ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「私を知らないなんて、罪深いわ」
花丸「うっ……まだ頭がクラクラする」
ルビィ(果南)「大丈夫? 飲み物飲む?」
花丸「ありがとう。いただくね……」
冷たい飲み物が喉を冷やし、頭を正常な機能へと促す。観覧席に座っていても花丸の視界はグラグラ揺れていた。
ルビィ(果南)「花丸は船とか苦手だもんね」
優しく語り背中をさする。ルビィの手は小さいが、そこにはしっかりと果南の温もりを帯び、愛想を包んでいた。
よしみ『おっと、白代選手。豪快に転んだぞー!』
京六里『三半規管が敏感だからね。納希にとってはきつい場面だよ』
よしみ『男子・先生チームからは野次が飛んでいますねぇ』
ルビィ(果南)「他の競技にすれば良かったのに」
花丸「えへへ……これが一番楽かなって」
ルビィ(果南)「もう、ほら」
困った妹を看病する姉のように、果南は花丸の頭にそっとタオルを乗せた。それはひんやりと水を含み、元気な太陽を妨げる効果も持ち合わせていた。果南は花丸の話を聞きながら、ミネラルウォーターの水をタオルにかけていたのだった。
花丸「冷たくて気持ちいい……」
ルビィ(果南)「次の玉入れ休む?」
花丸「ううん。ちゃんと出るよ」
ルビィ(果南)「そっか、なら止めないよ」
花丸「うん。いっぱい休まなくちゃ」
善子「あんな豪快に転びたくはないわね」
列が順々に消化され、善子の出番は近づいていた。先ほどの転倒を見ているからか余計に緊張し始めていた。この競技の性質上、ふらふらと失敗をするか、全く問題なく走り切るかの二通りだけが注目を浴びる。善子はその真面目さと少し目立ちたいという自己陶酔の欲で、気持ちが右往左往していた。「ピエロを演じるべきなのね」善子は、そんなことを思った。実際は全く目が回ることはない。しかし、目立ちたいという欲がチームの勝敗を超えた。
次の次。順番が近くなると善子は同じく走る相手を見た。見慣れない女子と見慣れない男子。と、言いたいところだが男子の方は何度か朝のバスで見かけたことがあった。
小木「お手柔らかに〜」
その男子は善子の視線に気がついた。
善子「私もそんなに早くないから」
お互いに腹の内を探るような掛け合い。
小木「桜内さんは都会では運動とかしてないの?」
この質問が、あまりにも簡単に、善子の熱意に火をつけた。
善子「桜内?」
小木「転校生って、内(海月高校)でも有名だよ」
誤解が生まれていると分かっていたが、善子は熱くなっていた。
善子「ふーん。あんた私のことを知らないってことは一年生ね」
男子は知らないけど知っているようなと言いたげな表情を浮かべた。そして、列はいつの間にか善子をクラウチングスタートへ誘った。
善子「いい? 私は桜内梨子じゃないわ。私の名前はね、善子。津島善子よ。覚えておきなさい。このレースで一番になる名前よ」