ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜   作:カーテンと手袋

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試しに全力で走りました。
参考のために。
やけに空気は冷えていて、
肺がヒットした釣竿みたいに震えていました。


徒競走

「人生において、後何回、全力で走ることがあるのだろう」

 

そう、実際に走ってみなければ速さなんてものは理解できない。肺の上下運動も呼吸の乱れも終わった後の話で、走る間は疲れなんてものは感じたりしない。それでも疲れてしまうのは何か体の調子が悪かったり、ぐちゃぐちゃ色んなことを考えてしまっているからだと思う。私はそうやって試合に臨んできた。

 

並べられた一列なんか、あっという間に乱れてしまう。上空を貫く号砲。反射と瞬発。男女の身体的差は目に見えて分かる。文化系の部活の子は早々にリタイアして、運動部の子もついては来るけど、やっぱり私たちの一騎討ちになる。上体が起き始める。チームの声援や放送部のマイク音、そして私の呼吸。どれも聞き取れないほど入り混じって、盛り上がっていることを教えてくれる。視界に直線を入れる。ここが私の走る場所。ただ真っ直ぐ進めばいい。ふくらはぎを感じて。運動靴の中で指を荒らして。遅刻しちゃったけど睡眠は多量。敏感なくらい神経は加速。コンディションは万全。寝坊した癖に朝ご飯もちゃんと食べた。ウォーミングアップも丁寧にした。調子が良い。絶対に大丈夫。脚を前に出す。全身の皮膚が嫌がるくらいに、無理矢理にでも風を当て続ける。ザリガニの脱皮みたいに、皮膚の全てが後退し私だけが前に進み続ける。そうすれば時の針を少しずつ遅らせることが出来る。そうすれば私は勝てる。首筋の汗が飛んでいく。後ろは振り向かない。景色は遅れ始め後方へと流される。視界は急速に幅を狭め、ぼんやりとした純白へと私を導く。みんなの声援も微かに、いや聞こえなくなり、呼吸のリズムだけが世界に響く。残りを確認する暇はない。ただ進む。蹴る、蹴る、蹴る。脳を省いて背骨から直接脚に命令を出して。太腿を持ち上げる時間が惜しい。ただ蹴る。重力を拒む。前の背中に迫る。この真っ白い空間の中にいる、その背中に追いつく。だから蹴る。砂利を舞わせる。焦りはない。風は静かに私を押してくれる。肺はいつもより稼働している。血は足の小指まで行き渡る。もっと速く。気持ち良くならないで。もっと飢えて。誰よりも速くなんて贅沢は言わない。今、この瞬間に。この瞬間にベストを引っ張る。勝利の為に腕を振る。怖くもない。負けたくない。地面を蹴って。脚が重力に絡め取られる前に先へ。絶対に、絶対に。蹴る、蹴る、蹴る。胸をそらせる必要は……白いゴールテープが純白の世界には、きっと。

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