ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜   作:カーテンと手袋

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ヒーローは遅れて登場するらしい

「びっびっくりした……今のうちに台本確認しとこ……」

 

ワクワクして眠れなかったという言い訳を、高校生になってから何度多用しただろう。またそのような言い訳をすれば先生の喝が飛んでくるのは考える必要もない。バスを逃した私は次のバスの時間まで少しでも前に進もうと、学校へと駆け出していた。

 

花丸「小木君また靴紐解けてるよ」

小木「え、ほんとだ」

ルビィ(果南)「入念なストレッチだね」

塩並「今日くらいしかないからな」

ルビィ(果南)「当の本人は来てないみたいだけど」

塩並「そう。たぶん、遅刻」

ルビィ(果南)「相変わらずだよね」

塩並「いつも通りだからこそ、恐い」

ルビィ(果南)「熱い対決って感じだよ、本当に。くぅ〜 私も燃えてきた」

めぐ「はいみんなー 並んで並んでー」

塩並(あれ? あんな感じだったけか)

 

いくつかバス停を過ぎると蝉の鳴き声が辺りから聴こえ始めた。私も蝉たちに負けないくらいの生き様を見せつけるべく、さらにスピードを上げて走り出した。まだ広い歩道をしっかりと駆けて行く。どんどん。壁の落書きや堤防の傷が後ろへと流れていった。ただ、蝉の鳴き声は、また新たに前方から聴こえ始めていた。

 

十勝「なんだか嬉しそうだね」

千歌「えへっへ〜 見ててわかる?」

十勝「うん。ちょくちょく飛び跳ねてるから」

千歌「まぁあね〜 あのさ〜 聞きたい? 聞きたい聞きたい!?」

十勝「教えてくれるのなら」

千歌「えっとねー それはねー」

むつ「はーい。並んで並んでー」

千歌「わわあぁ」

ダイヤ「もう、開会式なんだから」

善子「はしゃいでしまうのも当然よ。だってこの私なんだからね」

ダイヤ「あなたもそんなポーズとっていないで並びなさい」

善子「べっ別に、これは!」

 

鮮魚の風味という表現をすると、まるで私がトラックに齧り付いているみたいだ。助手席の窓からひょっこり顔を出して、素早く流れる風を受ける。生の魚の匂いがどんどん後ろへと流れる。これは思いっきりダッシュした時のイメージトレーニングだ。うん。大丈夫。今日はよく冴え渡る。

「そんなに顔を出していると危ないぞ」と、目をつぶって風を受けていた私に、沼宮君のパパが言った。私はごめんなさいと言った後、助手席の前にある棚から、一枚のガムを取り出し勝手に食べた。

 

白代「この暑さは人をダメにするね」

沼宮「同感」

白代「これから梅雨を挟んでさらに暑くなるんだ」

沼宮「もう腕だけ日焼けしてる」

よしみ『フローカル理事長ありがとうございました。私も蜜柑が大好きで、もうお昼休憩が待ち遠しいです。続いて、体育祭実行委員長の松浦果南さん宜しくお願いします。ーー選手宣誓』

果南(ルビィ)「いっぱい練習したから大丈夫。いっぱい練習したから大丈夫。いっぱい」

めぐ「深呼吸だよ。絶対大丈夫だからね」

果南(ルビィ)「うん」

 

果南(ルビィ)「宣誓ーー」

「ちょっと待ったあぁあああぁ!!」

息を荒げ、肩を揺らし、まさにあの坂道を駆け抜けてきた姿で、渾身の大声を出した。果南ちゃんの驚いた「ひょぃ!」という音をマイクが拾って、校庭に並んでいる全校生徒がまだらに振り向いた。いったい今はどの場面だろう。坂の途中で聞こえた放送を、私は理解することなく捨てた。間に合わせるという一心で登って来たからだ。

『おっと、ここで渡辺曜ちゃんの乱入です』と、よしみちゃんが放送した後、歓声と拍手が巻き起こった。よっ……ヨーソロー……めちゃくちゃ目立ってしまったであります……

「わたなべええぇぇえぇえぇ!!」

遠くで叫びながら、ダッシュして来る人。あれは担任の佐藤先生だ。物凄く綺麗なフォーム。まずいであります……

 

むつ「あっはっは。なんか今年は楽しくなりそう!」

よしみ『曜ちゃんは中学生の時から変わっていませんねぇ』

京六里『どうやら、ヒーローは遅れて登場するらしい』

しばらく止まぬ歓声の中、果南(ルビィ)は挙げた右手をどうすることも出来ぬまま、迷いながらも待っていた。

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