ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜   作:カーテンと手袋

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中盤の文章がもたついている気がします。


綱引き

「真剣勝負は一瞬だ」

 

身長の凸凹がハッキリとした群は、肩を回したり首を鳴らしたりして、校庭へとやって来た。彼らが近づいてきた時、車のエンジン音が多く聞こえた。ノースリーブや魚のロングティシャツ、文字の入った作業靴やサロペット、格好だけならいかにも烏合の衆のようだが、不思議と纏まっている。彼らの姿は校庭の砂に映る影さえもカッコよく見えた。腕はパンパンに筋肉をつけているが、お腹はポヨンポヨン。日焼け止め何かに頼らない浅黒い肌に、荒れた髪をワックスで固めている。普段の生活の多くを海で暮らす彼らは、陸の上でどれだけを見せるのか、全くわからなかったが、ここに住む友人達はどうやら理解しているらしかった。みんな、舐めちゃいない顔つきだった。塩並と小木は互いに手を押し合い、京六里と白代は入念なストレッチをしていた。一番真剣な眼差しを崩さなかったのは沼さんだった。

 

黄色チームの海月高校は、先生を抜いて学生だけの六人チームだった。勝負事に熱の入る佐藤先生は僕らに発破をかけようと大声を出した。水本先生は客席を今にも飛び出しそうな佐藤先生を押さえつけていた。茸田先生は椅子にしっかりと座って応援していた。先生達の応援を聞いていたのは、このチームの中で恐らく自分一人だけかもしれない。

 

綱引きは赤青黄色とその他の白、四チームの総当たり戦だった。赤青は学年がごちゃまぜの女子十人チーム。黄色は先程説明した通りで、白は特別枠。内浦近海で仕事をする漁師達の四人チームだ。出場する選手以外にも漁師はたくさん来ていて、浦の星の生徒の父親に何人かいるらしかった。女子生徒は自身の父親の名前を叫んでいた。漁師達は体育祭の総合得点には関係ない所で出場する枠らしい。この枠は、他にもママさん達の演舞や最後のリレーだったりと、町に住む人達が自由に参加する仕組みとなっていた。地域と繋がりが大きく、生徒数の少ない海月と浦の星の体育祭を盛り上げる一つのスパイスとなっていた。……都会ではこんなことなかった気がする。知らない人に声をかけられたらついて行かないようにと、パトロールを実施していたりしていたっけ。

 

よしみ『最後の試合は男どもの筋肉勝負ですね、解説の目黒さん』

めぐ『ふふ、もう毎年恒例ですよね』

よしみ『一昨年は良かったですねぇ。去年は大敗でしたが』

「おい、去年の俺たちは頑張っただろー!」

よしみ『と、言っておられます』

観客席からクワっと訂正が入り、放送部はそれに対応した。去年の卒業生らしかった。

めぐ『これも毎年恒例になりつつありますね』

そう言うと、観客席から塊となった笑いが生まれて、続々と「負けるなー!」や「網子の意地見せろやー!」など、複数の歓声が会場を温め始めた。

 

初めの二試合は赤チームと青チームと試合を行った。浦の星女学院から作られたニチームは、ハンデとして人数を多く見積もっていたが、これはそう困難ではなかった。勝負に時間は掛からなかった。

沼宮父「藤介ぇ。父を越えるチャンスだぞぉ」

沼宮「……わかってるよ」

海月高校の中でも、一番上腕二頭筋のこぶが大きくて背も高い沼さんが、父親と並ぶとやっぱり子どものように見えてしまう。身長の差は数センチほどしかないが、圧倒的に幅が違った。首周り肩の膨らみ胸の張り、尻のデカさ。何処を切り取っても勝る場所は無いように見えた。

 

網子の人「げんちゃん。昔みたいに威勢がいいのぉ」

沼宮父「そいつはそうだ。相手は乳飲み子やおなごじゃねぇ。ようやくあいつも一端の男になった。……真剣勝負ってやつだ、藤さん」

 

綱をしっかりと握ると、先程までの試合で硬くなった皮膚が綱にめり込んだ。持ち慣れていないこれは、明日には手のひらにマメを作るだろう。一番力の強い沼さんが後ろにどんと構え、自分はその前を任された。ふと前を向くと、綱の中央にいる審判が、綱にかかる力を均等にしていた。互いに身体が勇み立っていたからか、思うように綱の位置と力が釣り合わなかった。ガンガンと太鼓の音が鳴り響いて、応援の声がよく聞こえる。校庭の真ん中に蹲踞の姿勢を基本とした十人がいた。その中に含まれる自分は、今どんな顔をしているだろう。緊張感で手が汗でべたつく。これは丁度いい。前方から浴びせられる殺気に脚が下がる。が、これも都合がいい。全てを出さないと勝てないぞと、綱に掛かる重さが語りかけていた。一瞬でも気合を抜いたらやられる。黄色チームの男子ら全員がそう感じたのか、砂利の鳴る音が一列にあった。そのすぐのこと、審判の号砲が天を鳴らした。すぐさま一直線になる綱。軋む音と息遣いが出る。いちにぃーと、互いのチームは声を合わせて綱を引く。腕がすぐにパンパンになった。腰を落として身体で引く。引っ張っても引っ張っても、まるで動かない。試合が始まってから、綱が均等に力を得ていた。と思っていた。ほんのわずか、いちにぃーの掛け声の空白に生まれるタメ。力を蓄えるその場所。急に、綱が別の生き物に成り代わったかのように、僕たちの身体を引っ張った。全員が死に体となった。バランスを取り戻そうと、綱を引き戻そうと、力を加えようとしたが無駄だった。僕たちの身体はあっという間に中央へと追いやられる。上半身が浮いた状態のままもがいていた自分の耳に、沼さんが呟いた「ーーくそっ」という言葉が、号砲よりも耳に馴染んだ。

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