビィちゃんどう?」
ルビィ「あんまりかなぁ、ははは」
果南「よし! 私も付き合うよ! あらかた見て回ったし、大丈夫そうだったから」
花丸「まるも教えるよ」
小木「おれ休憩したい」
花丸「ルビィちゃんが出来るようになるまでダメだよ」
小木「ひぁぁあ……」
めぐ「じゃあ。私も見てようかな」
ルビィ「みんなぁ……」
十勝「期待が重くなっちゃったな」
ルビィ「でも、嬉しい」
果南と十勝は目を合わせニカッと笑った。
ルビィ「ルビィ、頑張る!」
バッと立ち上がったルビィは胸の前で両腕を力強く握った。そして、十勝の方へ走り出した。
果南「あ、危ないよ!」
が、足首に結ぶはずだった縄がルビィの左足をかけ、身体を傾けさせた。果南は咄嗟に手を伸ばして腕を掴もうとしたが、その手は空振り果南をも転ばせる。二人はその場で重なるように崩れ落ちた。その途中、ゴンッと鈍い音が周りの人に響いた。聞いただけで骨が軋むような重い音だった。
めぐ「せっ先生呼んだ方がいいよねっ」
十勝「ものすごい音鳴ったけど」
花丸「ルビィちゃん。果南ちゃん」
小木「痛そう〜」
ルビィ「いたた……ごめんね、ルビィ。大丈夫だった……?」
果南「いった〜! うゅ……結構痛い! じんじんするよ〜」
二人はお互いの顔を見合った後、呟いた。
ルビィ「え?」
果南「あれ?」