ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「姉だからといって、妹の全てを理解しようだなんておこがましい」
ダイヤ「最近、ルビィがおかしいのよ……」
体育祭の実行委員が慌ただしく駆けて行った。「こっちにロープあったよー!」と、手に持ったロープを、待っていた友人達に見せつけるように大きく掲げて振った。観客席とグラウンドを別けるそのロープは、あまり多く使わないためそれで最後のようだった。ダイヤと白代も彼女らと同じ作業をし、一通りの作業を終えたダイヤが、持て余した両手をどうすることもなくただ呟いたのだった。
白代「そう? 変わらないと思うけど」
ロープ止め用の金具にロープを通し終えた白代は簡単に相槌を打った。
ダイヤ「貴方は本当に人を見ていないんだわ」
後者側のグラウンドにアルミ製の朝礼台が置かれている。そのすぐ横のスペースに、タープテントが立ち上がった。先生も交えた組体操のような同時の動作は掛け声をダイヤの耳に届けさせた。
ダイヤ「朝、ジョギングに出かけたり、お皿を洗ったりどういうつもりなのかしら」
白代「随分と疑っているね」
トントンと木製のトンカチで叩く。ロープ止め用の金具が地面にしっかりと固定されているか白代は確認する。
ダイヤ「帰って来たら初めに教科書を開いているのよ? 一度鞄を置いたら次の朝まで開かない子がすぐ。これっておかしいでしょ? そう思わない? それに、果南の所でアルバイトを始めたって言うのよ。訳がわからない。私、気が気でないの」
数本の中、一本だけが緩く地面に刺さっていた。それを抜き取り、離れた場所に差し込む。これはしっかりと固定されたようだった。
白代「直接聞いてみたら?」
ダイヤ「聞くって言ったって、どう聞けばいいの?」
白代「本当に私の妹ですかって」
ダイヤ「そんなものが通用すると思って?」
白代「そいつはわからないよ。もしかしたら化けの皮が剥がれて、内側に潜んだ妖怪か何かが姿を現すかもしれない。そして黒澤さんに乗り移るかも」
ダイヤ「……夢は一人で見てください」
呆れた様子で、ダイヤは地面に置かれた体育祭のパンフレットを拾い上げ、白代に手渡した。砂埃は綺麗に取り払われていた。
ダイヤ「……ねぇ」
辺りを見渡せば、九割は去年の体育祭の景色に近づいていた。ほんの少しのピースで完成するパズルを前にしたような期待と感傷が、放課後から準備を始めた生徒と先生たちを包んでいた。過去は目の前に迫り、誰よりも大きな顔をしていた。それに白代は何となく気付いていた。
ダイヤ「そんな上手いことはないって知っているの。夢だってことも。それでも……」
そこには夕暮れが迫っていた。波のように空を飲み込んでいく赤い光が、ダイヤをノスタルジックな気分にさせていた。
ダイヤ「私が貴方で貴方が私だったら、そんなふうに私達が入れ替わっていたら……私はもっと、貴方よりも上手く立ち回って……」
正しく暴挙だった。背にポツリポツリと語りかけるダイヤの不遜だった。例え運命の神様が観ていたとしても、第三者が未来を見渡していたとしても何も変わらないはずだった。それに白代は何となく気付いていた。
白代「傲慢だよ。それはね。それになんだかんだで今の状況には満足してる、だからいいんだよ」
ダイヤ「……」
時折、ダイヤは物思いにふける。それは大抵、この空が沈む頃だった。
白代「つまらない話は辞めようよ。明日は体育祭なんだからさ」
校庭に散らばった生徒たちが、朝礼台の周りに集まり始めていた。準備はどうやら終わったらしい。白代は笑顔のままダイヤをそこへ向かわせようと、そう呼びかけた。