ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「人は飛ぶ為に、どれだけ頑張ればいいのだろう」
お母さんは快く思ってくれてはいなかった。
習い事を辞めて、髪を切って、そして幼稚園のお手伝いを始めたことを。口には出さないけど、なんとなく不機嫌そうな気がした。お姉ちゃんと違って、習い事の色々をしっかりと出来ないから、辞めてしまっても良いんじゃないかって。そう思っていた。普段からわがままばかりのルビィだし……だからきっと、ルビィがスクールアイドルを始めたいなんて知ったら。
何日も続いたから、さすがにルビィだって早起き出来るもん。カチッと目覚まし時計を止める動作をして、布団から立ち上がった。果南ちゃんの部屋には目覚まし時計がないから、いつもの癖で手だけを布団の外に出してしまう。あぁ、今日もやっちゃったなんて思いながら体操着をタンスから出して、パジャマを脱ぐ。身体のラインがいかにも大人っぽい。羨ましいなんていう感情をぷくっと頬を膨らませることで示した。鏡の中はやっぱり果南ちゃんで、ルビィにはない良いところが沢山あるなぁと思った。ハンガーにかかった緑色のスカーフが自分を三年生だと諭して、鏡にうつる姿がやっぱり果南ちゃんだと、再度教えてくれていた。
果南ちゃんと二人。誰も見ていない場所で練習を何度かしたんだけどーー法律的には大丈夫なのかなぁ。でも今、私は果南ちゃんだし、うゅーーぐわんと進むエンジンの力強さに怖気付いてしまったから、水上バイクにはうまく乗れない。果南ちゃんは「いつか出来るようになるよ〜」って言ってくれたけど、きっとルビィは車の免許も難しいんだろうなって思っちゃった。
学校に向かうのはじぃじが船を出してくれる。水上バイクが故障しちゃってと、当たり障りのない言い訳をしたら案外すんなりと聞き入れてくれた。
果南じぃじ「今日は体育祭なんだってなぁ」
果南(ルビィ)「うん」
果南じぃじ「網子が熱を帯びてるぞぉ」
果南(ルビィ)「あはは」
毎年、内浦に住む人も高校生じゃないのに参加したりする。例えば綱引きの競技は、漁や港で働く人。ルビィのお家がずっと昔に津元をやっていたから、その名残もあって、まだ集まることもあるみたい。それが学校というのも、昔の人たちが色々あったらしいんだけど難しくてよく分からなかった。花丸ちゃんならとっても詳しいんじゃないかな。
果南じぃじ「気張れよぉ」
ルビィ(果南)「結局、戻らなかったね」
しばらく海岸沿いを歩いていると、果南ちゃんと花丸ちゃんが待ってくれていた。にこって向こうが笑顔をくれたのが見えたから、ルビィ嬉しくなっちゃって駆け出しちゃった。
果南(ルビィ)「うん」
自分の姿と会話する違和感って妙なんだけど、意外と慣れてきたりする。こんな経験はこの先することはないと思う。だって、まだ信じられていなくて、もしかしたら魔法少女だったり白馬の王子様に出会うヒロインだったり、こんなことを認めたら何でもありなんじゃないかって期待しちゃう。それはルビィが花陽ちゃんみたいな煌びやかなアイドルになるのが夢じゃないように。
ルビィ(果南)「あんなに練習してたから、申し訳なく思っちゃうよ」
果南(ルビィ)「ううん。気にしないで。今のルビィじゃゴールすら難しかったよ」
花丸「ルビィちゃんは頑張ってたよ」
果南(ルビィ)「えへへ……そうかなぁ」
「おーい!」
後ろからあまりルビィが聞かないたくましい声がする。……あぁ男の子だぁ。やっぱりちょっとだけ苦手。でも、ちょっとだけなのは練習の成果が出ているのかも。
ルビィ(果南)「噂してたんだよ」
十勝「え、なに、悪い話?」
花丸「ふふ。違うよ。二人三脚の話」
ルビィ(果南)「そうそう」
十勝君はどぎまぎと返答して、なんでもないようにルビィ達に加わった。
十勝「あ、そっか。本当は」
元々、男性が嫌いってわけじゃないし、昔、虐められたわけでもない。ただ自然と意識するようになって、自分とは全然違うってことが怖くて、それに何も知らないから、より一層恐怖が増していく。不思議なんだけど、そうなっている。お化けが怖いとかそういうのに似ているのかも。でも十勝君はそんなに苦手じゃない。まだ難しいけど、お話とかちょっとだけできる。どうしてだろう。男の子っていうのはおんなじなのに。最近知り合ったからかな。どうしてだか、全然。わからないけど。
果南(ルビィ)「でも大丈夫。勇気が欲しかっただけだから。ルビィ。アイドルをやる為の区切りが欲しかったの。けじめみたいな。たぶん、これじゃなかったんだよ、きっと。別のことで、また試練みたいなのが出てくるんじゃないかって、そう思ってるんだぁ」